システム ディ Research Memo(8):公教育ソリューション事業、ソフトエンジニアリング事業は2ケタ成長を継続
[21/02/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■システム ディ<3804>の今後の見通し
2. 事業部門別の売上見通し
(1) 学園ソリューション事業
学園ソリューション事業は前期比1ケタ台の増収を見込んでいる。既存顧客の更新需要を確実に取り込むだけでなく、新規顧客の獲得に注力していく。大学市場については全国の国公立私立大学(短大含む)1,100校のうち約350校に導入が進み、既にトップシェアを不動のものとしているが、2019年11月にリリースした「CampusPlan Smart」の機能を順次、拡充しながら既存顧客でのリプレイスや新規顧客の開拓につなげていく戦略だ。特に、大学では会計制度の変更によって2015年前後にシステム改修・更新の特需が発生しており、この部分の更新需要が2021年〜2022年頃に発生するものと予想され、他社製品をリプレイスする好機となる。
「キャンパスプラン」の大きな特長は、学務系業務や法人系業務などをトータルで提供できる点にある。この“トータルソリューションの提供”という点では直接的な競合製品はない。同社が業界トップシェアの地位を確立した要因もここにある。領域ごと(例えば“会計・経理”や“人事”などの領域)では、強い競合製品がそれぞれ複数存在するが、違う企業のソフトウェア製品を導入している場合はシステム操作に慣れるまで時間を要するといった課題がある。すべての業務システムを同一製品で網羅することができれば、職員が他部署に異動となった場合でもスムーズにシステムを操作して業務を遂行することが可能となる。「CampusPlan Smart」では現在、総務・人事給与システムを先行してリリースしたが、2023年までに学務系システムも含めてすべての機能をカバーする。既存顧客においてはリプレイスを順次進めていく計画となっている。なお、「CampusPlan Smart」と既存製品との連携も対応しているため、顧客側から見れば契約更新時期にスムーズにリプレイスすることができる。
一方、私立高校は全国に約1,300校、専門学校は約2,900校あり、そのうち同社製品は約150校に導入されていると見られる。シェアで見ると1割にも満たない水準であるが、逆にシェア拡大余地も大きいと言える。高校・専門学校の1校当たり生徒・職員数※は、高校で約800名、専門学校で約200名と、大学の約4,000名と比べて規模が小さいため、初期投資負担の少ないクラウドサービス「キャンパスプラン for Azure」で機能性やコストパフォーマンスを訴求し、顧客開拓を進めていく戦略となっている。売上規模は大学と比べて小さいものの、クラウドサービスでの提供となるため安定収益基盤の拡大による利益率の上昇につながるものと期待される。
※文部科学省「令和元年 学校基本調査」のデータをもとに算出。
(2) ウェルネスソリューション事業
フィットネスクラブやスポーツ施設向けに関しては、コロナ禍によるマイナスの影響が続く見通しで、ウェルネスソリューション事業の売上高も前期比2割減を想定している。こうしたなかで、小規模事業者向けのサービスとしてクラウド版会員管理システム「Smart Hello」を2020年11月にリリースしており、新規顧客の開拓につなげていく戦略となっている。同製品の特長は、月額料金プランが1万円〜3万円と低コストであり、タブレット端末での利用も想定した操作性や機能を備えていること、様々な会費制度に対応できる柔軟性に優れていることなどが挙げられる。
一方、文化・観光施設向け「Hello Fun」についても現状は厳しい環境だが、中期的には業務効率向上のためのIT投資は必要になってくるため、こうした需要を確実に受注につなげていく考えだ。
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業の売上高は、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」をはじめとするデジタル化関連施策を追い風に前期比2ケタ増収が続く見通しである。公立高校については36〜37都道府県で統合型校務支援システムが導入されており、このうち約5割の19県で同社製品が採用されている。未導入の約10県についても、シェア5割の受注獲得を目標としている。一方、小中学校向けに関しては、普及率が低い又は未導入地域への導入を進めていく。
小中学校向けでの同社のシェアは高校に比べて低く、業界で3〜4番手のポジションと見られる。市町村向け(小・中学校向け)のシェアが低かった理由の1つとして、クラウドサービスに対するセキュリティ面での懸念が残っていたことが挙げられる。しかし、「GIGAスクール構想」では「クラウド・バイ・デファクト」が推奨されていること、また都道府県単位では高校向けで19県に導入されていることから、今後これらの県において小中学校を含めた共同調達を開始することになれば同社が受注して小中学校の導入校数がさらに伸びる可能性もあると弊社では見ている。
なお、同社は2021年4月より「School Engine」の新サービスとして「Home Services」の提供を開始する予定だ。同サービスは、通知表をはじめとする校務支援システムに蓄積された児童生徒に関する成績・出欠等の各種情報を、セキュリティを確保したうえでインターネットを通じて保護者へ直接提供するサービスとなる。これは文部科学省が推進する連絡手段デジタル化の取り組みに対応したサービスとなる。既に奈良市教育委員会ではサービス導入に向けた準備を進めており、今後も全国の教育委員会に拡販を進めていく予定にしている。「School Engine」のオプション的なサービスとなるため、既存ユーザーが導入した場合は月額利用料が2〜3割程度上昇する見通しだ。このため、既存ユーザーだけで売上高は2〜3割程度のアップサイドが期待できることになる。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業の売上高については、前期比1ケタ増を見込んでいる。前述した通り、業界第2位となる国策の競合製品がサービス停止を発表しており、同製品の利用ユーザーからの切り替えが着実に進んでいることが要因だ。2番手のシェアは約25%だったため、このうち半分をリプレイスできれば、自治体向けでシェア約60%、導入数で1,000を超えることになり、その可能性は十分あると弊社では見ている。また、新たな成長ドライバーとなりうる新製品についても現在、開発を進めており、2021年10月期中のリリースを目指している。公会計分野で今まで蓄積してきたノウハウが詰め込まれた製品となるもようで、今後の動向が注目される。
(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業の売上高は前期比2割増となる見通しだ。コンプライアンスやコーポレートガバナンス強化の流れを受けて、一般企業だけでなく金融機関や官公庁・地方自治体などの公共部門で導入されるケースも増えており、ニッチながらも高成長分野となっている。金融機関については当局からのライセンスを得て事業を行うという性質上、コンプライアンス順守のための仕組みに対するニーズが強く、潜在需要は大きい。
(6) 薬局ソリューション事業
調剤薬局業界は、大手チェーンと個人経営の小規模薬局に大きく二分された業界構造となっている。コロナ禍における受診控え等で市場環境としては良好と言えない状況だが、今後も保守・サポートを中心に安定した需要を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業部門別の売上見通し
(1) 学園ソリューション事業
学園ソリューション事業は前期比1ケタ台の増収を見込んでいる。既存顧客の更新需要を確実に取り込むだけでなく、新規顧客の獲得に注力していく。大学市場については全国の国公立私立大学(短大含む)1,100校のうち約350校に導入が進み、既にトップシェアを不動のものとしているが、2019年11月にリリースした「CampusPlan Smart」の機能を順次、拡充しながら既存顧客でのリプレイスや新規顧客の開拓につなげていく戦略だ。特に、大学では会計制度の変更によって2015年前後にシステム改修・更新の特需が発生しており、この部分の更新需要が2021年〜2022年頃に発生するものと予想され、他社製品をリプレイスする好機となる。
「キャンパスプラン」の大きな特長は、学務系業務や法人系業務などをトータルで提供できる点にある。この“トータルソリューションの提供”という点では直接的な競合製品はない。同社が業界トップシェアの地位を確立した要因もここにある。領域ごと(例えば“会計・経理”や“人事”などの領域)では、強い競合製品がそれぞれ複数存在するが、違う企業のソフトウェア製品を導入している場合はシステム操作に慣れるまで時間を要するといった課題がある。すべての業務システムを同一製品で網羅することができれば、職員が他部署に異動となった場合でもスムーズにシステムを操作して業務を遂行することが可能となる。「CampusPlan Smart」では現在、総務・人事給与システムを先行してリリースしたが、2023年までに学務系システムも含めてすべての機能をカバーする。既存顧客においてはリプレイスを順次進めていく計画となっている。なお、「CampusPlan Smart」と既存製品との連携も対応しているため、顧客側から見れば契約更新時期にスムーズにリプレイスすることができる。
一方、私立高校は全国に約1,300校、専門学校は約2,900校あり、そのうち同社製品は約150校に導入されていると見られる。シェアで見ると1割にも満たない水準であるが、逆にシェア拡大余地も大きいと言える。高校・専門学校の1校当たり生徒・職員数※は、高校で約800名、専門学校で約200名と、大学の約4,000名と比べて規模が小さいため、初期投資負担の少ないクラウドサービス「キャンパスプラン for Azure」で機能性やコストパフォーマンスを訴求し、顧客開拓を進めていく戦略となっている。売上規模は大学と比べて小さいものの、クラウドサービスでの提供となるため安定収益基盤の拡大による利益率の上昇につながるものと期待される。
※文部科学省「令和元年 学校基本調査」のデータをもとに算出。
(2) ウェルネスソリューション事業
フィットネスクラブやスポーツ施設向けに関しては、コロナ禍によるマイナスの影響が続く見通しで、ウェルネスソリューション事業の売上高も前期比2割減を想定している。こうしたなかで、小規模事業者向けのサービスとしてクラウド版会員管理システム「Smart Hello」を2020年11月にリリースしており、新規顧客の開拓につなげていく戦略となっている。同製品の特長は、月額料金プランが1万円〜3万円と低コストであり、タブレット端末での利用も想定した操作性や機能を備えていること、様々な会費制度に対応できる柔軟性に優れていることなどが挙げられる。
一方、文化・観光施設向け「Hello Fun」についても現状は厳しい環境だが、中期的には業務効率向上のためのIT投資は必要になってくるため、こうした需要を確実に受注につなげていく考えだ。
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業の売上高は、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」をはじめとするデジタル化関連施策を追い風に前期比2ケタ増収が続く見通しである。公立高校については36〜37都道府県で統合型校務支援システムが導入されており、このうち約5割の19県で同社製品が採用されている。未導入の約10県についても、シェア5割の受注獲得を目標としている。一方、小中学校向けに関しては、普及率が低い又は未導入地域への導入を進めていく。
小中学校向けでの同社のシェアは高校に比べて低く、業界で3〜4番手のポジションと見られる。市町村向け(小・中学校向け)のシェアが低かった理由の1つとして、クラウドサービスに対するセキュリティ面での懸念が残っていたことが挙げられる。しかし、「GIGAスクール構想」では「クラウド・バイ・デファクト」が推奨されていること、また都道府県単位では高校向けで19県に導入されていることから、今後これらの県において小中学校を含めた共同調達を開始することになれば同社が受注して小中学校の導入校数がさらに伸びる可能性もあると弊社では見ている。
なお、同社は2021年4月より「School Engine」の新サービスとして「Home Services」の提供を開始する予定だ。同サービスは、通知表をはじめとする校務支援システムに蓄積された児童生徒に関する成績・出欠等の各種情報を、セキュリティを確保したうえでインターネットを通じて保護者へ直接提供するサービスとなる。これは文部科学省が推進する連絡手段デジタル化の取り組みに対応したサービスとなる。既に奈良市教育委員会ではサービス導入に向けた準備を進めており、今後も全国の教育委員会に拡販を進めていく予定にしている。「School Engine」のオプション的なサービスとなるため、既存ユーザーが導入した場合は月額利用料が2〜3割程度上昇する見通しだ。このため、既存ユーザーだけで売上高は2〜3割程度のアップサイドが期待できることになる。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業の売上高については、前期比1ケタ増を見込んでいる。前述した通り、業界第2位となる国策の競合製品がサービス停止を発表しており、同製品の利用ユーザーからの切り替えが着実に進んでいることが要因だ。2番手のシェアは約25%だったため、このうち半分をリプレイスできれば、自治体向けでシェア約60%、導入数で1,000を超えることになり、その可能性は十分あると弊社では見ている。また、新たな成長ドライバーとなりうる新製品についても現在、開発を進めており、2021年10月期中のリリースを目指している。公会計分野で今まで蓄積してきたノウハウが詰め込まれた製品となるもようで、今後の動向が注目される。
(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業の売上高は前期比2割増となる見通しだ。コンプライアンスやコーポレートガバナンス強化の流れを受けて、一般企業だけでなく金融機関や官公庁・地方自治体などの公共部門で導入されるケースも増えており、ニッチながらも高成長分野となっている。金融機関については当局からのライセンスを得て事業を行うという性質上、コンプライアンス順守のための仕組みに対するニーズが強く、潜在需要は大きい。
(6) 薬局ソリューション事業
調剤薬局業界は、大手チェーンと個人経営の小規模薬局に大きく二分された業界構造となっている。コロナ禍における受診控え等で市場環境としては良好と言えない状況だが、今後も保守・サポートを中心に安定した需要を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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