サムティ Research Memo(4):2020年11月期はホテルREIT設立延期も、レジデンス中心に好調持続
[21/03/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2020年11月期の業績は、売上高が前期比18.2%増の101,120百万円、営業利益が同12.6%増の17,355百万円、経常利益が同15.6%増の15,247百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.0%増の10,615百万円と順調に拡大し、6期連続の増収及び8期連続の増益を達成した。2020年9月30日付の修正予想(レンジ形式)に対しても、利益面で上限を上回る着地となった。
売上高は、「不動産事業」の拡大が増収に大きく寄与した。コロナ禍の下、当初計画していたホテルREIT設立及びホテル物件の売却時期を2021年11月期以降に見直したものの、賃貸マンション及びオフィスビルを中心に売却物件を入れ替えたことが奏功した。特に、主力である賃貸マンションはコロナ禍や景気動向の影響を受けておらず、世界的な低金利が続くなかでも、引き続き国内外の機関投資家からの引き合いは強い。また、「不動産賃貸事業」についても、積極的な収益不動産の取得や高稼働の維持により賃料収入が大きく伸びている。一方、「その他の事業」については、コロナ禍の影響によるホテル稼働率の落ち込み(一部休業を含む)から減収となったが、同社業績全体に与える影響は限定的である。
利益面でも、増収による収益の押し上げにより増益を実現した。ただ、営業利益率が17.2%(前期は18.0%)と前期比で若干低下したのは、ホテル稼働率の落ち込みや前期に利益率の高い物件売却があったことが影響したためである。それでも過去2番目に高い利益率水準を維持している点は評価できる※。
※過去の営業利益率を振り返ると、2016年11月期は16.4%、2017年11月期は16.8%、2018年11月期は16.7%、2019年11月期は18.0%で推移してきた。
また、同社が重視する「インカムゲイン」(各事業の中に含まれる合計額※)についても、コロナ禍の影響によりホテル客室収入等が減少したものの、収益不動産による賃料収入の伸びでカバーして前期比1.2%増の13,146百万円とプラスを確保した。
※賃料収入、AM報酬、ホテル客室収入などによって構成される。
今後の成長につながる仕入れの状況についても、開発用地63物件(取得価額222億円)、収益不動産43物件(取得価額303億円)を取得しており、順調に積み上げている。
財政状態については、物件売却及び借入により調達した資金などを有効に活用し、開発用地や収益不動産を積極的に取得したことや、ホテルREIT設立の延期(ホテル売却の期ずれ)により、総資産は前期末比14.7%増の250,864百万円に大きく拡大した。一方、自己資本も内部留保の積み増し等により前期末比8.4%増の77,028百万円に増加し、自己資本比率は30.7%(前期末は32.5%)と30%以上を確保している。また、有利子負債は前期末比15.7%増の163,004百万円に増加したが長期借入金の比率が約71%を占め、ネットD/Eレシオ※1も1.56倍の水準に収まっていることから、資産拡大を図りながらも安定した財務比率を維持していると言える。また、資本効率を示すROEは14.3%(前期は14.7%)、ROAは7.4%(同8.1%)と若干低下したものの、ほぼ計画ライン※2で推移している。
※1 (有利子負債−現金及び預金)÷自己資本
※2 中期経営計画(見直し後)では、2023年11月期目標として、ROE 12.0〜15.0%水準、ROA 6.0〜7.0%水準としている。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1)不動産事業
売上高は前期比20.4%増の90,035百万円、セグメント利益は同9.3%増の18,897百万円と増収増益となった。外部環境を鑑み、当初計画していたホテルREIT設立及びホテルの売却時期を2021年11月期以降に見直した一方、賃貸マンション及びオフィスビルを中心に売却を進めたことにより大幅な増収を実現した。特に、開発流動化が「S-RESIDENCE」シリーズ19物件のほか、ホテル・オフィス4物件※1、投資分譲他5物件の売却により増収に大きく寄与した。一方、再生流動化は前期比で減収となったものの、42物件の売却※2によりほぼ計画を達成することができた。また、アセットマネジメントについてもSRRの運用残高の拡大に伴う運営及び管理手数料の底上げにより着実に伸びている。利益面でも増収により増益となったが、セグメント利益率は21.0%(前期は23.1%)に低下した。ただ、前期は利益率の高い物件売却があったためであり、引き続き高い利益率水準を維持したと評価できる。
※1 ホテル2物件の売却については、「イビススタイルズ名古屋」(土地のみ)、「メルキュール京都ステーション」(建物のみ)となっている。
※2 そのうち、17物件はSRRへの売却である。
(2)不動産賃貸事業
売上高は前期比23.5%増の8,272百万円、セグメント利益は同53.5%増の3,780百万円と大きく拡大した。保有する賃貸マンションは高稼働(90%以上)を維持しているうえ、営業エリアの拡大とともに収益不動産の取得を積極的に進めたことから賃料収入が増加した。利益面でも増収により大幅な増益となり、セグメント利益率も45.7%(前期は36.8%)に大きく改善した。
(3)その他の事業
売上高は前期比26.9%減の3,241百万円、セグメント損失は460百万円(前期は75百万円の利益)と減収によりセグメント損失を計上した。コロナ禍の影響から、保有・運営するホテルの稼働状況が大きく落ち込み、ホテル客室収入等が減少した※。利益面でも大幅な減収により損益分岐点を割り込み、セグメント損失に陥った。
※ただ、2020年11月上期の感染拡大期の稼働率は10%〜20%(良くても30%)で推移したものの、一旦収束の兆しがあった2020年10月から11月にかけては、政府による「Go Toキャンペーン」等により、稼働率は想定以上の回復を見せており、コロナ収束後の需要の戻りに手応えを感じることができた。
2. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズ等の開発実績は、2020年竣工分が25棟(1,671戸)となった。また、今後の竣工予定分についても、2021年竣工分が45棟(2,738戸)、2022年竣工分が49棟(3,478戸)、2023年竣工分が17棟(1,366戸)の合計111棟(7,582戸)が進行中であり、順調に積み上げている。一方、ホテル・オフィスの開発計画については、2021年開業分が4棟、2022年開業分が1棟(未着工)の合計5棟の開業(すべてホテル)を予定している。なお、2021年開業予定の4ホテルについては、ホテルREITへの売却を想定しているが、長期での融資の目途も立っており、ホテルREIT設立まで保有することも可能となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2020年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2020年11月期の業績は、売上高が前期比18.2%増の101,120百万円、営業利益が同12.6%増の17,355百万円、経常利益が同15.6%増の15,247百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.0%増の10,615百万円と順調に拡大し、6期連続の増収及び8期連続の増益を達成した。2020年9月30日付の修正予想(レンジ形式)に対しても、利益面で上限を上回る着地となった。
売上高は、「不動産事業」の拡大が増収に大きく寄与した。コロナ禍の下、当初計画していたホテルREIT設立及びホテル物件の売却時期を2021年11月期以降に見直したものの、賃貸マンション及びオフィスビルを中心に売却物件を入れ替えたことが奏功した。特に、主力である賃貸マンションはコロナ禍や景気動向の影響を受けておらず、世界的な低金利が続くなかでも、引き続き国内外の機関投資家からの引き合いは強い。また、「不動産賃貸事業」についても、積極的な収益不動産の取得や高稼働の維持により賃料収入が大きく伸びている。一方、「その他の事業」については、コロナ禍の影響によるホテル稼働率の落ち込み(一部休業を含む)から減収となったが、同社業績全体に与える影響は限定的である。
利益面でも、増収による収益の押し上げにより増益を実現した。ただ、営業利益率が17.2%(前期は18.0%)と前期比で若干低下したのは、ホテル稼働率の落ち込みや前期に利益率の高い物件売却があったことが影響したためである。それでも過去2番目に高い利益率水準を維持している点は評価できる※。
※過去の営業利益率を振り返ると、2016年11月期は16.4%、2017年11月期は16.8%、2018年11月期は16.7%、2019年11月期は18.0%で推移してきた。
また、同社が重視する「インカムゲイン」(各事業の中に含まれる合計額※)についても、コロナ禍の影響によりホテル客室収入等が減少したものの、収益不動産による賃料収入の伸びでカバーして前期比1.2%増の13,146百万円とプラスを確保した。
※賃料収入、AM報酬、ホテル客室収入などによって構成される。
今後の成長につながる仕入れの状況についても、開発用地63物件(取得価額222億円)、収益不動産43物件(取得価額303億円)を取得しており、順調に積み上げている。
財政状態については、物件売却及び借入により調達した資金などを有効に活用し、開発用地や収益不動産を積極的に取得したことや、ホテルREIT設立の延期(ホテル売却の期ずれ)により、総資産は前期末比14.7%増の250,864百万円に大きく拡大した。一方、自己資本も内部留保の積み増し等により前期末比8.4%増の77,028百万円に増加し、自己資本比率は30.7%(前期末は32.5%)と30%以上を確保している。また、有利子負債は前期末比15.7%増の163,004百万円に増加したが長期借入金の比率が約71%を占め、ネットD/Eレシオ※1も1.56倍の水準に収まっていることから、資産拡大を図りながらも安定した財務比率を維持していると言える。また、資本効率を示すROEは14.3%(前期は14.7%)、ROAは7.4%(同8.1%)と若干低下したものの、ほぼ計画ライン※2で推移している。
※1 (有利子負債−現金及び預金)÷自己資本
※2 中期経営計画(見直し後)では、2023年11月期目標として、ROE 12.0〜15.0%水準、ROA 6.0〜7.0%水準としている。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1)不動産事業
売上高は前期比20.4%増の90,035百万円、セグメント利益は同9.3%増の18,897百万円と増収増益となった。外部環境を鑑み、当初計画していたホテルREIT設立及びホテルの売却時期を2021年11月期以降に見直した一方、賃貸マンション及びオフィスビルを中心に売却を進めたことにより大幅な増収を実現した。特に、開発流動化が「S-RESIDENCE」シリーズ19物件のほか、ホテル・オフィス4物件※1、投資分譲他5物件の売却により増収に大きく寄与した。一方、再生流動化は前期比で減収となったものの、42物件の売却※2によりほぼ計画を達成することができた。また、アセットマネジメントについてもSRRの運用残高の拡大に伴う運営及び管理手数料の底上げにより着実に伸びている。利益面でも増収により増益となったが、セグメント利益率は21.0%(前期は23.1%)に低下した。ただ、前期は利益率の高い物件売却があったためであり、引き続き高い利益率水準を維持したと評価できる。
※1 ホテル2物件の売却については、「イビススタイルズ名古屋」(土地のみ)、「メルキュール京都ステーション」(建物のみ)となっている。
※2 そのうち、17物件はSRRへの売却である。
(2)不動産賃貸事業
売上高は前期比23.5%増の8,272百万円、セグメント利益は同53.5%増の3,780百万円と大きく拡大した。保有する賃貸マンションは高稼働(90%以上)を維持しているうえ、営業エリアの拡大とともに収益不動産の取得を積極的に進めたことから賃料収入が増加した。利益面でも増収により大幅な増益となり、セグメント利益率も45.7%(前期は36.8%)に大きく改善した。
(3)その他の事業
売上高は前期比26.9%減の3,241百万円、セグメント損失は460百万円(前期は75百万円の利益)と減収によりセグメント損失を計上した。コロナ禍の影響から、保有・運営するホテルの稼働状況が大きく落ち込み、ホテル客室収入等が減少した※。利益面でも大幅な減収により損益分岐点を割り込み、セグメント損失に陥った。
※ただ、2020年11月上期の感染拡大期の稼働率は10%〜20%(良くても30%)で推移したものの、一旦収束の兆しがあった2020年10月から11月にかけては、政府による「Go Toキャンペーン」等により、稼働率は想定以上の回復を見せており、コロナ収束後の需要の戻りに手応えを感じることができた。
2. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズ等の開発実績は、2020年竣工分が25棟(1,671戸)となった。また、今後の竣工予定分についても、2021年竣工分が45棟(2,738戸)、2022年竣工分が49棟(3,478戸)、2023年竣工分が17棟(1,366戸)の合計111棟(7,582戸)が進行中であり、順調に積み上げている。一方、ホテル・オフィスの開発計画については、2021年開業分が4棟、2022年開業分が1棟(未着工)の合計5棟の開業(すべてホテル)を予定している。なお、2021年開業予定の4ホテルについては、ホテルREITへの売却を想定しているが、長期での融資の目途も立っており、ホテルREIT設立まで保有することも可能となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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