テクマト Research Memo(6):テレワーク普及でネットワーク・セキュリティに対する需要が一段と拡大(2)
[20/12/11]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■テクマトリックス<3762>の業績動向
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上高は前年同期比2.9%増の4,621百万円、営業利益は同16.1%増の449百万円となった。前年同期と同じ会計基準で比較すると、売上高は同0.9%増の4,534百万円、営業利益は同6.3%増の412百万円となり、会計基準の変更による影響は軽微となっている。また、受注高は前述したようにコロナ禍の影響が一部の事業で見られたことから、前年同期比4.4%減の4,912百万円と3年ぶりに減少に転じた。ただ、受注残高についてはクラウドサービスの積み上がりにより同14.2%増の9,124百万円と過去最高を更新している。
売上高(単体のアプリケーション・サービス事業及びNOBORIの売上合計)のうち、非ストック売上はCRM製品の販売好調により前年同期比7.2%増の1,857百万円となり、ストック売上は「NOBORI」の契約施設数の増加を背景に同4.8%増の2,365百万円と伸長した。ストック売上比率は、前年同期とほぼ同水準の56.0%となった。同社は、ストック売上比率を近い将来60%超の水準まで引き上げていくことを目指している。
a) 医療分野
分野別の売上動向を見ると、医療分野は「NOBORI」の契約施設数が順調に増加し、前年同期比で1ケタ増収となった。既存顧客の契約更新や他社製品からのリプレイスだけでなく、最近は小規模医療施設の契約件数も増え始めているようだ。一方で、コンシューマ(患者)をターゲットとしたPHRサービスの開発や、AIを活用した医用画像診断支援システムの共同開発等の先行投資も継続して実施した。
PHRサービスはスマートフォンアプリ「NOBORI」を通じて、患者自身が医療情報(薬情報、血液検査、検査画像情報、経過記録や画像診断レポート等のカルテ情報など)を参照・管理できるサービスとなる。また、診察・検査の予約や外来受付の待合番号確認、家族間での情報共有、個人のヘルスケア情報等との連携機能など様々なサービスの利用が可能となる(医療機関によって提供可能なサービスは異なる)。2020年5月の正式リリース以降、一部の医療機関で運用してきたが、利用者からの評価も高いことから他の医療機関でも利用できるよう拡販フェーズに移行する。ビジネスモデルとしては月額課金のサブスクリプションモデルとなるが、料金体系については今後検討していく方針だ。
一方、AIによる医用画像診断支援サービスでは、2020年5月にNOBORIとエムスリー<2413>が業務提携し、共同でAIプラットフォーム事業を展開していくことを発表している。NOBORIが持つセキュアなITプラットフォームと、エムスリーが世界中で構築してきた広範な医師ネットワークを組み合わせることで、事業展開を加速していく戦略だ。2020年10月末時点で5つのAI診断サービスを揃え、約120施設の医療機関で試験導入している。無償期間は4ヶ月となっており、今後期限が到来した医療機関から有料化へ転換を図っていく予定にしている。利用できるサービスはいずれもAIベンチャー等の他社が開発したものとなる。NOBORIはAI診断支援サービス利用料の一部を開発企業等とシェアしていくものと見られる。なお、エルピクセルに関しては2018年に同社も資本出資を行っている。
「医知悟」についてはコロナ禍の影響により、健診施設を中心に画像検査件数が一時的に減少したため読影依頼件数も伸び悩んだものの、非常事態宣言解除後は徐々に件数も回復し、平常時の水準まで戻っている。また、子会社のA-Lineによる医療被ばく線量管理システム「MINCADI」の受注は順調に増加した。
b) CRM分野
CRM分野では、引き続きFAQナレッジ管理システム「FastAnswer2」の新バージョン※1や、コンタクトセンターCRMシステム「FastHelp5」の新バージョン※2の評価が高く、大手SIベンダーやテレマーケティング・ベンダーとの業務提携、クラウド需要の拡大、認知度の向上などによって、売上高は前年同期比2ケタ増と好調を持続した。コロナ禍においてコンタクトセンターでも在宅勤務を導入、または導入を検討している企業が増えており、在宅化に対応したITソリューション(メール・チャット機能の拡充、FAQコンテンツの充実)の強化を図ったことも好調の要因となっている。ただ、CRM分野の需要は景気に対してやや遅れる傾向があり、下期の受注動向については慎重に見ておく必要がある。
※1 社内で作成・利用するナレッジを「外部公開用FAQ」(お客様用FAQ)と「内部用FAQ」(顧客対応時に参照するFAQや製品情報・規約集等の文書情報からなるFAQナレッジ)の両用途に適用可能としたほか、ダッシュボード機能の追加や直観的な操作で運用できるようにUIの改良を行い、ナレッジ管理機能の強化を図った。
※2 「Fast API」を通じて複数のチャットボットシステムとの連携を可能とした。
c) ソフトウェア品質保証分野
ソフトウェア品質保証分野は、旧会計基準ベースで前年同期比2ケタ減収と低調に推移した。コロナ禍の影響で、組込みソフトウェア開発分野における新規顧客獲得を目的とした大規模展示会の開催が中止となり、2021年3月期第1四半期の受注が大きく落ち込んだこと、また、金融機関や企業向けを対象としたエンタープライズ系のソフトウェア開発分野においても、プロジェクト着手時期の遅れや棚上げとなる案件が増え、減収要因となった。なお、組込みソフトウェア開発分野の受注は、第2四半期以降回復基調にある。
d) ビジネスソリューション分野
ビジネスソリューション分野の売上高は前年同期比1ケタ減となった。学術系公共機関向けのシステム開発案件が堅調だったほか、ベンチャーキャピタル向けのファンド運営・管理システムの需要も好調だったが、子会社のカサレアルで提供している対面型IT研修サービスがコロナ禍において開催できず、減収要因となった。だた、オンライン型研修の開始や、2021年3月期第2四半期以降は対面型研修サービスも再開しており、徐々に売上は回復しつつある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上高は前年同期比2.9%増の4,621百万円、営業利益は同16.1%増の449百万円となった。前年同期と同じ会計基準で比較すると、売上高は同0.9%増の4,534百万円、営業利益は同6.3%増の412百万円となり、会計基準の変更による影響は軽微となっている。また、受注高は前述したようにコロナ禍の影響が一部の事業で見られたことから、前年同期比4.4%減の4,912百万円と3年ぶりに減少に転じた。ただ、受注残高についてはクラウドサービスの積み上がりにより同14.2%増の9,124百万円と過去最高を更新している。
売上高(単体のアプリケーション・サービス事業及びNOBORIの売上合計)のうち、非ストック売上はCRM製品の販売好調により前年同期比7.2%増の1,857百万円となり、ストック売上は「NOBORI」の契約施設数の増加を背景に同4.8%増の2,365百万円と伸長した。ストック売上比率は、前年同期とほぼ同水準の56.0%となった。同社は、ストック売上比率を近い将来60%超の水準まで引き上げていくことを目指している。
a) 医療分野
分野別の売上動向を見ると、医療分野は「NOBORI」の契約施設数が順調に増加し、前年同期比で1ケタ増収となった。既存顧客の契約更新や他社製品からのリプレイスだけでなく、最近は小規模医療施設の契約件数も増え始めているようだ。一方で、コンシューマ(患者)をターゲットとしたPHRサービスの開発や、AIを活用した医用画像診断支援システムの共同開発等の先行投資も継続して実施した。
PHRサービスはスマートフォンアプリ「NOBORI」を通じて、患者自身が医療情報(薬情報、血液検査、検査画像情報、経過記録や画像診断レポート等のカルテ情報など)を参照・管理できるサービスとなる。また、診察・検査の予約や外来受付の待合番号確認、家族間での情報共有、個人のヘルスケア情報等との連携機能など様々なサービスの利用が可能となる(医療機関によって提供可能なサービスは異なる)。2020年5月の正式リリース以降、一部の医療機関で運用してきたが、利用者からの評価も高いことから他の医療機関でも利用できるよう拡販フェーズに移行する。ビジネスモデルとしては月額課金のサブスクリプションモデルとなるが、料金体系については今後検討していく方針だ。
一方、AIによる医用画像診断支援サービスでは、2020年5月にNOBORIとエムスリー<2413>が業務提携し、共同でAIプラットフォーム事業を展開していくことを発表している。NOBORIが持つセキュアなITプラットフォームと、エムスリーが世界中で構築してきた広範な医師ネットワークを組み合わせることで、事業展開を加速していく戦略だ。2020年10月末時点で5つのAI診断サービスを揃え、約120施設の医療機関で試験導入している。無償期間は4ヶ月となっており、今後期限が到来した医療機関から有料化へ転換を図っていく予定にしている。利用できるサービスはいずれもAIベンチャー等の他社が開発したものとなる。NOBORIはAI診断支援サービス利用料の一部を開発企業等とシェアしていくものと見られる。なお、エルピクセルに関しては2018年に同社も資本出資を行っている。
「医知悟」についてはコロナ禍の影響により、健診施設を中心に画像検査件数が一時的に減少したため読影依頼件数も伸び悩んだものの、非常事態宣言解除後は徐々に件数も回復し、平常時の水準まで戻っている。また、子会社のA-Lineによる医療被ばく線量管理システム「MINCADI」の受注は順調に増加した。
b) CRM分野
CRM分野では、引き続きFAQナレッジ管理システム「FastAnswer2」の新バージョン※1や、コンタクトセンターCRMシステム「FastHelp5」の新バージョン※2の評価が高く、大手SIベンダーやテレマーケティング・ベンダーとの業務提携、クラウド需要の拡大、認知度の向上などによって、売上高は前年同期比2ケタ増と好調を持続した。コロナ禍においてコンタクトセンターでも在宅勤務を導入、または導入を検討している企業が増えており、在宅化に対応したITソリューション(メール・チャット機能の拡充、FAQコンテンツの充実)の強化を図ったことも好調の要因となっている。ただ、CRM分野の需要は景気に対してやや遅れる傾向があり、下期の受注動向については慎重に見ておく必要がある。
※1 社内で作成・利用するナレッジを「外部公開用FAQ」(お客様用FAQ)と「内部用FAQ」(顧客対応時に参照するFAQや製品情報・規約集等の文書情報からなるFAQナレッジ)の両用途に適用可能としたほか、ダッシュボード機能の追加や直観的な操作で運用できるようにUIの改良を行い、ナレッジ管理機能の強化を図った。
※2 「Fast API」を通じて複数のチャットボットシステムとの連携を可能とした。
c) ソフトウェア品質保証分野
ソフトウェア品質保証分野は、旧会計基準ベースで前年同期比2ケタ減収と低調に推移した。コロナ禍の影響で、組込みソフトウェア開発分野における新規顧客獲得を目的とした大規模展示会の開催が中止となり、2021年3月期第1四半期の受注が大きく落ち込んだこと、また、金融機関や企業向けを対象としたエンタープライズ系のソフトウェア開発分野においても、プロジェクト着手時期の遅れや棚上げとなる案件が増え、減収要因となった。なお、組込みソフトウェア開発分野の受注は、第2四半期以降回復基調にある。
d) ビジネスソリューション分野
ビジネスソリューション分野の売上高は前年同期比1ケタ減となった。学術系公共機関向けのシステム開発案件が堅調だったほか、ベンチャーキャピタル向けのファンド運営・管理システムの需要も好調だったが、子会社のカサレアルで提供している対面型IT研修サービスがコロナ禍において開催できず、減収要因となった。だた、オンライン型研修の開始や、2021年3月期第2四半期以降は対面型研修サービスも再開しており、徐々に売上は回復しつつある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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