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ハウスコム Research Memo(1):宅都買収で中計目標を大幅な前倒しで達成し、不動産テックの進展も加速

注目トピックス 日本株
■要約

ハウスコム<3275>は首都圏と東海圏を地盤に不動産仲介・住まい関連サービスを提供する業界有数の成長企業である。出店は関東と東海を中心とした都市部に集中しており、近年では群馬、栃木、茨城といった北関東や、四国、九州、沖縄といった地方都市への出店も進んでいる。そのほか、M&Aや提携なども通じて事業規模が拡大中である。

Key Points
・業績予想引き下げるも、各利益は黒字を堅持する見通し
・宅都買収により、店舗数の中計目標を大幅な前倒しで達成
・M&Aや提携を通じて不動産テックの進展も加速し、収益成長期待が高まる


1. 2021年3月期第3四半期累計の業績概要
2021年3月期第3四半期累計(2020年4月-12月)の連結営業収益は8,328百万円(前年同期比7.5%減)、営業損益が356百万円の損失(前年同期は192百万円の利益)、経常損益が336百万円の損失(同196百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損益が331百万円の損失(同109百万円の利益)となった。第1四半期(同4月-6月)は新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)を背景に減収減益となった。第2四半期(同7月-9月)は需要の低迷が5月に底を打ったことなどを受け、第1四半期比、前年同期比でともに増収増益となった。第3四半期(同10月-12月)は、東京圏・中京圏を中心に転居需要が縮小したことから、連結営業収益が前年同期比12.6%減の2,655百万円、営業損益が225百万円の損失(前年同期は58百万円の利益)、経常損益が226百万円の損失(同59百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損益が180百万円の損失(同31百万円の利益)となった。

2. 今後の見通し
同社は第3四半期累計決算と併せて、2021年3月期の通期の連結業績予想の修正を発表した。営業収益予想を従来の13,291百万円から12,234百万円(前期比6.0%減)に、営業利益予想を1,161百万円から344百万円(同66.2%減)に、経常利益予想を1,339百万円から527百万円(同55.5%減)に、親会社株主に帰属する当期純利益予想を906百万円から302百万円(同55.1%減)に、そろって引き下げた。第3四半期において東京圏・中京圏を中心に転居需要の縮小がみられたほか、緊急事態宣言の再発令に伴って引っ越しシーズンである1月から3月の転居需要も縮小が見込まれ、それらの影響を反映させた。

(株)宅都の子会社化による効果に弊社は着目する。同社は不動産関連事業を手掛ける(株)宅都ホールディングスと業務提携を締結し、2021年3月に宅都ホールディングス傘下の宅都を子会社化する計画となっている。宅都は関西圏で不動産賃貸仲介店舗を23店舗構える。店舗は単身者層に強い地下鉄御堂筋線上、ファミリー層に強い北部北摂地域に多く立地している。宅都の買収によって関西圏の事業基盤を一気に拡大させる。直営店は全国で212店舗となる見通しで、2019年4月公表の中期経営計画における店舗数の2022年3月末の計画値である208店舗を大幅な前倒しで達成することとなる。M&Aにおけるシナジーとして、関西圏における店舗数が増えることで、店舗間の交流・異動を通じて人材・組織の成長が活性化される。従来提供していた幅広い付帯サービスを相互にセールスするクロスセルも可能となる。また、この業務提携は、「事業領域・地域の垣根を越えた連携と不動産テックの活用を通じて事業成長を早める」との想定のもと、不動産テックを含む両社の協力関係を維持・発展させることを目的としている。具体的には、「不動産賃貸仲介・管理物件における相互送客」「不動産テックにおける新分野の拡大」「戦略的企業買収」などの施策を挙げている。これにより、同社の大きな成長ドライバーの1つである「不動産テック」が大きく進展するだろう。

3. 中長期の成長戦略
同社の基本的な強みとして、柔軟な経営姿勢が挙げられる。2021年3月期については厳しい事業環境下で戦略を柔軟に変え、投資を進めるという臨機応変さが見て取れた。従来からの盤石な財務基盤も同姿勢を支えている。M&Aについても、時間短縮の成長手段として今後も打ち出されると弊社は考える。宅都の例のように、特定の商圏でまとまった数の店舗を獲得できるM&Aは店舗当たり収益の伸びにもつながる。統一することで効率化できる部分と、残すことで強みを生かせる部分を区切るというPMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)の方針もシナジーを生みやすくなる。同社は中期経営計画の中でドメイン拡大も掲げている。サービスラインを拡大・拡充することにより収益源の多様化を図る。不動産テックも同社の大きな成長ドライバーである。「顧客との関係性強化・アウトプットの拡大」「バックオフィス面でのインプットの削減」「不動産業界全体における情報管理の効率化」の3領域を軸に今後も同社の収益を押し上げると弊社は予想する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)




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