霞ヶ関キャピタル Research Memo(4):2020年8月期は新規事業に向けた人材への先行投資を実施
[20/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年8月期業績概要
2020年8月期の日本経済は、雇用や所得環境の改善などにより穏やかな回復基調が続いていたが、コロナ禍対策に向けた経済活動の自粛等の影響により景気が急速に悪化したことに加え、未だに同感染症収束の見通しが立っていないことから先行き不透明な状況が続いている。霞ヶ関キャピタル<3498>の主たる事業領域である不動産市場においては、日本銀行や各国中央銀行による緊急金融緩和策により十分な資金供給がされているものの、金融機関及び投資家の慎重な姿勢が続いており、その動向は引き続き注視すべき状況にある。
このような状況のなか、同社は引き続き社会的潮流に着目した成長性及び社会的意義のある事業分野への投資及びコンサルティングに注力するとともに、投資機会の創出及び投資案件の収益最大化に努めた。その結果、2020年8月期の連結業績は、売上高8,008百万円(前期比49.6%増)、営業利益326百万円(同53.3%減)、経常利益180百万円(同71.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益134百万円(同69.1%減)となった。期初予想と比較すると売上高は3.1%、営業利益は78.1%下回る着地となったが、売上高については、コロナ禍に伴いアパートメントホテル開発事業で予定されていた案件が延期されたことによる。また、営業利益については、優秀な人材獲得への先行投資を実施したことで販売管理費が増大したことによる。しかし、コロナ禍収束後(ポストコロナ)の経済環境変化を見据えて新規事業への取り組み強化に努めた、前向きな決算であったと評価できよう。
セグメント別に見ると、不動産コンサルティング事業の売上高は6,311百万円(前期比44.0%増)、セグメント利益は1,055百万円(同13.3%増)となった。一方、自然エネルギー事業の売上高は1,697百万円(同75.1%増)、セグメント利益は347百万円(同9.7%減)となった。また、売上高営業利益率については、不動産コンサルティング事業で16.7%、自然エネルギー事業で20.5%と、引き続き高水準を維持している。
各セグメントにおけるコロナ禍の影響は以下のとおりである。不動産コンサルティング事業では直接的な影響は限定的であったものの、ホテル新規開発においては間接的な影響を受けた。具体的には、アパートメントホテル開発事業のうち、稼働中ホテルでは、同社が直接保有している物件はなく、運営コンサルティングとして関与しているためにコロナ禍の影響は限定的であった。建築中ホテルに関しても、現在開発中の案件については竣工が1〜2年以上先のため、現時点ではコロナ禍の影響は限定的であった。ただ、計画中ホテルでは、2020年8月期の開発コンサルティングとして予定されていた案件が2021年8月期以降に延期されるなどの影響を受けた。一方、保育園事業ではコロナ禍の影響は比較的軽微で、2020年4月に都内4ヶ所で認可保育園を開園し、スケジュール通りに竣工・売却している。また、その他の海外・ショッピングセンター等の事業でも、経済活動減速の影響を受けたものの収益全体に占めるインパクトは小さかった。なお、自然エネルギー事業ではコロナ禍の影響は比較的軽微であった。
高水準の自己資本比率を確保
2. 財務状況と経営指標
2020年8月期末における資産合計は、前期比1,496百万円増の8,440百万円となった。流動資産は、同1,330百万円増の7,125百万円であった。これは主に現金及び預金が1,606百万円増加したことによる。固定資産は、同166百万円増の1,312百万円となった。これは主に太陽光発電施設の保有目的を変更し、流動資産の開発事業等支出金へ振替えたことにより、有形固定資産が172百万円減少したものの、投資その他の資産が337百万円増加したことによる。
負債合計は、前期比820百万円減の4,567百万円となった。流動負債は同842百万円増の2,593百万円であった。これは主に未払金が387百万円減少したものの、短期借入金等(1年内返済予定の長期借入金を含む)が1,187百万円増加したことによる。固定負債は同1,662百万円減の1,973百万円であった。これは主に長期借入金が1,554百万円減少したことによる。以上から、有利子負債合計では同366百万円減の3,856百万円となった。また、純資産合計は、同2,316百万円増の3,873百万円となった。これは主に新株発行に伴い資本金と資本剰余金がそれぞれ1,177百万円と1,181百万円増加したことによる。
同社のビジネスモデルは、高収益と財務の健全性を同時に実現するものである。その結果、自己資本比率は45.7%と高水準を維持し、同社が目指す東証1部上場企業(全産業)2020年3月期の30.9%を上回り、高い安全性を確保している。ただ、2020年8月期は一時的な利益の落ち込みと増資の結果、ROE(自己資本当期純利益率)は5.0%、ROA(総資産経常利益率)も2.3%に低下している。今後は2021年8月期業績予想に沿った利益回復によって、収益性も改善すると見込まれる。
2020年8月期末の現金及び現金同等物の残高は2,075百万円となり、前期比1,503百万円増加した。当期の営業活動により得られた金額は285百万円となった。これは主にたな卸資産の減少額376百万円、前払金の減少額430百万円、預け金の増加額399百万円などによる。投資活動により支出した金額は446百万円であった。これは主に定期預金の預入による支出103百万円、有形固定資産の取得による支出109百万円、敷金の差入による支出152百万円などによる。財務活動により得られた金額は1,668百万円となった。これは主に短期借入金の純増額1,138百万円、長期借入れによる収入1,377百万円、長期借入金の返済による支出2,882百万円、株式の発行による収入2,312百万円があったことによる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2020年8月期業績概要
2020年8月期の日本経済は、雇用や所得環境の改善などにより穏やかな回復基調が続いていたが、コロナ禍対策に向けた経済活動の自粛等の影響により景気が急速に悪化したことに加え、未だに同感染症収束の見通しが立っていないことから先行き不透明な状況が続いている。霞ヶ関キャピタル<3498>の主たる事業領域である不動産市場においては、日本銀行や各国中央銀行による緊急金融緩和策により十分な資金供給がされているものの、金融機関及び投資家の慎重な姿勢が続いており、その動向は引き続き注視すべき状況にある。
このような状況のなか、同社は引き続き社会的潮流に着目した成長性及び社会的意義のある事業分野への投資及びコンサルティングに注力するとともに、投資機会の創出及び投資案件の収益最大化に努めた。その結果、2020年8月期の連結業績は、売上高8,008百万円(前期比49.6%増)、営業利益326百万円(同53.3%減)、経常利益180百万円(同71.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益134百万円(同69.1%減)となった。期初予想と比較すると売上高は3.1%、営業利益は78.1%下回る着地となったが、売上高については、コロナ禍に伴いアパートメントホテル開発事業で予定されていた案件が延期されたことによる。また、営業利益については、優秀な人材獲得への先行投資を実施したことで販売管理費が増大したことによる。しかし、コロナ禍収束後(ポストコロナ)の経済環境変化を見据えて新規事業への取り組み強化に努めた、前向きな決算であったと評価できよう。
セグメント別に見ると、不動産コンサルティング事業の売上高は6,311百万円(前期比44.0%増)、セグメント利益は1,055百万円(同13.3%増)となった。一方、自然エネルギー事業の売上高は1,697百万円(同75.1%増)、セグメント利益は347百万円(同9.7%減)となった。また、売上高営業利益率については、不動産コンサルティング事業で16.7%、自然エネルギー事業で20.5%と、引き続き高水準を維持している。
各セグメントにおけるコロナ禍の影響は以下のとおりである。不動産コンサルティング事業では直接的な影響は限定的であったものの、ホテル新規開発においては間接的な影響を受けた。具体的には、アパートメントホテル開発事業のうち、稼働中ホテルでは、同社が直接保有している物件はなく、運営コンサルティングとして関与しているためにコロナ禍の影響は限定的であった。建築中ホテルに関しても、現在開発中の案件については竣工が1〜2年以上先のため、現時点ではコロナ禍の影響は限定的であった。ただ、計画中ホテルでは、2020年8月期の開発コンサルティングとして予定されていた案件が2021年8月期以降に延期されるなどの影響を受けた。一方、保育園事業ではコロナ禍の影響は比較的軽微で、2020年4月に都内4ヶ所で認可保育園を開園し、スケジュール通りに竣工・売却している。また、その他の海外・ショッピングセンター等の事業でも、経済活動減速の影響を受けたものの収益全体に占めるインパクトは小さかった。なお、自然エネルギー事業ではコロナ禍の影響は比較的軽微であった。
高水準の自己資本比率を確保
2. 財務状況と経営指標
2020年8月期末における資産合計は、前期比1,496百万円増の8,440百万円となった。流動資産は、同1,330百万円増の7,125百万円であった。これは主に現金及び預金が1,606百万円増加したことによる。固定資産は、同166百万円増の1,312百万円となった。これは主に太陽光発電施設の保有目的を変更し、流動資産の開発事業等支出金へ振替えたことにより、有形固定資産が172百万円減少したものの、投資その他の資産が337百万円増加したことによる。
負債合計は、前期比820百万円減の4,567百万円となった。流動負債は同842百万円増の2,593百万円であった。これは主に未払金が387百万円減少したものの、短期借入金等(1年内返済予定の長期借入金を含む)が1,187百万円増加したことによる。固定負債は同1,662百万円減の1,973百万円であった。これは主に長期借入金が1,554百万円減少したことによる。以上から、有利子負債合計では同366百万円減の3,856百万円となった。また、純資産合計は、同2,316百万円増の3,873百万円となった。これは主に新株発行に伴い資本金と資本剰余金がそれぞれ1,177百万円と1,181百万円増加したことによる。
同社のビジネスモデルは、高収益と財務の健全性を同時に実現するものである。その結果、自己資本比率は45.7%と高水準を維持し、同社が目指す東証1部上場企業(全産業)2020年3月期の30.9%を上回り、高い安全性を確保している。ただ、2020年8月期は一時的な利益の落ち込みと増資の結果、ROE(自己資本当期純利益率)は5.0%、ROA(総資産経常利益率)も2.3%に低下している。今後は2021年8月期業績予想に沿った利益回復によって、収益性も改善すると見込まれる。
2020年8月期末の現金及び現金同等物の残高は2,075百万円となり、前期比1,503百万円増加した。当期の営業活動により得られた金額は285百万円となった。これは主にたな卸資産の減少額376百万円、前払金の減少額430百万円、預け金の増加額399百万円などによる。投資活動により支出した金額は446百万円であった。これは主に定期預金の預入による支出103百万円、有形固定資産の取得による支出109百万円、敷金の差入による支出152百万円などによる。財務活動により得られた金額は1,668百万円となった。これは主に短期借入金の純増額1,138百万円、長期借入れによる収入1,377百万円、長期借入金の返済による支出2,882百万円、株式の発行による収入2,312百万円があったことによる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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