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グリムス Research Memo(6):小売電気事業を原動力に成長を続ける一方、新たな成長戦略にも着手

注目トピックス 日本株
■グリムス<3150>の今後の見通し

2. 事業別の戦略
セグメント別には、エネルギーコストソリューション事業では、低圧・高圧電力需要家向けに運用・設備・調達改善のトータルソリューションを提供する。具体的には、運用改善ではエネルギーマネジメントシステムや電子ブレーカーの販売を、設備改善ではLED照明、コンプレッサー、トランス、業務用エアコン、冷凍機、各種省エネ設備の販売を、調達改善では電力取次を行っている。電力基本料金削減コンサルティングやLED照明等の省エネ設備の販売により新規顧客を開拓し、顧客基盤を拡大することにより、リプレイス販売や電力取次手数料、電子ブレーカーのレンタル収入といったストック収益の拡大、業務用エアコンやトランス、コンプレッサーなどの各種省エネ設備のクロスセルにつなげている。

同事業では、電力コスト削減に対する底堅い需要があることから、2021年3月期も引き続き設備改善商材である各種省エネ設備の販売を推進するとともに、運用改善商材の電子ブレーカーの販売を拡大する。また、新規商材として事業者向けに太陽光発電設備の販売を開始する。商品・サービス別では、運用改善商材による新規開拓とクロスセルの販売強化に注力する計画である。以上から、同事業の売上高4,657百万円(前期比4.7%増)、営業利益1,486百万円(同42.6%増)を予想する。コスト削減商品に対するニーズは景気動向にかかわらず大きく、顧客と個別にアポイントをとり訪問する営業形態ということもあり、同事業における新型コロナウイルス感染症拡大の影響は軽微と見ている。第1四半期は売上高1,455百万円(前年同期比20.3%増)、営業利益519百万円(同75.6%増)と、計画どおり順調に推移している。

小売電気事業は、同社が卸電力取引所や一般電気事業者から調達した電気を割安な価格で顧客に販売し、顧客から受け取る電気料金が収益源となる事業である。同事業では、エネルギーコストソリューション事業で構築した負荷率(最大契約電力に対する平均使用電力の比率)の低い低圧電力需要家の顧客基盤を活用して、割安な電気の販売を推進することで収益(ストック収益)を拡大し、今後のグループ全体の成長の原動力とする計画である。

同社グループでは、電力コスト削減のコンサルティングにより、実際に電力コストの削減を体感している顧客を対象とするため非常に成約率が高い。また、負荷率が低い事業者を対象とすることで、他の小売電気事業者に対し収益性の面で差別化を図っている。さらに、低圧から高圧まですべての電力需要家に対して電力小売を拡大することで、収益機会の拡大を計画している。

小売電気事業では、電子ブレーカーを中心とした現在の顧客基盤およそ49,500件へのクロスセルを行っており、これが他社との差別化につながっている。工場などでは機械で使う電力と電灯では電圧が異なるため、顧客数の2倍である99,000契約口がターゲットである。同社グループでは、他の電力会社から同社への乗り換え率は73%に達する一方、月平均解約率は0.4%の低水準にとどまっている。また、負荷率が低い需要家が多い(2020年3月期実績で9.3%)という顧客基盤が、夏場などの季節要因による電力の市場調達価格高騰時にも採算確保につながり、高い収益性の維持を可能にしている。

同事業では、2021年3月期は契約口数40,000口(前期比17.2%増)、売上高8,523百万円(同19.8%増)、営業利益1,219百万円(同10.5%減)を予想する。前期に増益要因となった長梅雨や暖冬の影響を除き、平年並みの気候条件を前提に利益を予想していることから、減益予想としている。ただ、第1四半期実績は売上高1,897百万円(前年同期比31.9%増)、営業利益546百万円(同61.0%増)と好調で、営業利益は計画を大きく上回って推移している。また、電気については景気の動向にかかわらず需要があることなどから新型コロナウイルス感染症拡大の影響は軽微と見ており、2021年3月期も想定より梅雨が長かったことで、同事業の業績上振れの余地が大きいと見られる。

スマートハウスプロジェクト事業では、住宅用太陽光発電システムと蓄電池のセット販売や蓄電池の単体販売を推進するとともに、各種取引先を通じた業務提携によるエネルギー関連商品の提携販売を推進していく。また、2021年以降、バーチャルパワープラント(VPP)ビジネスが本格化し、蓄電池の利用が拡大する見通しである。同社では、テレマーケティング・提携販売・VPPの活用を推進し、蓄電池の販売を強化する計画だ。

太陽光発電をめぐる市場環境として、固定価格(余剰電力)買取制度(FIT制度)等の適用が終わる卒FIT案件が2019年度で約50万件発生するなど、今後はFITの期間満了案件が増加することが見込まれる。そのため、ユーザーは太陽光発電により発電した電力をこれまでのような高い価格で売電できなくなり、自家消費のメリットが高まることから、蓄電池の需要が増加する見通しだ。そして、ユーザーは自らの電力需要の形態に応じて自家消費と売電の最適な組み合わせを行うことで、最大のメリットを享受できることになる。同社では、VPP実証事業への参画を通じて蓄電池販売を拡大するとともに、今後はユーザーからの余剰電力の買取という新たなビジネスチャンスに結び付けたい考えである。

2021年3月期に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言により大型商業施設が臨時休業し、6月までは催事回数が減少したものの、7月以降に徐々に回復し、第3四半期中より通常に戻ることを想定して、売上高3,672百万円(前期比6.4%減)、営業利益281百万円(同21.8%減)と減収減益を見込んでいる。ただ、第1四半期実績は売上高873百万円(前年同期比3.4%減)、営業利益118百万円(同47.8%増)と増益であり、営業利益については計画を6.8%上回って推移している。

3. 新たな成長戦略
同社連結子会社のグリムスソーラーは、2020年5月29日、経済産業省が実施する「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」への参画を発表した。この事業では、需要側に分散する太陽光発電や蓄電池等のエネルギーリソースをまとめて制御することにより、あたかも1つの発電所のように利用する仕組み(バーチャルパワープラント)を構築し、発送電分離後及び再生可能エネルギーの大量導入時代における、電力需給に関する供給力・調整力として実用化を目指している。

同社としては、蓄電池マネジメント技術基盤の獲得と実制御データの収集が実証実験参画の目的であるが、実験の成果を今後の蓄電池販売強化(フロー収益の拡大)、蓄電池マネジメントサービス及び余剰買取(新たなストック収益の創出)など、新たなビジネスチャンスに結び付けたい考えである。同社は2018年度から本実証実験に参画してきたが、2020年度が実証実験の最終年度となる。同社では、本実証事業の成果を活用して、FIT 買取期間が満了した家庭の太陽光発電システムから余剰電力を買い取るサービスや太陽光発電システムの自家消費提案などを開始しており、2021 年4月の需給調整市場開設(再生可能エネルギーの、エリアを超えた広域調達と広域運用を認めるために創設される市場)に向けて市場参入を検討している。

同社グループでは、エネルギーコストソリューション事業とスマートハウスプロジェクト事業で安定収益を確保し、小売電気事業の業績を伸ばすことで、今後も増収増益を続ける計画である。同社では例年、中期経営計画の見直しを行い、新中期経営計画を発表してきたが、2021年3月期は感染症拡大に伴う先行き不透明感もあって、未発表である。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社の投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社では考える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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