テリロジー Research Memo(8):コロナ禍にあっても4期連続増収増益は射程圏内(3)
[21/01/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■テリロジー<3356>の今後の見通し
3. 実際に動き出したエクストラ事業戦略
「売上高50億円規模を視野に入れたエクストラ事業戦略」では、1)M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大、2)インバウンド・ソリューション事業の協業の加速化、3)先端技術ソーシング連携戦略の強化(米国、イスラエルほか)による新商材の追加市場投入、を推進していく。
「M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大」の中核を担うのが、戦略的代理店契約に基づくRadware事業である。同事業の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDos/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本におけるイスラエルRadwareの1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が2〜3年中に獲得できる蓋然性は高い。実際、2021年3月期上期における「Radware」関連の受注額は79百万円と順調な滑り出しとなっている。加えて、従前の1次代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が実現可能だろう。
「M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大」のもう1つの目玉は、経済成長が著しいベトナム市場への参入である。具体的には、2020年4月にベトナム国ブロードバンド通信事業者であるハノイ・テレコムの子会社でセキュリティ関連機器ディストリビューターのVIET NAM CYBERSPACE SECURITY TECHNOLOGY Joint Stock Companyと戦略的業務提携に基づき、ベトナムでの合弁会社VNCS Global Solution Technology(同社の出資比率は20%、以下、VNCS Global)を設立した。
VNCS Globalは、2020年7月にベトナム情報通信省による「国家サイバーセキュリティ監視センターとの接続と情報共有の要件を満たすSOC(Security Operation Centerの略でセキュリティ監視を行う組織)」に認定された(全8社)。同年11月には、同社とVNCS Globalは国際セキュリティ基準PCI DSSに係るベトナムでの事業展開に関しブロードバンドセキュリティ<4398>と提携、「日本品質」のセキュリティコンサルテーション事業を開始した。
こうした事業展開による業績貢献は当面軽微であるものの、ベトナム市場への参入は「みえる通訳」の活用シーン拡大や機能強化にもつながるだけに今後の成り行きからは目が離せない。
「インバウンド・ソリューション事業の協業の加速化」は、インバウンド領域において「旅マエ・旅ナカ・旅アト」を一気通貫するバリューチェーン構築を目指すものであり、具体的な一手としては、同社子会社のテリロジーサービスウェアによるIGLOOOの子会社化(2020年5月)をテコにしたインバウンドメディア事業への参入が挙げられる。
IGLOOOは、欧米豪向け訪日旅行インターネットメディア「VOYAPON」の運営を核に海外向けコンテンツ制作及びプロモーション事業という「旅マエ・旅アト」型サービスを手掛ける企業であり、これまで主に訪日外国人観光客を対象にした「旅ナカ」領域で多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」を提供し業界最大手のポジションを確立してきた同社との補完性・相乗性は高い。ウィズコロナ時代においても2021年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けつつ「観光立国日本」を目指した国策が何らかの形で再起動されることは間違いないと思われるだけに、厳しい局面において逆張り的に攻めの一手を打った同社の決断は評価に値する。
なお、IGLOOOが同社グループ入りしてからの動きは1)(株)ミキ・ツーリスト/(株)ITPと共同で欧米豪を中心としたオンライン旅行博出展支援サービス「海外旅行博オンライン出展サポートパッケージプラン」の提供を開始(2020年8月)、2)欧米豪向けインバウンドメディア「VOYAPON(ヴォやポン)」のリニューアル(同年8月)、3)“外国人目線”に立ったストーリーテリング型越境ECサイト「VOYAPON STORE(ヴォやポンストア)」の開設(同年9月)、4)中国向けデジタルマーケティング事業の(株)unbotと中国市場における欧米豪向け観光プロモーションの独占パートナーとして業務提携(同年11月)、となっている。
また、「先端技術ソーシング連携戦略の強化(米国、イスラエルほか)による新商材の追加市場投入」については、「アプリケーション・データマシンログの解析・管理」、「内部不正管理」、「5GソリューションAR(拡張現実)」、「先端CTI(脅威情報)多様化対応」がターゲット領域となる。同社の強みである「目利き力」が発揮されることに期待したい。
4. 新たな中期経営計画は2021年5月に発表される見通し
同社は、2018年5月に「3年後のテリロジーに向けて」と題する中期経営計画を発表、1)M&A・アライアンスによる事業拡大、2)最新技術を搭載する製品・サービスの提供、3)自社製品をコアとした他社製品とのバリューミックス、4)インバウンドビジネスへの挑戦と社会貢献への取り組み、を柱とする成長戦略により、中期経営計画最終年となる2020年3月期において、売上高50億円と復配の実現を目指すとしてきた。売上高50億円の達成はならなかったが、その目標はあくまでもM&A・アライアンスによる事業拡大を含んだものであり、2020年3月期に3期連続増収増益かつ復配を実現したことには一定の評価が与えられると考えている。
同社は、2019年12月のプレスリリースにおいて「中長期的かつ持続可能な企業価値の向上に向けた広報・宣伝活動の施策を行うとともに、企業価値の極大化を図っていく」ことを明言、2020年5月に新たな中期経営計画を発表するべく準備を進めてきた。コロナショック発生で新中期経営計画の発表は先送りされたものの、順当であれば2021年5月にも満を持して公表されることになるだろう。
同社はエクイティファイナンスで調達した資金の活用を成長ストーリーの中核に据えており、1)オーガニック成長を推進するアクションプラン、2)可能な限り具体的な事業アライアンス・M&A戦略、3)売上高50億円を通過点とする目線の高い数値目標、などが盛り込まれた新中期経営計画が示されることに期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
<NB>
3. 実際に動き出したエクストラ事業戦略
「売上高50億円規模を視野に入れたエクストラ事業戦略」では、1)M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大、2)インバウンド・ソリューション事業の協業の加速化、3)先端技術ソーシング連携戦略の強化(米国、イスラエルほか)による新商材の追加市場投入、を推進していく。
「M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大」の中核を担うのが、戦略的代理店契約に基づくRadware事業である。同事業の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDos/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本におけるイスラエルRadwareの1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が2〜3年中に獲得できる蓋然性は高い。実際、2021年3月期上期における「Radware」関連の受注額は79百万円と順調な滑り出しとなっている。加えて、従前の1次代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が実現可能だろう。
「M&A・事業アライアンス戦略の積極対応による事業拡大」のもう1つの目玉は、経済成長が著しいベトナム市場への参入である。具体的には、2020年4月にベトナム国ブロードバンド通信事業者であるハノイ・テレコムの子会社でセキュリティ関連機器ディストリビューターのVIET NAM CYBERSPACE SECURITY TECHNOLOGY Joint Stock Companyと戦略的業務提携に基づき、ベトナムでの合弁会社VNCS Global Solution Technology(同社の出資比率は20%、以下、VNCS Global)を設立した。
VNCS Globalは、2020年7月にベトナム情報通信省による「国家サイバーセキュリティ監視センターとの接続と情報共有の要件を満たすSOC(Security Operation Centerの略でセキュリティ監視を行う組織)」に認定された(全8社)。同年11月には、同社とVNCS Globalは国際セキュリティ基準PCI DSSに係るベトナムでの事業展開に関しブロードバンドセキュリティ<4398>と提携、「日本品質」のセキュリティコンサルテーション事業を開始した。
こうした事業展開による業績貢献は当面軽微であるものの、ベトナム市場への参入は「みえる通訳」の活用シーン拡大や機能強化にもつながるだけに今後の成り行きからは目が離せない。
「インバウンド・ソリューション事業の協業の加速化」は、インバウンド領域において「旅マエ・旅ナカ・旅アト」を一気通貫するバリューチェーン構築を目指すものであり、具体的な一手としては、同社子会社のテリロジーサービスウェアによるIGLOOOの子会社化(2020年5月)をテコにしたインバウンドメディア事業への参入が挙げられる。
IGLOOOは、欧米豪向け訪日旅行インターネットメディア「VOYAPON」の運営を核に海外向けコンテンツ制作及びプロモーション事業という「旅マエ・旅アト」型サービスを手掛ける企業であり、これまで主に訪日外国人観光客を対象にした「旅ナカ」領域で多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」を提供し業界最大手のポジションを確立してきた同社との補完性・相乗性は高い。ウィズコロナ時代においても2021年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けつつ「観光立国日本」を目指した国策が何らかの形で再起動されることは間違いないと思われるだけに、厳しい局面において逆張り的に攻めの一手を打った同社の決断は評価に値する。
なお、IGLOOOが同社グループ入りしてからの動きは1)(株)ミキ・ツーリスト/(株)ITPと共同で欧米豪を中心としたオンライン旅行博出展支援サービス「海外旅行博オンライン出展サポートパッケージプラン」の提供を開始(2020年8月)、2)欧米豪向けインバウンドメディア「VOYAPON(ヴォやポン)」のリニューアル(同年8月)、3)“外国人目線”に立ったストーリーテリング型越境ECサイト「VOYAPON STORE(ヴォやポンストア)」の開設(同年9月)、4)中国向けデジタルマーケティング事業の(株)unbotと中国市場における欧米豪向け観光プロモーションの独占パートナーとして業務提携(同年11月)、となっている。
また、「先端技術ソーシング連携戦略の強化(米国、イスラエルほか)による新商材の追加市場投入」については、「アプリケーション・データマシンログの解析・管理」、「内部不正管理」、「5GソリューションAR(拡張現実)」、「先端CTI(脅威情報)多様化対応」がターゲット領域となる。同社の強みである「目利き力」が発揮されることに期待したい。
4. 新たな中期経営計画は2021年5月に発表される見通し
同社は、2018年5月に「3年後のテリロジーに向けて」と題する中期経営計画を発表、1)M&A・アライアンスによる事業拡大、2)最新技術を搭載する製品・サービスの提供、3)自社製品をコアとした他社製品とのバリューミックス、4)インバウンドビジネスへの挑戦と社会貢献への取り組み、を柱とする成長戦略により、中期経営計画最終年となる2020年3月期において、売上高50億円と復配の実現を目指すとしてきた。売上高50億円の達成はならなかったが、その目標はあくまでもM&A・アライアンスによる事業拡大を含んだものであり、2020年3月期に3期連続増収増益かつ復配を実現したことには一定の評価が与えられると考えている。
同社は、2019年12月のプレスリリースにおいて「中長期的かつ持続可能な企業価値の向上に向けた広報・宣伝活動の施策を行うとともに、企業価値の極大化を図っていく」ことを明言、2020年5月に新たな中期経営計画を発表するべく準備を進めてきた。コロナショック発生で新中期経営計画の発表は先送りされたものの、順当であれば2021年5月にも満を持して公表されることになるだろう。
同社はエクイティファイナンスで調達した資金の活用を成長ストーリーの中核に据えており、1)オーガニック成長を推進するアクションプラン、2)可能な限り具体的な事業アライアンス・M&A戦略、3)売上高50億円を通過点とする目線の高い数値目標、などが盛り込まれた新中期経営計画が示されることに期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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