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芙蓉リース Research Memo(4):2021年3月期上期も上期ベースで過去最高業績を更新(1)

注目トピックス 日本株
■決算動向

3. 2021年3月期上期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の2021年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比3.7%増の3,574億円、営業利益が同2.3%増の209億円、経常利益が同3.7%増の228億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同1.1%増の139億円と増収増益となり、売上高・利益ともに過去最高実績(上期ベース)を更新した。通期計画に対しても順調に進捗している。

売上高はヤマトリース及びNOCの連結効果※1などが増収に寄与した。また、事業本来の業績を示す「差引利益」についても前年同期比10.4%増の459億円と順調に拡大。コロナ禍による影響を一部受けたものの、不動産リース及びファイナンス、BPOサービスの伸びなどで打ち返し、すべてのセグメントで増益となった。一方、費用面についても、連結子会社の増加に伴う人物件費増のほか、資金原価増※2や貸倒関連費用増※3により増加したものの、すべて想定の範囲内。「差引利益」の増加により吸収して経常増益を確保した。

※1 2020年4月から連結化したヤマトリースが寄与したほか、2019年8月に連結化したNOCについても6ヶ月分の上乗せ要因となった。
※2 資金原価は、営業資産の積み上げに伴う有利子負債残高の拡大により50億円(前年同期比3億円増)に増加したが、調達利回りは0.45%(前年同期は0.47%)と低位安定している。
※3 貸倒関連費用は7億円(前年同期比3億円増)に増加。コロナ禍の影響により発生した未収リース料に対する引当金の計上等が理由であるが、想定の範囲内である。


「契約実行高」についても、コロナ禍の影響を受けた航空機リースの新規取り組みを抑制したものの、引き続き不動産リースが好調であったことや、ファイナンス及びアクリーティブによるファクタリング(売掛債権や診療報酬債権の買取り)の伸びにより、ほぼ2020年3月期並みの水準を確保した。その結果、「営業資産」は戦略分野を中心に前年同期比8.0%増の2兆5,756億円に拡大している。

財政状態については、ヤマトリースの連結化や「営業資産」の積み上げなどにより、総資産は前期末比6.9%増の2兆9,417億円に拡大。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同2.6%増の2,832億円に増加したことから、自己資本比率は9.6%(前期末は10.0%)とほぼ横ばいで推移した。また、有利子負債(リース債務を除く)も同8.9%増の2兆4,288億円に増加したが直接調達比率は33.3%(前期末は33.4%)、長期有利子負債比率は39.1%(同39.7%)、短期の支払い能力を示す流動比率も136.4%(同138.3%)と安定しており、財務の健全性は維持されている※。

※(株)格付情報センター(R&I)による発行体格付は「A(安定的)」(2020年10月より)に引き上げられるとともに、(株)日本格付研究所(JCR)による長期発行体格付も「A+(安定的)」(2019年11月より)に維持されている。すなわち、中期経営計画のスタート時(2017年4月)の発行体格付と比べると、それぞれ1ノッチ向上したことになる。


各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。

(1) 不動産
2020年9月末の「営業資産残高」は、前期末比11.1%増の4,943億円と順調に拡大した。コロナ禍においても引き合いは継続しており、多様なニーズや複雑なスキームに応えられるノウハウ等を生かして案件情報を積み上げ、「契約実行高」は計画を上回った。系列を超えた幅広いアライアンス先との協業によりブリッジ案件が拡大したほか、ユーザーとのリレーション構築により建物リースの用途(商業、ホテル・介護、居住、レジャー・サービス、物流、その他)も分散されている※。また、コロナ禍に伴う賃料繰延先は商業・ホテルの一部に限られており、繰延期間も半年程度と短期にとどまっている。ROAについても2.1%(前期は2.2%)と高い水準を維持した。

※注目される成約事例の1つに、「ワーナー ブラザーズ スタジオツアー東京‐メイキング・オブ ハリー・ポッター」(としまえん跡地)の施設を不動産リースで提供する事案が挙げられる(2023年前半オープン予定)。


(2) 航空機
2020年9月末の「営業資産残高」は、前期末比4.2%減の1,580億円と減少した。コロナ禍が航空業界に大きな影響を及ぼしているなかで、航空機リースの新規取り組みを抑制し、保有機体数は41機と横ばいで推移するにとどまった。中期経営計画の目標(2022年3月期の営業資産2,800億円、保有機体数70機)に対しても進捗の遅れがさらに広がっている。ただ、同社の場合、需要の安定している若齢機及びナローボディ中心のポートフォリオであり、リース中の機体はすべて継続利用されているようだ。一部エアラインの未収リース料に対して貸倒引当金を計上したものの、想定の範囲内であり、足元で新たなリスケ要請は発生していない。また、ROAも1.8%(前期は2.1%)の水準を確保している。一方、今後に向けた取り組みとしては、周辺事業へのビジネス領域の拡大と収益機会の獲得を目的に、エアバスグループが組成する航空関連ベンチャーファンドへの出資を行った。

(3) 海外
2020年9月末の「営業資産残高」(海外事業における関連会社への出資額を含む)は、前期末比1.2%減の980億円と、コロナ禍に伴う活動制限等の影響により若干減少した。ただ、北米での事業が堅調に推移したことに加え、持分法投資利益が増加したことを受けて、ROAは1.4%(前期は0.9%)に大きく改善している。また、2020年11月には台湾現地法人が営業を開始しており、主に日系企業向けにリースを中心としたソリューションを提案していく方針である。台湾は再生可能エネルギーの拡大にも注力しており、戦略分野である「エネルギー・環境」事業の海外展開も加速していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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