明豊ファシリ Research Memo(4):2021年3月期第2四半期累計は減収減益も、利益ベースでは計画を上回る
[20/12/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年3月期第2四半期累計業績の概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2021年3月期第2四半期累計業績は、売上高で前年同期比14.8%減の1,785百万円、営業利益で同28.5%減の277百万円、経常利益で同28.9%減の279百万円、四半期純利益で同32.6%減の183百万円となり、経常利益及び四半期純利益は第2四半期累計として5期ぶりの減益に転じた。ただ、会社計画比ではテレワーク等のDX化への取り組みを推進したことによる経費削減効果により各利益ともに2割強上回った。
コロナ禍において2020年4月に政府による緊急事態宣言が発出され、経済活動が停滞するなか、企業の投資意欲が冷え込み、引き合いから受注までに要する期間も一部で長期化するなどの影響が出たことで、社内で管理する受注粗利益や売上粗利益(売上高-社内コスト以外の原価(工事費、外注費等))は前年同期比で減少した。特に、第1四半期においては新規受注活動が停滞したが、第2四半期以降は引き合いも徐々に増え始めている。
こうした状況化において、売上高についてはアットリスクCM案件がなくなり、すべてピュアCMが選択されたこと、並びに、前期に受注済みの複数案件において、売上計上時期が第2四半期から第3四半期以降にずれこんだ影響等により減収となった。コロナ禍の影響により、公共分野で顧客側の優先順位が変更になった案件があったようだ。
この結果、売上総利益は前年同期比14.0%減の924百万円となった。販管費については人件費や交通費等のその他経費を中心に同5.9%減となったが、売上総利益の減少分をカバーできなかった。なお、第2四半期に本社フロアを増床し、近隣にあったサテライトオフィスを統合している。
分野別受注粗利益の構成比を見ると、オフィス分野が前年同期の30%から24%に、工場、研究所分野が同12%から8%にそれぞれ低下した。コロナ禍の影響で企業の投資意欲が慎重になったことが影響したと見られる。また、公共分野も同様に25%から15%に低下した。一方、構成比率が上昇した分野として、他(鉄道・学校等)が13%から27%、大阪支店が6%から11%となった。その他については、JR東日本の品川開発プロジェクト※の継続受注や、琉球大学、東京大学など国立大学からCM業務を受注したことなどが上昇要因となっている。また、大阪支店については、公共CM案件や既存顧客から工場案件を受注したことなどが上昇要因となっている。
※品川開発プロジェクトとは、JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2024年完成予定)で、総工費は約5,500億円と現在進行中の建設プロジェクトでは最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。
なお、公共分野に関しては基本的にプロポーザル方式※の案件のみ入札しており、その大半を落札している。なかでも、注目されるのは、2020年8月に経済産業省から受注した「令和2年度業務効率化や生産性向上を目的としたオフィス環境の導入に関する調査事業」だ。これは2020年1月に受注した「令和元年度産業経済研究委託事業」に続くプロジェクトとなる。前回のプロジェクトでは、経済産業省の現行オフィスにおける様々な課題・問題意識について調査・分析を行い、経済産業省が目指すべきオフィス環境及び働き方のコンセプトモデルの構築を支援した。今回受注したプロジェクトでは、前回構築したコンセプトモデルを踏まえつつ、テレワークやペーパーレスの推進などコロナ禍における社会的な働き方の変化を見据えて、新たなオフィス環境の実現と生産性向上に向けた多様な働き方への取り組みを具体化し、その実現に向けた計画を行うことを目的としたプロジェクトとなる。
※プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
経済産業省では現状、約4,000人の職員が勤務する本庁舎において、慢性的な会議室の不足や頻繁なレイアウト変更によるコストの増大、適切な文書管理・情報管理のための更なるペーパーレス化など、課題が山積している状況にあり、「働き方改革」も踏まえた先進的なオフィス構築のノウハウを蓄積する同社が受注したことも必然と言える。官公庁は民間企業よりもDX化が遅れていると言われており、菅政権でも新たにデジタル庁を創設するなど官公庁のDX化に対して積極的な姿勢を見せている。このため、今後は他の省庁でも「働き方改革」を踏まえたオフィス再構築の動きが期待され、実際にオフィス移転などの需要が発生した場合には、発注者支援業務の受注獲得につながる可能性がある。同社は難易度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトなどを多く手掛けきた実績もあるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2021年3月期第2四半期累計業績の概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2021年3月期第2四半期累計業績は、売上高で前年同期比14.8%減の1,785百万円、営業利益で同28.5%減の277百万円、経常利益で同28.9%減の279百万円、四半期純利益で同32.6%減の183百万円となり、経常利益及び四半期純利益は第2四半期累計として5期ぶりの減益に転じた。ただ、会社計画比ではテレワーク等のDX化への取り組みを推進したことによる経費削減効果により各利益ともに2割強上回った。
コロナ禍において2020年4月に政府による緊急事態宣言が発出され、経済活動が停滞するなか、企業の投資意欲が冷え込み、引き合いから受注までに要する期間も一部で長期化するなどの影響が出たことで、社内で管理する受注粗利益や売上粗利益(売上高-社内コスト以外の原価(工事費、外注費等))は前年同期比で減少した。特に、第1四半期においては新規受注活動が停滞したが、第2四半期以降は引き合いも徐々に増え始めている。
こうした状況化において、売上高についてはアットリスクCM案件がなくなり、すべてピュアCMが選択されたこと、並びに、前期に受注済みの複数案件において、売上計上時期が第2四半期から第3四半期以降にずれこんだ影響等により減収となった。コロナ禍の影響により、公共分野で顧客側の優先順位が変更になった案件があったようだ。
この結果、売上総利益は前年同期比14.0%減の924百万円となった。販管費については人件費や交通費等のその他経費を中心に同5.9%減となったが、売上総利益の減少分をカバーできなかった。なお、第2四半期に本社フロアを増床し、近隣にあったサテライトオフィスを統合している。
分野別受注粗利益の構成比を見ると、オフィス分野が前年同期の30%から24%に、工場、研究所分野が同12%から8%にそれぞれ低下した。コロナ禍の影響で企業の投資意欲が慎重になったことが影響したと見られる。また、公共分野も同様に25%から15%に低下した。一方、構成比率が上昇した分野として、他(鉄道・学校等)が13%から27%、大阪支店が6%から11%となった。その他については、JR東日本の品川開発プロジェクト※の継続受注や、琉球大学、東京大学など国立大学からCM業務を受注したことなどが上昇要因となっている。また、大阪支店については、公共CM案件や既存顧客から工場案件を受注したことなどが上昇要因となっている。
※品川開発プロジェクトとは、JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2024年完成予定)で、総工費は約5,500億円と現在進行中の建設プロジェクトでは最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。
なお、公共分野に関しては基本的にプロポーザル方式※の案件のみ入札しており、その大半を落札している。なかでも、注目されるのは、2020年8月に経済産業省から受注した「令和2年度業務効率化や生産性向上を目的としたオフィス環境の導入に関する調査事業」だ。これは2020年1月に受注した「令和元年度産業経済研究委託事業」に続くプロジェクトとなる。前回のプロジェクトでは、経済産業省の現行オフィスにおける様々な課題・問題意識について調査・分析を行い、経済産業省が目指すべきオフィス環境及び働き方のコンセプトモデルの構築を支援した。今回受注したプロジェクトでは、前回構築したコンセプトモデルを踏まえつつ、テレワークやペーパーレスの推進などコロナ禍における社会的な働き方の変化を見据えて、新たなオフィス環境の実現と生産性向上に向けた多様な働き方への取り組みを具体化し、その実現に向けた計画を行うことを目的としたプロジェクトとなる。
※プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
経済産業省では現状、約4,000人の職員が勤務する本庁舎において、慢性的な会議室の不足や頻繁なレイアウト変更によるコストの増大、適切な文書管理・情報管理のための更なるペーパーレス化など、課題が山積している状況にあり、「働き方改革」も踏まえた先進的なオフィス構築のノウハウを蓄積する同社が受注したことも必然と言える。官公庁は民間企業よりもDX化が遅れていると言われており、菅政権でも新たにデジタル庁を創設するなど官公庁のDX化に対して積極的な姿勢を見せている。このため、今後は他の省庁でも「働き方改革」を踏まえたオフィス再構築の動きが期待され、実際にオフィス移転などの需要が発生した場合には、発注者支援業務の受注獲得につながる可能性がある。同社は難易度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトなどを多く手掛けきた実績もあるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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