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イグニス Research Memo(2):『with』を主力にVRとエンターテインメント分野のサービスも本格始動(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

イグニス<3689>は、スマートフォン向けアプリの企画・運営・販売等を主力としている。事業環境の変化や事業規模の変化に迅速かつ適切に対応するため、経営管理手法を見直し、報告セグメントを、「スマートフォンアプリ事業」の単一セグメントから、「マッチング事業」「エンターテック事業」「ゲーム事業」の3区分に変更した。「ゲーム事業」は主力タイトル譲渡とともに新規開発も当面凍結としており、足元では「マッチング事業」が業績の伸びをけん引している。

1. 各事業の概要
(1) マッチング事業
恋愛・婚活マッチングサービス『with』(基本、男性のみ月額課金収入モデル)を中心に展開している。2016年3月にWeb版、iOS版をリリース※1して以来、類似サービスの中では後発参入であるものの、順調に事業を伸ばしてきた。2020年6月末時点で登録会員数は320万人を超え、収益ベースでは業界2番手グループ※2の地位を確保しており、国内iOSのSNSの売上ランキングでも上位に位置している。メンタリストDaiGo(ダイゴ)氏※3監修の下、最適なマッチングを実現する独自の心理学及び統計学的アプローチが差別化要因となっていることに加えて、積極的な広告宣伝によるユーザー獲得が奏功している。

※1 Android版は2016年5月にリリース。
※2 Facebook認証型のオンライン恋愛・婚活マッチングサービス上位には、「Pairs」「Omiai」「ゼクシィ縁結び」などが存在する。
※3 メンタリスト、作家。著書は累計150万部突破、企業の顧問や経営戦略パートナー、講演など、様々な分野で活動。


(2) エンターテック事業
「音楽体験の、次のあたりまえを創る」ことを目的に、バーチャルライブアプリ『INSPIX LIVE』(プラットフォーム)の開発・運営※1のほか、所属タレント『VOYZ BOY』及び『学芸大青春(ガクゲイダイジュネス)』※2等のIP展開(発掘・育成・プロデュース)を手掛けている。同事業では、コンテンツ(IP)とシステム(VRの音楽ライブプラットフォーム)双方を保有する垂直統合型の運営により、バーチャルライブの普及を推進する戦略である。

※1 子会社パルスが展開。
※2 芸能プロダクションの運営を行う子会社VOYZ ENTERTAINMENTが展開。


2019年8月にリリースした『INSPIX LIVE』は、VR・AR動画の生配信が可能であり、スマートフォンとスマートフォン向けVRゴーグルを組み合わせることで新たな音楽ライブを体験できるものである。特に、スマートフォン対応(どこからでも手軽に参加)、ライブ感あふれるリアルタイム性、圧倒的な同時接続上限数(現時点で53万人超)に特徴があるほか、優れた人財やIP保有企業とのコネクションにも独自性が発揮されている。2020年9月26日と27日には、『INSPIX LIVE』によるVRライブ「初音ミク GALAXY LIVE 2020」※1を開催。約1.4万人を動員し、大盛況のうちに幕を閉じるなど、今後に向けて大きな成果を残すことができた。さらには、より理想的な顧客体験を実現するため、VRソーシャル機能※2を追加したライブ特化型仮想空間SNS『INSPIX WORLD』への大型アップデートにも取り組んでおり、8組のパートナー参画が決定しているほか、複数の他社IPの誘致も順調に進んでいるようだ。

※1 『初音ミク』とは、クリプトン・フューチャー・メディア(株)が開発した、歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「ソフトウェア」のことである。大勢のクリエーターが『初音ミク』で音楽を作り、インターネット上に投稿したことで一躍ムーブメントとなった。キャラクターとしても注目を集め、今ではバ−チャル・シンガーとしてグッズ展開やライブを行うなど多方面で活躍するようになり、人気は世界に拡がっている。
※2 アバター機能やフレンド機能、特設ワールドなど。


一方、IPの展開については、VRアイドル「えのぐ」※が、バーチャルライブプラットフォームの技術を活用して積極的な活動を行っている。また、子会社(芸能プロダクション)に所属する三次元のボーイズグループ『VOYZ BOY』と、「二次元と三次元を行き来する」5人組ボーイズグループ『学芸大青春』などが活動している。

※業務提携先である(株)岩本町芸能社(VRタレントのマネジメントを専門とする世界初の芸能事務所)に所属するVRアイドルグループである。


(3) ゲーム事業
スマートフォン向けゲームアプリやブラウザゲームの企画・開発・運営を行っている。特に、2015年2月にリリースした『ぼくとドラゴン』(アイテム課金収入モデル)が、累計380万ダウンロード数を突破するなど、ロングセラーゲームとして同社の業績を支えてきた。ただ、「ゲーム事業」については、事業の選択と集中の観点から、新規開発を凍結するとともに、2020年3月2日付で『ぼくとドラゴン』と『猫とドラゴン』の2タイトルを(株)ドリコムに譲渡している。

(4) その他
報告セグメントに含まれない、求人サービス及び転職エージェントサービス、医療機関向けSaaS、VR医療等により構成されている。求人サービス及び転職エージェントサービスは、子会社のグラム(株)により、性格傾向データを活用した求人サービス『jobgram』と転職エージェントサービス『jobgramエージェント』を展開。また、医療機関向けSaaSでは、オンライン診療を目的とした医療機関向けのソフトウェアの企画・開発・運営を行っており、『FOREST』※というソフトウェアを医療機関向けに提供している。VR医療では順天堂大学との間で共同研究を行い、VRを用いた慢性疼痛の緩和システム『うららかVR』のサービス開始に向け研究開発を行っている。

※規制緩和が進められている領域であり、オンライン診療により、病院に行かなくても診察を受けたり、処方された薬を自宅で受け取ったりできるなど、将来を見据えた事業として開発を進めている。これまでのオンライン診療では、初診は必ず来院する必要があったが、2020年4月からは時限的措置として初診からオンライン診療が可能となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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