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ドラフト Research Memo(5):経営理念「ALL HAPPY BY DESIGN」によるCSR

注目トピックス 日本株
■事業概要

3. 日本の課題とドラフト<5070>のCSR
「デザインを通して、社会の課題を解決する」を標榜する同社は、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)の追求において、同社らしくデザインによる社会的課題の解決を図る「Design Social Responsibility:DSR」を志向している。経営理念として「ALL HAPPY BY DESIGN」を掲げ、デザインの力で世の中をもっと面白くて豊かにすることを事業運営のモチベーションの源泉とする。

(1) 幸福度
現在の日本社会の抱える課題の1つとして、国民の幸福度が低いことが挙げられる。国連が発行した2020年版「世界幸福度報告書」(World Happiness Report 2020)によると、日本の幸福度ランキングは62位と前年から4位後退した。6つの説明変数の回帰分析で寄与度を分析しているが、日本は主観満足度が非常に低い。また、ユニセフ(国連児童基金)が行った2020年版「先進国の子ども幸福度ランキング」では、日本は総合で20位であった。順位を3分野で見ると、身体的健康が1位であったものの、精神的幸福度が37位(下から2番目)、スキルが27位であった。精神的幸福度は、生活満足度が高い15歳の割合と15〜19歳の自殺率で測られる。スキルでは、数学・読解力分野の学力の順位が5位であったが、社会的スキルが37位と両極端な結果となった。

空間の目的によってデザインのコンセプトが異なるものの、同社のデザインの特徴は「その空間にいる人が幸せになる」「居心地のいい空間とする」ことを大切にしてことである。オフィス空間、商業施設、環境設計・都市開発において、同社がデザイン・設計などを介して人々を「HAPPY」にする社会的意義は大きい。

(2) 労働生産性
働き方改革では、長時間労働の是正が法制化された。長時間労働はストレスや健康被害を生むうえ、女性の社会進出や活躍を阻み、ワークライフバランスを損なうことから、少子化の元凶と見なされている。世界経済フォーラムが公表する男女平等の度合いを表す「ジェンダー・ギャップ指数」では、2020年の日本のランキングが153ヶ国中121位となり過去最低を更新した。働き方改革の次の改善目標は、労働生産性の向上になる。OECDのデータによると、2018年の日本の時間当たり労働生産性は、36ヶ国中21位であった。就業1時間当たり付加価値は、46.8ドル(購買力平価換算)と米国の6割相当にとどまる。同社は、オフィスにおけるより生産性の高い働き方を実現するABWを取り入れている。ABWを提唱するVeldhoen + Companyがあるオランダの労働生産性は、72.4ドルの9位であった。オランダの前出の世界幸福度ランキングは6位、子ども幸福度ランキングが1位である。

(3) 国際競争力とデジタル競争力
日本の国際競争力は、凋落の一途をたどっている。かつて日本は、1980年代後半から強靭な国際競争力を示してきたが、1990年前半で失速し、まさに、失われた30年である。労働生産性の向上と国際競争力の強化に、各国がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。デジタル競争力においても、日本は、ビッグデータの活用や企業の機敏な対応が最下位レベルである。日本政府は、新型コロナウイルス感染者数の集計の際にFAXを使い、人海戦術で乗り切ろうとして集計ミスを発生させ、アナログ的行政が批判を浴びた。2019年 3月末時点で、55,000以上ある国の行政手続きのうちオンラインで完結できるものはわずか7.5%だった。省庁別オンライン完結率は、最も高い財務省でも24.1%、国土交通省はわずか2.8%であった。2020年9月に発足した新政権は、「デジタル庁」を新設して政府のIT化を急速に進める取り組みをする。同社は、アナログ的な建設業界において先進的なデジタルテクノロジーの活用に取り組んでいる。

(4) 社員の熱意度(エンゲージメント)
2017年に米国の民間企業が行った社員のエンゲージメントの調査で、日本は最下位レベルであると報告された。周囲に不満をまき散らしている無気力社員が多いことが問題であるうえ、多くの社員が自分の仕事や職場に誇りや愛着、使命感を持たず、受け身で日々仕事をしていることが推測される。社員のエンゲージメントは、福利厚生や給料に対する満足度などよりも、企業の生産性、収益性などのパフォーマンスに強く相関している。同社が取り入れている設計思想と居心地の良いデザインは、生産性向上や職場に愛着と誇りが持て、社員のエンゲージメントを上げることが期待される。

(5) 人的資本の重要性
経済産業省は、近々、経営戦略と人材戦略に関する有識者会議の報告書を公表する。同報告書は、多くの企業で人材戦略と経営戦略が連動できていないことから、人材を人的資本と捉える必要性を指摘する。人材戦略の具体策として、1)経営戦略上どんな人材が必要か分析する、2)多様な個人の経験や専門性を活用する、3)個人の学び直しを支援する、4)従業員がやる気や働きがいを感じる環境をつくる、5)働き方を多様化する、などを挙げている。同社は、4番目の「従業員がやる気や働きがいを感じる環境を創造する」ことに貢献できるだろう。1坪に何人収容できるかといった効率至上主義に対し、同社は人的資本の生産性を高める提案をしてきた。今般の有識者会議は、2014年に同省から出された「伊藤レポート」と同様に、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄(いとうくにお)氏が座長を務めている。前回の「伊藤レポート」は、自己資本利益率(ROE)の重要性と企業の目標とすべき水準などに言及し、企業経営と金融市場にインパクトを与えた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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