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ナレッジスイート Research Memo(3):DX事業とシステムエンジニアリングサービス等のBPO事業を展開

注目トピックス 日本株
■会社概要

2. 事業内容
ナレッジスイート<3999>は、経営理念として「Change The Business〜中小企業のビジネスを変え、日本経済の活性化に貢献する〜」ことを掲げている。日本の総企業数の99.7%は中小企業で占められているが、人材不足等の経営課題を抱えており、こうした課題を解決するSaaSを提供していくことで中小企業の収益力向上をサポートし、日本経済の活性化に貢献していく考えだ。また、企業ビジョンとしては、同社の主力製品である「Knowledge Suite」を展開していくことによって、営業活動における単純作業の自動化を図り、中堅・中小企業の働き方改革を推進していくことを目指している。

事業セグメントとして2020年9月期までは、クラウドソリューション事業と子会社2社で展開するシステムエンジニアリング事業に分けていたが、2021年9月期より同社のコア事業である「Knowledge Suite」を主力としたクラウドサービスの事業動向や今後の成長性について、より理解が深まりやすいようにするため、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)事業とビジネスプロセスアウトソーシング(以下、BPO)事業の2つの事業セグメントに組み直している。

(1) DX事業
従来のクラウドソリューション事業のうち、SaaS(クラウドサービス)及び導入・定着支援等の「カスタマーサクセス」が含まれる。「Knowledge Suite」のOEM版「KDDI knowledg Suite」、並びにWebマーケティングソリューションサービスについては、「マーケティング/開発保守」としてBPO事業に移管している。

a) SaaS(クラウドサービス)
同社の主力サービスである「Knowledge Suite」は、営業プロセスを可視化することによって営業課題を解決、生産性向上を実現するSFA/CRMをメイン機能として、グループウェアや名刺管理サービス、メール配信エンジン機能など複数機能をオールインワンで提供する統合ビジネスアプリケーションとなる。オールインワンとすることで、顧客は各サービスを個別で契約するよりも安価な月額料金で利用が可能となる。また、ユーザー数が無制限であること、マルチデバイスに対応しており、社内外どこからでも利用できること(テレワークも可能)が特徴となっている。なお、利用機能のうち、営業支援メール配信エンジンについてはエイジア<2352>の「WEBCAS e-mail」が実装されており、そのほかAPI連携やメールサーバー、セキュリティ強化機能などもオプションサービスとして提供している。

料金プランは3種類で、うち標準プランとなる「SFAスタンダード」はユーザー数無制限、データ保存容量5GBで月額50,000円、5GBを超過した場合は1GBごとに8,750円が付加されることになる。このため、顧客は月々の利用状況によって利用料金が変動することもある。グループウェアのみの場合は月額6,000円で提供しているが、これはSFAプランの契約ができなかった顧客向けに提供しているプランで、全体に占める比率も小さい。なお、直近の月額ARPA(アカウント当たり平均売上高)は5万円弱の水準になっているとみられる。中小企業の場合、導入後2〜3年経過したあたりで保存データ容量5GBを超えてくるケースが多いため、ARPAは長期的に見れば上昇トレンドをたどっていくことになると予想される。また、月額課金によるサブスクリプション型のビジネスモデルのため、解約がなければ毎月、右肩上がりに売上げが増加していくため予実の確度が高く、安定性の高いビジネスモデルとなっていることが特徴だ。

顧客ターゲットは中小企業から中堅企業まで幅広く、Web広告や会社ホームページから入ってくる毎月700〜800件の問い合わせに対して、直販営業並びに販売パートナー(14社)経由で顧客を獲得している。上場前は毎月300〜400件の問い合わせ件数だったが、株式上場後は認知度向上もあって問い合わせ件数も増加している。2010年のサービス開始以降、契約社数は順調に拡大しており2,000社を超えているものと見られる。

クラウド型SFA/CRMサービスにおける主な競合はSalesforce.comとなるが、単価が高く大企業向けが中心のため、直接競合することはほとんどない。同社が顧客ターゲットとしている中小企業ではSFA/CRMツールの導入率がまだ低く、大半はExcelなど汎用ソフトを使って管理している。このため、新規顧客の約85%は初めてSFA/CRMツールを導入する企業で、残り約15%が競合先からの乗り換えとなっている。

また、2020年5月に新サービスとしてオンライン商談ツール「VCRM」の提供を開始した。オンラインのWeb会議ツールとしては、Zoomを筆頭に多くのサービスが先行しているが、「VCRM」はアプリケーションのインストールが不要なこと、営業電話中にスムーズなオンライン商談への誘導が可能なこと、プレゼン資料を共有しながら商談を進めることが可能なことなどが特徴となっている。2020年9月まで無料提供期間とし、10月より有料サービスを開始した。初期費用98,000円、月額費用36,000円/4ルーム(追加1ルーム当たり9,000円/月)となる。

そのほかのSaaS(クラウドサービス)としては、複数のビジネスソフトウェアで利用されるID/パスワードを1つに統合できるシングルサインオンサービスの「ROBOT ID」や、画面操作だけでデータベース型業務アプリケーションを簡単に作成できる「Shelter」など、企業の営業活動のDX化を推進するサービスをラインナップしている。

b) カスタマーサクセス
「カスタマーサクセス」とは同社の「Knowledge Suite」を導入した企業に対して、初期設定や操作方法の教育などコンサルティングを行うほか、定着支援のための運用サポート、顧客ニーズにあったタイムリーな開発・改善提案などを行うサービスとなる。契約時にコンサルティングサービスを同時に契約した企業と、そうでない企業とでは1年後の解約率が変わってくる(全体の解約率は2%弱程度)ほか、ARPAやLTV(生涯価値)の向上にもつながることから、同社では中長期的な成長を実現していくためにも必要なサービスと位置付けている。

(2) BPO事業
BPO事業には、KDDI版「Knowledge Suite」のOEM保守のほか、クラウドサービスの開発請負、Webマーケティング支援、子会社のアーキテクトコアで展開するシステムエンジニアリングサービスが含まれる。

Webマーケティングソリューションの主要顧客は、電通グループ<4324>で年間売上高は1〜2億円になっていると見られる。同社が持つWebマーケティングのノウハウ(主に見込み客の獲得)をマーケティング支援という形でサービス提供している。

システムエンジニアリングサービスでは、国内の大手IT企業向けの汎用系及びWeb系システムの開発、IT技術者の派遣などを行っており、業績は比較的安定して推移している。従業員数は2020年9月時点で74名の規模となる。同社が子会社化した目的は、自社の技術開発力を強化するIT技術者の確保であった。ここ数年はIT技術者が慢性的に不足する状況で採用費の高騰が続いていたこともあり、M&Aで開発リソースを確保したことになる。従来、同社の技術者は30名弱程度だったが、アーキテクトコアが加わったことにより、総勢100名体制と大幅に強化されたことになる。もちろん、現状は既存顧客向けの案件を抱えていることから、すぐにM&Aの効果が顕在化するわけではないが、2019年9月期に8名の技術者を子会社から受け入れて開発部門に配属させたほか、コロナ禍において子会社の稼働率がやや低下したこともあり、さらに同社の開発部門に振り向けている状況にあり、製品開発力の強化という当初のM&Aの目的に沿った効果が出始めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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