ナレッジスイート Research Memo(5):20年9月期は成長投資で損益が悪化も、クラウドサービスの売上拡大
[21/01/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年9月期の業績動向
ナレッジスイート<3999>の2020年9月期の連結業績は、売上収益で前期比1.9%減の2,118百万円となり、営業利益で20百万円の損失(前期は120百万円の利益)、税引前利益で27百万円の損失(同110百万円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期利益で6百万円の損失(同77百万円の利益)となった。
売上収益はクラウドソリューション事業が前期比9.1%増と順調に拡大したものの、システムエンジニアリング事業が一部受注案件の延期が発生し、同8.6%減となったことが減収要因となった。新型コロナウイルス感染症の影響について見ると、クラウドソリューション事業では、展示会やセミナーの中止が続いた第3四半期にリード(見込み顧客)件数が減少したものの、コロナ禍でテレワーク体制を導入するなど企業のDXに対する取り組みは活発化しており、第4四半期には前年同期を上回るペースとなっており、通期のリード件数では前期比2.7%増の2.7万件と過去最高を更新している。同社自身でも、外出自粛要請時期に、テレワーク環境を早期に構築し、オンライン営業、デジタルマーケティング活動にスムーズに移行している。一方、システムエンジニアリング事業については、第3四半期以降、景況感が急速に悪化したことで、受注案件の延期が発生するなどマイナスの影響を受けた。
売上総利益についてはコア事業である「Knowledge Suite」の増収効果によって前期比7.8%増の859百万円となったものの、販管費が同37.3%増の936百万円と大幅に増加したことが営業利益の減少要因となった。販管費の増加額254百万円の主な内訳は、人件費で90百万円、広告宣伝費で108百万円となっている。人件費については、クラウドソリューション事業における積極的な人財投資を実施したことが要因で、主に営業人員やクラウドサービス(SaaS)の導入定着支援を行う「カスタマーサクセス」の人員体制を強化した(期末従業員数は全社合計で前期末比36名増の180名)。一方、広告宣伝費については、新サービスのオンライン商談ツール「VCRM」の認知度向上を図るため、第4四半期にテレビCMを実施したことが要因となっている。
四半期ベースの業績推移を見ると、全体の売上高は前年同期比で伸び悩んだが、これは「Knowledge Suite」のOEM版が若干ながら減少傾向が続いていることや、Webマーケティングソリューションが減少したこと、システムエンジニアリング事業が第2四半期以降、減収に転じたことなどが要因となっている。一方、売上総利益については期を通して増益を維持しており、売上総利益率も前年同期を上回って推移するなど、プロダクトミックスが良化してきたことがうかがえる。一方、営業利益について見ると、第3四半期に6百万円の損失、第4四半期に116百万円の損失と悪化している。第3四半期ついては、新型コロナウイルスの影響で売上高が一時的に落ち込んだこと、並びに人件費の増加が主因となっており、第4四半期については人件費の増加に加えて、広告宣伝費を122百万円投下したことが主因となっている。広告費控除前の営業利益で見ると、前期比22百万円減少の146百万円となる。以上から、2020年9月期の業績は、戦略的投資(人件費+広告宣伝費)を積極的に実施したことが減益要因であったことがわかる。
(1) クラウドソリューション事業
クラウドソリューション事業の売上収益は前期比9.1%増の896百万円、セグメント利益は同49.5%減の129百万円となった。売上収益は「Knowledge Suite」を中心としたクラウドサービスの伸長により増収となったものの、人件費の増加や第4四半期に「VCRM」の大規模プロモーションを実施したことが減益要因となった。
売上収益の内訳を見ると、クラウドサービスは中堅・中小企業におけるテレワーク化及びDX化ニーズの高まりを背景に、契約件数が順調に積み上がったことで、前期比12.9%増の674百万円と過去最高を更新した。また、ソリューションサービスのうち、導入コンサルティングはクラウドサービスの契約件数増加に伴って、前期比13.3%増の57百万円となったが、Webマーケティングソリューションやクラウドインテグレーションは、新型コロナウイルス感染症拡大による顧客企業の予算縮小、及び案件の先送りなどが発生し、同4.1%減の168百万円となった。なお、KDDI向けの売上収益は同4.9%減の222百万円となっている。
クラウドサービス(OEM除く)の期末契約社数は前期末比37.1%増の1,844社となった。「Knowledge Suite」の契約数増加に加えて、「VCRM」で180社超の契約を獲得したことが増加要因となっている。いずれの製品も、中小企業のIT化を支援する経済産業省の施策である「IT導入補助金」の対象製品として選ばれ、契約社数拡大の追い風となった。ただ、「VCRM」については9月末まで無償提供期間※としたため、売上収益への貢献はほぼ無かったと見られる。
※2020年9月末まで、基本サービス(初期費用及び月額利用料)を利用する企業に対して無償提供とし、基本サービスを超える利用企業は無償提供対象外とした。
(2) システムエンジニアリング事業
システムエンジニアリング事業の売上収益は前期比8.6%減の1,222百万円、セグメント利益は同1.1%増の258百万円となった。期の前半までは既存取引先との取引深耕が奏功し、増収増益が続いたものの、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、派遣先プロジェクトの一部先送りが発生したことが影響し減収となった。ただ、待機エンジニアについては「Knowledge Suite」の次期製品の開発要員として再配置したことや、子会社2社を1社に統合したことに伴う費用削減効果が出たことなどが増益要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年9月期の業績動向
ナレッジスイート<3999>の2020年9月期の連結業績は、売上収益で前期比1.9%減の2,118百万円となり、営業利益で20百万円の損失(前期は120百万円の利益)、税引前利益で27百万円の損失(同110百万円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期利益で6百万円の損失(同77百万円の利益)となった。
売上収益はクラウドソリューション事業が前期比9.1%増と順調に拡大したものの、システムエンジニアリング事業が一部受注案件の延期が発生し、同8.6%減となったことが減収要因となった。新型コロナウイルス感染症の影響について見ると、クラウドソリューション事業では、展示会やセミナーの中止が続いた第3四半期にリード(見込み顧客)件数が減少したものの、コロナ禍でテレワーク体制を導入するなど企業のDXに対する取り組みは活発化しており、第4四半期には前年同期を上回るペースとなっており、通期のリード件数では前期比2.7%増の2.7万件と過去最高を更新している。同社自身でも、外出自粛要請時期に、テレワーク環境を早期に構築し、オンライン営業、デジタルマーケティング活動にスムーズに移行している。一方、システムエンジニアリング事業については、第3四半期以降、景況感が急速に悪化したことで、受注案件の延期が発生するなどマイナスの影響を受けた。
売上総利益についてはコア事業である「Knowledge Suite」の増収効果によって前期比7.8%増の859百万円となったものの、販管費が同37.3%増の936百万円と大幅に増加したことが営業利益の減少要因となった。販管費の増加額254百万円の主な内訳は、人件費で90百万円、広告宣伝費で108百万円となっている。人件費については、クラウドソリューション事業における積極的な人財投資を実施したことが要因で、主に営業人員やクラウドサービス(SaaS)の導入定着支援を行う「カスタマーサクセス」の人員体制を強化した(期末従業員数は全社合計で前期末比36名増の180名)。一方、広告宣伝費については、新サービスのオンライン商談ツール「VCRM」の認知度向上を図るため、第4四半期にテレビCMを実施したことが要因となっている。
四半期ベースの業績推移を見ると、全体の売上高は前年同期比で伸び悩んだが、これは「Knowledge Suite」のOEM版が若干ながら減少傾向が続いていることや、Webマーケティングソリューションが減少したこと、システムエンジニアリング事業が第2四半期以降、減収に転じたことなどが要因となっている。一方、売上総利益については期を通して増益を維持しており、売上総利益率も前年同期を上回って推移するなど、プロダクトミックスが良化してきたことがうかがえる。一方、営業利益について見ると、第3四半期に6百万円の損失、第4四半期に116百万円の損失と悪化している。第3四半期ついては、新型コロナウイルスの影響で売上高が一時的に落ち込んだこと、並びに人件費の増加が主因となっており、第4四半期については人件費の増加に加えて、広告宣伝費を122百万円投下したことが主因となっている。広告費控除前の営業利益で見ると、前期比22百万円減少の146百万円となる。以上から、2020年9月期の業績は、戦略的投資(人件費+広告宣伝費)を積極的に実施したことが減益要因であったことがわかる。
(1) クラウドソリューション事業
クラウドソリューション事業の売上収益は前期比9.1%増の896百万円、セグメント利益は同49.5%減の129百万円となった。売上収益は「Knowledge Suite」を中心としたクラウドサービスの伸長により増収となったものの、人件費の増加や第4四半期に「VCRM」の大規模プロモーションを実施したことが減益要因となった。
売上収益の内訳を見ると、クラウドサービスは中堅・中小企業におけるテレワーク化及びDX化ニーズの高まりを背景に、契約件数が順調に積み上がったことで、前期比12.9%増の674百万円と過去最高を更新した。また、ソリューションサービスのうち、導入コンサルティングはクラウドサービスの契約件数増加に伴って、前期比13.3%増の57百万円となったが、Webマーケティングソリューションやクラウドインテグレーションは、新型コロナウイルス感染症拡大による顧客企業の予算縮小、及び案件の先送りなどが発生し、同4.1%減の168百万円となった。なお、KDDI向けの売上収益は同4.9%減の222百万円となっている。
クラウドサービス(OEM除く)の期末契約社数は前期末比37.1%増の1,844社となった。「Knowledge Suite」の契約数増加に加えて、「VCRM」で180社超の契約を獲得したことが増加要因となっている。いずれの製品も、中小企業のIT化を支援する経済産業省の施策である「IT導入補助金」の対象製品として選ばれ、契約社数拡大の追い風となった。ただ、「VCRM」については9月末まで無償提供期間※としたため、売上収益への貢献はほぼ無かったと見られる。
※2020年9月末まで、基本サービス(初期費用及び月額利用料)を利用する企業に対して無償提供とし、基本サービスを超える利用企業は無償提供対象外とした。
(2) システムエンジニアリング事業
システムエンジニアリング事業の売上収益は前期比8.6%減の1,222百万円、セグメント利益は同1.1%増の258百万円となった。期の前半までは既存取引先との取引深耕が奏功し、増収増益が続いたものの、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、派遣先プロジェクトの一部先送りが発生したことが影響し減収となった。ただ、待機エンジニアについては「Knowledge Suite」の次期製品の開発要員として再配置したことや、子会社2社を1社に統合したことに伴う費用削減効果が出たことなどが増益要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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