イグニス Research Memo(7):20年9月期は『INSPIX WORLD』の開発を加速(2)
[21/01/19]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■イグニス<3689>の決算動向
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) マッチング事業
売上高は前期比47.8%増の4,375百万円、営業利益は同81.3%増の1,335百万円と大きく拡大した。特に、第4四半期(7月‐9月)だけで見ると、売上高は前四半期比21.2%増の1,345百万円、営業利益は同48.7%増の428百万円と足元でも大きく伸びている。注力する『with』が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学・統計学を生かした最適なマッチング機能による差別化や積極的なプロモーション展開等)により好調に推移している。独自機能の投入※や口コミによる入会増加に加え、広告費回収効率を示すKPIが高い水準にあるなかで、広告費を増やしたことが足元の会員数の伸びに寄与しており、2020年9月末の会員数は370万人を突破した。SNSカテゴリの売上ランキングでも5位以内を確保している。損益面でも、積極的なプロモーションや機能強化に向けた費用を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、営業利益率は30.5%(前期は24.9%)と売上増に連動して大きく改善し、収益の柱に成長している。
※ユーザー1人ひとりに合った相手をAIが自動で探し出し提案する『For You』機能のほか、2020年7月には、マッチング後、メッセージのやり取りから音声通話、ビデオ通話まで、すべて『with』内で楽しむことができる『with通話β版』のサービスも開始した。
(2) エンターテック事業
売上高は前期比227.7%増の341百万円、営業損失は1,710百万円(前期は1,246百万円の損失)と増収ながら先行費用の増加により損失幅は拡大した。第4四半期(7月‐9月)だけで見ても、売上高は前四半期比7.7%増と着実に積み上がっているが、営業損失は573百万円(第3四半期は430百万円の損失)と先行投資の状態が続いている。
VRアイドル『えのぐ』に加え、所属タイトル『VOYS BOY』及び『学芸大青春』などのIP関連が、定期イベントやファンミーティング、グッズ販売等により業績の伸びをけん引している。第3四半期以降、コロナ禍に伴うイベント中止や延期等による影響を受け、成長スピードは想定を下回ったものの、オンラインを活用した様々な活動やCD販売、タレントグッズの販売などによってカバーして増収を確保した。また、自社関連IPのSNS等累計フォロワー数についても、コロナ禍において、従来とは違う手法でのファン増加策が奏功し、大きく伸びている※。
※2020年10月末のフォロワー数は761千名に増加(2020年7月末比23.1%増)。
一方、プラットフォーム関連については、2020年9月に「初音ミク GALAXY LIVE 2020」を開催し、一定の成功を収めたほか、ライブ特化型仮想空間SNS『INSPIX WORLD』への大型アップデートが最終段階を迎えているが、本格的な業績貢献はこれからである。ただ、『INSPIX WORLD』の開発や、新たなプロジェクトであるオンライン接近イベントシステム『PH』※については、在宅勤務の増加による生産性の低下に伴って進捗に遅れが生じており、早期ローンチに向けて工程管理の徹底を図っている。損益面では、プラットフォーム関連への先行費用により損失幅は拡大した。
※アイドルとファンによるオンライン握手会などを想定。バーチャル握手会をはじめ、リアルを含めたイベント開催の実績などが評価され、エンターテインメント業界からの相談が増えていることに対応したもの。
(3) ゲーム事業
売上高は前期比62.7%減の889百万円、営業利益は同26.5%増の306百万円と減収ながら増益となった。ただ、2020年3月2日付で『ぼくとドラゴン』と『猫とドラゴン』の2タイトルに係る事業をドリコムへ譲渡したことにより、第3四半期以降の業績貢献はほぼない。
(4) その他
売上高は前期比36.9%減の76百万円、営業損失は163百万円(前期は476百万円の損失)と減収ながら損失幅は縮小した。求人サービスなどが売上寄与する一方、医療機関向けSaaS等は先行投資が継続している。ただ、第4四半期(7月‐9月)における『FOREST』導入医療機関のオンライン診療利用患者数は13,099名(前四半期比8.8%増)となっており、規制緩和やコロナの影響(院内感染への懸念等)により、第3四半期以降、急拡大している。
3. 四半期業績の推移
四半期売上高の推移を見ると、2020年9月期第3四半期に落ち込んだのは、「ゲーム事業」の譲渡に伴うものである。一方、注力する「マッチング事業」は四半期ごとに順調に伸びており、とりわけ広告費を増やした第3四半期以降、成長が加速してきた。
一方、営業利益の推移については、第1四半期及び第2四半期は、『ぼくとドラゴン』による利益貢献と『with』の成長に伴う利益の底上げにより、黒字を継続してきたものの、第3四半期以降は、『ぼくとドラゴン』の譲渡による影響と、最終段階を迎えている『INSPIX WORLD』への開発加速により、再び損失計上が続いた。
4. 2020年9月期の総括
以上から、2020年9月期を総括すると、業績面ではゲームタイトルの譲渡や『INSPIX WORLD』の開発加速等により、最終的に3期連続の営業損失を計上する結果となったことは今後の課題として残ったものの、『with』が順調に伸びていることや「初音ミク GALAXY LIVE 2020」の開催で一定の成功を収め、事業拡大につなげるためのノウハウを積み上げたこと、『INSPIX WORLD』の開発が最終段階に入ってきたことなどは、今後に向けて大きな弾みとなった。また、財務面でも新株予約権の行使等によりGCが解消されたところもプラスの材料と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<ST>
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) マッチング事業
売上高は前期比47.8%増の4,375百万円、営業利益は同81.3%増の1,335百万円と大きく拡大した。特に、第4四半期(7月‐9月)だけで見ると、売上高は前四半期比21.2%増の1,345百万円、営業利益は同48.7%増の428百万円と足元でも大きく伸びている。注力する『with』が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学・統計学を生かした最適なマッチング機能による差別化や積極的なプロモーション展開等)により好調に推移している。独自機能の投入※や口コミによる入会増加に加え、広告費回収効率を示すKPIが高い水準にあるなかで、広告費を増やしたことが足元の会員数の伸びに寄与しており、2020年9月末の会員数は370万人を突破した。SNSカテゴリの売上ランキングでも5位以内を確保している。損益面でも、積極的なプロモーションや機能強化に向けた費用を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、営業利益率は30.5%(前期は24.9%)と売上増に連動して大きく改善し、収益の柱に成長している。
※ユーザー1人ひとりに合った相手をAIが自動で探し出し提案する『For You』機能のほか、2020年7月には、マッチング後、メッセージのやり取りから音声通話、ビデオ通話まで、すべて『with』内で楽しむことができる『with通話β版』のサービスも開始した。
(2) エンターテック事業
売上高は前期比227.7%増の341百万円、営業損失は1,710百万円(前期は1,246百万円の損失)と増収ながら先行費用の増加により損失幅は拡大した。第4四半期(7月‐9月)だけで見ても、売上高は前四半期比7.7%増と着実に積み上がっているが、営業損失は573百万円(第3四半期は430百万円の損失)と先行投資の状態が続いている。
VRアイドル『えのぐ』に加え、所属タイトル『VOYS BOY』及び『学芸大青春』などのIP関連が、定期イベントやファンミーティング、グッズ販売等により業績の伸びをけん引している。第3四半期以降、コロナ禍に伴うイベント中止や延期等による影響を受け、成長スピードは想定を下回ったものの、オンラインを活用した様々な活動やCD販売、タレントグッズの販売などによってカバーして増収を確保した。また、自社関連IPのSNS等累計フォロワー数についても、コロナ禍において、従来とは違う手法でのファン増加策が奏功し、大きく伸びている※。
※2020年10月末のフォロワー数は761千名に増加(2020年7月末比23.1%増)。
一方、プラットフォーム関連については、2020年9月に「初音ミク GALAXY LIVE 2020」を開催し、一定の成功を収めたほか、ライブ特化型仮想空間SNS『INSPIX WORLD』への大型アップデートが最終段階を迎えているが、本格的な業績貢献はこれからである。ただ、『INSPIX WORLD』の開発や、新たなプロジェクトであるオンライン接近イベントシステム『PH』※については、在宅勤務の増加による生産性の低下に伴って進捗に遅れが生じており、早期ローンチに向けて工程管理の徹底を図っている。損益面では、プラットフォーム関連への先行費用により損失幅は拡大した。
※アイドルとファンによるオンライン握手会などを想定。バーチャル握手会をはじめ、リアルを含めたイベント開催の実績などが評価され、エンターテインメント業界からの相談が増えていることに対応したもの。
(3) ゲーム事業
売上高は前期比62.7%減の889百万円、営業利益は同26.5%増の306百万円と減収ながら増益となった。ただ、2020年3月2日付で『ぼくとドラゴン』と『猫とドラゴン』の2タイトルに係る事業をドリコムへ譲渡したことにより、第3四半期以降の業績貢献はほぼない。
(4) その他
売上高は前期比36.9%減の76百万円、営業損失は163百万円(前期は476百万円の損失)と減収ながら損失幅は縮小した。求人サービスなどが売上寄与する一方、医療機関向けSaaS等は先行投資が継続している。ただ、第4四半期(7月‐9月)における『FOREST』導入医療機関のオンライン診療利用患者数は13,099名(前四半期比8.8%増)となっており、規制緩和やコロナの影響(院内感染への懸念等)により、第3四半期以降、急拡大している。
3. 四半期業績の推移
四半期売上高の推移を見ると、2020年9月期第3四半期に落ち込んだのは、「ゲーム事業」の譲渡に伴うものである。一方、注力する「マッチング事業」は四半期ごとに順調に伸びており、とりわけ広告費を増やした第3四半期以降、成長が加速してきた。
一方、営業利益の推移については、第1四半期及び第2四半期は、『ぼくとドラゴン』による利益貢献と『with』の成長に伴う利益の底上げにより、黒字を継続してきたものの、第3四半期以降は、『ぼくとドラゴン』の譲渡による影響と、最終段階を迎えている『INSPIX WORLD』への開発加速により、再び損失計上が続いた。
4. 2020年9月期の総括
以上から、2020年9月期を総括すると、業績面ではゲームタイトルの譲渡や『INSPIX WORLD』の開発加速等により、最終的に3期連続の営業損失を計上する結果となったことは今後の課題として残ったものの、『with』が順調に伸びていることや「初音ミク GALAXY LIVE 2020」の開催で一定の成功を収め、事業拡大につなげるためのノウハウを積み上げたこと、『INSPIX WORLD』の開発が最終段階に入ってきたことなどは、今後に向けて大きな弾みとなった。また、財務面でも新株予約権の行使等によりGCが解消されたところもプラスの材料と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<ST>