エーバランス Research Memo(6):2020年6月期業績は、主力のグリーンエネルギー事業がけん引
[20/10/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年6月期の業績概要
Abalance<3856>の2020年6月期の連結業績は、売上高で前期比11.6%増の6,678百万円、営業利益で同40.5%減の361百万円、経常利益で同46.0%減の305百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同33.1%減の211百万円と増収減益となった。売上高はグリーンエネルギー事業が2ケタ増収となり、全体をけん引した。利益面では、発電所の自社保有化を進めるため発電所の販売を抑えているほか、IT事業や建機販売事業でコロナ禍の影響等が減益要因となった。また、会社計画比では、売上高は9割強、各段階利益は7〜8割強の達成率となった。
各セグメントの状況は、以下の通りである。
(1) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業の売上高は前期比20.7%増の6,248百万円、セグメント利益は同12.3%減の817百万円となった。売上高は分譲販売や物販(太陽光パネル・関連商材)、自社保有発電所の売電収入などにより2ケタ増収となった。一方、同社は将来の売電収入確保のため発電所の自社保有化を推進しており、当初販売予定であった案件も含めて自社保有対象にするなど、戦略的に販売を抑えた経緯がありセグメント利益の減益要因となった。その分、将来の売電収入を確保する機会を蓄積したことになり、計画的な自社保有化を進めているものと言える。こうした取り組みは発電所の自社保有によって売電収入を継続的に収受するストック型ビジネスへの構造転換であり、前向きに評価される。2020年6月期はすでに系統連系が完了し売電を開始した高梁第一太陽光発電所、勝間太陽光発電所、宮之浦太陽光発電所等から売電収入を収受しているが、建設中の発電所が順次完成する予定であるため、中長期的に見て売電収入の逓増が期待される。
具体的には、同社グループで最大規模となる宮城県角田市太陽光発電所については、2021年3月の売電開始を目標に工事が順調に進んでいる(初年度売電収入見込み額(暦年):約750百万円)ほか、福島大波太陽光発電所の整備を目的として、取引先金融機関から総額14億円の融資枠が組成されたことを受け、2021年6月の売電開始を目標に工事に着手した(初年度売電収入見込み額(暦年):約218百万円)。そのほか、2020年10月以降に売電開始を予定している花畑太陽光発電所(初年度売電収入見込み額(暦年):約161百万円)など、計画的な自社保有化を進めている。そのほか、手元に数十メガワットの高FIT案件を順次開発していく予定である。
太陽光発電の事業は、不動産賃貸業と異なり、オフィスビルに見られるような空室リスクがない。また、発電量は過去のトラックレコードから合理的に推定が可能である。売電収入は中長期の安定収益源であるため、将来の増益が期待される。また、同社では風力発電所も採算制を勘案しつつ自社保有対象に含める意向で、更なる増益要因となる。
そのほか、O&M事業も売電収入と合わせて同社の安定収入源となっている。落雷対策で効果のあるアース配線の対策や、施設内カメラの設置によるセキュリティ対策、RPAシステムを通じた異常探知等の仕組みが評価されている。
海外事業においては、ベトナム、台湾、カンボジア等、東南アジア諸国の旺盛な電力需要に対してグリーンエネルギーを供給するため、現地企業との合弁等により事業参画するほか、環境省が実施した2019年度「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」の案件公募に代表事業者として応募し採択されている。カンボジアにおける太陽光発電(1MW)とバイオマス発電(0.5MW)を併設したハイブリッド発電設備の整備プロジェクトで、同社では今後本事業を推進していく計画となっている。
(2) 建機販売事業
建機販売事業の売上高は前期比56.7%減の257百万円、セグメント損失は49百万円(前期は2百万円の利益)となった。2020年初め以降のコロナ禍で海外渡航制限などがあり、海外ODA事業等に遅れが生じたことなどが影響したもようである。なお、東日本大震災の福島第一原発事故の発生時において、無償供与したSANY製大型ポンプ車(通称:大キリン)の交換部品を寄付している。事故発生当時に使われたポンプ車は複数台あるが、今でも現役で稼働しているのは大キリンのみということで、SANY製の品質・耐久性の高さが実証されている。
(3) IT事業
IT事業の売上高は前期比66.0%減の58百万円、セグメント損失は40百万円(前期は62百万円の利益)。2019年10月に会社分割によりAbitを設立した際に要した初期費用や広告宣伝費などが増加したほか、2020年6月期下期に見込んでいた一部案件がコロナ禍の影響で2021年6月期にずれ込んだことも影響した。
(4) その他(セグメント外)
光触媒製品の開発・製造販売事業等に基づく売上高は112百万円、セグメント損失は6百万円となった。2019年6月期第3四半期から連結に加わったため、通年での比較はできないが、四半期ベースで見ると2020年6月期第4四半期に売上高で45百万円、セグメント利益で8百万円を計上している。これは新型コロナウィルス対策として、「サガンコート」や「blocKIN」の売上が伸長したことなどが要因と見られる。「サガンコート」の施工実績としては、ホテルや医療・介護施設・保育園・学校など幅広い分野で利用されており、2020年6月からは販路拡大による事業拡大を目的に、「光触媒LIFE」事業として、FCや販売代理店の募集を開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年6月期の業績概要
Abalance<3856>の2020年6月期の連結業績は、売上高で前期比11.6%増の6,678百万円、営業利益で同40.5%減の361百万円、経常利益で同46.0%減の305百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同33.1%減の211百万円と増収減益となった。売上高はグリーンエネルギー事業が2ケタ増収となり、全体をけん引した。利益面では、発電所の自社保有化を進めるため発電所の販売を抑えているほか、IT事業や建機販売事業でコロナ禍の影響等が減益要因となった。また、会社計画比では、売上高は9割強、各段階利益は7〜8割強の達成率となった。
各セグメントの状況は、以下の通りである。
(1) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業の売上高は前期比20.7%増の6,248百万円、セグメント利益は同12.3%減の817百万円となった。売上高は分譲販売や物販(太陽光パネル・関連商材)、自社保有発電所の売電収入などにより2ケタ増収となった。一方、同社は将来の売電収入確保のため発電所の自社保有化を推進しており、当初販売予定であった案件も含めて自社保有対象にするなど、戦略的に販売を抑えた経緯がありセグメント利益の減益要因となった。その分、将来の売電収入を確保する機会を蓄積したことになり、計画的な自社保有化を進めているものと言える。こうした取り組みは発電所の自社保有によって売電収入を継続的に収受するストック型ビジネスへの構造転換であり、前向きに評価される。2020年6月期はすでに系統連系が完了し売電を開始した高梁第一太陽光発電所、勝間太陽光発電所、宮之浦太陽光発電所等から売電収入を収受しているが、建設中の発電所が順次完成する予定であるため、中長期的に見て売電収入の逓増が期待される。
具体的には、同社グループで最大規模となる宮城県角田市太陽光発電所については、2021年3月の売電開始を目標に工事が順調に進んでいる(初年度売電収入見込み額(暦年):約750百万円)ほか、福島大波太陽光発電所の整備を目的として、取引先金融機関から総額14億円の融資枠が組成されたことを受け、2021年6月の売電開始を目標に工事に着手した(初年度売電収入見込み額(暦年):約218百万円)。そのほか、2020年10月以降に売電開始を予定している花畑太陽光発電所(初年度売電収入見込み額(暦年):約161百万円)など、計画的な自社保有化を進めている。そのほか、手元に数十メガワットの高FIT案件を順次開発していく予定である。
太陽光発電の事業は、不動産賃貸業と異なり、オフィスビルに見られるような空室リスクがない。また、発電量は過去のトラックレコードから合理的に推定が可能である。売電収入は中長期の安定収益源であるため、将来の増益が期待される。また、同社では風力発電所も採算制を勘案しつつ自社保有対象に含める意向で、更なる増益要因となる。
そのほか、O&M事業も売電収入と合わせて同社の安定収入源となっている。落雷対策で効果のあるアース配線の対策や、施設内カメラの設置によるセキュリティ対策、RPAシステムを通じた異常探知等の仕組みが評価されている。
海外事業においては、ベトナム、台湾、カンボジア等、東南アジア諸国の旺盛な電力需要に対してグリーンエネルギーを供給するため、現地企業との合弁等により事業参画するほか、環境省が実施した2019年度「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」の案件公募に代表事業者として応募し採択されている。カンボジアにおける太陽光発電(1MW)とバイオマス発電(0.5MW)を併設したハイブリッド発電設備の整備プロジェクトで、同社では今後本事業を推進していく計画となっている。
(2) 建機販売事業
建機販売事業の売上高は前期比56.7%減の257百万円、セグメント損失は49百万円(前期は2百万円の利益)となった。2020年初め以降のコロナ禍で海外渡航制限などがあり、海外ODA事業等に遅れが生じたことなどが影響したもようである。なお、東日本大震災の福島第一原発事故の発生時において、無償供与したSANY製大型ポンプ車(通称:大キリン)の交換部品を寄付している。事故発生当時に使われたポンプ車は複数台あるが、今でも現役で稼働しているのは大キリンのみということで、SANY製の品質・耐久性の高さが実証されている。
(3) IT事業
IT事業の売上高は前期比66.0%減の58百万円、セグメント損失は40百万円(前期は62百万円の利益)。2019年10月に会社分割によりAbitを設立した際に要した初期費用や広告宣伝費などが増加したほか、2020年6月期下期に見込んでいた一部案件がコロナ禍の影響で2021年6月期にずれ込んだことも影響した。
(4) その他(セグメント外)
光触媒製品の開発・製造販売事業等に基づく売上高は112百万円、セグメント損失は6百万円となった。2019年6月期第3四半期から連結に加わったため、通年での比較はできないが、四半期ベースで見ると2020年6月期第4四半期に売上高で45百万円、セグメント利益で8百万円を計上している。これは新型コロナウィルス対策として、「サガンコート」や「blocKIN」の売上が伸長したことなどが要因と見られる。「サガンコート」の施工実績としては、ホテルや医療・介護施設・保育園・学校など幅広い分野で利用されており、2020年6月からは販路拡大による事業拡大を目的に、「光触媒LIFE」事業として、FCや販売代理店の募集を開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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