はてな Research Memo(7):新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、2021年7月期業績計画は保守的に策定
[20/10/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2021年7月期業績見通し
はてな<3930>の2020年7月期の業績は、売上高で前期比4.5%増の2,657百万円、営業利益で同93.6%減の17百万円、経常利益で同93.6%減の17百万円、当期純利益で同93.6%減の12百万円と増収減益の見通しとなっている。新型コロナウイルス感染症が今後の経済活動や事業環境に与える影響については、依然不透明な状況が継続しているとの認識であり、特に、景気変動の影響を受けやすい広告市場については、厳しい市場環境が続くことを前提としている。一方で、中期的な成長に向けた人材投資やインフラ投資などは継続していく計画となっており、事業費用の増加が減益要因となる。ただ、事業費用については毎年保守的に見積もる傾向にあり、2021年7月期についてもある程度の余裕を持たせた計画になっていると見られる。このため、売上高が仮に計画から若干程度下振れたとしても、利益計画は達成可能と弊社では見ている。
(1) 部門別売上見通し
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比2.4%減の509百万円と連続減収を見込んでいる。「はてなブログ」等のUGCサービスの登録ユーザー数やユニークブラウザ数については拡大する見通しだが、広告単価については2020年9月時点でもまだ弱含みの状況が続いていることから、前下期並みの売上水準が2021年7月期も続くことを前提とした計画となっている。
ただ、2020年9月より新たに提供を開始した法人向け有料課金サービス「はてなブログBusiness」については、計画に殆ど織り込んでおらず、契約件数の状況次第では上乗せ要因となる。同サービスは、「はてなブログMedia」を活用した本格的なオウンドメディアよりも手軽に情報発信を行いたいスタートアップ企業やスモールビジネスを展開する企業のニーズに対応したサービスとなり、機能を絞って「はてなブログMedia」よりもリーズナブルな価格(月額2,388円相当※)で提供する。今後も有料課金サービスについては、個人・法人向け問わず機能の拡充を図りながら、契約件数を積み上げていく方針だ。
※2020年10月27日までのキャンペーン価格。以降は月額2,988円相当。
コンテンツメディアサービスの売上高は前期比8.6%減の740百万円を見込む。「はてなブログMedia」運用数は前期末比16件増の120件を目指す。新型コロナウイルス感染症の影響によってリード顧客獲得のためのセミナーや訪問営業が制限されるなか、オンラインセミナーをフル活用して顧客の開拓を進めていく。メディア当たり平均売上高については、2020年7月に対して回復を見込んでいるものの、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準まで戻るのは、早くても2021年7月期下期以降になると見ており、結果、売上高については減収が続く見通しとなっている。同社では記事制作や記事拡散を図るための広告支援などのコンサルティングを強化することで、メディア当たり売上高の早期回復に取り組んでいく方針だ。
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比16.0%増の1,406百万円と2ケタ成長が続く見通し。SaaS型サービスである「Mackerel」や「GigaViewer」の契約件数拡大、並びに既存顧客の売上深耕に取り組むことで高成長を目指す。
「Mackerel」については、リアルのセミナーや展示会が開催できないほか、訪問営業活動が制限されるなか、オンラインセミナーやデジタルマーケティングを活用することで新規顧客の獲得を推進していく。2021年7月期末の顧客件数は前期末比18.5%増と前期並みの成長を目指す。2020年9月には新たにGoogle CloudTMと連携し、新機能「Google Cloud インテグレーション」のサービス提供を開始した。Google Cloudは、Googleが企業向けに提供するクラウドソリューションで、同ソリューションを利用する企業に対して「Mackerel」の導入拡大が期待される。「AWS」「Microsoft Azure」など主要クラウドプラットフォームとも連携しており、複数のクラウドプラットフォームを利用する企業にとってはサーバー監視業務の負担軽減効果が見込まれるため、顧客数の拡大だけでなく、監視対象サーバー数の増加による顧客当たり売上単価の上昇も期待できることになる。
「GigaViewer」については、引き続き導入件数の増加が見込まれる。マンガビューワについては主戦場となるスマートフォンアプリ版は競争が激しいものの、Web版については「GigaViewer」の利便性や広告運用も含めたソリューションが顧客から高く評価されており、年々導入数が増えている。雑誌社側から見れば、スマートフォンアプリはプラットフォーマー(AppleやGoogle)に支払う手数料も高いため、Web版で広告運用も含めて収益化を図りたいというニーズが強く、こうしたニーズを取り込んでいることが背景にある。また、最近ではスマートフォンアプリのリニューアルにあたって、Web版を開発した同社に相談が舞い込むケースも出てきており、今後も安定成長が期待できるサービスとして注目される。そのほか、新規の受託開発案件も受注しているようで、2021年7月期の売上に貢献する見通しだ。
(2) 事業費用
2021年7月期の事業費用は合計で前期比16.5%増の2,639百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同14.6%増の1,405百万円、DC利用料で同16.8%増の555百万円、その他費用で同20.2%増の679百万円となる。
人件費については、エンジニアを中心に前期末比20名の増員(期末従業員数は180名)を計画していることが増加要因となっている。2022年7月期以降の高成長を実現していくための体制整備を図っていく予定だ。ただ、今後の市場環境次第では採用数についてもフレキシブルに対応していく意向のようだ。
DC利用料については、既存サービスの成長に連動した費用増に加えて、前期に引き続きサービスの品質向上・維持のための費用増も織り込んでいることが増加要因となっている。運営メディアの安全性を担保するためのツールの導入費用、「Mackerel」や「はてなブログMedia」などのサービス品質向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化を予定しており、それに伴って利用料金も増加する。売上比率で見ると20.9%と前期の18.7%からさらに上昇する見込みとなっている。ただ、前期も会社計画では19.4%と高めの設定にしていることから、2021年7月期も保守的な計画になっているものと弊社では見ている。同様にその他費用についても前期比20.2%増と増加率が大きくなっているが、特別な支出の予定はなく、計画は上限値と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>
1. 2021年7月期業績見通し
はてな<3930>の2020年7月期の業績は、売上高で前期比4.5%増の2,657百万円、営業利益で同93.6%減の17百万円、経常利益で同93.6%減の17百万円、当期純利益で同93.6%減の12百万円と増収減益の見通しとなっている。新型コロナウイルス感染症が今後の経済活動や事業環境に与える影響については、依然不透明な状況が継続しているとの認識であり、特に、景気変動の影響を受けやすい広告市場については、厳しい市場環境が続くことを前提としている。一方で、中期的な成長に向けた人材投資やインフラ投資などは継続していく計画となっており、事業費用の増加が減益要因となる。ただ、事業費用については毎年保守的に見積もる傾向にあり、2021年7月期についてもある程度の余裕を持たせた計画になっていると見られる。このため、売上高が仮に計画から若干程度下振れたとしても、利益計画は達成可能と弊社では見ている。
(1) 部門別売上見通し
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比2.4%減の509百万円と連続減収を見込んでいる。「はてなブログ」等のUGCサービスの登録ユーザー数やユニークブラウザ数については拡大する見通しだが、広告単価については2020年9月時点でもまだ弱含みの状況が続いていることから、前下期並みの売上水準が2021年7月期も続くことを前提とした計画となっている。
ただ、2020年9月より新たに提供を開始した法人向け有料課金サービス「はてなブログBusiness」については、計画に殆ど織り込んでおらず、契約件数の状況次第では上乗せ要因となる。同サービスは、「はてなブログMedia」を活用した本格的なオウンドメディアよりも手軽に情報発信を行いたいスタートアップ企業やスモールビジネスを展開する企業のニーズに対応したサービスとなり、機能を絞って「はてなブログMedia」よりもリーズナブルな価格(月額2,388円相当※)で提供する。今後も有料課金サービスについては、個人・法人向け問わず機能の拡充を図りながら、契約件数を積み上げていく方針だ。
※2020年10月27日までのキャンペーン価格。以降は月額2,988円相当。
コンテンツメディアサービスの売上高は前期比8.6%減の740百万円を見込む。「はてなブログMedia」運用数は前期末比16件増の120件を目指す。新型コロナウイルス感染症の影響によってリード顧客獲得のためのセミナーや訪問営業が制限されるなか、オンラインセミナーをフル活用して顧客の開拓を進めていく。メディア当たり平均売上高については、2020年7月に対して回復を見込んでいるものの、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準まで戻るのは、早くても2021年7月期下期以降になると見ており、結果、売上高については減収が続く見通しとなっている。同社では記事制作や記事拡散を図るための広告支援などのコンサルティングを強化することで、メディア当たり売上高の早期回復に取り組んでいく方針だ。
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比16.0%増の1,406百万円と2ケタ成長が続く見通し。SaaS型サービスである「Mackerel」や「GigaViewer」の契約件数拡大、並びに既存顧客の売上深耕に取り組むことで高成長を目指す。
「Mackerel」については、リアルのセミナーや展示会が開催できないほか、訪問営業活動が制限されるなか、オンラインセミナーやデジタルマーケティングを活用することで新規顧客の獲得を推進していく。2021年7月期末の顧客件数は前期末比18.5%増と前期並みの成長を目指す。2020年9月には新たにGoogle CloudTMと連携し、新機能「Google Cloud インテグレーション」のサービス提供を開始した。Google Cloudは、Googleが企業向けに提供するクラウドソリューションで、同ソリューションを利用する企業に対して「Mackerel」の導入拡大が期待される。「AWS」「Microsoft Azure」など主要クラウドプラットフォームとも連携しており、複数のクラウドプラットフォームを利用する企業にとってはサーバー監視業務の負担軽減効果が見込まれるため、顧客数の拡大だけでなく、監視対象サーバー数の増加による顧客当たり売上単価の上昇も期待できることになる。
「GigaViewer」については、引き続き導入件数の増加が見込まれる。マンガビューワについては主戦場となるスマートフォンアプリ版は競争が激しいものの、Web版については「GigaViewer」の利便性や広告運用も含めたソリューションが顧客から高く評価されており、年々導入数が増えている。雑誌社側から見れば、スマートフォンアプリはプラットフォーマー(AppleやGoogle)に支払う手数料も高いため、Web版で広告運用も含めて収益化を図りたいというニーズが強く、こうしたニーズを取り込んでいることが背景にある。また、最近ではスマートフォンアプリのリニューアルにあたって、Web版を開発した同社に相談が舞い込むケースも出てきており、今後も安定成長が期待できるサービスとして注目される。そのほか、新規の受託開発案件も受注しているようで、2021年7月期の売上に貢献する見通しだ。
(2) 事業費用
2021年7月期の事業費用は合計で前期比16.5%増の2,639百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同14.6%増の1,405百万円、DC利用料で同16.8%増の555百万円、その他費用で同20.2%増の679百万円となる。
人件費については、エンジニアを中心に前期末比20名の増員(期末従業員数は180名)を計画していることが増加要因となっている。2022年7月期以降の高成長を実現していくための体制整備を図っていく予定だ。ただ、今後の市場環境次第では採用数についてもフレキシブルに対応していく意向のようだ。
DC利用料については、既存サービスの成長に連動した費用増に加えて、前期に引き続きサービスの品質向上・維持のための費用増も織り込んでいることが増加要因となっている。運営メディアの安全性を担保するためのツールの導入費用、「Mackerel」や「はてなブログMedia」などのサービス品質向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化を予定しており、それに伴って利用料金も増加する。売上比率で見ると20.9%と前期の18.7%からさらに上昇する見込みとなっている。ただ、前期も会社計画では19.4%と高めの設定にしていることから、2021年7月期も保守的な計画になっているものと弊社では見ている。同様にその他費用についても前期比20.2%増と増加率が大きくなっているが、特別な支出の予定はなく、計画は上限値と考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>