ハウスドゥ Research Memo(5):リバースモーゲージ保証事業を第三の柱に育成(2)
[21/03/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
a) ハウス・リースバック事業
「ハウス・リースバック」サービスは、ハウスドゥ<3457>が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶスキームである。持ち主は自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられる。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は地域密着型の店舗網を展開していることに加え、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを有していることから、ハウス・リースバックに必要な機能をすべて自社の経営リソースでカバーできることが強みとなる。
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが発生し、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度のキャピタルゲインが発生する。
ただし、ハウス・リースバック事業は、ストック型収益ビジネスであるため先行投資負担が重く、資金が固定化される。投資資金を借入金に依存すると、事業の急成長の持続と財務の安全性維持がトレードオフの関係になってしまう。このため、ストック型という性格は薄れるものの、財務体質の安全性を維持しながら事業規模も追うことを可能にするため、2018年6月期からハウス・リースバック保有資産の本格的なオフバランス化を始めた。再売買、処分売買、買取会社、ファンドへの売却を含めた売却売上高は、2018年6月期に前期比2.5倍の4,235百万円、2019年6月期に同3.0倍の12,622百万円に拡大した。なお、2020年6月期は同10.3%増の13,919百万円(750件)と成長率が鈍化したが、これは保有資産の売却が進んだものの、コロナ禍のため顧客との面談を中止するなど仕入に影響が出たことによる。なお、2020年6月期末の保有総額は前期末比35.8%減の3,410百万円、件数では同30.9%減の217件に減少しているものの、2021年6月期第2四半期末の保有総額は4,342百万円(前期末比27.3%増)、件数では285件(同31.3%増)と回復傾向となっている。
b) 不動産担保ローン
不動産担保ローンのスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。ただし、同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であることから、不動産価格の査定に関しては質量ともに他社を凌駕するうえ査定のスピードも速い。不動産担保ローン潜在需要は大きく、不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大している。今後は、財務体質の安全性維持のためオフバランス化を検討する。
c) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月支払い、元本については生存中は返す義務がなく、死亡後担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として1981年に導入された。欧米では主流の金融サービスであるものの、日本では資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格普及には至っていない。これは金融機関が不動産売買を本業としていないため、物件の査定と物件処分がネックとなるためである。リバースモーゲージサービスは不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるものの、同社子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を企図している。なお、同子会社は契約時に事務手数料・調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルとランニングの両方で収益機会があるストック型収益ビジネスとなる。
リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培った不動産売買のノウハウを生かすことで、市場取引価格に基づいた査定が可能となる。また通常、不動産売買で債権処理が発生した場合、不動産販売などに20〜25%の中間マージンが発生するが、同社では直接販売のためこれが不要となる。このため、安全性を考慮しても金融機関自身が行うよりも大きな融資枠を提供できる。このため利用客は、同子会社がリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。なお、ストック型収益の同事業は物件購入資金などが不要なうえ、粗利率が高く、収入が積み上がれば増益率が大きくなるため、ハウス・リースバック事業に次ぐ収益の柱と位置付けている。
2021年6月期第2四半期末のリバースモーゲージ累計保証残高は3,949百万円(前期末比549百万円増)、累計保証件数は430件(同68件増)となった。2021年6月期末の累計保証残高は4,730百万円〜6,433百万円を予想している。
同社グループでは、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と提携することでサービスエリアを広げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始し、2020年6月期末までに12行と提携、2021年6月期上期では新たに9行との業務提携を締結した。これまで地方銀行や信用金庫を中心に提携してきたが、2021年1月には全国対応・来店不要の楽天銀行と新たに提携したことで、同行によるプロモーションなどの積極的な取り組みが期待される。
なお、子会社のフィナンシャルドゥは、2020年10月に同社当てに20億円の第三者割当増資を行った。これは、今後の更なる事業拡大に向けて、資本増強による安定した経営基盤を構築し、リバースモーゲージ保証事業における提携金融機関の拡大を図ることを目的としている。
3. フロー型収益事業
フロー型収益事業としては、不動産売買事業、不動産流通事業、リフォーム事業及び小山建設グループが該当する。首都圏の不動産市況は、局所的に過熱感が現れたことから一時的に安全重視の姿勢を取ったものの、現在は注意深く遂行する通常型に戻っている。このため、フロー型収益事業である不動産売買事業の収益は、大きく回復している。一方で、不動産流通事業は成長強化事業のために経営リソースを提供しており、大きな成長は見込んでいない。また、リフォーム事業は不動産流通事業などと連携して事業を運営している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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a) ハウス・リースバック事業
「ハウス・リースバック」サービスは、ハウスドゥ<3457>が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶスキームである。持ち主は自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられる。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は地域密着型の店舗網を展開していることに加え、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを有していることから、ハウス・リースバックに必要な機能をすべて自社の経営リソースでカバーできることが強みとなる。
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが発生し、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度のキャピタルゲインが発生する。
ただし、ハウス・リースバック事業は、ストック型収益ビジネスであるため先行投資負担が重く、資金が固定化される。投資資金を借入金に依存すると、事業の急成長の持続と財務の安全性維持がトレードオフの関係になってしまう。このため、ストック型という性格は薄れるものの、財務体質の安全性を維持しながら事業規模も追うことを可能にするため、2018年6月期からハウス・リースバック保有資産の本格的なオフバランス化を始めた。再売買、処分売買、買取会社、ファンドへの売却を含めた売却売上高は、2018年6月期に前期比2.5倍の4,235百万円、2019年6月期に同3.0倍の12,622百万円に拡大した。なお、2020年6月期は同10.3%増の13,919百万円(750件)と成長率が鈍化したが、これは保有資産の売却が進んだものの、コロナ禍のため顧客との面談を中止するなど仕入に影響が出たことによる。なお、2020年6月期末の保有総額は前期末比35.8%減の3,410百万円、件数では同30.9%減の217件に減少しているものの、2021年6月期第2四半期末の保有総額は4,342百万円(前期末比27.3%増)、件数では285件(同31.3%増)と回復傾向となっている。
b) 不動産担保ローン
不動産担保ローンのスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。ただし、同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であることから、不動産価格の査定に関しては質量ともに他社を凌駕するうえ査定のスピードも速い。不動産担保ローン潜在需要は大きく、不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大している。今後は、財務体質の安全性維持のためオフバランス化を検討する。
c) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月支払い、元本については生存中は返す義務がなく、死亡後担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として1981年に導入された。欧米では主流の金融サービスであるものの、日本では資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格普及には至っていない。これは金融機関が不動産売買を本業としていないため、物件の査定と物件処分がネックとなるためである。リバースモーゲージサービスは不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるものの、同社子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を企図している。なお、同子会社は契約時に事務手数料・調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルとランニングの両方で収益機会があるストック型収益ビジネスとなる。
リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培った不動産売買のノウハウを生かすことで、市場取引価格に基づいた査定が可能となる。また通常、不動産売買で債権処理が発生した場合、不動産販売などに20〜25%の中間マージンが発生するが、同社では直接販売のためこれが不要となる。このため、安全性を考慮しても金融機関自身が行うよりも大きな融資枠を提供できる。このため利用客は、同子会社がリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。なお、ストック型収益の同事業は物件購入資金などが不要なうえ、粗利率が高く、収入が積み上がれば増益率が大きくなるため、ハウス・リースバック事業に次ぐ収益の柱と位置付けている。
2021年6月期第2四半期末のリバースモーゲージ累計保証残高は3,949百万円(前期末比549百万円増)、累計保証件数は430件(同68件増)となった。2021年6月期末の累計保証残高は4,730百万円〜6,433百万円を予想している。
同社グループでは、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と提携することでサービスエリアを広げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始し、2020年6月期末までに12行と提携、2021年6月期上期では新たに9行との業務提携を締結した。これまで地方銀行や信用金庫を中心に提携してきたが、2021年1月には全国対応・来店不要の楽天銀行と新たに提携したことで、同行によるプロモーションなどの積極的な取り組みが期待される。
なお、子会社のフィナンシャルドゥは、2020年10月に同社当てに20億円の第三者割当増資を行った。これは、今後の更なる事業拡大に向けて、資本増強による安定した経営基盤を構築し、リバースモーゲージ保証事業における提携金融機関の拡大を図ることを目的としている。
3. フロー型収益事業
フロー型収益事業としては、不動産売買事業、不動産流通事業、リフォーム事業及び小山建設グループが該当する。首都圏の不動産市況は、局所的に過熱感が現れたことから一時的に安全重視の姿勢を取ったものの、現在は注意深く遂行する通常型に戻っている。このため、フロー型収益事業である不動産売買事業の収益は、大きく回復している。一方で、不動産流通事業は成長強化事業のために経営リソースを提供しており、大きな成長は見込んでいない。また、リフォーム事業は不動産流通事業などと連携して事業を運営している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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