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イントラスト Research Memo(7):中期経営計画は重点戦略を着実に実現

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

1. 中期経営計画の概要
イントラスト<7191>では、中期経営計画「Zero to One」(2019年3月期−2021年3月期)を推進中である。スローガンは、創業当時を忘れずに、「ゼロからイチ」を実現する意識を徹底し、新たな事業分野を成長させることを意味している。また、保証スキームで社会インフラを提供し、サービスと流通の活性化を実現することが、同社のミッションであると考えている。すなわち、「保証」は連帯保証人など長い歴史に根付いた商慣習であるものの、約束の不履行には経済的リスクがあり、その解消には大きな負担が伴う。こうした経済損失リスク、作業負荷は、商取引拡大の制約となっている。そこで、同社は保証スキームにおいて、リスクの見極めと引受、対応コストの低減などを実現し、契約者の保証の実現と、クライアント企業の取引の活性化、拡大に貢献する。また、家賃債務保証以外にも様々な保証提供の機会を開拓し、保証スキームを社会インフラとして普及させることを目指している。

計数目標としては、売上高5,000百万円(2018年3月期比69.4%増)、営業利益1,250百万円(同61.8%増)、営業利益率25%を目指す意欲的な計画である。しかし、2020年からのコロナ禍による経営環境の悪化に伴い、業績予想通りの着地であれば目標達成は困難な状況にある。ただ、同社の業績予想は慎重な予想であり、例年、予想を上回って着地していることから、計数目標に近づく可能性はありそうだ。一方、中期経営計画で掲げた重点戦略は着実に実現しており、2022年3月期からの一段の飛躍の足掛かりは十分に整ったと言えよう。

2. 重点戦略と進捗状況
中期経営計画の基本方針としては、「総合保証サービス会社として、保証商品及びソリューションサービスを、創造、展開、拡大、進化させ、事業ステージ毎の課題を解決し、付加価値の創出、生産性の向上、差別化の実現を目指して事業展開をする」ことを掲げた。具体的には、以下の4つを重点戦略として事業展開し、これまで着実に成果を上げてきた。

(1) 家賃債務保証
家賃債務保証サービスでは、同社の主力成長事業として一層の拡大・進化を目指した。2020年4月施行の改正民法により、連帯保証人に対して極度額の明示義務が課されたことから、連帯保証人の確保が困難になり、保証会社へのニーズが高まると予想した。こうした環境下、同社では大手・中堅の管理会社をターゲットに絞り、管理会社の個別のニーズに対して柔軟に応えるオーダーメイド型商品の提供や、保証のバリエーション拡大や保証の周辺ニーズの解決によるフルラインでの商品・サービスの提供で、アプローチを進めることを目指した。

実際、民間の賃貸住宅市場においては、保証会社を活用する割合が年々上昇傾向にある。今後も、少人数世帯の増加や賃貸志向の強まりを背景に、保証会社による家賃債務保証への潜在的ニーズは大きいと見られる。同社では、この目標の進捗について、家賃保証サービスは同社の基幹事業として会社全体の業績を牽引しており、事前立替型商品(同社が不動産会社や保証人に対して、家賃の全額立替払いを行う方式)の発売や、個人入居用だけでなく事業用・社宅用の新規顧客を取り込むなど、大きな成果があったと自己評価している。実際、同社の家賃債務保証の保有件数は、2020年12月には前年同期比7%増と順調に伸びている。

(2) ソリューションサービス
ソリューションサービスは、保証サービスと補完関係にあり、売上拡大の推進ドライバーとして注力した。同社がターゲットとする大手・中堅の管理会社では、半分は自社の保証会社を持っている。ただ、グループ内に保証会社を持つと他社の保証商品は採用できないという問題があり、管理会社には外部に専門性と高いコストパフォーマンスのサービスが欲しいとのニーズがある。そこで同社では、C&Oサービス、保険デスク、Doc-onサービスなど、顧客のニーズ・課題を効率的に解決できるサービスを提供することを目指した。

既述の通り、C&Oサービスは、契約管理・集金代行・滞納管理などを行うサービスだ。保険デスクは、賃貸物件入居の際の火災保険に関する支援サービスだ。また、Doc-onサービスは、SMSの一括送信にコールセンター機能やクレジットカード決済機能を付加したサービスである。

同社では、計画期間中に、C&Oサービスは順調に成長してソリューション事業の主力として成長を支え、保険デスク、Doc-onサービスも徐々に拡大し、成果が見えてきたと自己評価している。

(3) 医療費用保証・介護費用保証
医療費用保証・介護費用保証は、家賃債務保証に続く新市場として育成を図った。2020年4月施行の改正民法で、連帯保証人に対して極度額の明示が義務化された中、医療機関の医療費未収金が蓄積している。そこで、同社では医療費用保証により、連帯保証人の確保や医療機関の未収金問題を解決する役割を担う。また、介護費用についても、少子高齢化が進む中、サービス付高齢者向け住宅に入居するためには、保証準備金の前払いが一般的だが、入居者家族の事前負担が大きいとの問題がある。そこで、介護費用保証では、事前の資金負荷を軽減し、取引拡大を円滑する役割を担うことを目指した。

同社では、足元ではコロナ禍の影響を受けているものの、計画期間中に取引先件数が増加するなど、次の成長エンジンとすべく、市場を確立できたと自己評価している。四半期売上推移では、2021年3月期第1四半期は大きく増えたものの、第2四半期・第3四半期はコロナ禍の影響から医療機関への説明機会が減少したことで売上増加が鈍化しているが、コロナ禍が収束すれば潜在的なニーズは高いと見られる。全国8,300病院(2019年10月1日時点)に対し、同社の契約実績は2021年3月期第3四半期で137医療機関にとどまり、潜在需要は極めて大きいと考えられる。

(4) 保証ビジネスの多業種展開
新事業の源泉を社内外に求め、新たな保証・ソリューションサービスを開発し、次世代事業を生み出すことを目指した。中でも、特に期待が大きいのが、社内起業制度から実現した養育費保証である。1人親家庭において、安定的な養育費の受給は、子供の成長には必要不可欠である。そこで、同社では1人親家庭の自立インフラ確立に向けて、パイロットプロジェクトをスタートした。養育費保証は、同社として初めてのB2C(企業と一般消費者との取引)でもある。同社では、将来に向けて、着実に市場開拓が進んでいると自己評価している。

以上の通り、現中期経営計画の重点戦略は順調に進捗している。同社では、2021年3月期決算発表時には、次期中期経営計画を発表する予定である。重点戦略として、家賃債務保証の安定成長の持続、医療費用保証・介護費用保証を次の柱に育成、養育費保証の市場創設などの成長戦略が盛り込まれる見通しであり、新計画に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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