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窪田製薬HD Research Memo(1):「クボタメガネ」は早期の商用化を目指し、開発が順調に進む

注目トピックス 日本株
■要約

窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米クボタビジョン・インクを子会社に持つ持株会社である。現在は、近視の進行を抑制または改善させる効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」と、スターガルト病※及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、加齢黄斑変性等の網膜疾患患者向けの遠隔医療眼科用モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」はパートナー企業が見つかり次第、商用化を進める方針となっている。

※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。


1. クボタメガネの開発状況
同社はメガネのいらない世界をつくるという理想を掲げ、「クボタメガネ」の開発を加速して進めている。同デバイスは網膜に人工的な光刺激を能動的に与える同社独自の技術(アクティブスティミュレーション技術※1)を用いており、自然光を受動的に用いる先行他社製品とは一線を画したデバイスとなる。網膜に光の刺激を与えることで対象眼と比較して眼軸長※2が短縮し、近視の進行抑制または改善効果が期待される。2020年7月にニューヨーク州立大学、同年11月にはアイルランドのダブリン工科大学とそれぞれ共同研究契約を締結しており、開発を加速していく考えだ。今後の商用化にあたっては、パートナー企業との共同展開、もしくは国によっては単独で展開していくことも想定している。パートナーとしては製薬企業をはじめ、複数社から打診があるようだ。まずはプロトタイプ製品を2020年内に完成させ、2021年中の商品化に向け開発を進めていく方針だ。世界における近視人口は年々増加しており、同社は潜在的な市場規模として2030年に全世界で最大1兆3千億円の市場の可能性を有していると見ており、今後の動向が注目される。

※1 アクティブスティミュレーション技術:ナノテクノロジーを用いて能動的に特殊な映像を網膜に投影する技術のこと。特許も申請中となっている。
※2 角膜から網膜までの長さ。成人の場合、平均約24mmで、1〜2mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまうため、遠くが見えにくくなる(=近視)。


2. 開発パイプラインの状況
主要開発パイプラインのうち、スターガルト病治療薬候補の「エミクススタト塩酸塩」については、第3相臨床試験の被験者登録が完了している。今後、1日1回の経口投与を24ケ月継続して実施し、有効性が確認されれば販売承認申請を行う予定だ。販売パートナー契約についても、承認申請が視野に入ってくれば交渉が本格化するものと予想される。また、2020年8月にはFDA(米国食品医薬品局)より、同臨床試験が助成プログラムに選定されたことを発表しており、今後3年間で最大163万ドル(約1.7億円)の助成金が支給される見通しだ。一方、「PBOS」については2020年8月にスイスの眼科大学病院と共同研究契約を締結し、同大学病院にて「PBOS」で計測した患者の網膜断面の3D画像の解像度の検証や、性能を高めるためのソフトウェア改良並びに患者データの収集を行っている。2021年内にプロジェクトが完了する見込みで、同データを持ってパートナー候補企業との協議を進めていく。販売契約が締結されれば、米国にて商用化に向けた臨床試験を共同で開始するものと予想される。そのほか、2020年12月には同社が発見したVAP-1阻害剤を米国国立がん研究所に提出し、同研究所にて抗がん活性のスクリーニング評価を行うことを発表している。

3. 業績動向
2020年12月期第3四半期累計の連結業績は、NASAからの開発受託金収入37百万円を事業収益として計上し、営業損失は1,916百万円と前年同期比で492百万円縮小した。「PBOS」の開発費を中心に研究開発費が減少したことによる。2020年12月期の見通しに関しては事業収益で38百万円、営業損失で3,000百万円(前期は3,321百万円の損失)を見込んでいるが、研究開発費が当初予算よりも抑えられており、損失額に関しては若干縮小する可能性がある。なお、2020年9月末の手元キャッシュは約66億円となっており、当面の事業活動を行うに当たっての資金は十分に確保されている。また、「クボタメガネ」等の開発資金を目的として2020年7月に発行した第三者割当による新株予約権は、行使が順調に進んでおり、2020年11月末時点の未行使分は712万株相当となっている。

■Key Points
・眼科領域に特化して革新的な医薬品・医療デバイスの開発を目指す米国発のベンチャー企業
・「PBOS」はパートナー契約締結に向け、鍵を握る研究データが2021年内にまとまり、その後本格交渉開始へ
・2020年12月期の営業損失は研究開発費が当初想定よりも抑えられ、会社計画からやや縮小する可能性

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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