Jストリーム Research Memo(8):同社のビジョンと世の中のニーズが一致して業績が急拡大
[20/12/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年3月期第2四半期の業績動向
Jストリーム<4308>の2021年3月期第2四半期の業績は、売上高5,640百万円(前年同期比55.8%増)、営業利益934百万円(同557.5%増)、経常利益941百万円(同504.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益607百万円(同1286.8%増)と驚異的な伸びとなった。新型コロナウイルスの影響も非常に大きかったが、最先端の動画ソリューションを提供して顧客の課題解決を行い、社会の発展に寄与するという同社のビジョンに世の中のニーズが一致したことが要因と考えられる。こうした変化を捉え、動画を軸に総合的なサービスを展開するため、同社が事業セグメントを「動画ソリューション事業」単一セグメントへと変更したのは前述したとおりである。
新型コロナウイルスによる経済活動の制限・自粛の長期化により、個人消費に回復の動きが見られるものの、日本経済は引き続き不確実性の高い状況が続いている。インターネット業界では5GやVRといった新技術・新制度への対応が進み、放送局によるコンテンツのネット配信、医薬系業界のWeb講演会関連のライブ配信、各種運用・監視、システム開発など、動画配信の需要拡大に加速が付き始めていた。そんななかで新型コロナウイルスが広がり、ライブなど大人数の集まるイベントに関して相当数のキャンセルが発生した。しかし、同時に様々なコミュニケーションにおいて動画配信を利用するきっかけともなった。2021年3月期も第1四半期から第2四半期へ進むにつれ動画配信利用の流れが加速し、Web講演会や社員集会、卒業式典、入社式、社長訓話、採用セミナー、社内研修、株主総会など、人との接触機会を減らせる少人数によるライブ配信や事前収録の需要が急拡大した。また、従来から利用されていた学校や学習塾などでのオンデマンド配信の利用時間が増加、データ流量増からネットワーク需要(CDN)も急増した。
こうした状況に対して同社は、主力サービスの「J-Stream Equipmedia」やライブ配信を中心に体制を整備・強化することで様々な需要を機敏に確保する一方、様々な利用シーンやニーズに応えられる高品質なサービスを提供できる体制の整備も進めた。また、信託銀行大手3行と協働して株主総会のライブ配信を獲得するなど、イベント開催に関連する多様なサービサーと協業・連携して市場の開拓も推進した。この結果、特に企業活動が再開した6月の緊急事態宣言の解除以降、各種動画利用に伴ってネットワーク利用量やWeb・映像制作の拡大に拍車がかかった。このため、主力の「J-Stream Equipmedia」とライブ配信の売上高が急拡大し、制作系の情報共有・提供用のサイト構築、放送局向けのシステム開発も前年を大きく上回ることとなった。やや苦戦気味だった映像制作子会社も、単体の好調に浴すことで風向きは追い風になってきたようだ。とはいえ、実際は需要急増に体制が追い付かなかった面もあり、機会ロスも相当に発生したもようである(今後の成長余地と言える)。
利益面では売上総利益率が改善した。受注急増やメディア向けの技術サポート業務の拡大、ビッグエムズワイの子会社化に伴って変動費的な外注費が増加したものの、同社収益構造上の特徴を背景に、売上高の伸びを大きく下回ったことが理由である。また、自社開発のため採算の良い「J-Stream Equipmedia」の販売好調も売上総利益率の上昇に寄与した。一方、業務効率化のための業務委託手数料や業容拡大に伴う人件費の増加はあったが、売上拡大やRPA※などによる効率化の進展、受注好調による制作畑人材の営業支援活動減(販売支援費の抑制)、在宅勤務制度の導入、オフィス規模の適正化・効率化の推進などにより、販管費率も大きく改善した。このように2021年3月期第2四半期の営業利益率は、売上総利益率、販管費率両面の改善により大きく向上することとなったのである。
※RPA(Robotic Process Automation):ソフトウェアに組み込まれたロボットにより業務効率化を実現すること。
新型コロナウイルスの短期的な影響が見られるが、次につながる動き
2. 業種別等による業況
2021年3月期第2四半期の業種別売上状況(単体)は、底流でデジタルマーケティング化が進む医薬系が、ライブ配信に加えWeb・映像コンテンツ制作の需要が旺盛となり、前年同期比2倍以上という大幅な増加となった。ネット配信シフトの流れにある放送系は、システム開発案件などを順調に積み上げることができ、同19.9%増収と堅調だった。金融系は第1四半期の株主総会のライブ配信の受注が奏功して同53.4%増収、2022年3月期以降の受注獲得も期待できそうだ(同社では集中開催への対策を検討中)。教育系は伸びが低かったが、引き続きオンデマンド配信利用が継続した。プラットフォーム売上高(ライブ配信や「J-Stream Equipmedia」などネットワーク系の売上)、非プラットフォーム売上高(Web制作・映像制作など)の別による売上高種別の状況は、ともに伸びたが、期間で見ると短期案件の方がより大きく伸びた。医薬系のライブ配信はある程度のスケジュールに沿って受注されるが、あくまでイベントごとの扱いのため短期案件として計上される。加えて、新型コロナウイルスによる緊急の受注が多かったためと思われるが、長期(3ヶ月以上)案件も順調に伸びており、全体として次につながる動きとも見ることができる。
利用目的別の状況では、新商品発表・販促ウェビナー向けのWeb講演会ライブ/疑似ライブ、会員制サイト集客用動画配信など、販促・ブランディング用途が前年同期比73.1%増と大きく伸び、構成比も7.2ポイント上昇し、57.2%となった。放送局関連案件(構築、運用、配信)や音楽/eスポーツ等関連構築・配信、不動産や生命保険などBtoC事業者や代理店向けサイト構築といった事業用インフラ/サポート用途は、リアルの動きが悪かったためと思われるが、同25.5%減収となり構成比も半減の6.3%となった。社内向けウェビナーや社員総会/表彰式ライブ、部店長会議ライブ、社長講和、社内イベント向け映像制作配信、官公庁協議会映像配信など情報共有用途は、同45.7%増収と強い伸びを示した。学習塾・学校法人による講義配信、金融・医薬系企業の社内/パートナー向けトレーニングといった教育・トレーニング用途は、同35.5%増収とこれも強く伸びた。6月を中心にバーチャル株主総会が貢献したため、売上構成比はまだ小さいが、IR・広報・採用用途の売上高も好調で同102.5%増収となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
1. 2021年3月期第2四半期の業績動向
Jストリーム<4308>の2021年3月期第2四半期の業績は、売上高5,640百万円(前年同期比55.8%増)、営業利益934百万円(同557.5%増)、経常利益941百万円(同504.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益607百万円(同1286.8%増)と驚異的な伸びとなった。新型コロナウイルスの影響も非常に大きかったが、最先端の動画ソリューションを提供して顧客の課題解決を行い、社会の発展に寄与するという同社のビジョンに世の中のニーズが一致したことが要因と考えられる。こうした変化を捉え、動画を軸に総合的なサービスを展開するため、同社が事業セグメントを「動画ソリューション事業」単一セグメントへと変更したのは前述したとおりである。
新型コロナウイルスによる経済活動の制限・自粛の長期化により、個人消費に回復の動きが見られるものの、日本経済は引き続き不確実性の高い状況が続いている。インターネット業界では5GやVRといった新技術・新制度への対応が進み、放送局によるコンテンツのネット配信、医薬系業界のWeb講演会関連のライブ配信、各種運用・監視、システム開発など、動画配信の需要拡大に加速が付き始めていた。そんななかで新型コロナウイルスが広がり、ライブなど大人数の集まるイベントに関して相当数のキャンセルが発生した。しかし、同時に様々なコミュニケーションにおいて動画配信を利用するきっかけともなった。2021年3月期も第1四半期から第2四半期へ進むにつれ動画配信利用の流れが加速し、Web講演会や社員集会、卒業式典、入社式、社長訓話、採用セミナー、社内研修、株主総会など、人との接触機会を減らせる少人数によるライブ配信や事前収録の需要が急拡大した。また、従来から利用されていた学校や学習塾などでのオンデマンド配信の利用時間が増加、データ流量増からネットワーク需要(CDN)も急増した。
こうした状況に対して同社は、主力サービスの「J-Stream Equipmedia」やライブ配信を中心に体制を整備・強化することで様々な需要を機敏に確保する一方、様々な利用シーンやニーズに応えられる高品質なサービスを提供できる体制の整備も進めた。また、信託銀行大手3行と協働して株主総会のライブ配信を獲得するなど、イベント開催に関連する多様なサービサーと協業・連携して市場の開拓も推進した。この結果、特に企業活動が再開した6月の緊急事態宣言の解除以降、各種動画利用に伴ってネットワーク利用量やWeb・映像制作の拡大に拍車がかかった。このため、主力の「J-Stream Equipmedia」とライブ配信の売上高が急拡大し、制作系の情報共有・提供用のサイト構築、放送局向けのシステム開発も前年を大きく上回ることとなった。やや苦戦気味だった映像制作子会社も、単体の好調に浴すことで風向きは追い風になってきたようだ。とはいえ、実際は需要急増に体制が追い付かなかった面もあり、機会ロスも相当に発生したもようである(今後の成長余地と言える)。
利益面では売上総利益率が改善した。受注急増やメディア向けの技術サポート業務の拡大、ビッグエムズワイの子会社化に伴って変動費的な外注費が増加したものの、同社収益構造上の特徴を背景に、売上高の伸びを大きく下回ったことが理由である。また、自社開発のため採算の良い「J-Stream Equipmedia」の販売好調も売上総利益率の上昇に寄与した。一方、業務効率化のための業務委託手数料や業容拡大に伴う人件費の増加はあったが、売上拡大やRPA※などによる効率化の進展、受注好調による制作畑人材の営業支援活動減(販売支援費の抑制)、在宅勤務制度の導入、オフィス規模の適正化・効率化の推進などにより、販管費率も大きく改善した。このように2021年3月期第2四半期の営業利益率は、売上総利益率、販管費率両面の改善により大きく向上することとなったのである。
※RPA(Robotic Process Automation):ソフトウェアに組み込まれたロボットにより業務効率化を実現すること。
新型コロナウイルスの短期的な影響が見られるが、次につながる動き
2. 業種別等による業況
2021年3月期第2四半期の業種別売上状況(単体)は、底流でデジタルマーケティング化が進む医薬系が、ライブ配信に加えWeb・映像コンテンツ制作の需要が旺盛となり、前年同期比2倍以上という大幅な増加となった。ネット配信シフトの流れにある放送系は、システム開発案件などを順調に積み上げることができ、同19.9%増収と堅調だった。金融系は第1四半期の株主総会のライブ配信の受注が奏功して同53.4%増収、2022年3月期以降の受注獲得も期待できそうだ(同社では集中開催への対策を検討中)。教育系は伸びが低かったが、引き続きオンデマンド配信利用が継続した。プラットフォーム売上高(ライブ配信や「J-Stream Equipmedia」などネットワーク系の売上)、非プラットフォーム売上高(Web制作・映像制作など)の別による売上高種別の状況は、ともに伸びたが、期間で見ると短期案件の方がより大きく伸びた。医薬系のライブ配信はある程度のスケジュールに沿って受注されるが、あくまでイベントごとの扱いのため短期案件として計上される。加えて、新型コロナウイルスによる緊急の受注が多かったためと思われるが、長期(3ヶ月以上)案件も順調に伸びており、全体として次につながる動きとも見ることができる。
利用目的別の状況では、新商品発表・販促ウェビナー向けのWeb講演会ライブ/疑似ライブ、会員制サイト集客用動画配信など、販促・ブランディング用途が前年同期比73.1%増と大きく伸び、構成比も7.2ポイント上昇し、57.2%となった。放送局関連案件(構築、運用、配信)や音楽/eスポーツ等関連構築・配信、不動産や生命保険などBtoC事業者や代理店向けサイト構築といった事業用インフラ/サポート用途は、リアルの動きが悪かったためと思われるが、同25.5%減収となり構成比も半減の6.3%となった。社内向けウェビナーや社員総会/表彰式ライブ、部店長会議ライブ、社長講和、社内イベント向け映像制作配信、官公庁協議会映像配信など情報共有用途は、同45.7%増収と強い伸びを示した。学習塾・学校法人による講義配信、金融・医薬系企業の社内/パートナー向けトレーニングといった教育・トレーニング用途は、同35.5%増収とこれも強く伸びた。6月を中心にバーチャル株主総会が貢献したため、売上構成比はまだ小さいが、IR・広報・採用用途の売上高も好調で同102.5%増収となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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