イード Research Memo(3):2020年6月期業績はEC関連事業の伸長により売上高、営業利益で増収増益を確保
[20/09/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年6月期の業績概要
イード<6038>の2020年6月期の連結業績は、売上高で前期比1.4%増の5,266百万円、営業利益で同1.5%増の315百万円、経常利益で同11.5%減の277百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同46.4%減の104百万円となった。コロナ禍の影響により、第4四半期にネット広告収入が急減するなど一部で逆風を受けたものの、EC物販やECソリューションが好調に推移したほか、2020年2月に事業取得したアニメディア関連事業の売上が貢献したことなどから、売上高は過去最高を更新した。営業利益については、CMP事業が減益となったものの、ECソリューションの好調によるCMS事業の増益でカバーし、全体では増益を確保した。同社ではメディア運営について従来から広告収入に依存しない360度ビジネスモデルの構築に注力してきたが、今回はこうした取り組みが奏功した格好となった。
経常利益については営業外で持分法投資損失31百万円を計上したことで減益となり、また、親会社株主に帰属する当期純利益については特別損失として減損損失74百万円、投資有価証券評価損10百万円を計上したことにより減益率が大きくなっている。持分法投資損失については、2020年6月期より新たに持分法適用関連会社となったSODA(株)の出資分を保守的に見直し減損処理したもので一過性の損失となる。また、特別損失の減損損失は2021年6月期以降もコロナ禍の影響が一定期間続くという仮定のもと、CMP事業における固定資産(のれん)の一部について減損処理を行ったものだ。
(1) CMP事業
CMP事業の売上高は前期比0.8%増の4,433百万円と3期連続増収となったものの、営業利益は同12.6%減の265百万円と3期ぶりの減益に転じた。また、営業利益率も同0.9ポイント低下の6.0%となった。
2020年6月期は、事業譲受により不動産投資に関するメディア「ワンルームオーナー.com」やグルメ情報サイト「めしレポ」、アニメ専門誌「アニメディア」等の発行及びWebメディアなど新たに5つのメディアを追加したほか、事業開発により動物のリアルを伝えるWebメディア「REANIMAL」や教職員及び教育関連企業をターゲットとした教育関連情報サイト「リシード(ReseEd)」、ダイエット関連のSNSアプリ「myRule(マイルール)」など新たに6つのWebメディアを立ち上げ、運営Webサイト数では前期末比6サイト増加の65サイトとなった。また、2020年6月末に自動車愛好家向けコミュニティサイト「CARTUNE」を運営するマイケルの全株式をメルカリ<4385>から取得し、子会社化している。「CARTUNE」は月間300万人超のUU数を誇るサイトで、自動車領域では国内最大級の情報サイト「Response」を運営する同社にとっては、さらにユーザー基盤を強化した格好となっている。
運営Webサイト全体の月平均UU数は運営サイト数の増加により、前期比14.9%増の52百万UUと拡大したものの、月平均PV数は前期比6.2%減の169百万PVと3期ぶりに減少に転じた。特にコロナ禍の影響が3月頃から出始め、緊急事態宣言が発出された4月−5月には企業活動も大きく停滞し、ビジネスユースのアクセスが多い「Response」のPV数が落ち込んだことが影響した。また、広告単価も旅行・レジャー関連など一部の業界で出稿意欲が大きく冷え込んだことにより下落し、この影響でネット広告売上高は前期比0.9%減の1,773百万円にとどまった。第4四半期だけで見ると前年同期比27.4%の減少となっている。ただ、緊急事態宣言が解除された5月下旬以降はPV数や広告単価なども徐々に上向き始めている。
ネット広告と逆の動きを見せたのがデータ・コンテンツ提供売上高(EC物販含む)で、第4四半期に入って子会社(エンファクトリー、絵本ナビ、ネットショップ総研)で手掛けているEC物販が急成長したことにより、前期比6.0%増の1,952百万円となった。第4四半期だけで見ると前年同期比27.8%増となり、コロナ禍が生んだ状況が追い風となった。
出版ビジネスについては、2020年2月にアニメディア関連事業を学研プラスから取得したことにより、前期比60.6%増の395百万円となった。アニメディア関連事業で2億円弱の上乗せ要因になったと見られる。一方、メディア・システム売上高は、オウンドメディア構築支援の一部連結子会社を売却した影響で、前期比35.0%減の350百万円となった。
営業利益の増減要因を見ると、売上増で36百万円、広告宣伝費の削減で48百万円の増益要因となった一方、アニメディア関連事業の取得やEC物販が拡大したことで、外注費及び商品原価が85百万円増加し、また、M&Aに伴うのれん償却増を含めてその他費用が37百万円増加したことが減益要因となった。
(2) CMS事業
CMS事業の売上高は前期比4.8%増の833百万円、営業利益は同615.8%増の49百万円と2期ぶりの増収増益に転じた。リサーチソリューション売上高は自動車業界の顧客を中心に受注が低迷し、前期比5.1%減の600百万円と減少基調が続いたものの、ECソリューションが大型案件の受注により同33.5%増の266百万円と伸長したことにより、増収増益となった。ECソリューションの大型案件についてはASPサービスのため、2021年6月期以降も継続して売上に寄与する見込みとなっている。
2. 財務状況と経営指標
2020年6月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比733百万円増加の3,978百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が488百万円増加したほか、売上債権が124百万円増加した。固定資産では、のれんが123百万円増加の264百万円となっている。
負債合計は前期末比123百万円増加の1,009百万円となった。返品調整引当金が41百万円、有利子負債が25百万円それぞれ増加した。また、純資産は前期末比609百万円増加の2,969百万円となった。自己株式を処分したことにより456百万円増加したほか、利益剰余金が103百万円増加した。
経営指標を見ると自己資本比率は72.8%と高水準を維持しており、有利子負債も少なく財務内容は健全な状態にあると判断される。同社では引き続き手元資金によりM&Aを推進していく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年6月期の業績概要
イード<6038>の2020年6月期の連結業績は、売上高で前期比1.4%増の5,266百万円、営業利益で同1.5%増の315百万円、経常利益で同11.5%減の277百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同46.4%減の104百万円となった。コロナ禍の影響により、第4四半期にネット広告収入が急減するなど一部で逆風を受けたものの、EC物販やECソリューションが好調に推移したほか、2020年2月に事業取得したアニメディア関連事業の売上が貢献したことなどから、売上高は過去最高を更新した。営業利益については、CMP事業が減益となったものの、ECソリューションの好調によるCMS事業の増益でカバーし、全体では増益を確保した。同社ではメディア運営について従来から広告収入に依存しない360度ビジネスモデルの構築に注力してきたが、今回はこうした取り組みが奏功した格好となった。
経常利益については営業外で持分法投資損失31百万円を計上したことで減益となり、また、親会社株主に帰属する当期純利益については特別損失として減損損失74百万円、投資有価証券評価損10百万円を計上したことにより減益率が大きくなっている。持分法投資損失については、2020年6月期より新たに持分法適用関連会社となったSODA(株)の出資分を保守的に見直し減損処理したもので一過性の損失となる。また、特別損失の減損損失は2021年6月期以降もコロナ禍の影響が一定期間続くという仮定のもと、CMP事業における固定資産(のれん)の一部について減損処理を行ったものだ。
(1) CMP事業
CMP事業の売上高は前期比0.8%増の4,433百万円と3期連続増収となったものの、営業利益は同12.6%減の265百万円と3期ぶりの減益に転じた。また、営業利益率も同0.9ポイント低下の6.0%となった。
2020年6月期は、事業譲受により不動産投資に関するメディア「ワンルームオーナー.com」やグルメ情報サイト「めしレポ」、アニメ専門誌「アニメディア」等の発行及びWebメディアなど新たに5つのメディアを追加したほか、事業開発により動物のリアルを伝えるWebメディア「REANIMAL」や教職員及び教育関連企業をターゲットとした教育関連情報サイト「リシード(ReseEd)」、ダイエット関連のSNSアプリ「myRule(マイルール)」など新たに6つのWebメディアを立ち上げ、運営Webサイト数では前期末比6サイト増加の65サイトとなった。また、2020年6月末に自動車愛好家向けコミュニティサイト「CARTUNE」を運営するマイケルの全株式をメルカリ<4385>から取得し、子会社化している。「CARTUNE」は月間300万人超のUU数を誇るサイトで、自動車領域では国内最大級の情報サイト「Response」を運営する同社にとっては、さらにユーザー基盤を強化した格好となっている。
運営Webサイト全体の月平均UU数は運営サイト数の増加により、前期比14.9%増の52百万UUと拡大したものの、月平均PV数は前期比6.2%減の169百万PVと3期ぶりに減少に転じた。特にコロナ禍の影響が3月頃から出始め、緊急事態宣言が発出された4月−5月には企業活動も大きく停滞し、ビジネスユースのアクセスが多い「Response」のPV数が落ち込んだことが影響した。また、広告単価も旅行・レジャー関連など一部の業界で出稿意欲が大きく冷え込んだことにより下落し、この影響でネット広告売上高は前期比0.9%減の1,773百万円にとどまった。第4四半期だけで見ると前年同期比27.4%の減少となっている。ただ、緊急事態宣言が解除された5月下旬以降はPV数や広告単価なども徐々に上向き始めている。
ネット広告と逆の動きを見せたのがデータ・コンテンツ提供売上高(EC物販含む)で、第4四半期に入って子会社(エンファクトリー、絵本ナビ、ネットショップ総研)で手掛けているEC物販が急成長したことにより、前期比6.0%増の1,952百万円となった。第4四半期だけで見ると前年同期比27.8%増となり、コロナ禍が生んだ状況が追い風となった。
出版ビジネスについては、2020年2月にアニメディア関連事業を学研プラスから取得したことにより、前期比60.6%増の395百万円となった。アニメディア関連事業で2億円弱の上乗せ要因になったと見られる。一方、メディア・システム売上高は、オウンドメディア構築支援の一部連結子会社を売却した影響で、前期比35.0%減の350百万円となった。
営業利益の増減要因を見ると、売上増で36百万円、広告宣伝費の削減で48百万円の増益要因となった一方、アニメディア関連事業の取得やEC物販が拡大したことで、外注費及び商品原価が85百万円増加し、また、M&Aに伴うのれん償却増を含めてその他費用が37百万円増加したことが減益要因となった。
(2) CMS事業
CMS事業の売上高は前期比4.8%増の833百万円、営業利益は同615.8%増の49百万円と2期ぶりの増収増益に転じた。リサーチソリューション売上高は自動車業界の顧客を中心に受注が低迷し、前期比5.1%減の600百万円と減少基調が続いたものの、ECソリューションが大型案件の受注により同33.5%増の266百万円と伸長したことにより、増収増益となった。ECソリューションの大型案件についてはASPサービスのため、2021年6月期以降も継続して売上に寄与する見込みとなっている。
2. 財務状況と経営指標
2020年6月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比733百万円増加の3,978百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が488百万円増加したほか、売上債権が124百万円増加した。固定資産では、のれんが123百万円増加の264百万円となっている。
負債合計は前期末比123百万円増加の1,009百万円となった。返品調整引当金が41百万円、有利子負債が25百万円それぞれ増加した。また、純資産は前期末比609百万円増加の2,969百万円となった。自己株式を処分したことにより456百万円増加したほか、利益剰余金が103百万円増加した。
経営指標を見ると自己資本比率は72.8%と高水準を維持しており、有利子負債も少なく財務内容は健全な状態にあると判断される。同社では引き続き手元資金によりM&Aを推進していく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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