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Jトラスト Research Memo(3):日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業を中心に業績は堅調(2)

注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の業績動向

(3) 東南アジア金融事業
同社グループでは東南アジア金融事業が第3の収益の柱に成長し、グループの業績をけん引することを目指している。2020年12月期第3四半期累計の東南アジア金融事業の営業収益は12,014百万円(前期は9,673百万円)と、前期期中でグループインしたカンボジアのJ Trust Royal Bank(JTRB)の業績を今期は期初から計上していることもあり増収となった。一方、営業損失は4,322百万円(同4,624百万円の損失)に縮小した。前期はJTRB買収に伴う負ののれん発生益3,355百万円を同セグメントで計上していたため、この一時的要因を除いた本業ベースでは業績は改善傾向にあると言える。再建に向けた改革を継続している効果が着実に表れ始めていたが、現在はコロナ禍により停滞している状況のため、今後はコロナ禍の影響が少ないカンボジアでの貸出拡大などで東南アジア金融事業の業績回復を目指す。

長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったBank J Trust Indonesia(BJI)については、新会社JTRUST INVESTMENTS INDONESIA(JTII)を設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図ってきた。2019年3月期決算においてBJIでは買収前からの負の遺産である不良債権を前倒しで一括処理を断行し、東南アジア金融事業の業績急回復を実現するための基盤を整えた。その結果、BJIの貸出残高は2019年1月の715億円から2019年11月には438億円に減少した後に反転し始めたものの、現在はコロナ禍の影響を注視して一時的に新規貸出を抑制しており、2020年9月の残高は493億円にとどまる。また、貸出残高減少に伴って90日以上延滞債権率は若干上昇傾向にあり、2019年12月の1.49%を底に、2020年9月時点で4.27%に上昇している。

2018年10月に株式60%を取得しグループ傘下に収めたマルチファイナンス会社のJTRUST OLYMPINDO MULTI FINANCE(JTO)は、オートローン業界の老舗として高い知名度があり、インドネシア全土の支店網や取引金融機関との豊富なネットワークを有している。従来の中古車ローンに加え農機具ローンや新車ローンなど新しい商品の提供を始めてきたが、コロナ禍が拡大しているなかで市場の変化を考慮し、現在は農機具ローンと小口のマイクロファイナンス以外の新規貸付を一旦停止している。JTOのアセットは、2019年1月の89億円が2020年3月には136億円にまで増加したが、同年9月には111億円に減少した。一方、コロナ禍に伴う政府政策による債務再編申請に伴い、90日以上延滞債権率は2019年1月の1.70%から2020年9月には2.99%に上昇しているが、債権回収体制の強化により業界平均(2020年9月末で4.93%)と比較して低い水準に抑制できている。

債権回収業のJTIIについては、BJIより移管された不良債権に対しては貸倒引当金を計上済であり、これまでに蓄積したノウハウを活用して買取債権の回収拡大を進めている。2020年4月〜6月のロックダウン(都市封鎖)中も、法的手続きの強化により回収金額は堅調に推移している。特に8月には大口回収案件があり、JTIIの実績に貢献した。

加えて、2019年8月には、カンボジアの商業銀行42行中でTOP10に入る資産規模(2018年12月末当時)のANZ Royal Bank(Cambodia)の株式55%を取得し、商号をJTRBに変更した。グループ入り後、貸出残高は順調に増加していたが、カンボジア国内でもコロナ禍が拡大しているため新規貸付を抑制した。ただ、同国のコロナ禍は周辺国に比べて軽微であることから、収益力向上に向けて貸出残高の積み上げを再開している。その結果、2020年9月の貸出残高は618億円に増加した一方で、90日以上延滞債権率は0.59%の低位にとどまっている。なお、カンボジアは同社グループにとって6ヶ国目の進出先となる。

(4) 投資事業
投資事業では、シンガポールを拠点に、事業のシナジー性や商品力などを総合的に判断し、投資先を選定する。特に、金融事業や金融事業とシナジー効果が見込める事業に投資している。投資事業は、現在係争中のJトラストアジアが保有するGroup Lease (GL)に対する債権の全額について200億円超の貸倒引当金繰入額を計上したこと等により、2019年3月期には大幅な損失を計上した。また、2020年12月期第3四半期累計も、GLとの訴訟関係費用の継続計上等により、営業収益は731百万円(前期は815百万円)、営業損失は1,223百万円(同1,768百万円の損失)となった。ただ、既に十分な貸倒引当金を引き当てたことで、今後は将来の回収金は利益計上されることになるため、回収に尽力することでグループ全体の業績回復に貢献する計画である。

(5) 総合エンターテインメント事業
同社グループでは、非金融事業として総合エンターテインメント事業、不動産事業、システム事業などを展開している。総合エンターテインメント事業の2020年12月期第3四半期累計の営業収益は6,189百万円(前期は4,850百万円)、営業損失は451百万円(同265百万円の損失)となった。同社グループでは、非金融事業の整理により効率化を進めてきたが、2020年8月12日に不動産事業を行う孫会社を外部に譲渡することを決定し、今後はエンターテインメントに関する事業をポートフォリオの主体とすることとした。ただ、弊社では、本業である金融事業とのシナジーを考えると、引き続き見直し余地が大きい事業分野であると考える。

3. 財政状況と経営指標
2020年12月期第3四半期末の資産合計は、前期末比25,673百万円減の705,710百万円となった。これは主に、株式交換契約を締結したことなどにより、売却目的で保有する資産が200,299百万円増加した一方で、銀行業における貸出金が154,044百万円、銀行業における有価証券が28,700百万円、営業債権及びその他の債権が20,466百万円、棚卸資産6,828百万円、現金及び現金同等物が5,429百万円それぞれ減少したこと等による。一方、負債合計は、同21,000百万円減の591,477百万円となった。これは主に、株式交換契約を締結したことなどにより、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が177,992百万円増加した一方で、銀行業における預金が186,439百万円、社債及び借入金が14,133百万円それぞれ減少したこと等による。資本については、同4,673百万円減の114,232百万円となった。これは主に、海外子会社等の換算差額等の減少によりその他の資本の構成要素が4,067百万円減少したこと等による。

以上の結果、2020年12月期第3四半期末の親会社所有者帰属持分比率は13.6%であった。同比率は2017年3月期末の24.2%から低下しているものの、2019年度の東証1部銀行業の5%弱やその他金融業の6%弱を大きく上回る強固な財務基盤を維持しており、今後は利益の積み上げに伴い、徐々に改善に向かうと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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