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ハウスドゥ Research Memo(4):高齢社会の問題に対するソリューションビジネスを積極推進(1)

注目トピックス 日本株
■ハウスドゥ<3457>の事業概要

(2) 高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービス
高齢者は「住宅」という資産を所有しているものの、収入と支出が低水準にとどまっている。高齢者の持家率は60代が93.3%、70代以上も94.8%と極めて高い。一方で、公的年金以外に老後資金として2,000万円が必要との試算が出ているが、高齢者の平均貯蓄額は2,284万円だが、中央値が1,515万円であることから、60%以上は貯蓄が2,000万円未満となる。同社は、不動産ストックの流動化により資産を資金化することで資金を市場に還流させ、経済活性化の一翼を担うことを目的として、高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービスを提供している。高齢者は、自宅に住みながら老後の生活資金を得ることができるため、資金面で老後のQOLを向上させることができる。

相続でもめる遺産規模の割合は、1,000万円以上5,000万円未満の43.0%と1,000万円未満の31.9%を合わせて4分の3を占め、資産規模が小さい方が圧倒的に多い。主な遺産が自宅である場合、分割が困難な不動産を複数人が相続することになるため、トラブルの原因となりやすい。何らかの方法で資産を資金化してあれば、相続争いを緩和しやすくなる。

同社は、高齢社会の問題に対するソリューションビジネスを積極的に展開している。2013年10月より、自宅を売却した後も住み続けられる「ハウス・リースバック※」サービスを他社に先駆けて開始した。2016年7月より、一時的な資金ニーズはあるものの自宅を売却するほどの金額を必要としない人向けに「不動産担保ローン」を、2017年10月より、地域の金融機関と提携して自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ保証事業」をスタートさせた。これらの幅広い商品ラインナップにより、多様な顧客ニーズに応える。

※「ハウス・リースバック」の商標登録を2015年7月に取得した。


a) ハウス・リースバック事業
「ハウス・リースバック」は、同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶスキームである。持ち主は自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられる。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は地域密着型の店舗網を展開しており、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを有していることから、ハウス・リースバックに必要な機能をすべて自社の経営リソースでカバーできることが強みとなる。

ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが発生し、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度のキャピタルゲインが発生する。

ハウス・リースバック事業は、ストック型収益ビジネスであるため先行投資負担が重く、資金が固定化される。投資資金を借入金に依存すると、事業の急成長の持続と財務の安全性維持がトレードオフの関係になってしまう。このため、ストック型という性格は薄れるものの、財務体質の安全性を維持しながら事業規模も追うことを可能にするため、2018年6月期からハウス・リースバック保有資産の本格的なオフバランス化を始めた。売却売上高は、再売買、処分売買、買取会社、ファンドへの売却を含めると、2018年6月期に前期比2.5倍の4,235百万円、2019年6月期に同3.0倍の12,622百万円に拡大した。なお、2020年6月期は同10.3%増の13,919百万円(750件)と成長率が鈍化した。これは、保有資産の売却が進んだものの、新型コロナウイルス感染症拡大のため顧客との面談を中止するなど仕入に影響が出たことによる。また、2020年6月期末の保有総額は、前期末比35.8%減の3,410百万円、件数では同30.9%減の217件に減少している。

b) 不動産担保ローン
不動産担保ローンのスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であり、不動産価格の査定に関しては質量ともに他社を凌駕する。査定のスピードも速い。不動産担保ローン潜在需要は大きく、不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大している。今後は、財務体質の安全性維持のためオフバランス化を検討する。

c) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月払う。元本は生存中は返す義務がなく、死亡後、担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として1981年に導入されたものの、資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格普及に至っていない。同商品は、不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるが、同社子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を企図している。同子会社は、契約時に事務手数料・調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルとランニングの両方で収益機会がある。

リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培ったノウハウを生かせる。金融機関は、不動産売買を本業としていないため、物件処分がネックとなる。一方、同社は不動産売買におけるノウハウを持っていることに加え、全国650店舗を超える加盟店チェーンを擁しているため、市場取引価格に基づいた査定が可能である。通常、不動産売買で債権処理が発生した場合、不動産販売などに20〜25%の中間マージンが発生するが、同社グループにとっては直接販売となるため、これが不要となる。

リバースモーゲージ保証事業では、安全性を考慮しても不動産評価額を金融機関自身が行うよりも融資枠も大きく提供することができる。リバースモーゲージの利用客は、同子会社がリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。なお、保証業務には物件購入などの資金が不要のため、ハウス・リースバック事業の次の柱と位置付けている。

同社グループは地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と提携して、サービスエリアを広げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始した。同信用金庫が提供するリバースモーゲージ「悠々自適」の担保評価と保証を行う。金融機関の提携先は、2018年に大阪商工信用金庫(大阪市中央区)、飯能信用金庫(埼玉県飯能市)、知多信用金庫(愛知県半田市)、大光銀行<8537>(新潟県長岡市)、2019年には(株)神奈川銀行(神奈川県横浜市)、足立成和信用金庫(東京都足立区)、尾西信用金庫(愛知県一宮市)、愛媛銀行<8541>(愛媛県松山市)、(株)東京スター銀行(東京都港区)と拡大し、サービスエリアが広がった。2020年1月の浜松磐田信用金庫(静岡県浜松市)、同年3月のさわやか信用金庫(東京都大田区)、同年7月の東栄信用金庫(東京都葛飾区)を加えると、計13行となる。現在も折衝中であり、契約締結となれば順次発表されることになるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)




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