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カドカワ Research Memo(6):グループのコンテンツ事業は「DX×ABW」により、新たな成長ステージへ

注目トピックス 日本株
■KADOKAWA<9468>の中期経営方針

1. 事業環境認識と今後の方向性について
コロナ禍によって、企業活動並びに生活環境が大きく変化するなかで、ニューノーマルの時代に対応した成長戦略が求められている。同社グループにおいては、前述したようにIPの創出力や展開力といった強みが、2020年4月以降の業績面で成長の原動力になっていると考えられる。同社グループでは、コンテンツ事業の「DX×ABW※」の更なる推進によって、新たな成長ステージ入りを目指している。

※ABW(Activity Based Working)とは、仕事内容に合わせて働く場所や机などを選ぶ働き方。例えば、集中作業を静かな部屋で行い、打合せをソファ等で行うなどフレキシブルに場所を選んで働くことを指す。


今後の取組方針としては以下の点を掲げている。

a) 年間5千点+αの書籍新刊発刊、ゲーム、アニメでのオリジナルIP(=基礎コンテンツ)の制作を継続していくことで、多角的かつ安定的な事業成長基盤の構築を図る。
b) オリジナルIPの自社展開だけでなく、伸びしろの大きいパブリッシング事業の取り込みにより、事業の成長余地を拡大していく。
c) DX化の推進により、事業・経営インフラの両面でレベルアップを図る。
d) コロナ禍の終息に向けて、リアル事業の拡充を急ぐ。
e) ABW/ABT(Activity Based Teams)もリアルでの仕事場価値を再認識し推進していく。


豊富で多様なIPをメディアミックス戦略によりグローバル展開し、リアルとデジタルの融合によりIPの価値最大化に取り組む
2. 基本戦略と経営環境の変化
(1) 基本戦略
同社は成長を実現していくうえでの基本戦略として、強みであるIPの「創出力」「展開力」「体験力」を融合し、メディアミックス戦略によりグローバル展開していくことを掲げている。例えば、有望なIPをアニメ化やゲーム化し、グローバル展開していくほか、海外のプラットフォーマーとの連携(コンテンツの共同制作等)を強化していく。また、IPの世界観をリアルのイベントやグッズ展開、Webでのファンコミュニティなどで体験してもらうことで顧客との接点拡大を図り、DXへの取り組みを推進することでこれらの展開スピードを加速し、IPの価値最大化を目指していく戦略となっている。

(2) 経営環境の変化
コロナ禍によって、コトビジネスや対面業務の遅れが発生した反面、ネットを通じたIP需要が増加するなど市場環境が2020年春以降大きく変化したが、同社はABWやDXへの先行投資によって、こうした変化に柔軟に対応しながら、IP需要を取り込むことに成功している。

マイナス面の影響としては、前述したようにリアルイベントの中止・延期や映像作品の放映・公開延期に加えて、所沢新工場で進めている製造・物流改革プロジェクトの遅延が発生している。製造ラインの構築に必要な海外技術者の来日や海外からの製品・技術情報の収集に遅れが生じていることが要因となっており、同工場での本格稼働は1年程度遅れる可能性がある。

一方で、プラス面の影響としては、ネットイベントが過去最多の来場者数(ニコニコネット超会議1,774万人)となったことや電子書籍の売上拡大(前年同期比(2020年1-8月)38%増、海外売上も月間1億円超え)、映像サブスクリプションの成長、ゲーム販売の好調などネット中心のIP需要の増加が挙げられる。こうしたプラス面の多くは一時的な現象ではなく、数年後に到来するはずであった事象が前倒しされたものと考えられ、今後のニューノーマルな時代においても基本的な流れは変わらないものと弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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