アドバンクリエ Research Memo(2):保険選びサイト「保険市場」を運営する独立系保険代理店の大手(1)
[20/12/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
1. 事業の内容
アドバンスクリエイト<8798>は保険代理店事業、ASP事業、メディア事業、メディアレップ事業、再保険事業の5つの事業を展開している。事業別の売上構成比(2020年9月期)で見ると、保険代理店事業が売上高の74.3%、営業利益の73.5%を占める主力事業となっているが、2013年9月期の時点では売上高、営業利益ともに保険代理店事業が90%以上を占めていたことからすると、この数年間でメディア事業やメディアレップ事業、再保険事業が成長し、また、新規事業となるASP事業も育ち始めるなど収益ポートフォリオの多様化が進んでいる。連結子会社としては、メディア事業とメディアレップ事業を展開する(株)保険市場、再保険事業を展開するAdvance Create Reinsurance Inc.の2社がある。
(1) 保険代理店事業
保険代理店事業では、同社の保険選びサイト「保険市場」を通じて資料請求や問い合わせなどがあった見込み客に対して、通信販売やネット完結型の非対面販売、同社直営店舗であるコンサルティングプラザ「保険市場」での販売、提携代理店での販売など多様な販売チャネルを通じて、保険商品の販売を行っている。なお、直営店舗での販売についてはコロナ禍の影響を受けて、非接触での面談ニーズが増加したことに対応し、従来の対面型販売に加えてビデオ通話システムを用いたオンライン型での販売も2020年春以降開始している。
販売する保険商品は生命保険や損害保険、少額短期保険など個人が利用する保険商品のほか、法人向け保険商品も取り扱っており、2020年11月時点の同社の取扱保険会社数は85社(生命保険27社、損害保険29社、少額短期保険29社)、保険商品数では200点を超え業界最大規模を誇っている。
保険代理店事業における売上げの主な内容は、保険会社から支払われる手数料収入となる。保険契約者が保険会社に支払った保険料に対して、定められた手数料率を乗じたものが保険会社から同社に支払われる。生命保険など支払いが複数年にわたるものは、初年度と次年度以降で手数料率が変動するタイプの商品もある。手数料率に関しては、会社ごと、保険商品ごとに様々だが、傾向的には貯蓄性の高い商品の手数料率が低く、逆に掛け捨て型の商品は高くなる。
なお、提携先の代理店で販売契約したものに関しては、手数料収入を約半分にシェアする格好となるが、販売契約のための人件費等が掛からないため、利益額としては直営店で販売した場合と比較して大きく変わらない。
販売拠点としては、2020年11月末時点で直営店が12拠点となり、提携代理店社数は84社以上、667店舗以上の規模となっている。直営店に関しては、交通至便な都市部のランドマークビルに出店し、金融商品に対するリテラシーが高いアッパーミドル層を中心に販売していく戦略で、営業スタッフは2020年9月時点で120名程度となっている。また、直営店でカバーしきれないエリアの見込み顧客に対しては、提携代理店に送客している。提携代理店に関しては、各社のガバナンスやコンプライアンス体制、セキュリティ管理体制等のチェックを定期的に実施し、一定基準に満たない代理店に関しては契約を解除し、提携代理店の質を維持している。提携代理店における保険募集人については年々増加し5万人を超える水準となっており、販売ネットワークの拡充が進んでいる。
(2) ASP事業
ASP事業では、salesforce.comのクラウドサービスを活用して社内用に開発・利用してきた顧客管理システム「御用聞き」(2018年11月販売開始)や顧客基本情報連携システム「丁稚(DECHI)」(2019年6月販売開始)などを保険代理店向け等に外販する事業となる。
「御用聞き」の特徴は、クラウドサービスにより低コストで利用が可能なこと、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に準拠しており、スムーズな顧客情報の管理・共有が可能なこと、各保険商品の手数料データの取込みと比較・分析ができること、歩合外務員の歩合率を設定する機能や報酬計算機能などを備えていることなどが挙げられる。乗合代理店では多くの保険商品を取り扱っており、保険商品ごとに手数料やインセンティブが異なるなど複雑な仕組みとなっている。業務効率の面から利便性の高い顧客管理システムが求められており、同社システムの潜在需要は大きいと言える。
「丁稚(DECHI)」は同社が構築する共通プラットフォームシステム「ACP(Advanced Create Cloud Platform)」と保険会社の基幹システムを連携(2020年9月末で14社と連携)させることで、複数社にまたがる保険商品の申込み手続きを一度の入力で完結できるシステムとなる。入力時間の短縮と入力間違い等のミスを防ぐだけでなく、顧客の待ち時間も短縮できるなど、乗合代理店にとって生産性並びに顧客満足度の向上につながるサービスとなっている。また、「丁稚(DECHI)」は「御用聞き」を利用していない代理店でも自社のCRMシステムを「ACP」と連携することで利用可能となっている。そのほか、2020年秋には証券管理アプリ「folder」の外販の開始や、顧客の契約状況照会システム「番頭(BANTO)」の開発も行っている。
販売ターゲットは提携代理店のほか、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店や他の金融機関となる。保険募集人の数は国内で100万人規模となり、このうち乗合代理店で数十万人規模、同社の提携代理店だけでも5万人超の規模となる。料金は月額課金制でIDごとに数千円/月の水準となっており、現在の平均売上単価は約3千円/月と見られる。注目すべき点は同システムが社内利用を目的に開発されたため、開発費負担がほとんどかからず高い収益性が期待できることにある。ASP事業の費用としては、営業スタッフの人件費と開発費の一部(外販用の機能のみ)となる。競合サービスとしては、NTTデータ<9613>が2002年より販売している「保険会社共同ゲートウェイ」があるが、積極的に売り込みをしている様子はなく、競合はないに等しい状況となっている。
(3) メディア事業
メディア事業は、保険選びサイト「保険市場」を広告媒体とした広告枠の販売となる。国内最大級の保険選びサイトとしてのブランドを確立しており、保険への関心が高い顧客層に直接アプローチできることから、広告主も保険会社や保険代理店が大半で広告単価も比較的安定している。
(4) メディアレップ事業
2〜3年前より自社で蓄積してきた広告運用業務のノウハウを用いて、保険会社向けにSEO対策を中心とした広告運用サービスを行う広告代理店ビジネスとなる。従来、メディア事業に含めていたが年々、顧客数も増え売上規模が大きくなったため、2020年9月期より分離した。保険会社からは費用対効果の面で高い評価を受けており、2020年4月にはヤフー(株)が運営するYahoo!マーケティングソリューション パートナープログラム※において保険専業広告代理店として初の「Yahoo!マーケティングソリューション ★★パートナー」にも選ばれている。
※Yahoo!マーケティングソリューション パートナープログラムとは、 Yahoo!マーケティングソリューション パートナーの中で、Yahoo! JAPAN の広告商品・サービスを総合的に活用し、優れた実績のあるパートナーに対して、星ごとにパートナー認定し、実績に応じて★6段階で認定している。
(5) 再保険事業
再保険事業は、同社が保険代理店として獲得した保険契約の一部について、元受保険会社と同社の子会社であるAdvance Create Reinsurance Inc.との間で再保険契約を結ぶスキームとなっている。主に生命保険の再保険を中心に引き受けており、2020年9月末時点の契約先企業は11社(生命保険8社、損害保険2社、少額短期保険1社)となっている。ストック型のビジネスモデルであるため、期初段階でほぼ年間の収入見通しが把握可能で、大規模自然災害や環境の変化によって保険会社の保険金支払い額が想定を超えて大きく増えない限りは、営業利益率で15%前後の高収益性と安定性が期待できる事業となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
1. 事業の内容
アドバンスクリエイト<8798>は保険代理店事業、ASP事業、メディア事業、メディアレップ事業、再保険事業の5つの事業を展開している。事業別の売上構成比(2020年9月期)で見ると、保険代理店事業が売上高の74.3%、営業利益の73.5%を占める主力事業となっているが、2013年9月期の時点では売上高、営業利益ともに保険代理店事業が90%以上を占めていたことからすると、この数年間でメディア事業やメディアレップ事業、再保険事業が成長し、また、新規事業となるASP事業も育ち始めるなど収益ポートフォリオの多様化が進んでいる。連結子会社としては、メディア事業とメディアレップ事業を展開する(株)保険市場、再保険事業を展開するAdvance Create Reinsurance Inc.の2社がある。
(1) 保険代理店事業
保険代理店事業では、同社の保険選びサイト「保険市場」を通じて資料請求や問い合わせなどがあった見込み客に対して、通信販売やネット完結型の非対面販売、同社直営店舗であるコンサルティングプラザ「保険市場」での販売、提携代理店での販売など多様な販売チャネルを通じて、保険商品の販売を行っている。なお、直営店舗での販売についてはコロナ禍の影響を受けて、非接触での面談ニーズが増加したことに対応し、従来の対面型販売に加えてビデオ通話システムを用いたオンライン型での販売も2020年春以降開始している。
販売する保険商品は生命保険や損害保険、少額短期保険など個人が利用する保険商品のほか、法人向け保険商品も取り扱っており、2020年11月時点の同社の取扱保険会社数は85社(生命保険27社、損害保険29社、少額短期保険29社)、保険商品数では200点を超え業界最大規模を誇っている。
保険代理店事業における売上げの主な内容は、保険会社から支払われる手数料収入となる。保険契約者が保険会社に支払った保険料に対して、定められた手数料率を乗じたものが保険会社から同社に支払われる。生命保険など支払いが複数年にわたるものは、初年度と次年度以降で手数料率が変動するタイプの商品もある。手数料率に関しては、会社ごと、保険商品ごとに様々だが、傾向的には貯蓄性の高い商品の手数料率が低く、逆に掛け捨て型の商品は高くなる。
なお、提携先の代理店で販売契約したものに関しては、手数料収入を約半分にシェアする格好となるが、販売契約のための人件費等が掛からないため、利益額としては直営店で販売した場合と比較して大きく変わらない。
販売拠点としては、2020年11月末時点で直営店が12拠点となり、提携代理店社数は84社以上、667店舗以上の規模となっている。直営店に関しては、交通至便な都市部のランドマークビルに出店し、金融商品に対するリテラシーが高いアッパーミドル層を中心に販売していく戦略で、営業スタッフは2020年9月時点で120名程度となっている。また、直営店でカバーしきれないエリアの見込み顧客に対しては、提携代理店に送客している。提携代理店に関しては、各社のガバナンスやコンプライアンス体制、セキュリティ管理体制等のチェックを定期的に実施し、一定基準に満たない代理店に関しては契約を解除し、提携代理店の質を維持している。提携代理店における保険募集人については年々増加し5万人を超える水準となっており、販売ネットワークの拡充が進んでいる。
(2) ASP事業
ASP事業では、salesforce.com
「御用聞き」の特徴は、クラウドサービスにより低コストで利用が可能なこと、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に準拠しており、スムーズな顧客情報の管理・共有が可能なこと、各保険商品の手数料データの取込みと比較・分析ができること、歩合外務員の歩合率を設定する機能や報酬計算機能などを備えていることなどが挙げられる。乗合代理店では多くの保険商品を取り扱っており、保険商品ごとに手数料やインセンティブが異なるなど複雑な仕組みとなっている。業務効率の面から利便性の高い顧客管理システムが求められており、同社システムの潜在需要は大きいと言える。
「丁稚(DECHI)」は同社が構築する共通プラットフォームシステム「ACP(Advanced Create Cloud Platform)」と保険会社の基幹システムを連携(2020年9月末で14社と連携)させることで、複数社にまたがる保険商品の申込み手続きを一度の入力で完結できるシステムとなる。入力時間の短縮と入力間違い等のミスを防ぐだけでなく、顧客の待ち時間も短縮できるなど、乗合代理店にとって生産性並びに顧客満足度の向上につながるサービスとなっている。また、「丁稚(DECHI)」は「御用聞き」を利用していない代理店でも自社のCRMシステムを「ACP」と連携することで利用可能となっている。そのほか、2020年秋には証券管理アプリ「folder」の外販の開始や、顧客の契約状況照会システム「番頭(BANTO)」の開発も行っている。
販売ターゲットは提携代理店のほか、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店や他の金融機関となる。保険募集人の数は国内で100万人規模となり、このうち乗合代理店で数十万人規模、同社の提携代理店だけでも5万人超の規模となる。料金は月額課金制でIDごとに数千円/月の水準となっており、現在の平均売上単価は約3千円/月と見られる。注目すべき点は同システムが社内利用を目的に開発されたため、開発費負担がほとんどかからず高い収益性が期待できることにある。ASP事業の費用としては、営業スタッフの人件費と開発費の一部(外販用の機能のみ)となる。競合サービスとしては、NTTデータ<9613>が2002年より販売している「保険会社共同ゲートウェイ」があるが、積極的に売り込みをしている様子はなく、競合はないに等しい状況となっている。
(3) メディア事業
メディア事業は、保険選びサイト「保険市場」を広告媒体とした広告枠の販売となる。国内最大級の保険選びサイトとしてのブランドを確立しており、保険への関心が高い顧客層に直接アプローチできることから、広告主も保険会社や保険代理店が大半で広告単価も比較的安定している。
(4) メディアレップ事業
2〜3年前より自社で蓄積してきた広告運用業務のノウハウを用いて、保険会社向けにSEO対策を中心とした広告運用サービスを行う広告代理店ビジネスとなる。従来、メディア事業に含めていたが年々、顧客数も増え売上規模が大きくなったため、2020年9月期より分離した。保険会社からは費用対効果の面で高い評価を受けており、2020年4月にはヤフー(株)が運営するYahoo!マーケティングソリューション パートナープログラム※において保険専業広告代理店として初の「Yahoo!マーケティングソリューション ★★パートナー」にも選ばれている。
※Yahoo!マーケティングソリューション パートナープログラムとは、 Yahoo!マーケティングソリューション パートナーの中で、Yahoo! JAPAN の広告商品・サービスを総合的に活用し、優れた実績のあるパートナーに対して、星ごとにパートナー認定し、実績に応じて★6段階で認定している。
(5) 再保険事業
再保険事業は、同社が保険代理店として獲得した保険契約の一部について、元受保険会社と同社の子会社であるAdvance Create Reinsurance Inc.との間で再保険契約を結ぶスキームとなっている。主に生命保険の再保険を中心に引き受けており、2020年9月末時点の契約先企業は11社(生命保険8社、損害保険2社、少額短期保険1社)となっている。ストック型のビジネスモデルであるため、期初段階でほぼ年間の収入見通しが把握可能で、大規模自然災害や環境の変化によって保険会社の保険金支払い額が想定を超えて大きく増えない限りは、営業利益率で15%前後の高収益性と安定性が期待できる事業となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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