アンジェス Research Memo(6):2020年12月期第3四半期累計業績は臨床試験費用の増加で営業損失が拡大
[20/12/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年12月期第3四半期累計の業績概要
アンジェス<4563>の2020年12月期第3四半期累計の売上高は前年同期比91.2%減の28百万円、営業損失は2,857百万円(前年同期は2,358百万円の損失)、経常損失は3,150百万円(同2,385百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は3,174百万円(同2,770百万円の損失)となった。
売上高については、2019年6月に販売を終了したムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム®」の売上高170百万円や研究開発事業収益152百万円がなくなったことにより減収となった。2019年12月期第3四半期より販売を開始した「コラテジェン®」の売上高は前年同期の1百万円から28百万円に増加しており、四半期ベースで見ると第1四半期5百万円、第2四半期11百万円、第3四半期11百万円と堅調に推移している。
事業費用では、「ナグラザイム®」の販売終了に伴い売上原価が前年同期比81.0%減となったほか、販管費も新型コロナウイルス感染症拡大による出張の自粛等により旅費交通費が24百万円減少するなど事業活動費の抑制が図られたことで同2.1%減となった。一方、研究開発費は同18.5%増の1,880百万円となった。米国におけるHGF遺伝子治療用製品の後期第2相臨床試験開始や、国内での新型コロナウイルス感染症向けワクチンの開発費用を計上したことが増加要因となっている。
営業外収支が前年同期比で265百万円悪化したが、これは新たに持分法適用関連会社となったバイオベンチャーのEmendoにかかる持分法による投資損失263百万円を計上したことが主因だ。また、前年同期は特別損失として投資有価証券評価損384百万円を計上したが、2020年12月期第3四半期累計ではEmendoへの持分比率変動に伴う持分変動損失21百万円を計上している。
2020年12月期は、新型コロナウイルス感染症ワクチンと治療薬の開発及び実用化を最重要課題として取り組んでいく方針
2. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の事業方針として、同社は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発並びに実用化を経営の最重要課題と位置付け、全社を挙げて取り組んでいくことを打ち出している。
2020年12月期の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況や、HGF遺伝子治療用製品の国内、米国での開発状況、事業提携の可能性や新規シーズの導入の可能性など、現時点で業績に影響を与える未確定な要素が多いことから、合理的な数値の算出が困難であると判断し非開示としている。研究開発費については、HGF遺伝子治療用製品の国内における適応拡大のための臨床試験や米国での臨床試験が始まっていること、並びに新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発の進展もあって前期比で増加することが見込まれる。なお、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発費用については、AMEDの公募プロジェクト「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に採用され20億円の助成金を受けることが決まっている。
新株予約権の行使による資金調達で、財務基盤が大幅に強化される
3. 財務状況について
2020年12月期第3四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比8,843百万円増加の21,368百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産のうち現金及び預金は、新株予約権の発行及び行使に伴う11,469百万円の入金があった一方で、Emendoの株式取得及び当期事業費用への充当などにより、同2,275百万円の増加となった。また、主に新型コロナウイルス感染症向けワクチンの製造に係る費用を前払いしたことに伴い、前渡金が同901百万円増加したほか、「コラテジェン®」の原薬製造に伴い、原材料及び貯蔵品が同458百万円増加した。固定資産ではEmendoの株式取得により投資有価証券が同5,094百万円増加した。
負債合計は前期末比548百万円増加の1,017百万円となった。AMEDより採択された「新型コロナウイルスを標的としたワクチン実用化開発」に関する助成金の一部が入金され、前受金として563百万円計上したことによる。純資産は同8,295百万円増加の20,350百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純損失3,174百万円の計上があったものの、新株予約権の発行及び行使により、資本金及び資本剰余金が各5,746百万円増加し、新株予約権が51百万円増加したことが主因となっている。
なお、同社が2020年3月4日付で発行した第37回新株予約権(第三者割当て)については、株価がその後大きく上昇したこともあって同年4月までに行使をすべて完了している。当初の資金調達想定額は約93億円だったが、その後の株価上昇もあって最終的には約114億円を調達した。調達資金の使途は、海外市場を含めた更なる開発パイプラインの拡充のための資金(45億円)、HGF遺伝子治療用製品の原薬の製造委託費用(16.5億円)及び運転資金(32億円)となっており、余力を持って開発パイプラインの拡充を進めることが可能になったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年12月期第3四半期累計の業績概要
アンジェス<4563>の2020年12月期第3四半期累計の売上高は前年同期比91.2%減の28百万円、営業損失は2,857百万円(前年同期は2,358百万円の損失)、経常損失は3,150百万円(同2,385百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は3,174百万円(同2,770百万円の損失)となった。
売上高については、2019年6月に販売を終了したムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム®」の売上高170百万円や研究開発事業収益152百万円がなくなったことにより減収となった。2019年12月期第3四半期より販売を開始した「コラテジェン®」の売上高は前年同期の1百万円から28百万円に増加しており、四半期ベースで見ると第1四半期5百万円、第2四半期11百万円、第3四半期11百万円と堅調に推移している。
事業費用では、「ナグラザイム®」の販売終了に伴い売上原価が前年同期比81.0%減となったほか、販管費も新型コロナウイルス感染症拡大による出張の自粛等により旅費交通費が24百万円減少するなど事業活動費の抑制が図られたことで同2.1%減となった。一方、研究開発費は同18.5%増の1,880百万円となった。米国におけるHGF遺伝子治療用製品の後期第2相臨床試験開始や、国内での新型コロナウイルス感染症向けワクチンの開発費用を計上したことが増加要因となっている。
営業外収支が前年同期比で265百万円悪化したが、これは新たに持分法適用関連会社となったバイオベンチャーのEmendoにかかる持分法による投資損失263百万円を計上したことが主因だ。また、前年同期は特別損失として投資有価証券評価損384百万円を計上したが、2020年12月期第3四半期累計ではEmendoへの持分比率変動に伴う持分変動損失21百万円を計上している。
2020年12月期は、新型コロナウイルス感染症ワクチンと治療薬の開発及び実用化を最重要課題として取り組んでいく方針
2. 2020年12月期の業績見通し
2020年12月期の事業方針として、同社は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発並びに実用化を経営の最重要課題と位置付け、全社を挙げて取り組んでいくことを打ち出している。
2020年12月期の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況や、HGF遺伝子治療用製品の国内、米国での開発状況、事業提携の可能性や新規シーズの導入の可能性など、現時点で業績に影響を与える未確定な要素が多いことから、合理的な数値の算出が困難であると判断し非開示としている。研究開発費については、HGF遺伝子治療用製品の国内における適応拡大のための臨床試験や米国での臨床試験が始まっていること、並びに新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発の進展もあって前期比で増加することが見込まれる。なお、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発費用については、AMEDの公募プロジェクト「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に採用され20億円の助成金を受けることが決まっている。
新株予約権の行使による資金調達で、財務基盤が大幅に強化される
3. 財務状況について
2020年12月期第3四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比8,843百万円増加の21,368百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産のうち現金及び預金は、新株予約権の発行及び行使に伴う11,469百万円の入金があった一方で、Emendoの株式取得及び当期事業費用への充当などにより、同2,275百万円の増加となった。また、主に新型コロナウイルス感染症向けワクチンの製造に係る費用を前払いしたことに伴い、前渡金が同901百万円増加したほか、「コラテジェン®」の原薬製造に伴い、原材料及び貯蔵品が同458百万円増加した。固定資産ではEmendoの株式取得により投資有価証券が同5,094百万円増加した。
負債合計は前期末比548百万円増加の1,017百万円となった。AMEDより採択された「新型コロナウイルスを標的としたワクチン実用化開発」に関する助成金の一部が入金され、前受金として563百万円計上したことによる。純資産は同8,295百万円増加の20,350百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純損失3,174百万円の計上があったものの、新株予約権の発行及び行使により、資本金及び資本剰余金が各5,746百万円増加し、新株予約権が51百万円増加したことが主因となっている。
なお、同社が2020年3月4日付で発行した第37回新株予約権(第三者割当て)については、株価がその後大きく上昇したこともあって同年4月までに行使をすべて完了している。当初の資金調達想定額は約93億円だったが、その後の株価上昇もあって最終的には約114億円を調達した。調達資金の使途は、海外市場を含めた更なる開発パイプラインの拡充のための資金(45億円)、HGF遺伝子治療用製品の原薬の製造委託費用(16.5億円)及び運転資金(32億円)となっており、余力を持って開発パイプラインの拡充を進めることが可能になったと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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