スカラ Research Memo(7):中期経営目標を実現するため、サービスの「型」づくりが始まる
[21/03/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
3. トピックス
スカラ<4845>は2019年に発表した中期経営計画の達成に向けて、成長エンジンとなるサービスの「型」づくりに2021年6月期に取り組み、出来上がった「型」を2022年6月期以降に横展開していくことで成長を加速していく戦略をとっている。今後成長が期待できるサービスの取り組み状況について、以下に取り上げる。
(1)デジタルIDソリューション
2020年2月に資本業務提携を行ったxIDが開発したマイナンバーカードと連携するデジタルIDアプリ「xID」の普及拡大が見込まれている。「xID」は既に石川県加賀市の電子申請プラットフォームとして利用されているほか、電子契約サービスやクラウドファンディングサービス等における本人認証用としても利用され始めるなど、デジタルIDサービスとして最も注目されているアプリとなっている。
同社も「xID」と連携した本人認証サービスの提案活動を2020年から金融機関中心に進めており、既に大手生命保険会社から、Web申請時の本人確認機能として「xID」の採用が確定したほか、地方銀行でも口座開設時の本人確認機能として「xID」連携サービスの導入を検討する銀行が増加している。また、同社が現在開発中である、自治体向けに提供する官民共創プラットフォーム「CO-DO」※の会員登録、ログイン時のパスワードレスログイン機能としても採用することが決まっている。
※2020年9月に業務提携した(株)Public dots & Companyと共同で開発している、自治体のDXを推進していくための企業と自治体をつなぐコミュニケーションプラットフォーム。自治体のDXは官と民における共創が必要不可欠であるとの考えのもと、ソリューションの最適なマッチングやコミュニケーションの場として「CO-DO」を開発、そこから生じる各自治体での個別開発案件を受注することで自治体のDXを支援していく。2021年6月期中のリリースを目指す。
また、同社では「xID」に電話認証(IP-PBX)やSMS認証機能を組み合わせた新サービスもリリースしており、多様な顧客ニーズに対応していく方針だ。この新サービスは、1件当たり月額基本料で約50万円※、今後2年間で50件程度の受注を目標としており、年間売上で換算すると3億円となる。
※月額基本料金の約5割は「xID」利用料。加えて、毎月一定のトランザクションを超えると従量課金が発生するほか、新規導入時の一時売上100〜150万円/件などがある。
(2)不動産トラストDXサービス
同社は2020年10月にシノケングループと業務提携を締結し、不動産取引及びライフサポートサービスに関して、デジタルIDを活用した不動産トラストDXプラットフォームの共同研究並びに共同開発を進めていくことを発表した。
同プラットフォームで「xID」などデジタルIDソリューションを活用することで、不動産売買契や金融機関でのローン申込申請、各種ライフサポートサービスにおけるID確認に至るまで、すべてをデジタル化することで業務効率の改善と顧客満足度の向上を実現する取り組みとなる。プラットフォームの開発は段階的に進めていく予定で、第1フェーズは2021年3月頃のリリースを目標、ファーストユーザーはシノケングループとなる。その後は、機能の拡充を進めながら外販も推進していく予定となっており、将来的には年間数億円規模の売上を見込んでいる。なお、同プロジェクトでは、シノケングループとのDX化プロジェクトによって、取引先銀行へのxID連携サービスの導入も見込まれる。銀行でも、同サービスの導入によって、与信業務における案件処理の迅速化が期待できる。
(3)逆公募プロポーザル
地方自治体のDX支援の取り組みの一つとして同社は、2020年11月にPublic dots & Companyと共同で、日本初となるSDGs特化型「逆公募プロポーザル」のサービスを開発し、提供を開始した。「逆公募プロポーザル」とは、大企業やスタートアップ企業などの民間企業が、社会課題解決型の新規事業を実施する際に、当該事業の需要動向の把握や仮説検証等をスピーディに実施したいときに活用するサービスとなる。従来の公募プロポーザルは、自治体が予算を持って公募するプロジェクトに対して、受注を狙う企業が事業計画書を作成・提出し、それを第三者機関が評価し選定するといった流れとなる。一方、逆公募プロポーザルでは企業が企画する社会課題解決型のテーマに対して、参加を希望する自治体を公募する流れとなる。参加可能な自治体はテーマに則した実証実験などの提案書を作成・申し込みを行う。選定する自治体数は複数でも可能なため、企業は多くの実証実験を行うことも可能となる。なお、選定された自治体に対しては公募する企業側から「寄付受納」という形で予算が支払われる。
「逆公募プロポーザル」の第1弾プロジェクトとして、イーデザイン損害保険(株)のプロジェクト「より安全な交通環境・社会の実現」をテーマにした公募に対して、5つの自治体がエントリーし、選考の結果、神戸市と滋賀県日野町が選定されたことが発表されている。神戸市は「摩耶山掬星台の渋滞解消に向けた情報発信の仕組みづくり」を、日野町は「安全教室とサイクリングイベントを通じた安全な自転車利用の促進」をテーマとしたプロジェクトが今後進められていくことになる。イーデザイン損害保険では、CSRの一環として自治体と共に「より安全な交通環境・社会の実現」に向けた具体的な取り組みを進めることを目的に、逆プロポーザル公募を利用したと言う。
今後も第2弾、第3弾のプロジェクトを発表していくほか、2021年4月にはサービスサイトをオープンする予定となっている。同社は逆公募プロポーザルサービスを利用する企業から、マッチングの際の手数料を受け取るほか、プロジェクトの実証実験で必要となるITシステムの開発が必要であれば、システム開発を請け負うことになる。また、同社では今回のサービスを開始したことで多数の自治体から問い合わせがあり、ネットワークを構築できたことは今後の自治体向けビジネスの拡大においてプラスになったと評価している。実際、同サービスは利用しなかったものの、ITサービスに関する別の相談も受けるようになってきたと言う。自治体向けITサービスについては大手SIerの牙城を切り崩すのが大変ではあるが、今回のように新たなサービスを提案することで開拓できる余地は大きいと思われる。
(4)ワーケーションサービス
移住支援事業を行っているスカラパートナーズでは、ワーケーション需要にこたえるための施設紹介サイト「KomfortaWorkation」の運営を通じて、一般的なワーケーション利用者向けのサービスのみならず、「地域課題解決を通じた変革人材育成」など、コロナ禍における企業の課題を解決するソリューションサービスや転職支援サービスなど各種サービスを、地方創生に注力している企業との業務提携によって相次いで開始している。今後も「どこでも働ける」「どこでも暮らせる」「どこでも学べる」サービスを業務提携などによって開発・提供するなど、新たな取り組みを積極的に推進していく予定にしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. トピックス
スカラ<4845>は2019年に発表した中期経営計画の達成に向けて、成長エンジンとなるサービスの「型」づくりに2021年6月期に取り組み、出来上がった「型」を2022年6月期以降に横展開していくことで成長を加速していく戦略をとっている。今後成長が期待できるサービスの取り組み状況について、以下に取り上げる。
(1)デジタルIDソリューション
2020年2月に資本業務提携を行ったxIDが開発したマイナンバーカードと連携するデジタルIDアプリ「xID」の普及拡大が見込まれている。「xID」は既に石川県加賀市の電子申請プラットフォームとして利用されているほか、電子契約サービスやクラウドファンディングサービス等における本人認証用としても利用され始めるなど、デジタルIDサービスとして最も注目されているアプリとなっている。
同社も「xID」と連携した本人認証サービスの提案活動を2020年から金融機関中心に進めており、既に大手生命保険会社から、Web申請時の本人確認機能として「xID」の採用が確定したほか、地方銀行でも口座開設時の本人確認機能として「xID」連携サービスの導入を検討する銀行が増加している。また、同社が現在開発中である、自治体向けに提供する官民共創プラットフォーム「CO-DO」※の会員登録、ログイン時のパスワードレスログイン機能としても採用することが決まっている。
※2020年9月に業務提携した(株)Public dots & Companyと共同で開発している、自治体のDXを推進していくための企業と自治体をつなぐコミュニケーションプラットフォーム。自治体のDXは官と民における共創が必要不可欠であるとの考えのもと、ソリューションの最適なマッチングやコミュニケーションの場として「CO-DO」を開発、そこから生じる各自治体での個別開発案件を受注することで自治体のDXを支援していく。2021年6月期中のリリースを目指す。
また、同社では「xID」に電話認証(IP-PBX)やSMS認証機能を組み合わせた新サービスもリリースしており、多様な顧客ニーズに対応していく方針だ。この新サービスは、1件当たり月額基本料で約50万円※、今後2年間で50件程度の受注を目標としており、年間売上で換算すると3億円となる。
※月額基本料金の約5割は「xID」利用料。加えて、毎月一定のトランザクションを超えると従量課金が発生するほか、新規導入時の一時売上100〜150万円/件などがある。
(2)不動産トラストDXサービス
同社は2020年10月にシノケングループと業務提携を締結し、不動産取引及びライフサポートサービスに関して、デジタルIDを活用した不動産トラストDXプラットフォームの共同研究並びに共同開発を進めていくことを発表した。
同プラットフォームで「xID」などデジタルIDソリューションを活用することで、不動産売買契や金融機関でのローン申込申請、各種ライフサポートサービスにおけるID確認に至るまで、すべてをデジタル化することで業務効率の改善と顧客満足度の向上を実現する取り組みとなる。プラットフォームの開発は段階的に進めていく予定で、第1フェーズは2021年3月頃のリリースを目標、ファーストユーザーはシノケングループとなる。その後は、機能の拡充を進めながら外販も推進していく予定となっており、将来的には年間数億円規模の売上を見込んでいる。なお、同プロジェクトでは、シノケングループとのDX化プロジェクトによって、取引先銀行へのxID連携サービスの導入も見込まれる。銀行でも、同サービスの導入によって、与信業務における案件処理の迅速化が期待できる。
(3)逆公募プロポーザル
地方自治体のDX支援の取り組みの一つとして同社は、2020年11月にPublic dots & Companyと共同で、日本初となるSDGs特化型「逆公募プロポーザル」のサービスを開発し、提供を開始した。「逆公募プロポーザル」とは、大企業やスタートアップ企業などの民間企業が、社会課題解決型の新規事業を実施する際に、当該事業の需要動向の把握や仮説検証等をスピーディに実施したいときに活用するサービスとなる。従来の公募プロポーザルは、自治体が予算を持って公募するプロジェクトに対して、受注を狙う企業が事業計画書を作成・提出し、それを第三者機関が評価し選定するといった流れとなる。一方、逆公募プロポーザルでは企業が企画する社会課題解決型のテーマに対して、参加を希望する自治体を公募する流れとなる。参加可能な自治体はテーマに則した実証実験などの提案書を作成・申し込みを行う。選定する自治体数は複数でも可能なため、企業は多くの実証実験を行うことも可能となる。なお、選定された自治体に対しては公募する企業側から「寄付受納」という形で予算が支払われる。
「逆公募プロポーザル」の第1弾プロジェクトとして、イーデザイン損害保険(株)のプロジェクト「より安全な交通環境・社会の実現」をテーマにした公募に対して、5つの自治体がエントリーし、選考の結果、神戸市と滋賀県日野町が選定されたことが発表されている。神戸市は「摩耶山掬星台の渋滞解消に向けた情報発信の仕組みづくり」を、日野町は「安全教室とサイクリングイベントを通じた安全な自転車利用の促進」をテーマとしたプロジェクトが今後進められていくことになる。イーデザイン損害保険では、CSRの一環として自治体と共に「より安全な交通環境・社会の実現」に向けた具体的な取り組みを進めることを目的に、逆プロポーザル公募を利用したと言う。
今後も第2弾、第3弾のプロジェクトを発表していくほか、2021年4月にはサービスサイトをオープンする予定となっている。同社は逆公募プロポーザルサービスを利用する企業から、マッチングの際の手数料を受け取るほか、プロジェクトの実証実験で必要となるITシステムの開発が必要であれば、システム開発を請け負うことになる。また、同社では今回のサービスを開始したことで多数の自治体から問い合わせがあり、ネットワークを構築できたことは今後の自治体向けビジネスの拡大においてプラスになったと評価している。実際、同サービスは利用しなかったものの、ITサービスに関する別の相談も受けるようになってきたと言う。自治体向けITサービスについては大手SIerの牙城を切り崩すのが大変ではあるが、今回のように新たなサービスを提案することで開拓できる余地は大きいと思われる。
(4)ワーケーションサービス
移住支援事業を行っているスカラパートナーズでは、ワーケーション需要にこたえるための施設紹介サイト「KomfortaWorkation」の運営を通じて、一般的なワーケーション利用者向けのサービスのみならず、「地域課題解決を通じた変革人材育成」など、コロナ禍における企業の課題を解決するソリューションサービスや転職支援サービスなど各種サービスを、地方創生に注力している企業との業務提携によって相次いで開始している。今後も「どこでも働ける」「どこでも暮らせる」「どこでも学べる」サービスを業務提携などによって開発・提供するなど、新たな取り組みを積極的に推進していく予定にしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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