ステップ Research Memo(3):コロナ禍の影響で創業来初の減収減益決算も、生徒・保護者からの信頼は一層高まる
[20/12/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年9月期の業績動向
ステップ<9795>の2020年9月期業績は、売上高で前期比5.7%減の10,927百万円、営業利益で同28.2%減の1,929百万円、経常利益で同28.1%減の1,968百万円、当期純利益で同30.9%減の1,343百万円となり、売上高は創業来初の減収に、営業利益は20期ぶりの減益となった。2020年2月までは生徒数も順調に増加し増収増益ペースできていたものの、3月以降のコロナ禍により、市場環境が一変したことが要因だ。
(1) コロナ禍の影響について
コロナ禍の影響を時系列で見てみると、2020年3月に約2週間休講したことにより、授業料の9割に相当する額を返金(約280百万円)し、2020年9月期第2四半期の売上高が前年同期比6.6%減と減収に転じたほか、小学生及び高校生の新1年生の生徒募集に影響が出た。4月、5月は政府の緊急事態宣言発令(4月7日)によって、Web会議ツールを使ったオンライン授業に切り替え、授業を継続した(4万本を超える動画コンテンツを担当教師が配信、生徒たちは普段から慣れ親しんだ教師の授業を受講することができた)。同社は、入会時に生徒・保護者に約束したライブ授業と今回導入したオンライン授業は異なるものであり、生徒・保護者の期待に応えられていない部分があるのではないかとの判断から、学習塾業界でいち早く特別授業料を適用(学年により約60〜80%の値下げ)することにした。売上高への影響額としては約840百万円の減額要因となり、第3四半期の減収要因の大半を占めた。また、この間についても生徒募集の影響は残った。緊急事態宣言が解除された6月に入って、感染対策を徹底したうえで通常授業を再開(授業料金も復す)したことで、生徒数も緩やかに回復していった。
7月、8月は学校の夏休み期間短縮に対応するため、夏期講習のスケジュールを大幅に見直したが、授業時間では前年とほぼ同等の時間を確保し、新たに単科講座(選択制)も開設した。単科講座は、英語読解や歴史など中学生向けに好評だったようで、結果的に生徒当たり授業料のアップにもつながり、第4四半期の売上高については前年同期比5.8%増と正常化した格好となっている。なお、9月以降は従来通り、対面でのライブ授業をメインとしつつ、塾生向けのガイダンスや保護者会等をオンラインで行っている。一方、生徒数の動向については例年、小学生や中学生は夏期講習後、2学期が始まるころに入会の2つ目のピークが来るが、今年の入会生徒数は前年よりもやや減少した。ただ、その後の入会ペースについては前年並みのペースで推移している。
今回のコロナ禍による影響について、同社ではプラス、マイナスの両面があったと見ている。マイナス面では前述したように、生徒募集のピークである春先にコロナ禍により、小学生や高校1年生など低学年を中心にその影響を受けたこと、また、業績面でも創業来初の減収となったことなどが挙げられる。
ただ、こうしたマイナス面よりも、プラスの面がむしろ大きかったと同社では考えている。コロナ禍における授業料金の迅速な見直しなどの対応に関して、生徒や保護者からかつてないほど多くの感謝の声が寄せられ、今まで以上に信頼を高めることができたとしている。また、オンラインツールの運用ノウハウを蓄積できたことで、授業以外の生徒の補講や家庭学習の促進をオンラインで実施できるようになったほか、保護者会なども開催できるようになるなど、様々な利活用ができるようになったことも今後の事業運営面ではプラスになってくると見ている。さらには、今回の経験により、オンラインでは生徒が「分かる」授業は提供できても「できるようになる」ところまで持っていくのはハードルが高いことが分かり、改めて対面型のライブ授業の良さを教師のみならず、生徒や保護者の間でも再確認できたとしており、同社の強みである集団ライブ授業を行っていくうえでの自信につながったとしている。
(2) 新規開校、生徒数の動向について
2020年9月期における新規開校は、小中学生部門で2スクール、学童部門で2校となり、それぞれ3月に開校した。小中学生部門のうち、「STEP海老名扇町スクール」(海老名市)は小田急線海老名駅前の開校で、既に同駅反対側にある既存校の満席が続く状況において、通塾の便に対応した新規開校となる。もう1つは「STEP生田スクール」(川崎市多摩区)で同じ小田急線の川崎エリアとなる。同一沿線で2018年に開校した「新百合ヶ丘スクール」の入会生徒数が好調で、その成功事例を参考にしながら生徒募集活動を進めた。「海老名扇町スクール」については同社のブランド力が高い地域でもあり、好調な立ち上がりとなっており、「生田スクール」についてもコロナ禍の影響があるなかで好調な立ち上がりとなっているようだ。川崎エリアにおいても着実に同社のブランド力が上がってきていることがうかがわれる。
一方、学童部門では「辻堂教室」「茅ヶ崎教室」の2スクールを開校した。初年度は新小1〜2年生から募集し、1年ごとに年次を拡大して3年目で小1〜4年生までをフルカバーする予定となっている。いずれのエリアでも学童のニーズは高く、両教室とも生徒数は20数名と順調な立ち上がりを見せている。
期中平均生徒数は、小中学生部門で前期比1.9%増、高校生部門で同3.3%増、全体で同2.1%増となった。高校生部門の伸び率が高くなっているのは、2019年3月に新規に1校開設し15校となった効果が大きい。売上高では小中学生部門が前期比6.4%減の8,795百万円、高校生部門が同2.9%減の2,131百万円となっており、いずれも休講や特別授業料の適用による影響である。
なお、2020年10月末時点の生徒数について見ると、小中学生部門で前年同期比0.5%増の23,549名、高校生部門で同1.8%増の5,159名、全体で同0.7%増の28,708名となっており、コロナ禍の影響を大きく受けた時期はあるものの、通期では前期比でプラスと健闘している。学年別では、小学生や高校1年生においては前年同期比で減少となったことは前述のとおりである。
(3) 費用の増減要因
売上原価率は2019年9月期の70.4%から75.5%に上昇した。売上高の減少に伴って人件費や地代家賃など固定費率が上昇したことが要因だ。金額ベースでは前期比85百万円の増加となった。このうち、人件費は社員数の増加により前期比1.1%増、金額で65百万円増となったものの特別賞与の減少により、増加幅は例年よりも小幅にとどまった(前期は「翠嵐プロジェクト」「横浜プロジェクト」の目標達成に伴う特別賞与184百万円を計上)。備品費については2019年9月期に最新型のプロジェクターを全教室に完備したほか、全校舎のパソコンの大量入れ替えを行うなど、学習環境整備のための投資を集中して行った反動で66百万円減少しているが、空気清浄機・加湿器の大幅な増設を行うなど、2020年9月期も学習環境の向上に注力している。
販管費率は2019年9月期の6.4%から6.9%に上昇し、金額ベースでは8百万円の増加となった。折込チラシの効率化により広告宣伝費が減少した一方で、人件費やその他販管費(備品費、支払手数料等)が増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年9月期の業績動向
ステップ<9795>の2020年9月期業績は、売上高で前期比5.7%減の10,927百万円、営業利益で同28.2%減の1,929百万円、経常利益で同28.1%減の1,968百万円、当期純利益で同30.9%減の1,343百万円となり、売上高は創業来初の減収に、営業利益は20期ぶりの減益となった。2020年2月までは生徒数も順調に増加し増収増益ペースできていたものの、3月以降のコロナ禍により、市場環境が一変したことが要因だ。
(1) コロナ禍の影響について
コロナ禍の影響を時系列で見てみると、2020年3月に約2週間休講したことにより、授業料の9割に相当する額を返金(約280百万円)し、2020年9月期第2四半期の売上高が前年同期比6.6%減と減収に転じたほか、小学生及び高校生の新1年生の生徒募集に影響が出た。4月、5月は政府の緊急事態宣言発令(4月7日)によって、Web会議ツールを使ったオンライン授業に切り替え、授業を継続した(4万本を超える動画コンテンツを担当教師が配信、生徒たちは普段から慣れ親しんだ教師の授業を受講することができた)。同社は、入会時に生徒・保護者に約束したライブ授業と今回導入したオンライン授業は異なるものであり、生徒・保護者の期待に応えられていない部分があるのではないかとの判断から、学習塾業界でいち早く特別授業料を適用(学年により約60〜80%の値下げ)することにした。売上高への影響額としては約840百万円の減額要因となり、第3四半期の減収要因の大半を占めた。また、この間についても生徒募集の影響は残った。緊急事態宣言が解除された6月に入って、感染対策を徹底したうえで通常授業を再開(授業料金も復す)したことで、生徒数も緩やかに回復していった。
7月、8月は学校の夏休み期間短縮に対応するため、夏期講習のスケジュールを大幅に見直したが、授業時間では前年とほぼ同等の時間を確保し、新たに単科講座(選択制)も開設した。単科講座は、英語読解や歴史など中学生向けに好評だったようで、結果的に生徒当たり授業料のアップにもつながり、第4四半期の売上高については前年同期比5.8%増と正常化した格好となっている。なお、9月以降は従来通り、対面でのライブ授業をメインとしつつ、塾生向けのガイダンスや保護者会等をオンラインで行っている。一方、生徒数の動向については例年、小学生や中学生は夏期講習後、2学期が始まるころに入会の2つ目のピークが来るが、今年の入会生徒数は前年よりもやや減少した。ただ、その後の入会ペースについては前年並みのペースで推移している。
今回のコロナ禍による影響について、同社ではプラス、マイナスの両面があったと見ている。マイナス面では前述したように、生徒募集のピークである春先にコロナ禍により、小学生や高校1年生など低学年を中心にその影響を受けたこと、また、業績面でも創業来初の減収となったことなどが挙げられる。
ただ、こうしたマイナス面よりも、プラスの面がむしろ大きかったと同社では考えている。コロナ禍における授業料金の迅速な見直しなどの対応に関して、生徒や保護者からかつてないほど多くの感謝の声が寄せられ、今まで以上に信頼を高めることができたとしている。また、オンラインツールの運用ノウハウを蓄積できたことで、授業以外の生徒の補講や家庭学習の促進をオンラインで実施できるようになったほか、保護者会なども開催できるようになるなど、様々な利活用ができるようになったことも今後の事業運営面ではプラスになってくると見ている。さらには、今回の経験により、オンラインでは生徒が「分かる」授業は提供できても「できるようになる」ところまで持っていくのはハードルが高いことが分かり、改めて対面型のライブ授業の良さを教師のみならず、生徒や保護者の間でも再確認できたとしており、同社の強みである集団ライブ授業を行っていくうえでの自信につながったとしている。
(2) 新規開校、生徒数の動向について
2020年9月期における新規開校は、小中学生部門で2スクール、学童部門で2校となり、それぞれ3月に開校した。小中学生部門のうち、「STEP海老名扇町スクール」(海老名市)は小田急線海老名駅前の開校で、既に同駅反対側にある既存校の満席が続く状況において、通塾の便に対応した新規開校となる。もう1つは「STEP生田スクール」(川崎市多摩区)で同じ小田急線の川崎エリアとなる。同一沿線で2018年に開校した「新百合ヶ丘スクール」の入会生徒数が好調で、その成功事例を参考にしながら生徒募集活動を進めた。「海老名扇町スクール」については同社のブランド力が高い地域でもあり、好調な立ち上がりとなっており、「生田スクール」についてもコロナ禍の影響があるなかで好調な立ち上がりとなっているようだ。川崎エリアにおいても着実に同社のブランド力が上がってきていることがうかがわれる。
一方、学童部門では「辻堂教室」「茅ヶ崎教室」の2スクールを開校した。初年度は新小1〜2年生から募集し、1年ごとに年次を拡大して3年目で小1〜4年生までをフルカバーする予定となっている。いずれのエリアでも学童のニーズは高く、両教室とも生徒数は20数名と順調な立ち上がりを見せている。
期中平均生徒数は、小中学生部門で前期比1.9%増、高校生部門で同3.3%増、全体で同2.1%増となった。高校生部門の伸び率が高くなっているのは、2019年3月に新規に1校開設し15校となった効果が大きい。売上高では小中学生部門が前期比6.4%減の8,795百万円、高校生部門が同2.9%減の2,131百万円となっており、いずれも休講や特別授業料の適用による影響である。
なお、2020年10月末時点の生徒数について見ると、小中学生部門で前年同期比0.5%増の23,549名、高校生部門で同1.8%増の5,159名、全体で同0.7%増の28,708名となっており、コロナ禍の影響を大きく受けた時期はあるものの、通期では前期比でプラスと健闘している。学年別では、小学生や高校1年生においては前年同期比で減少となったことは前述のとおりである。
(3) 費用の増減要因
売上原価率は2019年9月期の70.4%から75.5%に上昇した。売上高の減少に伴って人件費や地代家賃など固定費率が上昇したことが要因だ。金額ベースでは前期比85百万円の増加となった。このうち、人件費は社員数の増加により前期比1.1%増、金額で65百万円増となったものの特別賞与の減少により、増加幅は例年よりも小幅にとどまった(前期は「翠嵐プロジェクト」「横浜プロジェクト」の目標達成に伴う特別賞与184百万円を計上)。備品費については2019年9月期に最新型のプロジェクターを全教室に完備したほか、全校舎のパソコンの大量入れ替えを行うなど、学習環境整備のための投資を集中して行った反動で66百万円減少しているが、空気清浄機・加湿器の大幅な増設を行うなど、2020年9月期も学習環境の向上に注力している。
販管費率は2019年9月期の6.4%から6.9%に上昇し、金額ベースでは8百万円の増加となった。折込チラシの効率化により広告宣伝費が減少した一方で、人件費やその他販管費(備品費、支払手数料等)が増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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