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アンジェス Research Memo(5):NF-κBデコイオリゴは、安全性と有効性の評価を行う

注目トピックス 日本株
■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向

2. NF-κBデコイオリゴ
NF-κBデコイオリゴは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる。主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている。

(1) 椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症の患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対する進行抑制や修復を促す効果が期待される。新タイプの腰痛治療薬として2018年2月より米国で後期第1相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)を開始し、2020年2月に予定した25例の患者投与を完了している。今後、投与された患者を二重盲検で6ヶ月間の安全性と有効性(痛みの緩和など)を評価し、その後6ヶ月の非盲検観察期間で長期安全性、忍容性及び有効性を評価していくことになる。

同社は臨床試験の中間報告として、投与後6ヶ月間の安全性と有効性に関するトップラインデータを揃い次第発表する予定にしている。椎間板性腰痛症は慢性的な腰痛疾患で、特に中高年層を中心に患者数は多い。米国では治療法として椎間板内注射が一般的であり、手技に習熟している医師も多いため、NF-κBデコイオリゴの導入が進む環境は整っていると同社は考えている。ただ、鎮痛効果だけでは既存治療法との差別化が難しいため、椎間板変性に対する進行抑制や修復促進効果などが確認できるかどうかがポイントになると弊社では見ている。

(2) 次世代型「キメラデコイ」
同社は2016年7月に次世代型「キメラデコイ」の基盤技術の開発を完了し、製品開発を進めている。従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、「STAT6」と「NF-κB」という炎症に関わる2つの重要な転写因子を同時に抑制する働きを持つため、炎症抑制効果も格段に高まることが期待される。実際、動物実験ではNF-κBデコイオリゴに比べ強い炎症抑制効果を持つことが確認されている。また、次世代型「キメラデコイ」は生体内での安定性に優れ、NF-κBデコイオリゴよりも分子量が3〜4割少ないため、生産コストを低く抑えることが可能といった長所も持つ。

同社は具体的な対象疾患として、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの炎症性疾患を想定している。既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後の新たな開発プロジェクトでは、基本的に「キメラデコイ」で進めていくことになる。現在は製品の完成度を高めている段階にあり、非臨床試験の開始時期は未定となっている。


高血圧DNAワクチンは、第1相/前期第2相臨床試験の結果次第で早期導出の可能性も
3. 高血圧DNAワクチン
プラスミドDNA製法を用いたワクチンの1つとして、高血圧症を対象としたDNAワクチンの開発を進めている。同ワクチンは大阪大学の森下竜一(もりしたりゅういち)教授の研究チームにより基本技術が開発されたもので、血圧の昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで長期間安定した降圧作用を発揮するワクチンとなる。

現在、主力の治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるが、毎日服用する必要があるため、患者1人あたりの治療コストは高い。このため、発展途上国では医療経済上の問題から使用が限定的となっている。同社が開発するDNAワクチンは既存薬よりも高薬価になると想定されるが、1回の治療で長期間の薬効が期待できるためトータルの治療コストは逆に低くなる可能性もあり、開発に成功すれば発展途上国も含めて普及拡大が期待される。

同社は2018年4月よりオーストラリアで第1相/前期第2相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)を開始し、2020年3月に予定した24例の患者への投与を完了した。今後、二重盲検下で6ヶ月間の安全性と有効性(血圧の低下等)を評価し、その後6ヶ月の非盲検下での長期安全性及び有効性を評価していくことになる。

同プロジェクトに関しても、2020年12月期第4四半期に中間報告として前半6ヶ月間の安全性及び有効性に関するトップラインデータを発表する予定としている。高血圧症に関しては市場規模も大きく、大手製薬企業からの関心度合いも高いため、試験結果の内容次第では比較的早期に導出が実現する可能性もあり、中間報告の内容が注目される。なお、高血圧DNAワクチンに関して、2020年6月に日本で、7月に米国でそれぞれ製剤特許及び用途特許を取得している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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