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エルテス Research Memo(4):デジタルリスクへの脅威が高まるにつれて、顧客数の拡大が売上高の伸びをけん引

注目トピックス 日本株
■エルテス<3967>の決算動向

1. 過去の業績推移
2015年2月期からの業績を振り返ると、顧客数の拡大等により順調に業績を伸ばしてきた。特に最近では、積み上げ型の「リスクモニタリングサービス」の伸びが業績の底上げに貢献しており、安定した売上成長を続けている。経常利益も株式上場を見据えた2015年2月期に一時的な損失を計上したものの、その後は順調に回復し、経常利益率は先行投資や上場関連費用等をこなしながら13%前後の水準にまで上昇した。連結決算に移行した2018年2月期以降は、将来の事業拡大に向けた先行投資の影響により利益水準は2期連続で低調に推移してきたが、2020年2月期は事業拡大と新サービスの一部収益化により大幅な営業増益を実現した。

財務面でも、自己資本比率は2015年10月の産業革新機構(現産業革新投資機構)等からの出資(534百万円)や2016年11月の株式上場に伴う新株発行(調達資金299百万円)等により80%を超える水準で推移するとともに、「現金及び預金」残高も1,083百万円と高い水準にある(2021年2月期上期末現在)。同社は、強固な財務基盤と潤沢な手元流動性を生かした戦略投資やM&Aも視野に入れているもようであり、今後の動向に注意が必要である。


2021年2月期上期はコロナ禍の影響等により減収減益(損失計上)。新たな需要や将来に向けた先行投資にも取り組む

2. 2021年2月期上期決算の概要
2021年2月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比4.2%減の902百万円、営業損失が148百万円、経常損失が157百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失が189百万円とコロナ禍の影響等を受けて減収減益となり、各段階損益で損失を計上した。一方、修正予想(2020年7月14日公表)※に対しては、売上高は計画線で推移したものの、損益面では将来に向けた先行投資により計画を下回る進捗となっている。

※同社では、コロナ禍の影響(顧客数・契約数の減少)のほか、コロナ禍関連を含む、新たな需要へ対応するための新サービス立ち上げ(費用)等を勘案し、7月14日付で期初予想を減額修正している。


売上高は、コロナ禍に伴う緊急事態宣言や外出自粛等による経済活動縮小の影響を受けて減収となった。特に、「デジタルリスク事業」において、主力の「リスクモニタリングサービス」及び「リスクコンサルティングサービス」が契約の不更新※1や新規営業の停滞により、顧客数・契約数が減少した。もっとも、継続率維持の施策が奏功し、足元では減少傾向に歯止めが掛かっている。一方、「内部脅威検知サービス」については堅調に推移したほか、コロナ禍に関連した新たな事業機会※2も増えてきたようだ。また、「その他の事業」が増収となったのは、新規サービス※3の一部が収益化したものである。

※1 コロナ禍の影響を受けたクライアント(外食企業等)からの契約の不更新が発生。
※2 コロナ禍関連の炎上リスク、クラスター発生リスク、誹謗中傷問題への対策ニーズなど。
※3 AIセキュリティ事業における新サービスやデジタル相続プラットフォームの実証実験などにかかるもの。


損益面では、売上高の減少に加え、将来に向けた先行投資により減益となり、営業損失を計上した。なお、先行投資については、既述のとおりコロナ禍関連を含む、新たな事業機会に対応する新規事業の立ち上げや、マーケティング、人材採用※などにかかるものである。

※成長に向けた体制強化を目的として、大手コンサルティングファームやグローバルIT企業出身者などを含め、積極的な人材採用を進めている。


財務面では、自己資本は四半期純損失の計上により前期末比6.1%減の1,567百万円に縮小した一方、資産合計も「現金及び預金」の減少等により同10.5%減の1,846百万円に縮小したことから、自己資本比率は84.9%(前期末は80.6%)に向上した。また、流動比率も607.3%と高い水準を確保しており、財務の安全性に懸念はない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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