芙蓉リース Research Memo(3):事業本来の業績を示す「差引利益」は増益基調で推移
[21/01/29]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の70%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は、基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴って右肩上がりに推移してきた。また、経常利益についても、「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特に、ROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心とした新領域のビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2020年3月期の経常利益は3 期連続で過去最高を更新している。
また、有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
また、資本効率を示すROEについても、2016年3月期以降、利益水準の底上げとともに上昇し、2019年3月期は10%の水準に到達した。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に、ここ数年においてマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の70%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は、基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴って右肩上がりに推移してきた。また、経常利益についても、「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特に、ROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心とした新領域のビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2020年3月期の経常利益は3 期連続で過去最高を更新している。
また、有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
また、資本効率を示すROEについても、2016年3月期以降、利益水準の底上げとともに上昇し、2019年3月期は10%の水準に到達した。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に、ここ数年においてマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>