イントラスト Research Memo(3):保証事業とソリューション事業が2本柱(1)
[21/02/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
1. 事業内容
イントラスト<7191>は総合保証サービス事業の単一セグメントであるが、事業内容は保証事業とソリューション事業に区分される。保証事業は、主力事業の家賃債務保証など、様々な契約時に必要とされる連帯保証人を同社が引き受ける事業で、債権の滞納リスクを引き受けるとともに、連帯保証人の代行や代位弁済した債権の督促・回収業務などの関連サービスを提供するものである。賃借人からの保証料が主な収入である。一方、ソリューション事業は、審査業務、契約管理、滞納管理など、家賃債務保証で培ったノウハウで種々の関連サービスを提供するものであり、連帯保証はせずに手数料が主な収入となる。同社によれば、両サービスの売上は、新規契約に伴う新規売上と、既存契約の更新・ランニングに伴う売上(ストック売上)に区分されるが、年々ストック売上比率が上昇しており、サービスを提供しながら長期的に売上を拡大する基盤が強まっていることを示している。
売上高構成比を見ると、これまで両事業の割合はおおむね半々であったが、2021年3月期第3四半期累計では、保証事業54.6%、ソリューション事業45.4%であった。コロナ禍の影響のなか、ソリューション事業では新規顧客開拓に遅れが生じたのに対し、保証事業では医療費用保証・家賃債務保証が続伸したためである。利益の事業別構成の開示はないが、利益額は保証事業の方が大きいものの、利益率ではソリューション事業の方が高いようだ。
2. 保証事業
保証事業は、債務の滞納リスクを同社が引き受けることで、保証に係る各種サービスを提供するものである。家賃債務保証、医療費用保証、介護費用保証、養育費保証などを展開している。
創業時からの主力事業である家賃債務保証では、同社は入居者と保証委託契約を結び、部屋を借りる際の連帯保証人として家賃滞納リスクを引き受ける代わりに保証料を受け取る。管理会社(家主)とは保証契約を結び、入居審査、督促回収、法対応、債権管理などの各種サービスを提供する。
国土交通省「家賃債務保証の現状」によると、賃貸借契約における家賃債務保証会社の利用率は、2010年の39%から2014年には59%に上昇している。2020年4月の改正民法の施行により、連帯保証人の最大負担金額の明示が義務化されることになり、連帯保証人の確保が難しくなったことから、保証会社の利用率はさらに高まる傾向にある。加えて、出生率低下に伴い人口減少は不可避の見通しだが、高齢化や晩婚化、生涯未婚率の高まり、離婚率の上昇などから、単独世帯など少人数世帯が7割に達するとも推計されている。また、都市部を中心に、若年層の「持ち家住宅率」は低下傾向にあり、賃貸住宅への志向が強まっている。こうしたことを背景に、保証会社による家賃債務保証への潜在的なニーズは大きいと考えられる。
同社の家賃債務保証には画一的な商品パッケージはなく、管理会社にとって使い勝手が良いオーダーメイド型商品であることが大きな特徴だ。家賃決済クレジットカードサービス付き商品(大手信販会社と業務提携を行い、家賃決済クレジットサービスを組むことにより、 毎月振込をする)、経済的リスクの軽減(入居者の連帯保証人を引き受ける)、大幅な業務負担の軽減(家賃の督促、申込時の口座振替用紙の回収など)、安全・安心のコンプライアンス(法的対応が必要となった入居者への対応・手続き)等により、同社の家賃債務保証は年々増加傾向にある。家賃債務保証は同社の主力事業として、保証事業全体の成長を支えている。
医療費用保証では、患者が入院・通院する際の連帯保証人を同社が引き受け、医療機関における医療費滞納リスクを保証する。医療機関は督促・回収業務から解放され本来業務に集中でき、患者は連帯保証人の準備が不要となる。同社では、市場規模は1千億円以上あると見ている。同社が大手損保会社と協力して開発した保証商品であり、損保会社を通じた強力な販売ルートを有していることが強みだ。同社が医療機関に保証をし、医療機関に代位弁済する一方、回収活動を行ったうえで最終的な焦付きを損保会社から保険金として回収する仕組みだ。
また、介護費用保証では、入居者が介護施設の部屋を借りる際の連帯保証人を同社が引き受け、介護施設における賃料等の滞納リスクを保証する商品である。これにより、介護施設は督促・回収業務から解放され、入居者は連帯保証人の準備が不要となる。
新市場である医療費用保証・介護費用保証では、同社の契約先が急増している。厚生労働省の令和元年(2019年)「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によれば、病院は全国で8,300施設(2019年10月1日時点)あり、同社の契約実績137医療機関に比べて、潜在需要は極めて大きいと言えよう。また、2020年4月の改正民法施行により、医療費用保証・介護費用保証でも連帯保証人の確保が難しくなると予想され、同社へのニーズは増加すると見込まれる。
さらに、養育費保証では、同社が養育費支払者の連帯保証人となり、未払いが生じた際に養育費の立替えや督促を行う。 立替金は同社の債権として回収するため、養育費の受取人が催促をする必要はなくなる。同社では、新たな事業分野として養育費保証の成長を期待している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<NB>
1. 事業内容
イントラスト<7191>は総合保証サービス事業の単一セグメントであるが、事業内容は保証事業とソリューション事業に区分される。保証事業は、主力事業の家賃債務保証など、様々な契約時に必要とされる連帯保証人を同社が引き受ける事業で、債権の滞納リスクを引き受けるとともに、連帯保証人の代行や代位弁済した債権の督促・回収業務などの関連サービスを提供するものである。賃借人からの保証料が主な収入である。一方、ソリューション事業は、審査業務、契約管理、滞納管理など、家賃債務保証で培ったノウハウで種々の関連サービスを提供するものであり、連帯保証はせずに手数料が主な収入となる。同社によれば、両サービスの売上は、新規契約に伴う新規売上と、既存契約の更新・ランニングに伴う売上(ストック売上)に区分されるが、年々ストック売上比率が上昇しており、サービスを提供しながら長期的に売上を拡大する基盤が強まっていることを示している。
売上高構成比を見ると、これまで両事業の割合はおおむね半々であったが、2021年3月期第3四半期累計では、保証事業54.6%、ソリューション事業45.4%であった。コロナ禍の影響のなか、ソリューション事業では新規顧客開拓に遅れが生じたのに対し、保証事業では医療費用保証・家賃債務保証が続伸したためである。利益の事業別構成の開示はないが、利益額は保証事業の方が大きいものの、利益率ではソリューション事業の方が高いようだ。
2. 保証事業
保証事業は、債務の滞納リスクを同社が引き受けることで、保証に係る各種サービスを提供するものである。家賃債務保証、医療費用保証、介護費用保証、養育費保証などを展開している。
創業時からの主力事業である家賃債務保証では、同社は入居者と保証委託契約を結び、部屋を借りる際の連帯保証人として家賃滞納リスクを引き受ける代わりに保証料を受け取る。管理会社(家主)とは保証契約を結び、入居審査、督促回収、法対応、債権管理などの各種サービスを提供する。
国土交通省「家賃債務保証の現状」によると、賃貸借契約における家賃債務保証会社の利用率は、2010年の39%から2014年には59%に上昇している。2020年4月の改正民法の施行により、連帯保証人の最大負担金額の明示が義務化されることになり、連帯保証人の確保が難しくなったことから、保証会社の利用率はさらに高まる傾向にある。加えて、出生率低下に伴い人口減少は不可避の見通しだが、高齢化や晩婚化、生涯未婚率の高まり、離婚率の上昇などから、単独世帯など少人数世帯が7割に達するとも推計されている。また、都市部を中心に、若年層の「持ち家住宅率」は低下傾向にあり、賃貸住宅への志向が強まっている。こうしたことを背景に、保証会社による家賃債務保証への潜在的なニーズは大きいと考えられる。
同社の家賃債務保証には画一的な商品パッケージはなく、管理会社にとって使い勝手が良いオーダーメイド型商品であることが大きな特徴だ。家賃決済クレジットカードサービス付き商品(大手信販会社と業務提携を行い、家賃決済クレジットサービスを組むことにより、 毎月振込をする)、経済的リスクの軽減(入居者の連帯保証人を引き受ける)、大幅な業務負担の軽減(家賃の督促、申込時の口座振替用紙の回収など)、安全・安心のコンプライアンス(法的対応が必要となった入居者への対応・手続き)等により、同社の家賃債務保証は年々増加傾向にある。家賃債務保証は同社の主力事業として、保証事業全体の成長を支えている。
医療費用保証では、患者が入院・通院する際の連帯保証人を同社が引き受け、医療機関における医療費滞納リスクを保証する。医療機関は督促・回収業務から解放され本来業務に集中でき、患者は連帯保証人の準備が不要となる。同社では、市場規模は1千億円以上あると見ている。同社が大手損保会社と協力して開発した保証商品であり、損保会社を通じた強力な販売ルートを有していることが強みだ。同社が医療機関に保証をし、医療機関に代位弁済する一方、回収活動を行ったうえで最終的な焦付きを損保会社から保険金として回収する仕組みだ。
また、介護費用保証では、入居者が介護施設の部屋を借りる際の連帯保証人を同社が引き受け、介護施設における賃料等の滞納リスクを保証する商品である。これにより、介護施設は督促・回収業務から解放され、入居者は連帯保証人の準備が不要となる。
新市場である医療費用保証・介護費用保証では、同社の契約先が急増している。厚生労働省の令和元年(2019年)「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によれば、病院は全国で8,300施設(2019年10月1日時点)あり、同社の契約実績137医療機関に比べて、潜在需要は極めて大きいと言えよう。また、2020年4月の改正民法施行により、医療費用保証・介護費用保証でも連帯保証人の確保が難しくなると予想され、同社へのニーズは増加すると見込まれる。
さらに、養育費保証では、同社が養育費支払者の連帯保証人となり、未払いが生じた際に養育費の立替えや督促を行う。 立替金は同社の債権として回収するため、養育費の受取人が催促をする必要はなくなる。同社では、新たな事業分野として養育費保証の成長を期待している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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