1stコーポ Research Memo(2):分譲マンションに特化したゼネコン
[21/02/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ファーストコーポレーション<1430>の事業内容と沿革
創業は2011年6月で、資本金40,000千円でスタート。以来、「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」を社是、「安全・安心・堅実」をモットーとして、良質で安価な住宅を供給してきた。分譲マンション建設に特化したゼネコンである。
事業エリアは、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で展開。これら首都圏と呼ばれるエリアは、全国的に人口減少となるなかで、依然として人口が増加傾向にあり、再開発需要が旺盛であるため、マンション需要はなお拡大する見通しだ。
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、首都圏1都3県のマンション建設の着工戸数は、2020年は53,913戸と前年比で9.2%減となった。2019年に59,406戸と一旦回復したものの、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)の影響もあって再びダウンしている。一方、マンションの供給戸数は、さらに減少率が大きく、前年比12.8%減の27,228戸となった。コロナ禍の影響でモデルルームの稼働が止まるなど、販売活動が大きく制限された格好となっている。
ただし、価格面で見ると環境が悪いとは言い切れない。首都圏のマンション価格は2018年にひと段落した格好となったが、2019年から再び上向いている。2020年の都下の販売価格平均は6,083万円と2019年の5,980万円から上昇した。とりわけ、東京都区部の上昇が著しく、7,712万円と2019年の7,286万円からアップしている。
都心部と郊外の価格二極化が進んでいるものの、前者は富裕層向けに、後者は一般勤労者向けにそれぞれニーズが高い。後者は、コロナ禍の影響によるテレワーク化の推進で、居住地を都心に求める必要がない層が拡大、生活様式の変化から今後は郊外案件の引き合いも活発化しそうな状況だ。
そのため、優良な案件については、依然として競争が激化しており、用地確保の環境は激戦となることが想定されている。そうしたなかで、同社の強みである「造注方式」を生かして良質なマンションを供給し、収益アップを図る意向だ。
同社は、この「造注方式」を武器に創業後は急速に成長、2015年3月には東証マザーズ市場に、創業からわずか3年9ヶ月で上場。2016年12月には、東証第1部に指定替えとなった。現在は、成長の踊り場となっている格好だが、今後は再開発事業など業容に厚みが加わることから、再び成長路線を歩むことが想定されている。
造注方式により収益力がアップ
同社が急成長を遂げた背景に、「造注方式」と呼ぶ事業モデルがある。これは他社に先駆けて、マンション用地を仕入れ、企画・設計を行い事業主に提案、特命で工事を受注して施工し引き渡す方式だ。各事業主のニーズに合った事業開発を提案するなかで、精度の高い用地情報を幅広く収集して、用地情報の確保から企画提案までを最短10日間というスピードで実現している。
造注方式の具体的な流れは、まず不動産会社や金融機関、土地所有者など、多岐にわたる独自のネットワークを駆使してマンション用地情報の収集を行い、次に、立地特性を最大限に生かせるよう、周辺環境、マーケティング、権利関係、各種法規制等の調査を実施し、クオリティの高い、そうしたプランから事業主に対し、土地代、建築費、設計料等の諸経費をもとに事業収支を作成し、より緻密で正確な事業計画の提案を行う。そのうえで、事業主の要望を立案する。
そして、効率的なプランをベースに適正かつ有効的な建築費の見積りを行い、オリジナルの各種標準仕様を選定する。最大限に考慮した建築費の見積りを提示し、工事を特命で受注することになる。
造注方式は、同社が土地を押さえることによって主体的に企画提案を行うことができるため、競争入札で建設工事を受注する場合と比較して契約条件が良くなる。一般的に、建設会社はこうした特命工事の比重をいかに高めるかが、収益向上につながるポイントになるが、同社は「造注方式」により高い特命比率を実現し、事業運営の効率化、安定した利益確保を可能としている。
第三者機関による検査導入で信頼度増す
2005年の耐震強度構造計算書偽装事件に続き、2015年のマンションデータ偽造問題など、マンションに不信感を抱かせる事件が生じ、マンションに対する「安全・安心・堅実」が強く求められるようになっている。
これらの問題は、消費者にマンション購入を躊躇させることにつながり、実際、直近でも一時的に業界全体で販売が落ち込んだ。そうしたなかにあっても、同社は着実に受注を伸ばしたが、それは、品質にこだわり、良質で均一な品質維持のための取り組みを行ってきたことと無縁ではない。
同社では、社内で独立した専門部署である安全品質管理室による安全巡回・品質管理に加えて、第三者機関による検査を行うことでダブルチェック体制を整えるなど、安全と品質に対して徹底した姿勢で厳格な管理を実施している。安全品質管理室では、社長直轄の独立した部門として社員教育や健康管理も含めて、事業の安全を厳しく管理している。
委託契約した第三者機関は、杭や配筋の検査、生コン工場の品質管理体制の確認等、厳しい施工監査を行う。杭の施工では、講習を受けた社員が立ち会い、支持層への到達を確認し、一部の工法を除き支持層のサンプルを必ず全数採取・保管し、竣工時に事業主へ引き渡す。また、着工した後、安全品質管理室は、すぐに建築部門と連携、施工検討会への参画に始まり、各作業所を毎月1回以上巡回して技術支援を行い、安全及び品質管理が正しく行われていることを確認・記録しているほか、業務基準となる「建築施工マニュアル」についても常に内容を検討・改善し、毎年改訂するなど、「安全・安心・堅実」への強い取り組みが、事業主からの高い信頼につながっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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創業は2011年6月で、資本金40,000千円でスタート。以来、「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」を社是、「安全・安心・堅実」をモットーとして、良質で安価な住宅を供給してきた。分譲マンション建設に特化したゼネコンである。
事業エリアは、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で展開。これら首都圏と呼ばれるエリアは、全国的に人口減少となるなかで、依然として人口が増加傾向にあり、再開発需要が旺盛であるため、マンション需要はなお拡大する見通しだ。
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、首都圏1都3県のマンション建設の着工戸数は、2020年は53,913戸と前年比で9.2%減となった。2019年に59,406戸と一旦回復したものの、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)の影響もあって再びダウンしている。一方、マンションの供給戸数は、さらに減少率が大きく、前年比12.8%減の27,228戸となった。コロナ禍の影響でモデルルームの稼働が止まるなど、販売活動が大きく制限された格好となっている。
ただし、価格面で見ると環境が悪いとは言い切れない。首都圏のマンション価格は2018年にひと段落した格好となったが、2019年から再び上向いている。2020年の都下の販売価格平均は6,083万円と2019年の5,980万円から上昇した。とりわけ、東京都区部の上昇が著しく、7,712万円と2019年の7,286万円からアップしている。
都心部と郊外の価格二極化が進んでいるものの、前者は富裕層向けに、後者は一般勤労者向けにそれぞれニーズが高い。後者は、コロナ禍の影響によるテレワーク化の推進で、居住地を都心に求める必要がない層が拡大、生活様式の変化から今後は郊外案件の引き合いも活発化しそうな状況だ。
そのため、優良な案件については、依然として競争が激化しており、用地確保の環境は激戦となることが想定されている。そうしたなかで、同社の強みである「造注方式」を生かして良質なマンションを供給し、収益アップを図る意向だ。
同社は、この「造注方式」を武器に創業後は急速に成長、2015年3月には東証マザーズ市場に、創業からわずか3年9ヶ月で上場。2016年12月には、東証第1部に指定替えとなった。現在は、成長の踊り場となっている格好だが、今後は再開発事業など業容に厚みが加わることから、再び成長路線を歩むことが想定されている。
造注方式により収益力がアップ
同社が急成長を遂げた背景に、「造注方式」と呼ぶ事業モデルがある。これは他社に先駆けて、マンション用地を仕入れ、企画・設計を行い事業主に提案、特命で工事を受注して施工し引き渡す方式だ。各事業主のニーズに合った事業開発を提案するなかで、精度の高い用地情報を幅広く収集して、用地情報の確保から企画提案までを最短10日間というスピードで実現している。
造注方式の具体的な流れは、まず不動産会社や金融機関、土地所有者など、多岐にわたる独自のネットワークを駆使してマンション用地情報の収集を行い、次に、立地特性を最大限に生かせるよう、周辺環境、マーケティング、権利関係、各種法規制等の調査を実施し、クオリティの高い、そうしたプランから事業主に対し、土地代、建築費、設計料等の諸経費をもとに事業収支を作成し、より緻密で正確な事業計画の提案を行う。そのうえで、事業主の要望を立案する。
そして、効率的なプランをベースに適正かつ有効的な建築費の見積りを行い、オリジナルの各種標準仕様を選定する。最大限に考慮した建築費の見積りを提示し、工事を特命で受注することになる。
造注方式は、同社が土地を押さえることによって主体的に企画提案を行うことができるため、競争入札で建設工事を受注する場合と比較して契約条件が良くなる。一般的に、建設会社はこうした特命工事の比重をいかに高めるかが、収益向上につながるポイントになるが、同社は「造注方式」により高い特命比率を実現し、事業運営の効率化、安定した利益確保を可能としている。
第三者機関による検査導入で信頼度増す
2005年の耐震強度構造計算書偽装事件に続き、2015年のマンションデータ偽造問題など、マンションに不信感を抱かせる事件が生じ、マンションに対する「安全・安心・堅実」が強く求められるようになっている。
これらの問題は、消費者にマンション購入を躊躇させることにつながり、実際、直近でも一時的に業界全体で販売が落ち込んだ。そうしたなかにあっても、同社は着実に受注を伸ばしたが、それは、品質にこだわり、良質で均一な品質維持のための取り組みを行ってきたことと無縁ではない。
同社では、社内で独立した専門部署である安全品質管理室による安全巡回・品質管理に加えて、第三者機関による検査を行うことでダブルチェック体制を整えるなど、安全と品質に対して徹底した姿勢で厳格な管理を実施している。安全品質管理室では、社長直轄の独立した部門として社員教育や健康管理も含めて、事業の安全を厳しく管理している。
委託契約した第三者機関は、杭や配筋の検査、生コン工場の品質管理体制の確認等、厳しい施工監査を行う。杭の施工では、講習を受けた社員が立ち会い、支持層への到達を確認し、一部の工法を除き支持層のサンプルを必ず全数採取・保管し、竣工時に事業主へ引き渡す。また、着工した後、安全品質管理室は、すぐに建築部門と連携、施工検討会への参画に始まり、各作業所を毎月1回以上巡回して技術支援を行い、安全及び品質管理が正しく行われていることを確認・記録しているほか、業務基準となる「建築施工マニュアル」についても常に内容を検討・改善し、毎年改訂するなど、「安全・安心・堅実」への強い取り組みが、事業主からの高い信頼につながっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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