TKP Research Memo(3):市場創造型の事業展開により高い成長性を実現(1)
[20/11/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要等
1. 空間シェアリングによる市場創造型の事業展開
ティーケーピー<3479>による「貸会議室ビジネス」は、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行うとともに、ケータリングや宿泊、各種オプションなど周辺サービスを付加する。顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。したがって、同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいると言える。最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、同社仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
また、日本リージャス社を子会社化したことにより、これまでの会議室利用に加えて、短中期のオフィス利用(レンタルオフィスやコワーキングスペース)へとサービス領域を拡充した。多様なスペースの活用が可能となったことにより、広範な顧客ニーズを取り込むとともに、成長が期待できるフレキシブルオフィス市場での事業基盤を一気に確立することができた。
さらに「持たざる経営」にも特徴がある。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注目したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保するとともに、いつでも流動化できるような準備をしている)。
2. 収益モデルの特徴(貸会議室とレンタルオフィスの違い)
TKP本体の「貸会議室ビジネス」は、時間貸しによるフロー型の収益モデルである。また、単にスペースをサブリースするだけでなく、ケータリングや宿泊、各種オプションなどの周辺サービスを付加することで売上高の拡大を図ってきた。特に季節要因により第2四半期から第3四半期においては、会議室料以外の売上比率が高くなる傾向があり、同事業は稼働率ではなく「坪あたり売上高」をKPI(重要業績評価指標)としている。オープンより平均3ヶ月で損益分岐点に到達し、12ヶ月で巡航速度に乗ることから、比較的早期に収益化が可能な収益モデルと言える。
一方、リージャスによる「レンタルオフィスビジネス」は、中長期にわたり安定収益が期待できるストック型の収益モデルである。したがって、高稼働率を維持していくことが重要となる。TKP本体の貸会議室ビジネスと比較して初期費用※が大きいことから、オープンから平均8〜12ヶ月で損益分岐点(稼働率45%)に到達し、約18ヶ月で巡航速度(稼働率65%)に乗る。比較的収益化までの期間が長いが、高稼働を維持している限り長期にわたって高い収益性が期待できる。
※契約からオープンまでの工事期間は平均3〜4ヶ月に及び、その間の工事費や賃料等が初期費用となる。
TKP本体の貸会議室ビジネスにおけるKPIが「坪あたり売上高」であるのに対し、リージャスのレンタルオフィスビジネスにおけるKPIは「稼働率」であり、国内の大部分を占めるオープン後2年以上の拠点はコロナ禍においても80%程度の高稼働を維持している。
コロナ禍におけるサテライトオフィスの需要拡大を見据え、当面の新規出店はリージャス中心、またはTKP本体との共同出店とする方針であるが、共同出店時には、オペレーションコストを共通化することでそれぞれ単独では出店できないエリアや規模の施設への出店が可能となる。また、その一部を最初はTKP本体の貸会議室として出店することで拠点黒字化を早めるなど、2種類の収益モデルを補完的に組み合わせた独自の収益マネジメントにも取り組んでおり、リージャスによる安定的な収益の積み上げとTKP本体による機動的な収益の上乗せによる収益構造は、安定性と爆発力を兼ね備えた特長を有していると言える。
3. 拠点ネットワーク
TKP本体は国内の主要都市を中心に244拠点・2,087室の法人向け貸会議室を展開している(2021年2月期上期末時点)。そのうち、海外には、ニューヨーク、ニュージャージー等に5施設・29室を有する。利用目的や規模、予算などに合わせた5つのグレードに分かれており、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室で構成される。GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはリノベーションが中心である。GCPは新築・築浅ビル中心の最高クラスのオフィス宴会場施設で、GCは同社における高品質のホテル宴会場もしくはオフィス宴会場施設となっている。2021年2月期上期末時点で、GCPが28施設(315室)、GCが55施設(551室)、スタンダード会議室のCCが施設数・室数で最大となる74施設(815室)を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で41施設に270室あり、スター貸会議室は小規模会議室で34施設に75室ある。また、レクトーレや石のや等の宿泊施設内には12施設(61室)を有している。同社は幅広いニーズに対応した多様な施設を展開し、料飲やオプション、さらには宿泊といった次項で記す周辺サービスの利用を組み合わせることで顧客単価及びリピート率の向上を実現している。
一方、日本リージャス社については、TKP本体との連携により出店ペースが加速している。2021年2月期上期はサテライトオフィスの需要拡大を見据え、積極的な出店を継続し、8施設・2,319坪の新規出店を行った。2020年8月末時点で、国内に164施設・24,524WS(ワークステーション:リージャス施設内の席数)のレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開している。メインブランドの「Regus」(ハイグレードなレンタルオフィス)の112施設を中心に、「SPACES」(Regusの大規模施設・ハイグレードな大型レンタルオフィス)を5施設展開、また「Openoffice」(リーズナブルな無人レンタルオフィス)として47施設を有している。台湾リージャス社については、台湾にて13施設・2,319WSのレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 空間シェアリングによる市場創造型の事業展開
ティーケーピー<3479>による「貸会議室ビジネス」は、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行うとともに、ケータリングや宿泊、各種オプションなど周辺サービスを付加する。顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。したがって、同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいると言える。最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、同社仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
また、日本リージャス社を子会社化したことにより、これまでの会議室利用に加えて、短中期のオフィス利用(レンタルオフィスやコワーキングスペース)へとサービス領域を拡充した。多様なスペースの活用が可能となったことにより、広範な顧客ニーズを取り込むとともに、成長が期待できるフレキシブルオフィス市場での事業基盤を一気に確立することができた。
さらに「持たざる経営」にも特徴がある。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注目したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保するとともに、いつでも流動化できるような準備をしている)。
2. 収益モデルの特徴(貸会議室とレンタルオフィスの違い)
TKP本体の「貸会議室ビジネス」は、時間貸しによるフロー型の収益モデルである。また、単にスペースをサブリースするだけでなく、ケータリングや宿泊、各種オプションなどの周辺サービスを付加することで売上高の拡大を図ってきた。特に季節要因により第2四半期から第3四半期においては、会議室料以外の売上比率が高くなる傾向があり、同事業は稼働率ではなく「坪あたり売上高」をKPI(重要業績評価指標)としている。オープンより平均3ヶ月で損益分岐点に到達し、12ヶ月で巡航速度に乗ることから、比較的早期に収益化が可能な収益モデルと言える。
一方、リージャスによる「レンタルオフィスビジネス」は、中長期にわたり安定収益が期待できるストック型の収益モデルである。したがって、高稼働率を維持していくことが重要となる。TKP本体の貸会議室ビジネスと比較して初期費用※が大きいことから、オープンから平均8〜12ヶ月で損益分岐点(稼働率45%)に到達し、約18ヶ月で巡航速度(稼働率65%)に乗る。比較的収益化までの期間が長いが、高稼働を維持している限り長期にわたって高い収益性が期待できる。
※契約からオープンまでの工事期間は平均3〜4ヶ月に及び、その間の工事費や賃料等が初期費用となる。
TKP本体の貸会議室ビジネスにおけるKPIが「坪あたり売上高」であるのに対し、リージャスのレンタルオフィスビジネスにおけるKPIは「稼働率」であり、国内の大部分を占めるオープン後2年以上の拠点はコロナ禍においても80%程度の高稼働を維持している。
コロナ禍におけるサテライトオフィスの需要拡大を見据え、当面の新規出店はリージャス中心、またはTKP本体との共同出店とする方針であるが、共同出店時には、オペレーションコストを共通化することでそれぞれ単独では出店できないエリアや規模の施設への出店が可能となる。また、その一部を最初はTKP本体の貸会議室として出店することで拠点黒字化を早めるなど、2種類の収益モデルを補完的に組み合わせた独自の収益マネジメントにも取り組んでおり、リージャスによる安定的な収益の積み上げとTKP本体による機動的な収益の上乗せによる収益構造は、安定性と爆発力を兼ね備えた特長を有していると言える。
3. 拠点ネットワーク
TKP本体は国内の主要都市を中心に244拠点・2,087室の法人向け貸会議室を展開している(2021年2月期上期末時点)。そのうち、海外には、ニューヨーク、ニュージャージー等に5施設・29室を有する。利用目的や規模、予算などに合わせた5つのグレードに分かれており、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室で構成される。GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはリノベーションが中心である。GCPは新築・築浅ビル中心の最高クラスのオフィス宴会場施設で、GCは同社における高品質のホテル宴会場もしくはオフィス宴会場施設となっている。2021年2月期上期末時点で、GCPが28施設(315室)、GCが55施設(551室)、スタンダード会議室のCCが施設数・室数で最大となる74施設(815室)を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で41施設に270室あり、スター貸会議室は小規模会議室で34施設に75室ある。また、レクトーレや石のや等の宿泊施設内には12施設(61室)を有している。同社は幅広いニーズに対応した多様な施設を展開し、料飲やオプション、さらには宿泊といった次項で記す周辺サービスの利用を組み合わせることで顧客単価及びリピート率の向上を実現している。
一方、日本リージャス社については、TKP本体との連携により出店ペースが加速している。2021年2月期上期はサテライトオフィスの需要拡大を見据え、積極的な出店を継続し、8施設・2,319坪の新規出店を行った。2020年8月末時点で、国内に164施設・24,524WS(ワークステーション:リージャス施設内の席数)のレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開している。メインブランドの「Regus」(ハイグレードなレンタルオフィス)の112施設を中心に、「SPACES」(Regusの大規模施設・ハイグレードな大型レンタルオフィス)を5施設展開、また「Openoffice」(リーズナブルな無人レンタルオフィス)として47施設を有している。台湾リージャス社については、台湾にて13施設・2,319WSのレンタルオフィス・コワーキングスペースを展開している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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