BS11 Research Memo(6):「6つの“力”」を具現化する重点施策を新たに「Value 5」として位置付け
[20/12/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略
1. 中期成長戦略の概要、「6つの“力”」の強化・実践を掲げる
日本BS放送<9414>は中期経営計画を策定し、それをメルクマール(指標、道標)に、中長期にわたる持続的成長を実現するべく取り組んでいる。しかしながら、コロナ禍に伴う状況の変化を考慮し、従来の中期経営計画の見直しを行った。これまでの基本戦略としていた「4つの“力”」として掲げている「マーケティング力」「企画力」「戦略構築力」「実行力」に、急激に変化する経営環境に対して挑戦し続けるための「変化対応力」「改革推進力」を加えた「6つの“力”」の強化・実践を掲げる。急激な変化を続ける経営環境を敏感に感じ取り、過去にとらわれず常に新たな挑戦を続け、充実したデータベースの分析と活用により潜在的な需要を喚起し、視聴者のニーズを的確に捉えた企画を立案、環境変化に応じた資源に対する効率的かつ効果的な戦略構築と、知恵と知識を結集して戦略を強力に実行する。「PDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善))」を回すことにより、良質な番組づくりへの実効性もより高まると期待される。
追加された「変化対応力」については、コロナ禍を含めた環境変化に対応することが挙げられる。テレビ業界においては広告収入が基本となっており、おおむね3ヶ月先まで決定している。そのため、環境変化が感じられるのにタイムラグが避けられないという面がある。しかし、今後はコロナ禍を含めた環境変化に応じた効率的な戦略構築を社内全体に浸透させていく狙いだ。一方、「改革推進力」は過去にとらわれず新たな試みに挑戦し続けることを指すが、広告収入の増収に向けた動きも含まれる。BS業界全体として2017年くらいまでは右肩上がりで成長しているが、ここにきて成長の伸びが鈍化してきている。同社は広告単価の安さをセールスポイントのひとつとしていたが、この考え方を一新させて成長を加速させる狙いがある。
2. 重点施策「Value 5」
「6つの“力”」を具現化する重点施策を新たに「Value 5」として位置付けている。前期までの「Value 7」で掲げていた「独立TV局の強みを最大限に活用」「自社制作番組の充実」「情報番組の選択と拡大」「アニメ関連事業の強化と発展」「他企業・ローカル局コラボの促進」「スポーツコンテンツの充実」「放送周辺事業の新規開発と増強」からより集中度を高め、「情報番組の新規、深耕開拓」「アニメ事業の強化と発展」「コラボレーション施策の促進」「新規事業の開発」「特番の強化」の5つの重点施策を強力に推進する計画である。BS放送事業者としての同社にとって、その根幹を成すのは番組であり、基本戦略「6つの“力”」や重点施策「Value 5」は、“良質な番組を作り、それを業績の成長につなげる”という目標の実現のための施策である。
(1) 「情報番組の新規、深耕開拓」
情報番組(通販番組)は、コロナ禍の影響でクライアントとなる通販各社が地上波へシフトする景況が顕著に表れてきたこともあり、これを取り戻す狙いがある。今までは通販番組は30分などの枠を提供し、通販各社が制作した番組を放映することがメインであった。つまり放映枠のセールスが中心であったが、今後は深耕開拓として同社番組と紐づけた新しい情報番組を同社から提案するほか、通販各社との新規企画などの共同開発を行っていく。
(2) 「アニメ事業の強化と発展」
同社の強みであるアニメにおいて毎週約40タイトルのアニメ関連番組の放送を行う。そのほか、アニメ声優、アニメソング歌手が出演するアニメ関連番組を強化していく。『声優がドラマに出たらこうなりました。〜聖地創生プロジェクト〜』を2020年1月より放送、『アニゲー☆イレブン!』は4月より新MCに声優を迎え、「癒し」を番組テーマにリニューアル。さらに、アニソン番組『Anison Days』の放送のほか、アニメ関連事業を発展させていく。同社はアニメ業界との強いパイプを持ち、製作委員会やクライアントとの強いアライアンスを組んでいる。コンテンツ販売では中国が柱になるだろうが、世界各国で日本のアニメは評価を受けていることもあり、同分野の取り組みは引き続き注目される分野である。出資するアニメの数だけではなく、同社が番組販売できるようにするなど、製作委員会の中での立ち位置、アニメ関連各社との環境強化を行うことにより、番組を放送するだけではなく周辺事業へ発展させていく。
(3) 「コラボレーション施策の促進」
独立系TV局の強みによって全国各地のテレビ局及び制作会社との共同制作番組の提供が可能であり、自社制作番組と外部リソースの最適なミックスによる視聴世帯数の更なる増加に取り組む。これまでもKBS京都や東京MX(東京メトロポリタンテレビジョン(株))と番組共同制作を行っているほか、2018年からは(株)岐阜放送、びわ湖放送(株)などとも番組共同制作を行っており、地上波の放送局とのコラボレーションを強化していく。また、同社の子会社で児童書の出版会社である理論社、国土社とのコラボレーション企画として2020年6月から読み聞かせの番組『今日のえほん』を制作しており、これもさらに発展させる計画である。また、世界220以上の国・地域で配信されている世界最大級のドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」とは、相互協力することでアライアンスを増やしていく。
(4) 「新規事業の開発」
同社は、コンテンツのマルチユースの推進、ネット配信事業の推進・強化・充実、2022年の開局15周年に向けた新規事業の開発などを掲げている。番組関連コンテンツのインターネットでの露出環境を拡大していくほか、アニメ関連の番組やアイドル番組のネット配信等を徐々に開始しており、これらの更なる強化を図っていく。
(5) 「特番の強化」
同社は、従来より視聴者の認知を高めるため、視聴データの分析に基づいた特番制作を行っている。営業と企画した番組のほかレギュラー番組のスピンオフ企画に加え、より収益性を重視しレギュラー化を見据えた番組を計画的に企画制作して、4月・10月の改編に向けたコンテンツにつなげる。
同社は良質な番組づくりに一貫して注力しており、その成果は目に見える形で表れてきている。しかし、そうした良質な番組を収益化する点においては、今般のコロナ禍が響いている。ただし、前述のとおり同社は独立系TV局の強みにより、全国のテレビ局及び制作会社との共同制作番組の提供が可能である。幅広い制作会社を選択して番組を制作することができるため、同社が制作したい番組を、最も魅力的な映像を制作できる会社と協力して制作し、視聴者に届けることができる。
なお、業績目標については、2019年10月に策定した「中期経営計画(2020−2022年度)」において、BSデジタル放送業界のトップ集団に入るべく、2022年8月期に売上高150億円の達成を目標としていたが、グループの経営環境がコロナ禍に伴い計数計画策定時に前提とした経営環境と比べ大幅に悪化しているため、見直しを検討している。現在、近時の経営環境を踏まえた新たな計数計画を策定中のため、決定次第速やかに公表する予定としている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<EY>
1. 中期成長戦略の概要、「6つの“力”」の強化・実践を掲げる
日本BS放送<9414>は中期経営計画を策定し、それをメルクマール(指標、道標)に、中長期にわたる持続的成長を実現するべく取り組んでいる。しかしながら、コロナ禍に伴う状況の変化を考慮し、従来の中期経営計画の見直しを行った。これまでの基本戦略としていた「4つの“力”」として掲げている「マーケティング力」「企画力」「戦略構築力」「実行力」に、急激に変化する経営環境に対して挑戦し続けるための「変化対応力」「改革推進力」を加えた「6つの“力”」の強化・実践を掲げる。急激な変化を続ける経営環境を敏感に感じ取り、過去にとらわれず常に新たな挑戦を続け、充実したデータベースの分析と活用により潜在的な需要を喚起し、視聴者のニーズを的確に捉えた企画を立案、環境変化に応じた資源に対する効率的かつ効果的な戦略構築と、知恵と知識を結集して戦略を強力に実行する。「PDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善))」を回すことにより、良質な番組づくりへの実効性もより高まると期待される。
追加された「変化対応力」については、コロナ禍を含めた環境変化に対応することが挙げられる。テレビ業界においては広告収入が基本となっており、おおむね3ヶ月先まで決定している。そのため、環境変化が感じられるのにタイムラグが避けられないという面がある。しかし、今後はコロナ禍を含めた環境変化に応じた効率的な戦略構築を社内全体に浸透させていく狙いだ。一方、「改革推進力」は過去にとらわれず新たな試みに挑戦し続けることを指すが、広告収入の増収に向けた動きも含まれる。BS業界全体として2017年くらいまでは右肩上がりで成長しているが、ここにきて成長の伸びが鈍化してきている。同社は広告単価の安さをセールスポイントのひとつとしていたが、この考え方を一新させて成長を加速させる狙いがある。
2. 重点施策「Value 5」
「6つの“力”」を具現化する重点施策を新たに「Value 5」として位置付けている。前期までの「Value 7」で掲げていた「独立TV局の強みを最大限に活用」「自社制作番組の充実」「情報番組の選択と拡大」「アニメ関連事業の強化と発展」「他企業・ローカル局コラボの促進」「スポーツコンテンツの充実」「放送周辺事業の新規開発と増強」からより集中度を高め、「情報番組の新規、深耕開拓」「アニメ事業の強化と発展」「コラボレーション施策の促進」「新規事業の開発」「特番の強化」の5つの重点施策を強力に推進する計画である。BS放送事業者としての同社にとって、その根幹を成すのは番組であり、基本戦略「6つの“力”」や重点施策「Value 5」は、“良質な番組を作り、それを業績の成長につなげる”という目標の実現のための施策である。
(1) 「情報番組の新規、深耕開拓」
情報番組(通販番組)は、コロナ禍の影響でクライアントとなる通販各社が地上波へシフトする景況が顕著に表れてきたこともあり、これを取り戻す狙いがある。今までは通販番組は30分などの枠を提供し、通販各社が制作した番組を放映することがメインであった。つまり放映枠のセールスが中心であったが、今後は深耕開拓として同社番組と紐づけた新しい情報番組を同社から提案するほか、通販各社との新規企画などの共同開発を行っていく。
(2) 「アニメ事業の強化と発展」
同社の強みであるアニメにおいて毎週約40タイトルのアニメ関連番組の放送を行う。そのほか、アニメ声優、アニメソング歌手が出演するアニメ関連番組を強化していく。『声優がドラマに出たらこうなりました。〜聖地創生プロジェクト〜』を2020年1月より放送、『アニゲー☆イレブン!』は4月より新MCに声優を迎え、「癒し」を番組テーマにリニューアル。さらに、アニソン番組『Anison Days』の放送のほか、アニメ関連事業を発展させていく。同社はアニメ業界との強いパイプを持ち、製作委員会やクライアントとの強いアライアンスを組んでいる。コンテンツ販売では中国が柱になるだろうが、世界各国で日本のアニメは評価を受けていることもあり、同分野の取り組みは引き続き注目される分野である。出資するアニメの数だけではなく、同社が番組販売できるようにするなど、製作委員会の中での立ち位置、アニメ関連各社との環境強化を行うことにより、番組を放送するだけではなく周辺事業へ発展させていく。
(3) 「コラボレーション施策の促進」
独立系TV局の強みによって全国各地のテレビ局及び制作会社との共同制作番組の提供が可能であり、自社制作番組と外部リソースの最適なミックスによる視聴世帯数の更なる増加に取り組む。これまでもKBS京都や東京MX(東京メトロポリタンテレビジョン(株))と番組共同制作を行っているほか、2018年からは(株)岐阜放送、びわ湖放送(株)などとも番組共同制作を行っており、地上波の放送局とのコラボレーションを強化していく。また、同社の子会社で児童書の出版会社である理論社、国土社とのコラボレーション企画として2020年6月から読み聞かせの番組『今日のえほん』を制作しており、これもさらに発展させる計画である。また、世界220以上の国・地域で配信されている世界最大級のドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」とは、相互協力することでアライアンスを増やしていく。
(4) 「新規事業の開発」
同社は、コンテンツのマルチユースの推進、ネット配信事業の推進・強化・充実、2022年の開局15周年に向けた新規事業の開発などを掲げている。番組関連コンテンツのインターネットでの露出環境を拡大していくほか、アニメ関連の番組やアイドル番組のネット配信等を徐々に開始しており、これらの更なる強化を図っていく。
(5) 「特番の強化」
同社は、従来より視聴者の認知を高めるため、視聴データの分析に基づいた特番制作を行っている。営業と企画した番組のほかレギュラー番組のスピンオフ企画に加え、より収益性を重視しレギュラー化を見据えた番組を計画的に企画制作して、4月・10月の改編に向けたコンテンツにつなげる。
同社は良質な番組づくりに一貫して注力しており、その成果は目に見える形で表れてきている。しかし、そうした良質な番組を収益化する点においては、今般のコロナ禍が響いている。ただし、前述のとおり同社は独立系TV局の強みにより、全国のテレビ局及び制作会社との共同制作番組の提供が可能である。幅広い制作会社を選択して番組を制作することができるため、同社が制作したい番組を、最も魅力的な映像を制作できる会社と協力して制作し、視聴者に届けることができる。
なお、業績目標については、2019年10月に策定した「中期経営計画(2020−2022年度)」において、BSデジタル放送業界のトップ集団に入るべく、2022年8月期に売上高150億円の達成を目標としていたが、グループの経営環境がコロナ禍に伴い計数計画策定時に前提とした経営環境と比べ大幅に悪化しているため、見直しを検討している。現在、近時の経営環境を踏まえた新たな計数計画を策定中のため、決定次第速やかに公表する予定としている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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