ハウスコム Research Memo(4):M&Aや不動産テックを武器に更なる成長基盤構築へ
[21/02/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
基本的かつコアなハウスコム<3275>の強みとして、柔軟な経営姿勢が挙げられる。2021年3月期については、厳しい事業環境において戦略を柔軟に変え、広告宣伝費といった売上を伸ばすための費用を抑え、事業基盤を拡大させる投資を進めるという、環境にフィットする臨機応変さが見て取れた。また、従来からの盤石な財務基盤も同姿勢を支えている。同社の第3四半期末時点での自己資本比率は69.1%、有利子負債はなし、流動比率は244.2%と、安全性は極めて高い。コロナ禍では多くの企業で資金繰り面の懸念が高まり、支出を抑えて財務的耐久力を高めるといった動きが見られた。しかし、同社の場合は常時高い安全性を維持していたため、不測の逆境下においても成長に向けた投資を危険を冒すことなく実施できている。強固な財務基盤と、投資方針を外部環境に柔軟にフィットさせる経営体制は、今後も同社の長期的な成長に大きく寄与すると弊社は予想する。
また、M&Aについても、時間短縮の成長手段として今後も打ち出されると弊社は考える。宅都の例のように、特定の商圏でまとまった数の店舗を獲得できるM&Aは、同社グループにとって店舗当たり収益の伸びにもつながる。統一することで効率化できる部分と、残すことで強みを生かせる部分を区切るというPMIの方針も、グループ内部の摩擦を緩和し、シナジーを生みやすくなる。
加えて事業拡大について、同社は中期経営計画の中でドメイン拡大も掲げている。具体的には、「賃貸仲介業」から「賃貸サービス業」へ、そして「賃貸サービス業」から「住まいのサービス業」へと移る計画だ。M&Aなどを通じてサービスラインを拡大・拡充することにより、従来は顧客の入居退去のタイミングのみにとどまっていた収益機会を、リフォームや管理関連サービスなど入居中におけるあらゆる方面・タイミングにまで広げ、収益源の多様化を図る。
全国賃貸住宅新聞が公表した2019年10月から2020年9月末までの全国における賃貸仲介件数ランキングでは、同社を含めた大東建託グループが首位、同社のみの実績では実質4位と、国内における競争力・ブランド力は強い。こうした定量的・定性的な強みは、M&Aを通じた事業規模の拡大局面、収益源の多様化局面でも、効果を最大化させることにつながると弊社は考える。
不動産テックも同社の大きな成長ドライバーである。同社目線での不動産テックの目的は、大きく3つの領域に分かれる。1つ目は、顧客との関係性強化によるアウトプットの拡大である。メール・チャット・電話やAIによる自動応答などにより途絶えることのない顧客との接点を築き、そこでのコミュニケーションを通じて来店前に入居決定の動機を高める「インターナルセールス」は、成約率を高めてアウトプットの拡大をもたらす。また、オンライン内見やIT重説など非対面での接客ツールの浸透は、生産性を向上させ、一人当たりのアウトプットのキャパシティーを引き上げている。2つ目は、バックオフィス面でのインプットの削減である。ペーパーレスなどを導入することで業務フローを効率化する。また、テクノロジーによって自前の集客を強化することで、現在多額の費用をかけている大手ポータルサイトに依存しない低コストな仕組みを構築できる。3つ目は、不動産業界全体における情報管理の効率化である。業界内で分断されたあらゆる情報を、会社や地域の垣根を越えて横断的に統合・整理することで、業界全体で業務効率化を図るというものだ。この領域について同社は、前述した宅都の子会社化、宅都ホールディングスとの業務提携のほか、不動産賃貸仲介業ネットワークの多様な情報を共有するための研究会「REAN JAPAN」の発足などを通じて進めている。
こういった効果が期待できる不動産テックについて、店舗数拡大を背景に、先行投資の負担を分散するほか、効率化効果にレバレッジをかける基盤も整いつつあり、同社はより収益拡大につなげやすい状況となっている。
また、同社が業界内外に発信するメッセージを追っていくと、近い未来に目線を合わせて事業展開を加速しようとしていることがわかる。コロナ禍以前から「アフターデジタル」時代の不動産業の在り方について熱心に発信してきた。そして、コロナ禍により不動産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速されるとの認識のもとで、アフターコロナではDX化への対応で業界他社をリードしようとしている。前述の不動産テックへの取り組み等は、新しい部屋探しの仕方に適応したサービスの向上とローコストオペレーションを同時に追求しようとするものであり、同社の成長加速と収益構造変革への意欲が如実に現れていると言えよう。
中長期的には、柔軟な経営体制のもと、事業規模・ドメイン拡大や不動産テックの進展を背景に成長は加速していくと弊社は予想する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
<NB>
基本的かつコアなハウスコム<3275>の強みとして、柔軟な経営姿勢が挙げられる。2021年3月期については、厳しい事業環境において戦略を柔軟に変え、広告宣伝費といった売上を伸ばすための費用を抑え、事業基盤を拡大させる投資を進めるという、環境にフィットする臨機応変さが見て取れた。また、従来からの盤石な財務基盤も同姿勢を支えている。同社の第3四半期末時点での自己資本比率は69.1%、有利子負債はなし、流動比率は244.2%と、安全性は極めて高い。コロナ禍では多くの企業で資金繰り面の懸念が高まり、支出を抑えて財務的耐久力を高めるといった動きが見られた。しかし、同社の場合は常時高い安全性を維持していたため、不測の逆境下においても成長に向けた投資を危険を冒すことなく実施できている。強固な財務基盤と、投資方針を外部環境に柔軟にフィットさせる経営体制は、今後も同社の長期的な成長に大きく寄与すると弊社は予想する。
また、M&Aについても、時間短縮の成長手段として今後も打ち出されると弊社は考える。宅都の例のように、特定の商圏でまとまった数の店舗を獲得できるM&Aは、同社グループにとって店舗当たり収益の伸びにもつながる。統一することで効率化できる部分と、残すことで強みを生かせる部分を区切るというPMIの方針も、グループ内部の摩擦を緩和し、シナジーを生みやすくなる。
加えて事業拡大について、同社は中期経営計画の中でドメイン拡大も掲げている。具体的には、「賃貸仲介業」から「賃貸サービス業」へ、そして「賃貸サービス業」から「住まいのサービス業」へと移る計画だ。M&Aなどを通じてサービスラインを拡大・拡充することにより、従来は顧客の入居退去のタイミングのみにとどまっていた収益機会を、リフォームや管理関連サービスなど入居中におけるあらゆる方面・タイミングにまで広げ、収益源の多様化を図る。
全国賃貸住宅新聞が公表した2019年10月から2020年9月末までの全国における賃貸仲介件数ランキングでは、同社を含めた大東建託グループが首位、同社のみの実績では実質4位と、国内における競争力・ブランド力は強い。こうした定量的・定性的な強みは、M&Aを通じた事業規模の拡大局面、収益源の多様化局面でも、効果を最大化させることにつながると弊社は考える。
不動産テックも同社の大きな成長ドライバーである。同社目線での不動産テックの目的は、大きく3つの領域に分かれる。1つ目は、顧客との関係性強化によるアウトプットの拡大である。メール・チャット・電話やAIによる自動応答などにより途絶えることのない顧客との接点を築き、そこでのコミュニケーションを通じて来店前に入居決定の動機を高める「インターナルセールス」は、成約率を高めてアウトプットの拡大をもたらす。また、オンライン内見やIT重説など非対面での接客ツールの浸透は、生産性を向上させ、一人当たりのアウトプットのキャパシティーを引き上げている。2つ目は、バックオフィス面でのインプットの削減である。ペーパーレスなどを導入することで業務フローを効率化する。また、テクノロジーによって自前の集客を強化することで、現在多額の費用をかけている大手ポータルサイトに依存しない低コストな仕組みを構築できる。3つ目は、不動産業界全体における情報管理の効率化である。業界内で分断されたあらゆる情報を、会社や地域の垣根を越えて横断的に統合・整理することで、業界全体で業務効率化を図るというものだ。この領域について同社は、前述した宅都の子会社化、宅都ホールディングスとの業務提携のほか、不動産賃貸仲介業ネットワークの多様な情報を共有するための研究会「REAN JAPAN」の発足などを通じて進めている。
こういった効果が期待できる不動産テックについて、店舗数拡大を背景に、先行投資の負担を分散するほか、効率化効果にレバレッジをかける基盤も整いつつあり、同社はより収益拡大につなげやすい状況となっている。
また、同社が業界内外に発信するメッセージを追っていくと、近い未来に目線を合わせて事業展開を加速しようとしていることがわかる。コロナ禍以前から「アフターデジタル」時代の不動産業の在り方について熱心に発信してきた。そして、コロナ禍により不動産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速されるとの認識のもとで、アフターコロナではDX化への対応で業界他社をリードしようとしている。前述の不動産テックへの取り組み等は、新しい部屋探しの仕方に適応したサービスの向上とローコストオペレーションを同時に追求しようとするものであり、同社の成長加速と収益構造変革への意欲が如実に現れていると言えよう。
中長期的には、柔軟な経営体制のもと、事業規模・ドメイン拡大や不動産テックの進展を背景に成長は加速していくと弊社は予想する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
<NB>