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Jトラスト Research Memo(5):事業ポートフォリオの見直しを継続、当面は日本金融事業を中心に収益拡大目指す

注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の今後の成長戦略

IFRS転換が遅れたことに加え、韓国及びモンゴル金融事業では負ののれんの処理や当局の規制強化の影響、東南アジア金融事業では不良債権処理の影響、投資事業ではGL関連損失処理の影響などから、結果として前中期経営計画(2016年3月期〜2018年3月期)は予定どおりには進まなかった。現在、新たな中期経営計画の発表はなく、足元ではコロナ禍の影響が不透明な部分はあるが、会社として投資家に中期的な利益目標を示すことは非常に重要であると弊社では考える。

これまで同社グループでは主力の金融3事業を事業の中心に据え、長期的には日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的な収益を稼ぎ、潜在成長性の高い東南アジア金融事業をグループ発展の原動力とする戦略を進めてきた。ただ、2020年に入りコロナ禍のため世界経済が激変し、今後も変化しやすい状況が数年間にわたって継続する可能性があるなかで、同社グループではリスクにさらされやすい事業ポートフォリオの改善が必要と考えている。事業ポートフォリオ再編の第1弾として、不動産事業の中核会社を連結の範囲から外したほか、日本金融事業ではカード会社を、韓国及びモンゴル金融事業では韓国の貯蓄銀行2行の譲渡を決定したが、引き続き事業ポートフォリオの見直しを行う考えだ。

それに伴い、主力である金融主要3事業の今後の成長戦略として、以下のように計画している。

(1) 日本金融事業
日本金融事業では、Jトラストカードの株式をNexus Bankに譲渡し、信用保証事業の拡充と債権回収事業の強化によって更なる収益の拡大を図ることで、グループ全体の業績をリードする計画である。

子会社の日本保証では、2019年12月期の営業利益率48.3%、ROE32.2%、ROA23.4%と高い収益性を誇っている。同社の強みは、長年の不動産担保ローンの取り扱いにより蓄積された不動産に対する知見にあり、2020年9月末現在で地方銀行・信用金庫・信用組合など提携金融機関は10行、保証残高は2,107億円に達している。保証残高の74%を占める1,559億円は保証期間が長期間にわたるアパートローン保証であり、保証料収入の安定化に寄与している。金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は大幅な増加を期待しにくい環境にあるものの、今後は新築のみならず首都圏・大阪圏の収益性の高い中古・リノベーション再販の取り扱いを開始し、引き続き良質な物件に限定して保証を拡大する計画だ。

また日本保証では、ソーシャルレンディング保証ビジネスの拡大を図り、業界での保証ビジネスの確立を目指している。ソーシャルレンディング保証ビジネスとは、インターネットを介して不特定多数の投資家から資金を調達し(クラウドファンディング)、それを資金需要のある会社等に貸し付ける際に、不動産担保により保証を行うスキームである。これまでに3社と保証提携しているが、現在も複数のソーシャルレンディング業者と保証提携交渉中である。また、今後はNexus Bankとの保証ビジネスをモデルケースに、保証ビジネスの拡大を図る計画である。

さらに、日本保証では不動産のクラウドファンディングである「不動産特定共同事業法」に基づいた買取保証ビジネスを開始する。同社の不動産に対する目利き力を生かすビジネスであり、投資家は買取保証が付いているため安心して投資することが可能になる。2020年12月に第1号保証案件を販売する予定である。

一方、パルティール債権回収では、2020年12月期も金融機関とのネットワークを生かし順調な買取実績で推移しているが、今後も信販系大手カード会社等からの債権買取を推進する計画である。

(2) 韓国及びモンゴル金融事業
韓国及びモンゴル金融事業では、貯蓄銀行2行(JT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行)の売却を決定した。JT親愛貯蓄銀行は2020年12月期第3四半期に直接親会社のJトラストカードとともにNexus Bankに株式交換方式で売却済みであり、JT貯蓄銀行はVI金融投資(株)に売却する予定である。2行ともに企業価値を最大化した状態で売却できたため、同社グループとしては手元流動性の確保と財務健全性の更なる強靭化を実現できた有意義な売却であった。

今後の韓国及びモンゴル金融事業は、リース業のJTキャピタル、債権回収業のTA資産管理(株)、モンゴルにおける割賦事業のJ Trust Credit NBFIトが中心になるが、収益の柱であった貯蓄銀行2行が抜けることで、韓国及びモンゴル金融事業の収益貢献は大きく低下する見通しである。

(3)東南アジア金融事業
現状は損失計上を続けている東南アジア金融事業については、インドネシアでは事業継続のための土台整備を2019年12月期までに完了したことで、今後は優良なアセットの積み上げと債権回収の推進を図る計画だ。また、新たに加わったカンボジアでは、顧客層を徐々に広げてアセット増加を図る方針だ。これらの施策によって、東南アジア金融事業も2021年12月期からは黒字化し、今後はグループ全体の成長を加速する原動力となるとの期待が大きかった。ただ、当面はコロナ禍の影響を注視する必要があるだろう。

実際、インドネシアでは、コロナ禍の影響により、実質GDP成長率は、これまでの5%台から2020年はマイナス成長になるとの見通しも出ている。このような厳しい経済環境のなか、JTOでは滞納の少ない農機具ローンを推進し、中古車ローンは抑制している。また、中小商店を対象にした事業者向けのローン(限度額7万円〜17万5千円程度、金利45%〜60%、期間最長1年)について、スマートフォンアプリを利用して申込フローを簡潔化し、融資までスピーディーな実行を実現するファイナンスサービスを試験的に開始した。運用が順調に進むようであれば、今後も拡大を検討している。インドネシアは東南アジア最大の人口を有しており、コロナ禍が収束すれば、金融業の市場として大きな発展性を秘めていると言えるだろう。

加えて2019年12月期より同社グループに加わったJTRBは、カンボジア商業銀行42行中10位の資産規模(2018年12月末当時)を持つ資産内容の良い優良銀行で、安定的に年間30億円超の営業利益を計上しており、グループへの利益貢献が期待される。JTRBでは、従来は超優良顧客のみを対象としていたが、今後は大企業から中堅企業まで、また個人は住宅ローンを中心に顧客層の拡大を図る方針である。2020年5月には、JTRBはカンボジアの大手資金移動業者であるWingとの連携により、Wingのスマートフォンアプリの簡単な操作により、銀行預金口座を保有していないWingの利用者にも預金金利のメリットが享受できる「マイクロ普通預金」の提供を開始した。カンボジア国内では周辺国に比して新型コロナウイルス感染症の拡大が抑制されており、また金融インフラが十分に行き渡っていないことから、金融サービスの裾野拡大への貢献が期待される。将来的には、カンボジアに続いてラオスやミャンマーなどへの進出も検討しているようだ。

(4) 事業ポートフォリオの更なる再編
これまで同社グループでは、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的に利益を確保する一方で、中期的には成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、持続的な成長を目指す方針であった。ただ、コロナ禍により世界各国で経済環境が急変し、先行き不透明感が増しているなか、現在は「ウィズコロナ」状況下での経済に最適化した事業ポートフォリオの再編を模索している。藤澤社長の強力なリーダーシップのもと、各国の政治や経済の情勢、事業の収益性などを総合的に判断し、グループ全体の事業の集中と選択を進めると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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