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SI Research Memo(2):「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

システムインテグレータ<3826>は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)での提供も行っている。新製品に関しては基本的にクラウドサービスでの事業展開を志向している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」のほか、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」等がある。事業セグメントに関しては、Object Browser事業、E-Commerce事業、ERP・AI事業のほか、新規事業をその他として区分開示している。

直近3年間の事業セグメント別構成比の推移を見ると、売上高はERP・AI事業が全体の6割以上を占めており、残りをObject Browser事業、E-Commerce事業で2分する格好となっているが、営業利益で見るとObject Browser事業が全体の5割前後を占め、残りをE-Commerce事業やERP・AI事業で稼ぎ出す格好となっている。また、新規事業については先行投資段階のため、損失計上が続いている。Object Browser事業のセグメント利益率は40%以上と高く同社の稼ぎ頭となっているが、これは競合先がほとんどなく市場シェアが高位安定していることが要因となっている。逆に、ERP・AI事業のセグメント利益率は数%台と低いが、これはAI事業の先行投資費用が含まれていることや、ERP事業ではサーバー等の仕入商品も売上高に含まれていることが要因となっている。各事業の内容は以下のとおり。

1. Object Browser事業
Object Browser事業ではデータベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」、アプリケーション設計支援ツール「SI Object Browser Designer(以下、OBDZ)」等のソフトウェア製品の開発販売を行っている。「Object Browser」シリーズについてはパッケージ販売のみだが、「OBPM」や「OBDZ」についてはクラウドサービスでも提供している。

売上構成比は「Object Browser」シリーズが4割強、「OBPM」が6割弱となっており、「OBPM」の比率が年々上昇傾向にある。「Object Browser」シリーズについては1997年の発売以来、1.9万社、43万ライセンスの導入実績があり、国内ではデファクトスタンダードとなっている。現在は売上高の30%弱が保守サポート等のストック型収入となっており、比較的売上高は安定しており、販売費用もほとんどかからないため、売上総利益率は約90%と高収益製品となっている。競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があることから直接的な影響は受けていない。

一方、「OBPM」は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算等の管理)することで、不採算プロジェクトの発生を未然に抑止し、開発部門の生産性向上を支援するツールである。国内で唯一、PMBOK※に準拠しており、2008年の発売以降、順調に導入社数を増やしており、2020年8月時点で200社超となっている。導入企業は中堅規模のIT企業が多い。大手企業は自社開発品を使用し、中小企業ではExcelなど市販ソフトや無料ソフトを使って管理するケースが大半のためだ。ただ、認知度の向上や品質の高さなどから大企業でも導入を検討するところが増えてきている。このため、2017年2月期より大手企業の部門導入向けに機能を限定したライト版の販売を開始したほか、製造業向けに対応したエンジニアリング版などもクラウドサービスで提供している。

※ PMBOK(Project Management Body of Knowledge):プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。1987年に米国の非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。


「OBPM」の売上高の70%超は、月額課金や保守サービス等のストック型収入で占められている。2021年2月期以降クラウドシフトを進めているため(2022年2月期以降はクラウドサービスに完全移行)、パッケージ販売の減少による一時的な売上高の伸び悩みが見込まれている。「OBPM」も競合品がほとんどないため、売上総利益率は70%前後と高いが、広告費や導入サポート費用等がかかるため、「Object Browser」シリーズと比較すると営業利益率はやや低くなる。

「OBDZ」はソフトウェア開発の上流工程である基本設計・詳細設計をシステム化し、合理化・標準化することで設計工程における生産性及び品質向上を支援するツールで、ソフトウェア開発分野におけるCADとも言える製品である(特許取得済み)。従来は、エンジニアがExcelやWordで個々に設計書を作成していたため、仕様変更が発生した場合などのメンテナンス、変更管理が難しく、手戻りミスによる開発遅延の原因にもなっていたが、「OBDZ」で設計書を統合管理することでこうした課題を解決する。このため用途としては、基幹業務システム等の大規模なウォーターフォール型※のシステム開発に向いている製品と言える。2013年のリリース以降、機能改良を重ね、2019年6月には完全Web化のフルモデルチェンジを行い、パフォーマンス速度も従来比1.5倍と大幅に向上した製品をリリースしている。導入社数は70社程度とまだ少ないものの、中小から大手IT企業まで導入が着実に進んでいる。

※ ウォーターフォール型とは、システム開発を「基本計画」「外部設計」「内部設計」「プログラム設計」「プログラミング」「テスト」という工程に分けて順に段階を経て行う開発手法を指す。前の工程には戻らない前提のため、下流から上流へは戻らない水の流れに例えてウォーターフォールと呼ばれている。

その他、AI技術を活用した新サービスとして2018年3月に「AISI∀-DR(Design Recognition)」をリリースしている。これは、ディープラーニング技術を使ってシステム画面から設計書をリバース生成するツールである。現在、稼働している業務システムの改修を行う際に、元の設計書がなくなっているケースがある。こうした場合、一から設計書を作り直す必要があるが、「AISI∀-DR」を使うことでシステム画面から個々の部品をAIで認識して、ある程度のところまで設計書をリバースすることが可能となる。「OBDZ」とセットで活用することが効果的と考えており、まずは、完全Web版の「OBDZ」の販売を100社程度まで拡大し、その後に販売先に「AISI∀-DR」を提案していく戦略となっている。

2. E-Commerce事業
E-Commerce事業では、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として販売している。「SI Web Shopping」の特徴は、大規模ECサイトに強いということにある。具体的には、売上金額が数百億円規模となる大量のトランザクション処理に対応可能なスケーラビリティと、高いセキュリティ機能を有しており、スマートフォン等のモバイル対応機能や、英語、中国語など多言語への対応、その他顧客ニーズに応じた機能をカスタマイズで付加することも可能となっている。1996年の発売以降累計で1,100社以上のECサイトを構築しており(アクティブ稼働数は1割弱)、豊富な開発ノウハウや高い技術力が同社の強みとなっている。

ECサイト構築パッケージ業界でのポジションは、大規模事業者向けに限定すれば同社と、ソフトクリエイトホールディングス<3371>の子会社である(株)ecbeing(構築実績で1,300社超)、(株)コマース21(同300社超)の3社でほぼ寡占状態となっていたが、ここ最近はSIerとの競合も増えてきている。ECサイト構築パッケージに他の業務システムとの連携機能を付加するといったニーズが増えてきたためだ。こうしたことを背景に、1件当たりの受注単価も従来は数千万円規模だったものが、ここ最近は1〜2億円と大型化している。ストック型売上比率は22.2%(2021年2月期第2四半期累計実績)となっており、開発プロジェクトの増減や生産性によって期間収益も変動する傾向にある。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




<NB>

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