サムティ Research Memo(6):「開発して保有する」ビジネスへの転換により、安定収益の拡大を目指す方針
[21/03/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画の見直し
1. これまでの実績
サムティ<3244>は、2019年11月期から2021年11月期までの中期経営計画「サムティ強靭化計画」を推進し2年が経過した。具体的には、1)SRRを中心としたビジネスモデルの展開(フィー収入ビジネスの強化)、2)地方大都市圏における戦略的投資(営業エリアの拡大)、3)ホテル開発・オフィス開発事業の展開(新たな成長エンジンの育成)に取り組んでおり、3年間の投資計画として約3,000億円(土地+建築費)を目標としてきた。また、業績目標については、あえて売上高目標を設定せず、生産性や資本効率性を重視することにより、最終年度の2021年11月期に営業利益200億円水準、ROE 15.0%水準、ROA 7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指していた。
これまでの実績を振り返ると、投資計画については、コロナ禍の影響によりホテル・オフィス開発に遅れが見られる一方、レジデンス開発が計画を上回るペースで伸びており、2年経過後ですでに目標の約80%を達成している。また、業績目標についても、ホテルREITの設立延期の影響を受けたものの、レジデンス中心に好調を持続しており、ほぼ計画ラインで進捗している。
2. 「サムティ強靭化計画」見直しの背景(環境認識)
ただ、コロナ禍の影響により、不動産マーケットを取り巻く環境が大きく変化してきたことや、発生から約1年が経過し、経済回復シナリオに伴うマーケットへの影響を想定できるようになってきたことから、アフターコロナを見据えた内容に刷新すべき時期と判断したことが見直しに至った経緯である。特に、コロナ禍において、1)レジデンスが景気変動の影響を最も受けにくい安定的なアセットであることや、2)苦戦を強いられたホテルについても、政府による観光立国政策の堅持により、収束後の需要の戻りが期待できること、3)オフィスについても、在宅勤務の対応が困難な企業もあり、特に地方都市でのオフィス需要は底堅いことなどが確認でき、それぞれについて長期目線で賃貸キャッシュ・フローの見通しが立ってきたことや、世界的な低金利政策の長期化により、国内不動産についての投資魅力が当面続く状況にあることも、戦略の見直しや計画年度の変更が必要となった理由と考えられる。
3. 基本方針と主なポイント
基本方針として、(1)「開発して保有する」ビジネスへの転換、(2)ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続、(3)地方大都市圏における戦略的投資の継続、(4)海外事業での収益基盤の構築、の4点を掲げている。特に、これまでとの違いで言えば、(1)と(4)にあり、資産保有型のデベロッパーとして収益の安定化を図ることや、今後の成長軸として海外事業へ着手することが新たな方向性として打ち出された。
(1)「開発して保有する」ビジネスへの転換
これまで、投資収益の早期回収やキャッシュ・フロー獲得のため、完成物件については速やかに売却する方針で展開してきたが、消費税改正に伴う対応※や、賃料単価や売却価格の好調な地合い等も勘案したうえで、原則3年間保有することにより、インカムゲイン(賃貸収入等)を最大限享受する方針へと見直した。
※2020年の消費税における税制改正により、建物の消費税については取得年度の支払消費税に含めることができなくなったが、取得・施工引渡しの期を含めて3年以内に売却すると税務上のメリット(支払消費税の一部還付)を受けられることから、完成後3年での売却を原則としている。
(2)ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続
観光立国実現のための政策が堅持されるなかで、コロナ収束後の需要の戻りや業界再編の動きを取り込むため、引き続き既存ホテルの収益力強化を図るとともに、ホテルREIT設立へ向けた取り組みを継続していく。また、今後の開発案件についても厳選投資を継続し、中長期的な視野でREIT資産の積み上げに貢献する方針である。
(3)地方大都市圏における戦略的投資の継続
引き続き、需要を見極めながら全国主要都市での投資を拡大していく方針である。今後は開発ペースを加速し、完成後は一定期間保有することで、安定的な賃貸収入の拡大を目指す。
(4)海外事業での収益基盤の構築
ベトナムにおけるVHMとの共同事業を契機に、同社グループの長年培ったノウハウを活用し、ASEAN諸国の経済成長や都市人口増加に伴う住宅需要増を取り込んでいく戦略であり、今後の成長ドライバーとして位置付けている。特に、ベトナムについては経済成長率が著しいことに加え、コロナ禍の早期封じ込めに成功しており、現地有力デベロッパーとの協業による開発リスクの低減や現地税率によるメリットも享受していく方針である。
4. 投資計画
今後5年間(2021年11月期から2025年11月期)の投資計画として約7,500億円を掲げており、その内訳は、レジデンス開発3,000億円、ホテル・オフィス開発1,200億円、収益不動産の取得2,500億円のほか、新たなテーマである海外事業800億円により構成されている。また、「開発して保有する」ビジネスへの転換や、SRR及びホテルREITの成長により、5年後のグループ資産を1兆円(連結資産では5,000億円)に拡大する方針である(2020年11月期のグループ資産は約3,700億円、連結資産は約2,500億円)。
5. 業績目標
最終年度である2025年11月期の業績目標として、売上高2,200億円水準(うち、賃貸収入等は450億円)、営業利益350億円以上、ROE 15.0%水準、ROA 7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。また、収益構造の転換により、営業利益に占めるインカムゲイン(賃貸収入等)の構成比を50%(現在は15%程度)に引き上げるとともに、海外事業による構成比は15%を見込んでいる。すなわち、これまでの国内キャピタルゲイン(開発利益等)中心から、安定収益であるインカムゲイン(賃貸収入等)中心の収益モデルへ移行するとともに、新たな成長ドライバーとして海外でのキャピタルゲインを獲得していく方向性である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. これまでの実績
サムティ<3244>は、2019年11月期から2021年11月期までの中期経営計画「サムティ強靭化計画」を推進し2年が経過した。具体的には、1)SRRを中心としたビジネスモデルの展開(フィー収入ビジネスの強化)、2)地方大都市圏における戦略的投資(営業エリアの拡大)、3)ホテル開発・オフィス開発事業の展開(新たな成長エンジンの育成)に取り組んでおり、3年間の投資計画として約3,000億円(土地+建築費)を目標としてきた。また、業績目標については、あえて売上高目標を設定せず、生産性や資本効率性を重視することにより、最終年度の2021年11月期に営業利益200億円水準、ROE 15.0%水準、ROA 7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指していた。
これまでの実績を振り返ると、投資計画については、コロナ禍の影響によりホテル・オフィス開発に遅れが見られる一方、レジデンス開発が計画を上回るペースで伸びており、2年経過後ですでに目標の約80%を達成している。また、業績目標についても、ホテルREITの設立延期の影響を受けたものの、レジデンス中心に好調を持続しており、ほぼ計画ラインで進捗している。
2. 「サムティ強靭化計画」見直しの背景(環境認識)
ただ、コロナ禍の影響により、不動産マーケットを取り巻く環境が大きく変化してきたことや、発生から約1年が経過し、経済回復シナリオに伴うマーケットへの影響を想定できるようになってきたことから、アフターコロナを見据えた内容に刷新すべき時期と判断したことが見直しに至った経緯である。特に、コロナ禍において、1)レジデンスが景気変動の影響を最も受けにくい安定的なアセットであることや、2)苦戦を強いられたホテルについても、政府による観光立国政策の堅持により、収束後の需要の戻りが期待できること、3)オフィスについても、在宅勤務の対応が困難な企業もあり、特に地方都市でのオフィス需要は底堅いことなどが確認でき、それぞれについて長期目線で賃貸キャッシュ・フローの見通しが立ってきたことや、世界的な低金利政策の長期化により、国内不動産についての投資魅力が当面続く状況にあることも、戦略の見直しや計画年度の変更が必要となった理由と考えられる。
3. 基本方針と主なポイント
基本方針として、(1)「開発して保有する」ビジネスへの転換、(2)ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続、(3)地方大都市圏における戦略的投資の継続、(4)海外事業での収益基盤の構築、の4点を掲げている。特に、これまでとの違いで言えば、(1)と(4)にあり、資産保有型のデベロッパーとして収益の安定化を図ることや、今後の成長軸として海外事業へ着手することが新たな方向性として打ち出された。
(1)「開発して保有する」ビジネスへの転換
これまで、投資収益の早期回収やキャッシュ・フロー獲得のため、完成物件については速やかに売却する方針で展開してきたが、消費税改正に伴う対応※や、賃料単価や売却価格の好調な地合い等も勘案したうえで、原則3年間保有することにより、インカムゲイン(賃貸収入等)を最大限享受する方針へと見直した。
※2020年の消費税における税制改正により、建物の消費税については取得年度の支払消費税に含めることができなくなったが、取得・施工引渡しの期を含めて3年以内に売却すると税務上のメリット(支払消費税の一部還付)を受けられることから、完成後3年での売却を原則としている。
(2)ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続
観光立国実現のための政策が堅持されるなかで、コロナ収束後の需要の戻りや業界再編の動きを取り込むため、引き続き既存ホテルの収益力強化を図るとともに、ホテルREIT設立へ向けた取り組みを継続していく。また、今後の開発案件についても厳選投資を継続し、中長期的な視野でREIT資産の積み上げに貢献する方針である。
(3)地方大都市圏における戦略的投資の継続
引き続き、需要を見極めながら全国主要都市での投資を拡大していく方針である。今後は開発ペースを加速し、完成後は一定期間保有することで、安定的な賃貸収入の拡大を目指す。
(4)海外事業での収益基盤の構築
ベトナムにおけるVHMとの共同事業を契機に、同社グループの長年培ったノウハウを活用し、ASEAN諸国の経済成長や都市人口増加に伴う住宅需要増を取り込んでいく戦略であり、今後の成長ドライバーとして位置付けている。特に、ベトナムについては経済成長率が著しいことに加え、コロナ禍の早期封じ込めに成功しており、現地有力デベロッパーとの協業による開発リスクの低減や現地税率によるメリットも享受していく方針である。
4. 投資計画
今後5年間(2021年11月期から2025年11月期)の投資計画として約7,500億円を掲げており、その内訳は、レジデンス開発3,000億円、ホテル・オフィス開発1,200億円、収益不動産の取得2,500億円のほか、新たなテーマである海外事業800億円により構成されている。また、「開発して保有する」ビジネスへの転換や、SRR及びホテルREITの成長により、5年後のグループ資産を1兆円(連結資産では5,000億円)に拡大する方針である(2020年11月期のグループ資産は約3,700億円、連結資産は約2,500億円)。
5. 業績目標
最終年度である2025年11月期の業績目標として、売上高2,200億円水準(うち、賃貸収入等は450億円)、営業利益350億円以上、ROE 15.0%水準、ROA 7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。また、収益構造の転換により、営業利益に占めるインカムゲイン(賃貸収入等)の構成比を50%(現在は15%程度)に引き上げるとともに、海外事業による構成比は15%を見込んでいる。すなわち、これまでの国内キャピタルゲイン(開発利益等)中心から、安定収益であるインカムゲイン(賃貸収入等)中心の収益モデルへ移行するとともに、新たな成長ドライバーとして海外でのキャピタルゲインを獲得していく方向性である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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