Jストリーム Research Memo(6):OTTとEVCの領域で動画ソリューションカンパニーへの進化を目指す
[20/12/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■Jストリーム<4308>の事業戦略
1. グループ経営ビジョン
スマートフォンなど動画視聴可能なデバイスを個人が常時携帯する一方、Wi-Fi環境の充実や5Gの普及などもあり、屋内外でインターネット動画を視聴する環境整備が進んでいる。テレビから離れた若者は、好みのタイミングで様々なデバイスを使って動画を視聴する。SNSや社内ポータルなどの利用も増加し、それがさらに動画配信の環境を充実させる。また、動画を利用するコストの低下や効果の拡大も動画の利用増加に拍車をかけている。このような動画のコモディティ化現象により動画利用のシーンが急速に拡大、動画配信市場も大きく伸び始めた。こうした市場で、様々な機能や最新テクノロジーを共通プラットフォームに乗せることで常にニーズにあった最新のサービスを提供し、さらにサービスの先にある顧客の課題を解決する最先端の動画ソリューションカンパニーへと進化することで、同社と同社グループ各社は社会のデジタル化を支援し社会へ貢献していくことをビジョンとしている。
現在、インターネットによる動画配信業界では、EVC※1領域におけるeラーニングや統合型マーケティングなど一般企業向け用途特化型サービスの広がり、NHKによる同時配信※2やOTT※3領域における事業者の動画配信サービス参入、そして放送と通信の融合・再編が進んでいる。動画配信プラットフォームを事業基盤とする同社にとっていずれの領域もビジネスチャンスが大きく広がっている。そうした領域における事業戦略について少し詳細に見ていく。
※1 EVC(Enterprise Video Communications):一般企業における動画を使ったコミュニケーション。
※2 NHKによる同時配信:(IP)サイマル放送とも言い、1つの放送局が同じ時間帯に同じコンテンツを、異なるチャンネル(周波数)や放送方式、放送媒体で放送すること。特に、放送(テレビ、ラジオ)と同じものを通信(インターネット)で同時配信することを指すことが多い。NHKは2020年4月1日、「NHKプラス」でテレビ番組のインターネット同時配信サービスを本格的にスタートした。
※3 OTT(Over The Top):Netflixなど通信事業者以外の企業やプラットフォーム、サービス。
EVCでは用途に即した高付加価値サービス、OTTではマネタイズに貢献できるサービスを狙う
2. 事業戦略
(1) EVC領域における事業戦略
欧米では社内向けにも社外向けにも企業の動画の活用が浸透しているが、日本でも少しずつ、顧客や株主、取引先などのステークホルダーとの円滑で効率的なコミュニケーションを図るため、大企業を中心に動画を活用する機会が増えてきた。働き方改革やコスト削減、効果の可視化、同報性など社内的なメリットが大きい上、新型コロナウイルスの広がりをきっかけに動画配信の有効性が一段と認識されたことも要因と言える。このため、動画の利用機会は足元から将来へ向かって大きく増加していくと考えられている。また、5GやIoT、VRなど次世代のインターネット環境が整備されつつあり、双方向や高画質など更なる大容量化へ向けたニーズも、今後急速に拡大することが予想されている。同社はこうした環境変化に先行、動画配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」に最新テクノロジーや外部連携など組み込むことで用途に即した高付加価値のサービスを提供、企業活動のあらゆるフィールドやシーンにおけるデジタル化を支援している。さらに現在、利便性向上を狙って様々な有力SaaSプラットフォームとの連携を進めており、拡張機能プラグインによるPlayerの提供や個人視聴ログの連携が可能となった。一方、動画制作をする有力SaaSに対しては、APIやSDKによる連携機能を「J-Stream Equipmedia」内に実装していく方針である。
(2) 医薬領域における事業戦略
EVC領域の中で同社が最も重視しているのが、同社売上高の中で最大規模の医薬領域である。医薬業界の中長期的課題は、薬価の引き下げや後発医薬品の普及による国内市場の競争激化、医薬品プロモーションコードの変更による非対面営業の増加である。特に対面営業の要であるMR※1関連費用の効率が低下しているため、こうした対面営業からライブ配信や専門誌の利用など非対面営業へとプロモーション戦略を転換することが必要になっている。既に同社は医薬系企業や各専門医学会・医療機器関連メーカーのWeb講演会をサポートしており、4Kなどの高繊細ニーズにも対応しているが、さらに業界のプロモーションコスト構造の見直しにまで踏み込んで支援を行うとしている。このため、Web講演会視聴ログ活用の促進、主要CMS※2へのプラグインによる「J-Stream Equipmedia」の機能拡張、デジタル資材のファクトリー機能の提供など、医薬系企業のプロモーション戦略の転換をサポートしていく方針だ。
※1 MR(Medical Representative):医師に自社の薬の成分や使用方法、効能について説明する医薬情報担当者を指す。
※2 CMS(Contents Management System):専門知識がなくてもサイトやコンテンツを構築・管理・更新できるシステムを指す。
(3) OTT領域における事業戦略
スマートフォンが普及し5G時代が迫るなか、2019年にインターネット広告費がテレビメディア広告費を初めて上回った。2020年3月にNHKが放送同時配信をスタートさせたことで、民放各局もデジタル戦略を推進する姿勢を強めている。しかし、OTT領域では継続的な開発やシステム運用が必要になるため、放送事業者などのコンテンツホルダーが短期間で安定した独自の配信サービスを構築するのは至難であり、現状、影響力の大きいAmazonプライムビデオやNetflixなどを利用せざるを得ない。しかし、プラットフォームをそうした企業に依存していては、コンテンツホルダーとして効果・効率的なマネタイズ戦略が組めず、同業との差別化もできない。したがってコンテンツホルダーは、中長期的に独自のコンテンツ配信サービスを構築する必要に迫られることになる。こうした環境と戦略の変化を見据えて同社は、従来のネット配信基盤の構築や運用支援に加え、放送同時配信や見逃し配信が可能なビジネスモデルへの転換を支援するソリューションサービスを開始した。このため同社は、編成情報連携や広告挿入といった放送同時配信の基盤を「J-Stream Equipmedia」にシームレスに連携させて利便性を向上する一方、地上波広告との連動広告メニューや広告データ分析の研究開発を進めている。このように放送同時配信の共創により踏み込むことで、コンテンツホルダーの収益化にも貢献していく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
1. グループ経営ビジョン
スマートフォンなど動画視聴可能なデバイスを個人が常時携帯する一方、Wi-Fi環境の充実や5Gの普及などもあり、屋内外でインターネット動画を視聴する環境整備が進んでいる。テレビから離れた若者は、好みのタイミングで様々なデバイスを使って動画を視聴する。SNSや社内ポータルなどの利用も増加し、それがさらに動画配信の環境を充実させる。また、動画を利用するコストの低下や効果の拡大も動画の利用増加に拍車をかけている。このような動画のコモディティ化現象により動画利用のシーンが急速に拡大、動画配信市場も大きく伸び始めた。こうした市場で、様々な機能や最新テクノロジーを共通プラットフォームに乗せることで常にニーズにあった最新のサービスを提供し、さらにサービスの先にある顧客の課題を解決する最先端の動画ソリューションカンパニーへと進化することで、同社と同社グループ各社は社会のデジタル化を支援し社会へ貢献していくことをビジョンとしている。
現在、インターネットによる動画配信業界では、EVC※1領域におけるeラーニングや統合型マーケティングなど一般企業向け用途特化型サービスの広がり、NHKによる同時配信※2やOTT※3領域における事業者の動画配信サービス参入、そして放送と通信の融合・再編が進んでいる。動画配信プラットフォームを事業基盤とする同社にとっていずれの領域もビジネスチャンスが大きく広がっている。そうした領域における事業戦略について少し詳細に見ていく。
※1 EVC(Enterprise Video Communications):一般企業における動画を使ったコミュニケーション。
※2 NHKによる同時配信:(IP)サイマル放送とも言い、1つの放送局が同じ時間帯に同じコンテンツを、異なるチャンネル(周波数)や放送方式、放送媒体で放送すること。特に、放送(テレビ、ラジオ)と同じものを通信(インターネット)で同時配信することを指すことが多い。NHKは2020年4月1日、「NHKプラス」でテレビ番組のインターネット同時配信サービスを本格的にスタートした。
※3 OTT(Over The Top):Netflixなど通信事業者以外の企業やプラットフォーム、サービス。
EVCでは用途に即した高付加価値サービス、OTTではマネタイズに貢献できるサービスを狙う
2. 事業戦略
(1) EVC領域における事業戦略
欧米では社内向けにも社外向けにも企業の動画の活用が浸透しているが、日本でも少しずつ、顧客や株主、取引先などのステークホルダーとの円滑で効率的なコミュニケーションを図るため、大企業を中心に動画を活用する機会が増えてきた。働き方改革やコスト削減、効果の可視化、同報性など社内的なメリットが大きい上、新型コロナウイルスの広がりをきっかけに動画配信の有効性が一段と認識されたことも要因と言える。このため、動画の利用機会は足元から将来へ向かって大きく増加していくと考えられている。また、5GやIoT、VRなど次世代のインターネット環境が整備されつつあり、双方向や高画質など更なる大容量化へ向けたニーズも、今後急速に拡大することが予想されている。同社はこうした環境変化に先行、動画配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」に最新テクノロジーや外部連携など組み込むことで用途に即した高付加価値のサービスを提供、企業活動のあらゆるフィールドやシーンにおけるデジタル化を支援している。さらに現在、利便性向上を狙って様々な有力SaaSプラットフォームとの連携を進めており、拡張機能プラグインによるPlayerの提供や個人視聴ログの連携が可能となった。一方、動画制作をする有力SaaSに対しては、APIやSDKによる連携機能を「J-Stream Equipmedia」内に実装していく方針である。
(2) 医薬領域における事業戦略
EVC領域の中で同社が最も重視しているのが、同社売上高の中で最大規模の医薬領域である。医薬業界の中長期的課題は、薬価の引き下げや後発医薬品の普及による国内市場の競争激化、医薬品プロモーションコードの変更による非対面営業の増加である。特に対面営業の要であるMR※1関連費用の効率が低下しているため、こうした対面営業からライブ配信や専門誌の利用など非対面営業へとプロモーション戦略を転換することが必要になっている。既に同社は医薬系企業や各専門医学会・医療機器関連メーカーのWeb講演会をサポートしており、4Kなどの高繊細ニーズにも対応しているが、さらに業界のプロモーションコスト構造の見直しにまで踏み込んで支援を行うとしている。このため、Web講演会視聴ログ活用の促進、主要CMS※2へのプラグインによる「J-Stream Equipmedia」の機能拡張、デジタル資材のファクトリー機能の提供など、医薬系企業のプロモーション戦略の転換をサポートしていく方針だ。
※1 MR(Medical Representative):医師に自社の薬の成分や使用方法、効能について説明する医薬情報担当者を指す。
※2 CMS(Contents Management System):専門知識がなくてもサイトやコンテンツを構築・管理・更新できるシステムを指す。
(3) OTT領域における事業戦略
スマートフォンが普及し5G時代が迫るなか、2019年にインターネット広告費がテレビメディア広告費を初めて上回った。2020年3月にNHKが放送同時配信をスタートさせたことで、民放各局もデジタル戦略を推進する姿勢を強めている。しかし、OTT領域では継続的な開発やシステム運用が必要になるため、放送事業者などのコンテンツホルダーが短期間で安定した独自の配信サービスを構築するのは至難であり、現状、影響力の大きいAmazonプライムビデオやNetflixなどを利用せざるを得ない。しかし、プラットフォームをそうした企業に依存していては、コンテンツホルダーとして効果・効率的なマネタイズ戦略が組めず、同業との差別化もできない。したがってコンテンツホルダーは、中長期的に独自のコンテンツ配信サービスを構築する必要に迫られることになる。こうした環境と戦略の変化を見据えて同社は、従来のネット配信基盤の構築や運用支援に加え、放送同時配信や見逃し配信が可能なビジネスモデルへの転換を支援するソリューションサービスを開始した。このため同社は、編成情報連携や広告挿入といった放送同時配信の基盤を「J-Stream Equipmedia」にシームレスに連携させて利便性を向上する一方、地上波広告との連動広告メニューや広告データ分析の研究開発を進めている。このように放送同時配信の共創により踏み込むことで、コンテンツホルダーの収益化にも貢献していく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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