ランドコンピュ Research Memo(5):2021年3月期の通期予想は、期初計画を据え置き(1)
[21/01/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2021年3月期の業績見通し
ランドコンピュータ<3924>の2021年3月期の業績見通しについては、売上高が前期比5.3%減の8,614百万円、営業利益が同12.0%減の624百万円、経常利益が同12.4%減の634百万円、当期純利益が同14.1%減の407百万円とする期初計画を据え置いている。一方で、サービスライン別の売上高予想については、第2四半期までの動向を反映して修正している。システムインテグレーション・サービスは前期比8.2%減の5,454百万円(前回予想比0.7%減)、インフラソリューション・サービスは同10.3%減の1,360百万円(同2.6%減)、パッケージベースSI・サービスが同10.0%増の1,800百万円(同5.0%増)としている。
なお、同社業績は従来、下期偏重の傾向があるが、2021年3月期第2四半期に発生した大型不採算案件に関わる費用を上期に損失引当金として計上していることから、2021年3月期の営業利益については下期偏重がより顕著となると予想される。
2. 新型コロナウイルス感染症拡大の影響
(1) OECDの世界経済見通し
コロナ禍による経済の落ち込みは、リーマン・ショック時を超えると予想されている。日本の実質GDP成長率は、2008年度がマイナス3.4%、2009年度がマイナス2.2%であった。経済協力開発機構(OECD)の最新予想によると、日本の実質GDP成長率は2020年がマイナス5.3%(前回予想はマイナス5.8%)、2021年がプラス2.3%(同プラス1.5%)、世界の実質GDP成長率は2020年がマイナス4.2%(同マイナス4.5%)、2021年がプラス4.2%(同プラス3.4%)の成長と予想されている(2021年10月〜12月における世界の国内総生産(GDP)水準が、コロナ禍前の2019年10月〜12月期の水準に戻ると想定)。2021年は、中国が世界経済成長の3分の1以上を寄与するとし、中国の実質GDP成長率は2020年がプラス1.8%、2021年がプラス8.0%と予想されている。一方米国は、2020年がマイナス3.7%、2021年がプラス3.2%の予想となっている。以上のことから、日本では2020年の落込みが大きく、且つ2021年の戻りが小さいと言える。なお、2021年の日本の実質GDP成長率には、東京オリンピック・パラリンピックの開催により消費が押し上げられることが織り込まれている。OECDは日本に対して、「生産性や持続性を高めるための構造改革を進めるべきだ」としており、柔軟な勤務体系やデジタル化の推進を提案している。
(2) 新型コロナウイルス感染症拡大に対する各国の対策
世界各国で新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波が押し寄せている。2020年11月末の1日当たりの新規感染者数は全世界で50万人を超え、累計では6,000万人を突破した。また米国では、1日当たりの新規染者数が初めて20万人を超えた。欧州各国では10月以降、新型コロナウイルス感染対策を強化している。一例を挙げると、英国では10月14日から地域によって規制が異なる3段階の警戒システムを導入したことに加え、11月5日から12月2日までイングランド全域で外出規制や店舗閉鎖などのロックダウンを導入した。フランスでは10月末から1ヶ月間のロックダウン措置導入を発表した。スペインでは10月25日に非常事態を宣言し、夜間の外出を禁止した。10月中旬から1日当たりの新規感染者数が1万人を超える日が続いたイタリアでも、11月6日から感染拡大の深刻な地域でロックダウンを開始した。これに対して日本では、11月下旬に政府による新型コロナウイルス感染症対策分科会で「個人の努力に頼るステージは過ぎた」との見解が示された。
(3) 国内労働者の過不足状況
厚生労働省の「労働経済動向調査」が示す正社員等労働者の過不足状況判断指数(=不足−過剰、D.I.)を見ると、2007年2月時点調査で調査産業計が29でピークを付けたのに対し、情報通信業は49と人手不足度合いが大きかった。調査産業計のD.I.は、2009年5月調査では-15(正味過剰)でボトムに達したが、情報通信業は1四半期遅れて-11で底打ちした。これは、ITサービス業の場合、進行中のプロジェクトを途中で中止するわけにはいかないためタイムラグが生じるようだ。直近のD.I.のピークは、2019年2月時点となる。調査産業計は45、情報通信業が58であった。コロナ禍の影響を受け、直近ピークから1年半経過した2020年8月調査では、D.I.が調査産業計で21まで下がり、情報通信業は25となっている。
2021年3月期下期の重点事項としては、1)第2四半期に発生した不採算プロジェクトの収束に向けた対応、2)デジタル分野(クラウド、IoT、AI)を中心とした成長力の高い事業ドメインの開拓、3)人財採用と教育研修の強化としており、引き続きパッケージベースSI・サービスの拡大を図る。
(4) ITサービス業への影響
2020年5月末時点で、新型コロナウイルス感染症の影響により合理的な業績予想の算定が困難とし、東証に上場する3月期決算企業の56.4%(1,266社)が2021年3月期の業績予想を未定もしくは非公開とした。コロナ禍により企業経営を取り巻く外部環境が激しく変化していることにより、情報システム開発の縮小や延伸が発生するなど、受注環境は厳しくなっている。
主要顧客である富士通が2021年3月期第2四半期決算説明資料で開示した「国内の受注(単独)の状況」から半期毎の前年同期比推移を見ると、2020年3月期上期は12%増・下期は2%減、2021年3月期上期は9%減と減少傾向にある。また、2021年3月期第1四半期は7%減・第2四半期は12%減と更に落込みが大きくなっている。区分別に見ると、エンタープライス(産業・流通)が2021年3月期第1四半期で7%減、第2四半期で15%減、ファイナンス&リテール(金融・小売)が同11%減・16%減、JAPAN(地方自治体・ヘルスケア他)が同21%減、15%減、公共・社会インフラ(官公庁・社会基盤)が同9%増、4%減と、特にエンタープライズ区分、ファイナンス&リテール区分で同様の傾向がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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1. 2021年3月期の業績見通し
ランドコンピュータ<3924>の2021年3月期の業績見通しについては、売上高が前期比5.3%減の8,614百万円、営業利益が同12.0%減の624百万円、経常利益が同12.4%減の634百万円、当期純利益が同14.1%減の407百万円とする期初計画を据え置いている。一方で、サービスライン別の売上高予想については、第2四半期までの動向を反映して修正している。システムインテグレーション・サービスは前期比8.2%減の5,454百万円(前回予想比0.7%減)、インフラソリューション・サービスは同10.3%減の1,360百万円(同2.6%減)、パッケージベースSI・サービスが同10.0%増の1,800百万円(同5.0%増)としている。
なお、同社業績は従来、下期偏重の傾向があるが、2021年3月期第2四半期に発生した大型不採算案件に関わる費用を上期に損失引当金として計上していることから、2021年3月期の営業利益については下期偏重がより顕著となると予想される。
2. 新型コロナウイルス感染症拡大の影響
(1) OECDの世界経済見通し
コロナ禍による経済の落ち込みは、リーマン・ショック時を超えると予想されている。日本の実質GDP成長率は、2008年度がマイナス3.4%、2009年度がマイナス2.2%であった。経済協力開発機構(OECD)の最新予想によると、日本の実質GDP成長率は2020年がマイナス5.3%(前回予想はマイナス5.8%)、2021年がプラス2.3%(同プラス1.5%)、世界の実質GDP成長率は2020年がマイナス4.2%(同マイナス4.5%)、2021年がプラス4.2%(同プラス3.4%)の成長と予想されている(2021年10月〜12月における世界の国内総生産(GDP)水準が、コロナ禍前の2019年10月〜12月期の水準に戻ると想定)。2021年は、中国が世界経済成長の3分の1以上を寄与するとし、中国の実質GDP成長率は2020年がプラス1.8%、2021年がプラス8.0%と予想されている。一方米国は、2020年がマイナス3.7%、2021年がプラス3.2%の予想となっている。以上のことから、日本では2020年の落込みが大きく、且つ2021年の戻りが小さいと言える。なお、2021年の日本の実質GDP成長率には、東京オリンピック・パラリンピックの開催により消費が押し上げられることが織り込まれている。OECDは日本に対して、「生産性や持続性を高めるための構造改革を進めるべきだ」としており、柔軟な勤務体系やデジタル化の推進を提案している。
(2) 新型コロナウイルス感染症拡大に対する各国の対策
世界各国で新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波が押し寄せている。2020年11月末の1日当たりの新規感染者数は全世界で50万人を超え、累計では6,000万人を突破した。また米国では、1日当たりの新規染者数が初めて20万人を超えた。欧州各国では10月以降、新型コロナウイルス感染対策を強化している。一例を挙げると、英国では10月14日から地域によって規制が異なる3段階の警戒システムを導入したことに加え、11月5日から12月2日までイングランド全域で外出規制や店舗閉鎖などのロックダウンを導入した。フランスでは10月末から1ヶ月間のロックダウン措置導入を発表した。スペインでは10月25日に非常事態を宣言し、夜間の外出を禁止した。10月中旬から1日当たりの新規感染者数が1万人を超える日が続いたイタリアでも、11月6日から感染拡大の深刻な地域でロックダウンを開始した。これに対して日本では、11月下旬に政府による新型コロナウイルス感染症対策分科会で「個人の努力に頼るステージは過ぎた」との見解が示された。
(3) 国内労働者の過不足状況
厚生労働省の「労働経済動向調査」が示す正社員等労働者の過不足状況判断指数(=不足−過剰、D.I.)を見ると、2007年2月時点調査で調査産業計が29でピークを付けたのに対し、情報通信業は49と人手不足度合いが大きかった。調査産業計のD.I.は、2009年5月調査では-15(正味過剰)でボトムに達したが、情報通信業は1四半期遅れて-11で底打ちした。これは、ITサービス業の場合、進行中のプロジェクトを途中で中止するわけにはいかないためタイムラグが生じるようだ。直近のD.I.のピークは、2019年2月時点となる。調査産業計は45、情報通信業が58であった。コロナ禍の影響を受け、直近ピークから1年半経過した2020年8月調査では、D.I.が調査産業計で21まで下がり、情報通信業は25となっている。
2021年3月期下期の重点事項としては、1)第2四半期に発生した不採算プロジェクトの収束に向けた対応、2)デジタル分野(クラウド、IoT、AI)を中心とした成長力の高い事業ドメインの開拓、3)人財採用と教育研修の強化としており、引き続きパッケージベースSI・サービスの拡大を図る。
(4) ITサービス業への影響
2020年5月末時点で、新型コロナウイルス感染症の影響により合理的な業績予想の算定が困難とし、東証に上場する3月期決算企業の56.4%(1,266社)が2021年3月期の業績予想を未定もしくは非公開とした。コロナ禍により企業経営を取り巻く外部環境が激しく変化していることにより、情報システム開発の縮小や延伸が発生するなど、受注環境は厳しくなっている。
主要顧客である富士通が2021年3月期第2四半期決算説明資料で開示した「国内の受注(単独)の状況」から半期毎の前年同期比推移を見ると、2020年3月期上期は12%増・下期は2%減、2021年3月期上期は9%減と減少傾向にある。また、2021年3月期第1四半期は7%減・第2四半期は12%減と更に落込みが大きくなっている。区分別に見ると、エンタープライス(産業・流通)が2021年3月期第1四半期で7%減、第2四半期で15%減、ファイナンス&リテール(金融・小売)が同11%減・16%減、JAPAN(地方自治体・ヘルスケア他)が同21%減、15%減、公共・社会インフラ(官公庁・社会基盤)が同9%増、4%減と、特にエンタープライズ区分、ファイナンス&リテール区分で同様の傾向がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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