Jトラスト Research Memo(1):東南アジア金融事業の早期黒字化と、事業ポートフォリオ再編への次の一手に注目
[21/03/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
1. 会社概要
Jトラスト<8508>は、東証2部に上場しており、傘下に国内外の金融事業を有するホールディングカンパニーである。藤澤信義(ふじさわのぶよし)社長のもと、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に資産規模を拡大してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による世界的な経済環境悪化に直面し、抜本的な事業ポートフォリオの再編に着手した。2020年8月以降、不動産事業のキーノート(株)(現(株)グローベルス)、Jトラストカード(株)、韓国のJT親愛貯蓄銀行を売却したほか、JT貯蓄銀行の株式譲渡契約を締結するなど、大きな変革期にあると言える。売却代金は主に企業価値を高めるためのM&Aに活用する予定であり、同社の次の一手に注目したい。
2. 2020年12月期の業績概要
同社では、海外子会社の増加に伴い、前連結会計年度(2019年12月期)より決算期を3月から12月に変更したことで、2019年12月期は4月から12月までの9ヶ月決算となった。2020年12月期はコロナ禍による世界的な経済活動停滞に対応するため、事業ポートフォリオの抜本的な見直しに着手した。なお、売却会社は非継続事業に分類しているため、2019年12月期についても遡及して組み替え表示している。
この結果、2020年12月期の営業収益は32,652百万円(前期は24,728百万円)、営業損失は4,752百万円(同5,130百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は5,342百万円(同3,260百万円の損失)となった。セグメント別では、日本金融事業は保証・債権回収ともに引き続き堅調に推移してグループ業績をけん引した。一方で韓国及びモンゴル金融事業は、大幅な債権売却益を計上した前期に比べて大きく減少した。また、東南アジア金融事業はコロナ禍の影響などから営業損失を計上したが、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(以下、JTRB)の負ののれんが業績を下支えした前期に比べると、実質的な損失幅は縮小している。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は17.3%(前期は13.7%)に上昇し、東証1部銀行業平均の4.7%、その他金融業平均の5.8%を大きく上回る安全性を確保した。なお、2020年12月期の配当については、個別決算において大幅な損失を計上し利益剰余金がマイナスとなったことから、無配とする予定だ。
3. 2021年12月期の業績見通し
同社では、コロナ禍により世界各国で経済環境が急変し、産業構造が大きく変動しているなか、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直し、株主価値の最大化を目指す方針である。2021年12月期の業績予想については、営業収益が前期比0.1%増の32,670百万円と微増を見込む一方で、営業利益106百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益527百万円と、黒字転換を予想している。セグメント別では、日本金融事業で安定した利益を確保するとともに、東南アジア金融事業では営業損失幅が縮小する予想である。さらに投資事業では、Group Lease PCL(以下、GL)などより受領した3,700万米ドルを計上する予定である。ただし、日本金融事業や東南アジア金融事業は保守的な予想をしていることから、業績は上振れる可能性が高いと弊社では見ている。また投資事業は、GL向け債権については全額引き当て済みであることから、今後も債権回収の都度、収益計上される見通しだ。なお、配当については、年間1.0円への復配を予定する。
4. 成長戦略
これまで同社グループでは、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的に利益を確保する一方で、中期的には成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、持続的な成長を目指す方針であった。ただ、現在は「ウィズコロナ」状況下での経済に最適化した事業ポートフォリオの再編に着手している。当面は既存事業である日本金融事業で安定した利益を計上しながら、東南アジア金融事業の早期黒字化を図る方針であるが、一方で韓国の貯蓄銀行に代わる新たな収益源を確立することが急務であろうと弊社では見ている。なお、韓国のJT親愛貯蓄銀行売却の際に取得したNexus Bank<4764>の優先株式については、株価が転換価額を大きく上回ってキャピタルゲインが追求しやすい状況にあり、同社グループの企業価値を高めるためのM&Aに活用する予定である。代表取締役社長である藤澤信義氏の強力なリーダーシップのもと、成長を促すための新たな一手に注目が集まる。
■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ
・2020年12月期は、コロナ禍に対応した事業ポートフォリオの抜本的な見直しに着手したことで損失を計上するも、注目されたインドネシア金融事業の営業実態は実質的に改善
・2021年12月期は黒字転換に加え、復配の予定。日本金融事業は堅調、東南アジア金融事業も損失縮小の見込み
・東南アジア金融事業の早期黒字化と、韓国の貯蓄銀行に代わる新たな収益源の確立が課題。株式交換で得たNexus Bankのキャピタルゲイン活用などにより、企業価値を高めるためのM&Aを予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 会社概要
Jトラスト<8508>は、東証2部に上場しており、傘下に国内外の金融事業を有するホールディングカンパニーである。藤澤信義(ふじさわのぶよし)社長のもと、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に資産規模を拡大してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による世界的な経済環境悪化に直面し、抜本的な事業ポートフォリオの再編に着手した。2020年8月以降、不動産事業のキーノート(株)(現(株)グローベルス)、Jトラストカード(株)、韓国のJT親愛貯蓄銀行を売却したほか、JT貯蓄銀行の株式譲渡契約を締結するなど、大きな変革期にあると言える。売却代金は主に企業価値を高めるためのM&Aに活用する予定であり、同社の次の一手に注目したい。
2. 2020年12月期の業績概要
同社では、海外子会社の増加に伴い、前連結会計年度(2019年12月期)より決算期を3月から12月に変更したことで、2019年12月期は4月から12月までの9ヶ月決算となった。2020年12月期はコロナ禍による世界的な経済活動停滞に対応するため、事業ポートフォリオの抜本的な見直しに着手した。なお、売却会社は非継続事業に分類しているため、2019年12月期についても遡及して組み替え表示している。
この結果、2020年12月期の営業収益は32,652百万円(前期は24,728百万円)、営業損失は4,752百万円(同5,130百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は5,342百万円(同3,260百万円の損失)となった。セグメント別では、日本金融事業は保証・債権回収ともに引き続き堅調に推移してグループ業績をけん引した。一方で韓国及びモンゴル金融事業は、大幅な債権売却益を計上した前期に比べて大きく減少した。また、東南アジア金融事業はコロナ禍の影響などから営業損失を計上したが、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(以下、JTRB)の負ののれんが業績を下支えした前期に比べると、実質的な損失幅は縮小している。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は17.3%(前期は13.7%)に上昇し、東証1部銀行業平均の4.7%、その他金融業平均の5.8%を大きく上回る安全性を確保した。なお、2020年12月期の配当については、個別決算において大幅な損失を計上し利益剰余金がマイナスとなったことから、無配とする予定だ。
3. 2021年12月期の業績見通し
同社では、コロナ禍により世界各国で経済環境が急変し、産業構造が大きく変動しているなか、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直し、株主価値の最大化を目指す方針である。2021年12月期の業績予想については、営業収益が前期比0.1%増の32,670百万円と微増を見込む一方で、営業利益106百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益527百万円と、黒字転換を予想している。セグメント別では、日本金融事業で安定した利益を確保するとともに、東南アジア金融事業では営業損失幅が縮小する予想である。さらに投資事業では、Group Lease PCL(以下、GL)などより受領した3,700万米ドルを計上する予定である。ただし、日本金融事業や東南アジア金融事業は保守的な予想をしていることから、業績は上振れる可能性が高いと弊社では見ている。また投資事業は、GL向け債権については全額引き当て済みであることから、今後も債権回収の都度、収益計上される見通しだ。なお、配当については、年間1.0円への復配を予定する。
4. 成長戦略
これまで同社グループでは、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的に利益を確保する一方で、中期的には成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、持続的な成長を目指す方針であった。ただ、現在は「ウィズコロナ」状況下での経済に最適化した事業ポートフォリオの再編に着手している。当面は既存事業である日本金融事業で安定した利益を計上しながら、東南アジア金融事業の早期黒字化を図る方針であるが、一方で韓国の貯蓄銀行に代わる新たな収益源を確立することが急務であろうと弊社では見ている。なお、韓国のJT親愛貯蓄銀行売却の際に取得したNexus Bank<4764>の優先株式については、株価が転換価額を大きく上回ってキャピタルゲインが追求しやすい状況にあり、同社グループの企業価値を高めるためのM&Aに活用する予定である。代表取締役社長である藤澤信義氏の強力なリーダーシップのもと、成長を促すための新たな一手に注目が集まる。
■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ
・2020年12月期は、コロナ禍に対応した事業ポートフォリオの抜本的な見直しに着手したことで損失を計上するも、注目されたインドネシア金融事業の営業実態は実質的に改善
・2021年12月期は黒字転換に加え、復配の予定。日本金融事業は堅調、東南アジア金融事業も損失縮小の見込み
・東南アジア金融事業の早期黒字化と、韓国の貯蓄銀行に代わる新たな収益源の確立が課題。株式交換で得たNexus Bankのキャピタルゲイン活用などにより、企業価値を高めるためのM&Aを予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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