Jストリーム Research Memo(9):2021年3月期下期に体制構築のコストが発生するも、通期も大幅増益の予想
[20/12/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
3. 2021年3月期の業績見通し
Jストリーム<4308>は、2021年3月期業績見通しに関して、売上高11,900百万円(前期比41.0%増)、営業利益1,800百万円(同229.0%増)、経常利益1,800百万円(同220.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円(同381.5%増)と見込んでいる。2020年7月に公表した通期予想に対して、売上高で1,600百万円、営業利益で900百万円、経常利益で900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益620百万円の上方修正となった。
同社は2021年3月期について、新型コロナウイルス感染拡大以前から、成長に加速が付き始めたOTTとEVCの2領域において、メディア系企業、医薬系企業、その他一般企業の3方向へ業容を拡大する方針であった。具体的な計画は、メディア系企業では、放送同時配信に求められる大規模配信やタイムラグのない超低遅延配信、広告配信、番組編成処理機能といったサービスの開発を進める。医薬系企業向けには、収益の柱にもなっているライブ配信の受託体制をさらに強化する一方、プロモーションなどデジタルマーケティングをトータルでサポートする体制を整備して新たな需要を開拓する。一般企業向けには、あらゆるビジネスシーンで利用可能な動画ソリューションを展開していく。同社の動画配信機能だけで解決できない課題があれば、有力なSaaSや各種サービスプラットフォームと連携していく考えである。
こうして動画配信に対するニーズが立ち上がってきたところに、新型コロナウイルスにより「3密」回避やリモートワークなどが広がり、2021年3月期第2四半期は好調な業績となった。下期はこれを念頭に、需要動向や対応策など新たな前提を織り込むこととなった。同社の前提は、新型コロナウイルスの影響下にあっても動画配信需要は引き続き堅調に拡大する一方、需要の急拡大で第2四半期までに実施しきれなかった体制の強化策を実施するというものである。つまり、好業績のなか、先行的に投資と人件費を増加させる方針である。具体的には、サービス開発や競争力向上に向けたハードウェア・ソフトウェア投資、業務効率化に向けた社内システム投資のほか、エンジニアを中心とした採用や業務委託・派遣による臨時増員、採用強化へ向けたサイトの改善、業績向上を背景とした従業員賞与増など人材に資源を振り向ける方針である。一方で、同社においてもリモートワークを常態化し、オフィス面積の縮小やフリーアドレスによる効率化など合理化策によって将来費用の削減を図る。以上から、下期の営業利益率は上期に比べてやや下がる見込みとなったが、中長期的な需要急増に耐える体制構築のためのコストであることから、2022年3月期以降の収益性向上につながると考える。とはいえ2021年3月期下期も利益水準が高く、同社前提はやや保守的と思われる。
5Gの普及も同社の中長期成長を支える材料
4. 中期成長イメージ
2020年3月期は、動画配信という成長市場において5Gや放送同時配信など次世代へ向けた動きが始まり、これまで戦略的先行投資を続けてきた同社に好業績という成果が現れた。2021年3月期は新型コロナウイルスをきっかけに動画配信需要が急増することとなった。2022年3月期は、上期を中心に2021年3月期の急伸の反動で一時的に業績の伸びは鈍るだろうが、底流にある利用拡大の流れはむしろ加速し、中長期的には安定的な高成長が続くと予想される。動画配信のコモディティ化による競争激化、無料配信というビジネスモデルとの競合、一般企業による動画制作の内製化、医薬など特定の業界への高い依存度、新型コロナウイルス感染症による経済の疲弊といったリスクが予想される。しかし、追い風の吹く成長市場に加え、自社開発の「J-Stream Equipmedia」とCDNの優位性、強力なサービス・商品ラインナップ、経験豊富な運用サポート、最新技術への対応力、現場対応力を含めたワンストップソリューションなど長年蓄積された強みにより克服することができると思われる。何より、新型コロナウイルスによって各業界・各企業が動画配信の有効性・重要性に目覚めたことが大きい。同社はそうした市場の中心で、市場の成長を享受することになるだろう。
■株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つとして位置付けている。経営環境と業績状況を総合的に勘案し、株主に対する利益還元を図ることにより同社株式の市場価値を高めていく方針である。2021年3月期の配当については、新型コロナウイルス感染症の影響もあって現時点で未定としているが、配当金額が決定した時点で速やかに公表する予定である。なお、同社は配当性向の目標値をコミットしていないが、2017年3月期以降の配当性向がおおむね30%程度で推移していること、2021年3月期は好業績が予想されることから、一定水準以上の配当が実施されることを期待したい。
■情報セキュリティ
同社が顧客から預かるデータの中には、秘匿情報や個人情報など、情報管理が必要なコンテンツが存在しており、システムの設計や運用上でこれら情報が漏えいすることのないように厳重に管理、加えてプライバシーマークの認定も受けている。また、運営するWebサイトに対しては外部機関による脆弱性検査を、サイバー攻撃についても随時システムの強化を実施している。システムトラブルについては日々監視を行い、システム、ネットワークにかかわらず可能なものは二重化し、万一トラブルが発生した場合でも、短時間で復旧できるような体制を組んでいる。加えてオフィスでは、アンチウイルスソフトの利用やHDDの暗号化、操作ログ管理、USB使用禁止、社外持ち出し専用PCの運用や、営業社員を中心としたPCのシンクライアント化や位置情報管理など、個人情報などの情報漏えいへの対策を取っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 2021年3月期の業績見通し
Jストリーム<4308>は、2021年3月期業績見通しに関して、売上高11,900百万円(前期比41.0%増)、営業利益1,800百万円(同229.0%増)、経常利益1,800百万円(同220.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円(同381.5%増)と見込んでいる。2020年7月に公表した通期予想に対して、売上高で1,600百万円、営業利益で900百万円、経常利益で900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益620百万円の上方修正となった。
同社は2021年3月期について、新型コロナウイルス感染拡大以前から、成長に加速が付き始めたOTTとEVCの2領域において、メディア系企業、医薬系企業、その他一般企業の3方向へ業容を拡大する方針であった。具体的な計画は、メディア系企業では、放送同時配信に求められる大規模配信やタイムラグのない超低遅延配信、広告配信、番組編成処理機能といったサービスの開発を進める。医薬系企業向けには、収益の柱にもなっているライブ配信の受託体制をさらに強化する一方、プロモーションなどデジタルマーケティングをトータルでサポートする体制を整備して新たな需要を開拓する。一般企業向けには、あらゆるビジネスシーンで利用可能な動画ソリューションを展開していく。同社の動画配信機能だけで解決できない課題があれば、有力なSaaSや各種サービスプラットフォームと連携していく考えである。
こうして動画配信に対するニーズが立ち上がってきたところに、新型コロナウイルスにより「3密」回避やリモートワークなどが広がり、2021年3月期第2四半期は好調な業績となった。下期はこれを念頭に、需要動向や対応策など新たな前提を織り込むこととなった。同社の前提は、新型コロナウイルスの影響下にあっても動画配信需要は引き続き堅調に拡大する一方、需要の急拡大で第2四半期までに実施しきれなかった体制の強化策を実施するというものである。つまり、好業績のなか、先行的に投資と人件費を増加させる方針である。具体的には、サービス開発や競争力向上に向けたハードウェア・ソフトウェア投資、業務効率化に向けた社内システム投資のほか、エンジニアを中心とした採用や業務委託・派遣による臨時増員、採用強化へ向けたサイトの改善、業績向上を背景とした従業員賞与増など人材に資源を振り向ける方針である。一方で、同社においてもリモートワークを常態化し、オフィス面積の縮小やフリーアドレスによる効率化など合理化策によって将来費用の削減を図る。以上から、下期の営業利益率は上期に比べてやや下がる見込みとなったが、中長期的な需要急増に耐える体制構築のためのコストであることから、2022年3月期以降の収益性向上につながると考える。とはいえ2021年3月期下期も利益水準が高く、同社前提はやや保守的と思われる。
5Gの普及も同社の中長期成長を支える材料
4. 中期成長イメージ
2020年3月期は、動画配信という成長市場において5Gや放送同時配信など次世代へ向けた動きが始まり、これまで戦略的先行投資を続けてきた同社に好業績という成果が現れた。2021年3月期は新型コロナウイルスをきっかけに動画配信需要が急増することとなった。2022年3月期は、上期を中心に2021年3月期の急伸の反動で一時的に業績の伸びは鈍るだろうが、底流にある利用拡大の流れはむしろ加速し、中長期的には安定的な高成長が続くと予想される。動画配信のコモディティ化による競争激化、無料配信というビジネスモデルとの競合、一般企業による動画制作の内製化、医薬など特定の業界への高い依存度、新型コロナウイルス感染症による経済の疲弊といったリスクが予想される。しかし、追い風の吹く成長市場に加え、自社開発の「J-Stream Equipmedia」とCDNの優位性、強力なサービス・商品ラインナップ、経験豊富な運用サポート、最新技術への対応力、現場対応力を含めたワンストップソリューションなど長年蓄積された強みにより克服することができると思われる。何より、新型コロナウイルスによって各業界・各企業が動画配信の有効性・重要性に目覚めたことが大きい。同社はそうした市場の中心で、市場の成長を享受することになるだろう。
■株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つとして位置付けている。経営環境と業績状況を総合的に勘案し、株主に対する利益還元を図ることにより同社株式の市場価値を高めていく方針である。2021年3月期の配当については、新型コロナウイルス感染症の影響もあって現時点で未定としているが、配当金額が決定した時点で速やかに公表する予定である。なお、同社は配当性向の目標値をコミットしていないが、2017年3月期以降の配当性向がおおむね30%程度で推移していること、2021年3月期は好業績が予想されることから、一定水準以上の配当が実施されることを期待したい。
■情報セキュリティ
同社が顧客から預かるデータの中には、秘匿情報や個人情報など、情報管理が必要なコンテンツが存在しており、システムの設計や運用上でこれら情報が漏えいすることのないように厳重に管理、加えてプライバシーマークの認定も受けている。また、運営するWebサイトに対しては外部機関による脆弱性検査を、サイバー攻撃についても随時システムの強化を実施している。システムトラブルについては日々監視を行い、システム、ネットワークにかかわらず可能なものは二重化し、万一トラブルが発生した場合でも、短時間で復旧できるような体制を組んでいる。加えてオフィスでは、アンチウイルスソフトの利用やHDDの暗号化、操作ログ管理、USB使用禁止、社外持ち出し専用PCの運用や、営業社員を中心としたPCのシンクライアント化や位置情報管理など、個人情報などの情報漏えいへの対策を取っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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