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Jトラスト Research Memo(4):2020年12月期は日本金融事業が好調に推移し業績を下支え(2)

注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の業績動向

2. セグメント別業績
同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業の4事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の97%を占める。2020年12月期は日本金融事業で利益を確保したものの、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業では損失を計上した。なお、事業ポートフォリオ再編に伴い、2020年12月期より報告セグメントに総合エンターテインメント事業と不動産事業は含まれていない。

(1) 日本金融事業
日本金融事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、サービサー業務(債権回収事業)のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長し安定的な利益を確保することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担ってきた。なお、2020年12月期には事業ポートフォリオ見直しの一環としてJトラストカードを売却したため、2019年12月期以降はJトラストカードの実績を除外している。

2020年12月期の日本金融事業は、保証残高及び回収実績が順調に推移したことにより、営業収益は10,041百万円(前期は7,366百万円)、営業利益は4,860百万円(同3,082百万円)となった。セグメントの中で最大の利益を確保し、営業利益率も高水準で安定推移している。

日本金融事業では、アパートローン保証を安定的な利益基盤とする一方で、海外不動産担保ローンやクラウドファンディング商品保証など、新たな保証商品への多角化を図っている。2020年12月期末の債務保証残高合計は2,098億円と、コロナ禍の影響を受けたもののおおむね横ばいで推移した。

不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価、審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することで賃貸住宅ローン(アパートローン)保証業務を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、大手銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いはない状況だ。ただ、ローンの期間は20年〜30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。

また、同社が保証する物件は、東名阪福の各地域の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は、近年、競争が激化していることから取扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保してきた。

現在は金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は増加を期待しにくい環境にあるものの、貸倒はほとんど発生してないようだ。一方、最近の動きとしては、新たな保証商品としてクラウドファンディング商品の保証を開始した。業務提携先が日本保証の保証付きクラウドファンディング商品をリリースしたところ好評で、その多くが1時間以内に目標額達成となった。なお、海外不動産担保ローンも徐々に保証提携先銀行が増え、保証残高は増加傾向にあったが、コロナ禍で期初の会社側の想定を下回ったようだ。同社では、提携先の拡大や商品の多様化により、長期的に保証残高を積み上げる計画だ。

また、サービサー(債権回収)事業では、債権買取が順調であり、パルティール債権回収が取り扱う請求債権残高は8,198億円に増加している。業界全体では金融機関等の貸付債権が6割近くを占めるのに対し、同社ではリース・クレジット債権が過半数を占めているという。以上から、サービサー事業における債権残高は引き続き9,500億円を保有している。

債権回収業務における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。また、こうした国内事業での債権回収力の強さは、韓国やインドネシアでも生かされていると言える。

(2) 韓国及びモンゴル金融事業
韓国及びモンゴル金融事業では、リース業のJTキャピタルやサービサー(債権回収)事業のTA資産管理(以下、TAアセット)を保有する。さらに、2018年5月にはモンゴルのファイナンス会社(現JトラストクレジットNBFI)を子会社化している。なお、売却済のJT親愛貯蓄銀行及び売却予定のJT貯蓄銀行については、2019年12月期及び2020年12月期の実績から除外している。以上から、韓国及びモンゴル金融事業の2020年12月期の営業収益は5,656百万円(前期は6,756百万円)、営業損失は330百万円(同2,160百万円の利益)となった。

韓国及びモンゴル金融事業の減収減益は、2019年12月期に債権価格の高騰を受けてTAアセットが大規模な債権売却を実施したことの反動減となる。現状、TAアセットでは保有債権をほとんど売却済みである。一方、JTキャピタルでは、世界的なコロナ禍による経済環境の悪化を受けて貸付資産は減少したものの、NPL比率(90日以上延滞債権率)は1.93%(2020年12月)と低位安定している。債権の「質」を重視し、安定した貸出資産の維持に努めたことが奏功していると言えよう。

JT親愛貯蓄銀行とJT貯蓄銀行の2行合算の資産規模は韓国貯蓄銀行中でトップ3に位置しており、これまで韓国及びモンゴル金融事業の収益を下支えしてきた。しかし、同社グループでは事業ポートフォリオ再編に伴い、この2行の売却を決定したことで、韓国及びモンゴル金融事業の収益貢献は大きく低下している。ただ、同社グループとしては、貯蓄銀行2行の企業価値を最大化した有利な状態で売却することができたことから、手元流動性の確保と財務健全性の更なる強靭化を実現し、今後の新たな事業展開に活用する計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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