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明豊ファシリ Research Memo(6):2021年3月期業績はコロナ禍の影響が続くことを前提に期初計画を据え置く

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2021年3月期の業績見通し
明豊ファシリティワークス<1717>の2021年3月期の業績は、売上高が前期比9.4%減の3,945百万円、営業利益が同31.8%減の616百万円、経常利益が同32.0%減の616百万円、当期純利益が同35.1%減の415百万円と期初計画を据え置いた。2021年3月期はコロナ禍の影響が1年を通して続き、新規受注案件の減少、プロジェクトの中断、中止リスクを踏まえた保守的な計画となっていること、コロナ禍において現時点で進行中のプロジェクトについてはほぼ平常どおり稼働していること、第2四半期までの進捗率が利益ベースで計画を上回っていることなどから、計画を達成する可能性は高いと弊社では見ている。

第2四半期までの進捗率を見ると売上高で45.3%、経常利益で45.3%となっており、直近3年間の平均進捗率(売上高42.5%、経常利益38.2%)を上回るペースとなっている。なお、人員については年間10名弱程度の増員を計画に織り込んでいるが、引き続き厳選して採用を進めていく方針となっている。


オンラインと対面型の組み合わせによる新たな働き方への移行により生産性向上を実現
2. 経営方針の取り組み状況
同社は2021年3月期の経営方針として、「事業継続」「ポストコロナに向けた成長力の蓄積」「ポストコロナに適応したCMの提供」の3点をテーマとして掲げており、いずれも当初の狙い通りの成果が出ているようだ。

(1) 事業継続
事業継続に関して、進行中プロジェクトに関してはテレワークなどデジタル技術を活用しながら、平常通りの稼働を維持した。具体的には、同一プロジェクトのチームを対面型、テレワーク型と2分することで業務がストップするリスクを回避し、社外(顧客)ともテレワーク環境を構築することで業務の継続的な遂行を実現した。こうした取り組みにより、既存顧客からの新規プロジェクトについては継続的に受注することができた。

また、コロナ禍において自社開発システムと完全ペーパーレス化によるデジタル情報の共有により、テレワークと対面業務を効果的に活用したニューノーマルな働き方へ移行し、結果的に生産性を向上することに成功した点も注目される。緊急事態宣言解除後の2020年6月から9月にかけての社員のアクティビティを同社のMHS(マンアワーシステム)を使って分析したところ、前年同期と比べて顧客対応時間が増加し、逆にサポート・アシスタントや出張移動に費やす時間が減少した。2020年6月〜9月の1人当たり売上粗利益、並びに直接時間1時間当たりの売上粗利益は前年同期の水準を若干ながらも上回っており、こうした新たなワークスタイルの確立が生産性向上につながったものと同社では分析しており、今後の強みにもなっていくと見ている。なお、今回MHSについて顧客にも使えるようにしており、その状況を見ながら外部提供していくことも検討している。

(2) ポストコロナに向けた成長力の蓄積
a) 発注者への更なる価値の提供
スピード・コストに対する顧客のより強い要求に対応すべく、上流工程(基本構想段階)からの精緻な予算策定の支援に取り組んだほか、具体的な成果物に基づくプロジェクトの早期立ち上げと上流工程での意思決定を支援した。

b) 更なる顧客の信頼獲得
事業分野ごとに異なる顧客ニーズの変化を先読みし、それぞれの顧客に定期的に提案していくことで、同社のサービスの商品価値向上に取り組んでおり、受注も着実に確保している。また、Webセミナー等のデジタルマーケティングも活用して顧客接点の強化にも取り組んだ。

c) 組織を一新
各事業分野の次世代若手リーダーの成長促進を図るため、2020年4月より組織を一新した。具体的には、経営トップと各プロジェクトのチームリーダーが、直接コミュニケーションを取れるようにした。従来までは、チームリーダーをさらに束ねるブロック長が経営トップにプロジェクトの進捗状況などについて報告していたが、比較的規模の大きいプロジェクトについてはチームリーダーと直接コミュニケーションを取るようにしたことで、迅速化とチームの活性化が図られたと同社では見ている。次世代若手リーダーを早期育成することによって、組織力の更なる強化と生産性向上につなげていくことが狙いとなっている。

(3) ポストコロナに適応したCMの提供
a) 透明性に基づく顧客本位の建設プロジェクト推進
ポストコロナでは、長期的なCM(発注者支援事業)の価値向上に取り組む好機と同社では捉えており、いかなる変化にも対応し、「透明性を維持するCMだからこそ提供できる価値」の一層の向上に取り組んでいく。具体的には、徹底した工期短縮、コスト削減のためのDB方式(設計施工一括方式)の活用や、複数の選択肢、精緻な工程及び予算計画の提示による意思決定の支援をしていく。

b) CM方式を支えるDX推進と発注者のための建築データの蓄積・活用支援
独自開発した情報共有プラットフォーム(BPC/MPS)を顧客と共有し、一体となってプロジェクト運営を進めていくほか、自社開発のMHSを活用した働き方の可視化・定量化についての活用支援などに取り組んでいく。

また、発注者側のBIM計画を推進している。BIMとは、建築物をコンピューター上の3D空間で構築し、企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元化して活用することで建築コストの低減や効率化を図る手法のことで、国土交通省でもここ数年普及に力を入れているものだ。現在は、設計・施工事業者が利用しているが、これを発注者側でも利活用できるように全体の仕組みを提案し、CMを通じて助言・支援を行う取り組みを推進している。発注者側がBIMを活用することで、発注者と施行者側の技術や情報の非対称性が低減され、よりフェアな契約関係が実行できるWin-Winの関係を構築していくことを目的としている。業界では初の取り組みであり、同社の顧客からの関心も高く既に開始している顧客も出てきている。

c) AI/RPAの活用によるCM業務の効率化
RPAを活用した各種ツールについては、社員の希望を取り入れながら開発を継続的に進めており、現在は毎月800〜900時間のマンアワー削減の効果が出ている。レポーティングの自動化業務や各種分析業務など優先順位の高い案件から開発しており、RPA活用による生産性向上が進んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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