クオールHD Research Memo(7):「薬局の価値創出」に向けICTを活用した様々な取り組みを推進
[20/12/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況
2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況
調剤薬局業界においては、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」に取り組むことで成長を目指していく。
(1) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については2020年3月期末の805店舗から2023年3月期には1,000店舗に拡大することを目標としている。エリアとしては3大都市圏など人口の多いエリアを中心に展開していく考えで、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指している。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携が取れやすいところを対象に進めていく。また、薬科大学が近隣にある地域についても薬剤師の採用が進みやすいことから対象となる。同社では自力出店とM&Aで年間50〜70店舗のペースで出店していく計画となっている。
店舗形態としては引き続き、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象も同様となる。異業種連携による新業態薬局の店舗数については、2020年9月末時点で51店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が38店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗、駅クオールが8店舗となる。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって、収益力も向上している。新業態店舗では、Withコロナ時代の新しい生活様式において街ナカで力を発揮するサービスとして、ロッカーの設置(非接触受渡し)や処方箋送信アプリ(非接触受付)などの導入も一部店舗で開始しており、安全性と利便性を兼ね備えた店舗としての展開を進め、地域社会の生活インフラとしての機能を果たしていく考えだ。
調剤薬局業界はここ数年、大手企業によるM&Aが活発化しているが、今後はその動きがさらに加速すると見られている。現在、調剤薬局は全国に約5.9万店舗あり、市場規模としては約7.4兆円となるが、このうち、調剤売上高上位10社の合計は1.4兆円程度で、市場シェアにすると約19%の水準にとどまっている。ドラッグストア業界が上位10社で71%のシェアを占めていることを考えれば、大手企業による集約化が一段と進む可能性は高い。業界3番手である同社の売上高シェアも1.9%であり、今後の成長ポテンシャルは大きいと言える。集約化が加速する契機になると見られるのが2019年の薬機法改正となる。
改正の主なポイントは、オンライン服薬指導が全国で解禁されること(2020年9月〜)、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握、並びに服薬指導義務が発生すること(2020年9月〜)、患者自身が自ら適した薬局を選択できるよう、機能別薬局の知事認定制度が導入されること(2021年8月〜)の3点となる。
オンライン服薬指導の解禁は、患者の利便性が増す一方で、オンライン化に対応できない薬局にとって競争力の低下要因となる。同社においては2020年9月より全店舗で対応できる体制を整えた。物流体制の整備など課題は残っているものの、Withコロナの時代において、非接触での服薬指導のニーズは大きいと見られ、積極的な対応を進めていく考えだ。また、服薬期間中の服薬指導の義務化についても、対人業務が増えることにつながり、小規模店舗では負担が大きくなる可能性がある。
薬局の認定制度導入については、機能別に「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の2分類とし、機能の明確化を図ると同時に認定制度を導入する。具体的に認証取得と未取得でどのような違いが出てくるのかは、2021年春頃にも明らかとなる見通しだが、認定が取得できなかった薬局については患者数が減少するリスクが出てくる。
厚労省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定・公表し、その中で薬局に求められる機能の具体的な在り方として、「かかりつけ薬剤師・薬局」並びに「高度薬学管理機能」を示してきた。その後の調剤報酬改定による加算点の見直しも、こうした機能の強化を目的に実施されてきたため、今回の認定制度導入は既定路線とも言えるが、今回の改正によって経営体力のある大手と、中小規模の薬局で競争力の差が開くのは間違いなく、これを契機に大手企業による集約化が一段と進むものと弊社では見ている。同社にとっても、M&Aにより店舗拡大を図る好機と捉えることができる。なお、M&Aについては売上規模やシナジー効果の有無など社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。
(2) 薬局の価値創出
同社では薬機法の改正に伴う薬局の機能分化への対応、並びに2020年4月からの診療報酬改定によって対物業務から対人業務へのシフトが一層鮮明となるなかで、マンツーマン薬局としての強みとなる薬剤師のコミュニケーション能力向上や質の高い薬局づくり、先端技術の活用による業務効率向上とサービス品質の向上(=対物業務から対人業務への構造転換)に取り組むことでロイヤル顧客の獲得を進め、「薬局の価値創出」により収益力を高めていく戦略となっている。
薬局機能の分化への対応として、「地域連携薬局」に関してはマンツーマン薬局としての強みを発揮できるところでもあり、今後も在宅医療の推進やアフターフォローの拡充、プライバシーへの配慮などに取り組み、入退院時や在宅医療において医療機関と連携して対応できる薬局づくりを目指す。一方、「専門医療機関連携薬局」では、高度な薬学管理への対応が必要となることから、社内教育の充実により高度なスキルを持つ人材の育成に取り組み、医療機関と連携して対応できる薬局づくりを目指し、それぞれ2021年8月以降の認定取得に向け準備を進めていく。
また、先端技術を活用した次世代薬局づくりを目的に、クオール薬局恵比寿店をモデル店舗として、薬剤師の業務負担軽減と患者の待ち時間短縮を目的とした自動薬剤ピッキング装置「ドラッグステーション」や、非接触で薬の受渡しを可能とするオープン型宅配便ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」、遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」等を試験導入しており、効果を検証している段階にある。ロッカーに関しては駅ナカ店舗1店舗とナチュラルローソン豊洲店でも導入している。豊洲店では設置した小型ロッカーはユーザーからも好評で、今後、効果を検証して導入計画を策定していく。また、遠隔操作ロボットに関しては、採用活動においても活用している。ロボットを介して遠隔でも薬局でのオペレーションの様子を見学できるようにした。将来的にはロボットによる服薬指導などを行うことも構想として描いている。
オンライン服薬指導に関しては、2020年9月より全店で対応できるようにした。今後、処方元の医療機関と連携しながら患者のニーズに応えていく。配送については宅配事業者と連携して進めており、バイク便による即日配送サービスなども行っている。QRコードを用いたタッチレス決済サービスについても、同年9月より全国709店舗の薬局に導入した。キャッシュレス化による患者の利便性向上や、会計時のオペレーション効率化による時間短縮効果が期待される。
同社では業界の中でもデジタル技術を積極的に導入し業務改革を推進してきたが、2020年10月よりデジタルAI推進室を新設し、業務のデジタル化をさらに加速していくことを発表している。「利便性の高い医療サービスの提供」「患者サービスの向上」「従業員満足度の向上」についてこれまで以上の水準を目指し、政府が2022年夏頃の運用開始を目指している電子処方箋システムへの対応を今後、状況を見ながら進めていく。電子処方箋システムが構築されれば、紙の受渡しが不要となるほか、薬の重複投与の防止にもつながり、業務効率の向上や医療費の抑制の効果が期待されている。同社では300万人以上のクオールカード会員数を保有しており、これら会員基盤のビッグデータを活用して更なるサービスの向上にも取り組んでいく方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況
調剤薬局業界においては、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」に取り組むことで成長を目指していく。
(1) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については2020年3月期末の805店舗から2023年3月期には1,000店舗に拡大することを目標としている。エリアとしては3大都市圏など人口の多いエリアを中心に展開していく考えで、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指している。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携が取れやすいところを対象に進めていく。また、薬科大学が近隣にある地域についても薬剤師の採用が進みやすいことから対象となる。同社では自力出店とM&Aで年間50〜70店舗のペースで出店していく計画となっている。
店舗形態としては引き続き、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象も同様となる。異業種連携による新業態薬局の店舗数については、2020年9月末時点で51店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が38店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗、駅クオールが8店舗となる。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって、収益力も向上している。新業態店舗では、Withコロナ時代の新しい生活様式において街ナカで力を発揮するサービスとして、ロッカーの設置(非接触受渡し)や処方箋送信アプリ(非接触受付)などの導入も一部店舗で開始しており、安全性と利便性を兼ね備えた店舗としての展開を進め、地域社会の生活インフラとしての機能を果たしていく考えだ。
調剤薬局業界はここ数年、大手企業によるM&Aが活発化しているが、今後はその動きがさらに加速すると見られている。現在、調剤薬局は全国に約5.9万店舗あり、市場規模としては約7.4兆円となるが、このうち、調剤売上高上位10社の合計は1.4兆円程度で、市場シェアにすると約19%の水準にとどまっている。ドラッグストア業界が上位10社で71%のシェアを占めていることを考えれば、大手企業による集約化が一段と進む可能性は高い。業界3番手である同社の売上高シェアも1.9%であり、今後の成長ポテンシャルは大きいと言える。集約化が加速する契機になると見られるのが2019年の薬機法改正となる。
改正の主なポイントは、オンライン服薬指導が全国で解禁されること(2020年9月〜)、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握、並びに服薬指導義務が発生すること(2020年9月〜)、患者自身が自ら適した薬局を選択できるよう、機能別薬局の知事認定制度が導入されること(2021年8月〜)の3点となる。
オンライン服薬指導の解禁は、患者の利便性が増す一方で、オンライン化に対応できない薬局にとって競争力の低下要因となる。同社においては2020年9月より全店舗で対応できる体制を整えた。物流体制の整備など課題は残っているものの、Withコロナの時代において、非接触での服薬指導のニーズは大きいと見られ、積極的な対応を進めていく考えだ。また、服薬期間中の服薬指導の義務化についても、対人業務が増えることにつながり、小規模店舗では負担が大きくなる可能性がある。
薬局の認定制度導入については、機能別に「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の2分類とし、機能の明確化を図ると同時に認定制度を導入する。具体的に認証取得と未取得でどのような違いが出てくるのかは、2021年春頃にも明らかとなる見通しだが、認定が取得できなかった薬局については患者数が減少するリスクが出てくる。
厚労省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定・公表し、その中で薬局に求められる機能の具体的な在り方として、「かかりつけ薬剤師・薬局」並びに「高度薬学管理機能」を示してきた。その後の調剤報酬改定による加算点の見直しも、こうした機能の強化を目的に実施されてきたため、今回の認定制度導入は既定路線とも言えるが、今回の改正によって経営体力のある大手と、中小規模の薬局で競争力の差が開くのは間違いなく、これを契機に大手企業による集約化が一段と進むものと弊社では見ている。同社にとっても、M&Aにより店舗拡大を図る好機と捉えることができる。なお、M&Aについては売上規模やシナジー効果の有無など社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。
(2) 薬局の価値創出
同社では薬機法の改正に伴う薬局の機能分化への対応、並びに2020年4月からの診療報酬改定によって対物業務から対人業務へのシフトが一層鮮明となるなかで、マンツーマン薬局としての強みとなる薬剤師のコミュニケーション能力向上や質の高い薬局づくり、先端技術の活用による業務効率向上とサービス品質の向上(=対物業務から対人業務への構造転換)に取り組むことでロイヤル顧客の獲得を進め、「薬局の価値創出」により収益力を高めていく戦略となっている。
薬局機能の分化への対応として、「地域連携薬局」に関してはマンツーマン薬局としての強みを発揮できるところでもあり、今後も在宅医療の推進やアフターフォローの拡充、プライバシーへの配慮などに取り組み、入退院時や在宅医療において医療機関と連携して対応できる薬局づくりを目指す。一方、「専門医療機関連携薬局」では、高度な薬学管理への対応が必要となることから、社内教育の充実により高度なスキルを持つ人材の育成に取り組み、医療機関と連携して対応できる薬局づくりを目指し、それぞれ2021年8月以降の認定取得に向け準備を進めていく。
また、先端技術を活用した次世代薬局づくりを目的に、クオール薬局恵比寿店をモデル店舗として、薬剤師の業務負担軽減と患者の待ち時間短縮を目的とした自動薬剤ピッキング装置「ドラッグステーション」や、非接触で薬の受渡しを可能とするオープン型宅配便ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」、遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」等を試験導入しており、効果を検証している段階にある。ロッカーに関しては駅ナカ店舗1店舗とナチュラルローソン豊洲店でも導入している。豊洲店では設置した小型ロッカーはユーザーからも好評で、今後、効果を検証して導入計画を策定していく。また、遠隔操作ロボットに関しては、採用活動においても活用している。ロボットを介して遠隔でも薬局でのオペレーションの様子を見学できるようにした。将来的にはロボットによる服薬指導などを行うことも構想として描いている。
オンライン服薬指導に関しては、2020年9月より全店で対応できるようにした。今後、処方元の医療機関と連携しながら患者のニーズに応えていく。配送については宅配事業者と連携して進めており、バイク便による即日配送サービスなども行っている。QRコードを用いたタッチレス決済サービスについても、同年9月より全国709店舗の薬局に導入した。キャッシュレス化による患者の利便性向上や、会計時のオペレーション効率化による時間短縮効果が期待される。
同社では業界の中でもデジタル技術を積極的に導入し業務改革を推進してきたが、2020年10月よりデジタルAI推進室を新設し、業務のデジタル化をさらに加速していくことを発表している。「利便性の高い医療サービスの提供」「患者サービスの向上」「従業員満足度の向上」についてこれまで以上の水準を目指し、政府が2022年夏頃の運用開始を目指している電子処方箋システムへの対応を今後、状況を見ながら進めていく。電子処方箋システムが構築されれば、紙の受渡しが不要となるほか、薬の重複投与の防止にもつながり、業務効率の向上や医療費の抑制の効果が期待されている。同社では300万人以上のクオールカード会員数を保有しており、これら会員基盤のビッグデータを活用して更なるサービスの向上にも取り組んでいく方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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