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スカラ Research Memo(9):2021年6月期業績は下期以降、新規案件が増加し上向きに転じる見通し

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2021年6月期の業績見通し
スカラ<4845>の2021年6月期の業績は、継続事業ベースで売上収益が9,000〜12,000百万円、営業利益、税引前利益が各100〜500百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が2,700〜3,100百万円となる見通し。前期のソフトブレーングループを除いた継続事業の業績は、集計中のため前期比増減率は開示していない。前期のソフトブレーンの連結業績を控除したおおよその売上収益は7,500百万円、営業利益で140百万円程度と推計されるため、営業利益に関してはほぼ前期並みの水準で見込んでいることになる。第2四半期累計の売上収益が4,285百万円、営業利益が25百万円であったことから、収益水準は低いものの、下期は業績が上向くことになる。引き続き、中期経営計画達成に向けた成長基盤の構築を最優先に取り組んでいく方針で、人材投資や開発投資などを積極的に進める予定だ。なお、ソフトブレーンの株式売却益約26億円は非継続事業利益として当期利益に反映されることになる。

2021年6月期下期の見通しや取り組み方針については以下の通りとなる。

(1) ソフトブレーン株式の売却により高収益案件の投資を加速
ソフトブレーン株式の売却で得た資金約105億円を積極的に活用して、投資・インキュベーション事業での再投資やM&A資金などに充当していく予定にしている。既に、ジェイ・フェニックス・リサーチが中心となって複数の出資候補先企業を絞り込んでおり、具体的な出資交渉を進めている(1社は出資済み)。これら企業については、価値創造経営支援とAI/IoTのコンサルティング、DX支援及び実装などによって収益を高成長ステージに引き上げていくと同時に、IR戦略コンサルティングを行うことで、企業価値(=時価総額)の最大化を目指す。大手コンサルティング会社で経営戦略の企画・立案から情報システムの構築まで行う企業は多いが、出資やIRのコンサルティングサービスまでワンストップで提供する企業はほとんどなく差別化要因となる。

同社では、コンサルティングサービスやDXによる各種SaaS/ASPサービスを提供することで、1社当たり年間100〜200百万円の売上を見込める。出資については2020年3月に組成したSCSV1号投資事業有限責任組合を通じて行う。対象企業は時価総額で100億円規模までの上場企業で、投下資本利益率(ROIC)で15%以上が見込まれる企業となる。2021年6月期中に最大5社程度、1社当たり1〜1.5億円の出資を目安に投資を実行していく方針だ。なお、投資後の運用方針としては想定した企業価値に達した段階で売却し、次の投資先企業の株式取得資金に充当していくことになる。同社では、中小企業で価値創造経営支援事業の成功事例を積み重ねていくことで、将来的には大企業向けでも同様のスキームで事業展開していくことを視野に入れている。

(2) IT/AI/IoT/DX事業
2021年6月期のIT/AI/IoT/DX事業は、下期の回復により増収増益を見込んでいる。「i-ask」「i-search」などの主力サービスに加えて、「xID」等のデジタルIDサービスの新規導入も見込まれ、月額課金収益については第2四半期を底に緩やかな回復を見込む。また、コロナ禍で低迷していたカスタム開発案件についても、下期は回復が見込まれる。特に、損害保険ジャパン向けの安全運転診断サービスのリニューアルプロジェクトや派生プロジェクトが複数進んでおり、今後2年間で5億円程度の売上が見込まれている(下期に一部売上計上)。なお、同プロジェクトの運用開始後は、損害保険ジャパンが主体となって同業他社への売り込みも進めていく計画となっている。IT/AI/IoT/DX事業については、今後も企業のDXニーズが旺盛なことや、サービス拡充を進めることで、中期的に年率15%程度の成長が期待できるものと同社では見ている。

(3) カスタマーサポート事業
カスタマーサポート事業については、前期に引き続き低採算案件の見直しと新規顧客の獲得を進めていくことで、収益性の向上に取り組んでいく。売上高については低採算の光通信グループ向け案件の整理を進めていくため、減収が続く可能性が高いが、基幹システムの「C7」や「i-ask」「IP-PBX」等の導入を進めていくほか、VALT JapanのBPOサービスを活用することでコスト低減に取り組み、収益性の改善を図る方針だ。

(4)人材・教育事業
人材・教育事業のうち、人材事業についてはコロナ禍で上期は苦戦を強いられたものの、需要期の第3四半期は回復に向かうほか、今後はオンラインによる人材紹介サービスを強化し、収益の回復を目指していく。一方、教育事業についてはハイエンド層への独自性の高い幼保サービスを特色としており、安定した需要が見込めるほか、今後は不動産デベロッパーとも連携し、幼児教育環境の面からコミュニティ開発に貢献していくことも視野に入れている。

また、グリットグループホールディングス及び子会社を統合して以降、グループ内連携とコスト効率化の推進に1年を費やしている。管理部門のスタッフもグリットグループホールディングス等から人材を受け入れることで、効率的に強化することができている。

(5)EC事業
EC事業については通期も2ケタ増収増益が続く見通し。引き続きECサイトの改善に取り組み、流通額の増大を目指すほか、AI等を活用したバックエンドの業務効率化についても継続して進める方針だ。

(6) 投資・インキュベーション事業
ジェイ・フェニックス・リサーチによる価値創造経営支援並びにDX支援等の案件が徐々に増加しているほか、既述のとおり「逆公募プロポーザル」案件の増加により売上高の増加が続く一方、利益面では先行投資により損失が続く見通しとなっている。特に、Public dots & Companyとの共同プロジェクトとなる官民共創プラットフォーム「CO-DO」については、2021年6月期中のオープンを目標にしている。自治体と企業をつなぐコミュニケーションプラットフォームとなり、自治体等から月額利用料を得ることでマネタイズしていくほか、同プラットフォームを通じてITシステムの開発を受注する可能性もある。また、将来的には「CO-DO」を通じてパブリック人材ビジネス(公務員の派遣サービス)への参画も視野に入れている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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