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カドカワ Research Memo(5):2021年3月期業績は成長事業がけん引し、過去最高の営業利益を更新する見通し

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2021年3月期業績の見通し
KADOKAWA<9468>の2021年3月期の連結業績は売上高で前期比1.6%増の208,000百万円、営業利益で同29.8%増の10,500百万円、経常利益で同25.2%増の11,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.9%減の7,300百万円となる見通し。前期に計上した固定資産売却益等の特別利益がなくなるため親会社株主に帰属する当期純利益は減益となるが、営業利益は過去最高を更新する見通しだ。

コロナ禍の第3波が到来しつつあるものの、4つの成長事業(書籍、アニメ、ゲーム、教育)については下期も好調に推移し、全体業績をけん引する見通しだ。費用面では、所沢新オフィスの開設や70%水準のテレワーク体制によるオフィス賃借料の削減効果が見込まれる。

通期計画に対する2021年3月期第2四半期までの進捗率は、売上高で46.9%、営業利益で74.7%となっている。下期は減価償却費が増加すること(上期比で540百万円増)、Webサービス事業で収益成長を実現していくため積極投資を計画していること、ゲーム事業で費用増等を見込んでいることなどが要因だ。ただ、全体的には保守的な印象で会社計画の達成は十分可能と弊社では見ている。


4つの成長事業(書籍、アニメ、ゲーム、教育)が収益をけん引
2. 事業セグメント別見通し
(1) 出版事業
出版事業の売上高は前期比8.7%増の127,500百万円、営業利益は同32.8%増の8,300百万円となる見通し。高成長が続く電子書籍・電子雑誌では、話売りやサブスクリプションサービス(読み放題サービス)にコンテンツを積極投入し、更なる収益基盤の拡充に取り組んでいく。

また、紙書籍についてもライトノベルで累計2,000万部を超える大人気シリーズの9年半ぶりとなる新刊「涼宮ハルヒの直観」(2020年11月発売)や、累計1,500万部を超える「魔法科高校の劣等生」の続編となる「続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー」(2020年10月発売)など有力IPを多く投入する予定で、2021年3月期下期も増収を見込んでいる。

営業利益は、増収効果に加えて紙書籍の返品率改善によるコスト削減効果を見込んでいる。書店との専用発注端末連携により、返品率の改善に寄与している。専用発注端末導入店においては他店と比べて返品率を低減することが可能となるため、2020年も導入店舗数を拡大していく計画となっている。

(2) 映像事業
映像事業の売上高は前期比12.1%減の30,000百万円、営業利益は同3.6%増の2,200百万円となる見通し。2021年3月期下期も映画館での座席制限が継続しているため、売上高は減収となるものの、収益性の高いアニメ事業の拡大や同社IPを活用して他社が配信するオンラインゲームの権利許諾収入等の拡大等を見込んでいる。下期の期待IPとしては劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」(2020年12月25日公開)、TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園 スクールアイドル同好会」(2020年10月放送開始)等がある。

(3) ゲーム事業
ゲーム事業の売上高は前期比12.4%増の16,000百万円、営業利益は同142.4%増の3,100百万円となる見通し。2021年3月期下期は有力タイトルとして、スパイク・チュンソフトが日本向けにローカライゼーションして発売する「サイバーパンク2077」※1(2020年12月10日発売予定)と、大人気ライトノベルを原作とする「Re:ゼロから始める異世界生活 偽りの王選候補」※2(2021年1月28日発売予定)を発売する。

※1 開発元はポーランドのCD PROJEKT RED。未来世界を舞台とするオープンワールド型のRPG。プラットフォームはPS4/Xbox One/PCに対応。将来的に予定されているPS5版への無料アップグレードにも対応。
※2 原作者完全監修のオリジナルストーリーで展開するタクティカルアドベンチャーゲーム。プラットフォームはPS4/Nintendo Switch/Steam。


営業利益を半期ベースで見ると、2021年3月期第2四半期累計の2,804百万円から下期は296百万円に減少する格好となっている。第2四半期累計では採算の良いリピート品の販売が好調だったことに加え、下期はコスト増を見込んでいるためだが、弊社では下期も販売本数が伸びる可能性が高いことから、ゲーム事業の業績は計画を上振れする可能性も十分あると見ている。

(4) Webサービス事業
Webサービス事業の売上高は前期比15.5%減の20,900百万円、営業利益は同49.8%減の1,400百万円となる見通し。ポータル事業においてニコニコプレミアム会員数が下げ止まりつつあるものの、売上高についてはまだ減収が続く見通し。また、ライブ事業についてもリアルイベントからネットイベントへの切り替えが継続しており、2021年3月期下期も減収を見込んでいる。

営業利益に関しては、第2四半期累計の1,209百万円から下期は191百万円と大きく落ち込む計画となっている。これはポータル事業を成長フェーズに回復させるべく、プレミアム会員数増加とニコニコの各種サービス拡大に向けた投資を積極的に行うことが要因となっている。具体的には、プレミアム会員だけが視聴できる魅力的なコンテンツの獲得やUI機能向上のための開発投資、プロモーションコストの投下によってプレミアム会員数の増加を目指すほか、ニコニコチャンネルにおいて同社グループのIPを生かしたコンテンツを40チャンネル程度まで拡大し、顧客のLTV向上につなげていく。

(5) その他事業
その他事業の売上高は前期比11.3%増の21,700百万円、営業損失は3,600百万円(前期は2,583百万円の損失)となる見通し。売上高は生徒数の拡大を背景として教育事業の拡大が続くほか、ところざわサクラタウンの開業による新規事業(ホテル事業、イベント事業、飲食店事業等)での収入増を見込む。

営業損失が拡大する要因としては、ところざわサクラタウン開業に伴う先行投資負担増によるもので、教育事業については増益を見込んでいる。また、不採算事業については個別に精査し、事業撤退または再構築策を実施していく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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