コスモ・バイオ Research Memo(7):メーカー機能強化と新市場への展開で安定的かつ持続的成長を目指す
[21/03/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■コスモ・バイオ<3386>の中長期成長戦略
1. メーカー機能強化と新市場への展開
2020年12月期〜2022年12月期の中期経営計画(経営目標数値は非開示)では、経営ビジョンに「生命科学の研究者から信頼される事業価値を高める」を掲げ、安定的かつ持続的成長を実現する企業を目指している。10年後の姿を見据えた事業戦略として、現在の収益柱である研究試薬卸売に加えて、メーカー機能を中心とする第2の収益柱の構築、ライフサイエンスをベースとした研究試薬以外の新市場への展開を推進する方針を打ち出している。新市場への展開では食品や医薬品などの分野での原料供給なども構想している。
具体的には、新たな事業基盤の創出(シーズ探索強化や産学官連係への積極参画などによる新規事業開拓、資本提携・業務提携への取り組み)、商社機能の強化(顧客情報管理と活用、原料供給ビジネスの売上拡大、流通改革対策)、製造機能の強化(新商品・受託サービスの拡充、カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業と鶏卵バイオリアクター事業の規模拡大と収益化の加速)、企業価値の向上(生産性向上・効率化による収益力向上、人材育成など)を推進する。
商社機能の強化では、各部署で使用していた顧客管理情報を統合した社内縦断的な顧客管理システムを採用し、情報共有と効率的営業活動を推進している。
メーカー機能を中心とする第2の収益柱の構築では、2016年12月本格参入したカスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業及び2019年7月開始した鶏卵バイオリアクター事業を成長ドライバーと位置付けて、両事業の規模拡大と収益化を加速させている。そして両事業を中心とする自社製造・受託サービスの売上高は、わずか4期で同社単体売上高の1割強を占めるまでに成長しており、メーカー機能強化と高収益化が進展していると言えるだろう。
カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業は順調に拡大
2. カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業
カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業は、研究者の要望にあった配列のペプチド(アミノ酸が2〜50残基程度結合した分子)をカスタム合成する。新薬(ペプチド医薬品)や新規治療法(ワクチン)の開発等につながり、ライフサイエンス基礎研究に欠かせない重要な研究ツールの1つである。2016年12月に本格参入し、事業規模が順調に拡大している。
更なる事業拡大に向けて、周辺技術を持つ企業とのアライアンスも推進している。2017年12月には(株)Proteomedix Frontiersと業務提携し、2018年4月にはAQUAペプチドの配列デザインから合成までの一貫サービスを開始した。2018年6月にはMJとペプチド創薬支援事業に関して業務提携(2019年4月出資)、2018年9月には名古屋大学発ベンチャーのiBody(株)とモノクローナル抗体スクリーニングサービスに関して業務提携、2018年10月にはエムティーアイ<9438>と抗体作製支援システムに関して業務提携、2018年11月にはがん免疫療法開発の(株)Cancer Precision Medicine(オンコセラピー・サイエンス<4564>の連結子会社)とペプチド合成に関する委受託基本契約を締結した。今後の展開として、研究用の提供を拡大しつつ、原料としての提供など、研究用から一歩踏み出した製造・サービスの展開を推進する方針だ。
鶏卵バイオリアクター事業を本格展開、原料供給も期待
3. 鶏卵バイオリアクター事業
鶏卵バイオリアクター事業(鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質受託製造事業)は、遺伝子改変ニワトリ(鶏卵の卵白のなかに、目的とする有用なタンパク質を大量に生産させるようにゲノム編集した特殊なニワトリ)の鶏卵バイオリアクターを用いて、ユーザーが必要とする目的タンパク質を安価・大量に製造・精製する。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)及び国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構との共同研究を進め、2017年8月にヒトインターフェロンβ製造に関する特許実施権を獲得した。2018年7月には産総研が、卵白に有用組み換えタンパク質を大量に含む卵を産む遺伝子改変ニワトリを作製する技術の確立を報告している。2019年にはヒトインターフェロンβに限定されない製造特許実施許諾を獲得した。2019年7月には大阪大学発ベンチャーのC4U(株)が保有する特許技術「CRISPR/Cas3」をライセンス導入し、ユーザーが必要とするタンパク質を安価・大量に製造できるようになったため、鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質受託製造事業を開始した。ユーザーニーズに対応して受託製造を本格展開するとともに、将来的には幅広く対応可能な研究用試薬の自社製品としての開発・製造・販売も目指すとしている。
なお2019年10月には日本全薬工業(株)からゲノム編集ニワトリの作製を受託している。ニワトリが産んだ有用タンパク質(Aタンパク質)を大量に含む鶏卵を納品する。当面は日本全薬工業の開発用の鶏卵納品だが、将来的に日本全薬工業がAタンパク質を用いた製品を上市する場合は、新たに契約を締結して売上に応じたロイヤルティなどの収益を得られる可能性がある。
今後の展開としては、研究用試薬ではなく、原料供給を主たる目的とした製造への飛躍を目指すとしている。新市場への展開で、ボリュームが大幅に増加する原料として、大量供給に対する期待が膨らむ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<EY>
1. メーカー機能強化と新市場への展開
2020年12月期〜2022年12月期の中期経営計画(経営目標数値は非開示)では、経営ビジョンに「生命科学の研究者から信頼される事業価値を高める」を掲げ、安定的かつ持続的成長を実現する企業を目指している。10年後の姿を見据えた事業戦略として、現在の収益柱である研究試薬卸売に加えて、メーカー機能を中心とする第2の収益柱の構築、ライフサイエンスをベースとした研究試薬以外の新市場への展開を推進する方針を打ち出している。新市場への展開では食品や医薬品などの分野での原料供給なども構想している。
具体的には、新たな事業基盤の創出(シーズ探索強化や産学官連係への積極参画などによる新規事業開拓、資本提携・業務提携への取り組み)、商社機能の強化(顧客情報管理と活用、原料供給ビジネスの売上拡大、流通改革対策)、製造機能の強化(新商品・受託サービスの拡充、カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業と鶏卵バイオリアクター事業の規模拡大と収益化の加速)、企業価値の向上(生産性向上・効率化による収益力向上、人材育成など)を推進する。
商社機能の強化では、各部署で使用していた顧客管理情報を統合した社内縦断的な顧客管理システムを採用し、情報共有と効率的営業活動を推進している。
メーカー機能を中心とする第2の収益柱の構築では、2016年12月本格参入したカスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業及び2019年7月開始した鶏卵バイオリアクター事業を成長ドライバーと位置付けて、両事業の規模拡大と収益化を加速させている。そして両事業を中心とする自社製造・受託サービスの売上高は、わずか4期で同社単体売上高の1割強を占めるまでに成長しており、メーカー機能強化と高収益化が進展していると言えるだろう。
カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業は順調に拡大
2. カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業
カスタムペプチド合成・抗体作製サービス事業は、研究者の要望にあった配列のペプチド(アミノ酸が2〜50残基程度結合した分子)をカスタム合成する。新薬(ペプチド医薬品)や新規治療法(ワクチン)の開発等につながり、ライフサイエンス基礎研究に欠かせない重要な研究ツールの1つである。2016年12月に本格参入し、事業規模が順調に拡大している。
更なる事業拡大に向けて、周辺技術を持つ企業とのアライアンスも推進している。2017年12月には(株)Proteomedix Frontiersと業務提携し、2018年4月にはAQUAペプチドの配列デザインから合成までの一貫サービスを開始した。2018年6月にはMJとペプチド創薬支援事業に関して業務提携(2019年4月出資)、2018年9月には名古屋大学発ベンチャーのiBody(株)とモノクローナル抗体スクリーニングサービスに関して業務提携、2018年10月にはエムティーアイ<9438>と抗体作製支援システムに関して業務提携、2018年11月にはがん免疫療法開発の(株)Cancer Precision Medicine(オンコセラピー・サイエンス<4564>の連結子会社)とペプチド合成に関する委受託基本契約を締結した。今後の展開として、研究用の提供を拡大しつつ、原料としての提供など、研究用から一歩踏み出した製造・サービスの展開を推進する方針だ。
鶏卵バイオリアクター事業を本格展開、原料供給も期待
3. 鶏卵バイオリアクター事業
鶏卵バイオリアクター事業(鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質受託製造事業)は、遺伝子改変ニワトリ(鶏卵の卵白のなかに、目的とする有用なタンパク質を大量に生産させるようにゲノム編集した特殊なニワトリ)の鶏卵バイオリアクターを用いて、ユーザーが必要とする目的タンパク質を安価・大量に製造・精製する。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)及び国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構との共同研究を進め、2017年8月にヒトインターフェロンβ製造に関する特許実施権を獲得した。2018年7月には産総研が、卵白に有用組み換えタンパク質を大量に含む卵を産む遺伝子改変ニワトリを作製する技術の確立を報告している。2019年にはヒトインターフェロンβに限定されない製造特許実施許諾を獲得した。2019年7月には大阪大学発ベンチャーのC4U(株)が保有する特許技術「CRISPR/Cas3」をライセンス導入し、ユーザーが必要とするタンパク質を安価・大量に製造できるようになったため、鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質受託製造事業を開始した。ユーザーニーズに対応して受託製造を本格展開するとともに、将来的には幅広く対応可能な研究用試薬の自社製品としての開発・製造・販売も目指すとしている。
なお2019年10月には日本全薬工業(株)からゲノム編集ニワトリの作製を受託している。ニワトリが産んだ有用タンパク質(Aタンパク質)を大量に含む鶏卵を納品する。当面は日本全薬工業の開発用の鶏卵納品だが、将来的に日本全薬工業がAタンパク質を用いた製品を上市する場合は、新たに契約を締結して売上に応じたロイヤルティなどの収益を得られる可能性がある。
今後の展開としては、研究用試薬ではなく、原料供給を主たる目的とした製造への飛躍を目指すとしている。新市場への展開で、ボリュームが大幅に増加する原料として、大量供給に対する期待が膨らむ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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