新晃工業 Research Memo(3):エネルギー効率に優れ、環境に優しいセントラル空調システム
[20/11/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. 事業領域と業界構造
(1) 同社の事業領域
新晃工業<6458>は空調機器の業界に属する。そして空調機器はまず家庭用と業務用に分類される。家庭用空調機器は部屋ごとに設置され冷媒ガスを介して空調するが、TVCMで見かける民生電機メーカー大手の製品が多い。業務用はさらに個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、空調を必要とする部屋(スペース)ごとに室外機・室内機を設置する方式で、フロンガスなどを冷媒として使用するが、設計・施工が容易で機械室を小さくできる。主に延床面積20,000m2以下の中小規模の建物で採用され、空調機器のシステムはルームエアコンやパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなど汎用品で構成される。建物を一体のシステムと捉えるセントラル空調は、熱源機器(一次側空調システム)と空調機器(二次側空調システム)を組み合わせ、集中して管理・コントロール(計装システム)する方式である。1ヶ所に集中して設置された熱源機器から冷温水(水)を循環させて空調するため中央式空調とも呼ばれ、延床面積20,000m2以上の大規模な建物に利用されることが多い。こうした業界で、同社はセントラル空調の二次側空調システムを主要な事業領域としている。
(2) セントラル空調の仕組みとメリット
セントラル空調は、一次側で熱を造り、二次側で熱を使うという仕組みになっている。具体的には、一次側で1)熱源機器で冷熱/温熱を生成、2)冷熱/温熱は水を媒体にポンプで搬送し空調に使用、冷熱生成時に発生した排熱は3)冷却塔から外気に放出、4)蓄熱槽に熱を蓄えて熱の生成と消費の時間をずらすこともできる。そして、二次側で5)配管を通って運ばれた冷水/温水を空調機器に供給、6)ファンで風を発生させて室内を空調する。ちなみに、一次側の機器はチラー・ターボ冷凍機・ボイラなど熱源機器、二次側はAHUやFCUなど空調機器、その他に冷却塔・ポンプなど熱源補器やダクト系、配管系で構成される。また、一次側、二次側の空調システムのほかに計装というシステムがあり、制御システムや各種コントローラなどにより空調システム全体を1ヶ所から監視・コントロールする。
セントラル空調のメリットはいくつもある。1)熱搬送にフロンガスなど冷媒ガスでなく「水」を使用しているため環境にやさしい、2)世界的に主流の空調方式である、3)冷媒ガスにはできない精密な温度・湿度制御、4)熱源をまとめて大型化するため高効率の運転が可能、5)オーダーメイド技術は必要だが設置・設計の自由度が高い、6)機器をまとめて設置するためメンテナンス性がよい、などである。このようにセントラル空調は、正しく設計・運用すればエネルギー効率に優れ、環境にも優しいシステムと言うことができる。このため病院や工場など高い空調品質を要求される施設で多数採用されている。
(3) セントラル空調の業界構造と業界環境
セントラル空調という視点から見た業界のプレーヤーは、施主、設計事務所、ゼネコン、サブコン、空調関連メーカー(一次側・二次側・計装)である。大きな建物を建築する際、建築される建物が様々であるのに対し、空調機器もそれにオーダーメイドで合わせなければならず、最初から設計に組み込まれる必要がある。このため、空調機器関連メーカーはゼネコンより早期に施主・設計事務所と直接的な関わりを持つ。しかし、発注の流れは施主→ゼネコン(建築会社)→サブコン(設備会社)→空調関連メーカーとなっていることから、商流上の契約先はサブコンという形になり、設計段階での関わりが機器採用に直結しないこともある。また、建設業界の需要変動の影響を受けやすい点、空調機器も建設業界同様に国内市場が成熟している点が悩ましい。そのような空調機器関連の市場で同社のライバルになるのが、クボタ空調(株)、ダイキン工業、木村工機<6231>、暖冷工業(株)などである。このような業界構造があるため、各社は各様の特徴を持って生き残ってきた。同社の特徴は後に詳述するが、空調機器関連企業の中でトップメーカーというポジションを誇る。
空調機器の業界環境は、東京オリ・パラを見据えた建設工事の活況から2019年までは好調であった。しかし、2020年に入ってピークを過ぎたところにコロナ禍が重なり、足元はやや軟調となっている。確かにコロナ禍が工期を遅らせ、設備投資意欲を萎えさせる可能性はある。しかし、首都圏を中心に多くの駅前再開発プロジェクトが計画され(一部既に進行)、大阪・関西万博や更新投資、メンテナンス投資も期待できる。大きく伸びる環境にはないが、大きく落ちる要素もない。このため一時的に環境が悪化したとしても、最悪期は長く続かないと考えられる。むしろ空調機器の業界の課題は、人手不足による作業量のボトルネックや少子高齢化によるノウハウの伝承にあると思われる。次項以降でそうした業界の中で、同社の事業内容と強みを具体的に見ていくことにする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
3. 事業領域と業界構造
(1) 同社の事業領域
新晃工業<6458>は空調機器の業界に属する。そして空調機器はまず家庭用と業務用に分類される。家庭用空調機器は部屋ごとに設置され冷媒ガスを介して空調するが、TVCMで見かける民生電機メーカー大手の製品が多い。業務用はさらに個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、空調を必要とする部屋(スペース)ごとに室外機・室内機を設置する方式で、フロンガスなどを冷媒として使用するが、設計・施工が容易で機械室を小さくできる。主に延床面積20,000m2以下の中小規模の建物で採用され、空調機器のシステムはルームエアコンやパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなど汎用品で構成される。建物を一体のシステムと捉えるセントラル空調は、熱源機器(一次側空調システム)と空調機器(二次側空調システム)を組み合わせ、集中して管理・コントロール(計装システム)する方式である。1ヶ所に集中して設置された熱源機器から冷温水(水)を循環させて空調するため中央式空調とも呼ばれ、延床面積20,000m2以上の大規模な建物に利用されることが多い。こうした業界で、同社はセントラル空調の二次側空調システムを主要な事業領域としている。
(2) セントラル空調の仕組みとメリット
セントラル空調は、一次側で熱を造り、二次側で熱を使うという仕組みになっている。具体的には、一次側で1)熱源機器で冷熱/温熱を生成、2)冷熱/温熱は水を媒体にポンプで搬送し空調に使用、冷熱生成時に発生した排熱は3)冷却塔から外気に放出、4)蓄熱槽に熱を蓄えて熱の生成と消費の時間をずらすこともできる。そして、二次側で5)配管を通って運ばれた冷水/温水を空調機器に供給、6)ファンで風を発生させて室内を空調する。ちなみに、一次側の機器はチラー・ターボ冷凍機・ボイラなど熱源機器、二次側はAHUやFCUなど空調機器、その他に冷却塔・ポンプなど熱源補器やダクト系、配管系で構成される。また、一次側、二次側の空調システムのほかに計装というシステムがあり、制御システムや各種コントローラなどにより空調システム全体を1ヶ所から監視・コントロールする。
セントラル空調のメリットはいくつもある。1)熱搬送にフロンガスなど冷媒ガスでなく「水」を使用しているため環境にやさしい、2)世界的に主流の空調方式である、3)冷媒ガスにはできない精密な温度・湿度制御、4)熱源をまとめて大型化するため高効率の運転が可能、5)オーダーメイド技術は必要だが設置・設計の自由度が高い、6)機器をまとめて設置するためメンテナンス性がよい、などである。このようにセントラル空調は、正しく設計・運用すればエネルギー効率に優れ、環境にも優しいシステムと言うことができる。このため病院や工場など高い空調品質を要求される施設で多数採用されている。
(3) セントラル空調の業界構造と業界環境
セントラル空調という視点から見た業界のプレーヤーは、施主、設計事務所、ゼネコン、サブコン、空調関連メーカー(一次側・二次側・計装)である。大きな建物を建築する際、建築される建物が様々であるのに対し、空調機器もそれにオーダーメイドで合わせなければならず、最初から設計に組み込まれる必要がある。このため、空調機器関連メーカーはゼネコンより早期に施主・設計事務所と直接的な関わりを持つ。しかし、発注の流れは施主→ゼネコン(建築会社)→サブコン(設備会社)→空調関連メーカーとなっていることから、商流上の契約先はサブコンという形になり、設計段階での関わりが機器採用に直結しないこともある。また、建設業界の需要変動の影響を受けやすい点、空調機器も建設業界同様に国内市場が成熟している点が悩ましい。そのような空調機器関連の市場で同社のライバルになるのが、クボタ空調(株)、ダイキン工業、木村工機<6231>、暖冷工業(株)などである。このような業界構造があるため、各社は各様の特徴を持って生き残ってきた。同社の特徴は後に詳述するが、空調機器関連企業の中でトップメーカーというポジションを誇る。
空調機器の業界環境は、東京オリ・パラを見据えた建設工事の活況から2019年までは好調であった。しかし、2020年に入ってピークを過ぎたところにコロナ禍が重なり、足元はやや軟調となっている。確かにコロナ禍が工期を遅らせ、設備投資意欲を萎えさせる可能性はある。しかし、首都圏を中心に多くの駅前再開発プロジェクトが計画され(一部既に進行)、大阪・関西万博や更新投資、メンテナンス投資も期待できる。大きく伸びる環境にはないが、大きく落ちる要素もない。このため一時的に環境が悪化したとしても、最悪期は長く続かないと考えられる。むしろ空調機器の業界の課題は、人手不足による作業量のボトルネックや少子高齢化によるノウハウの伝承にあると思われる。次項以降でそうした業界の中で、同社の事業内容と強みを具体的に見ていくことにする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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